クレドの意味を解説|経営理念の浸透に効果的な行動指針

成長戦略のひとつとして多くの会社でクレドが導入されています。企業活動の行動指針を示すとされるクレドですが、今なぜ必要とされているのでしょうか。 この記事では、クレドの意味や会社にとってのメリットから実際の導入事例までを詳しく解説します。


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クレド(Credo)とはどういう意味なのか

クレド(Credo)とは、ラテン語で「行動指針」や「信条」などを表す言葉です。近年様々な会社から注目を集めているクレドという言葉は、どのような意味を持つのでしょうか。

ここでは、クレドとは何か、クレドを会社へ導入する目的について解説します。

企業の行動指針をまとめたもの

クレドは「企業活動において従業員一人ひとりが心がけるべき行動指針をまとめた言葉」です。

クレドは経営理念と意味がよく似ているため混同されやすいのですが、実際には大きな違いがあります。経営理念は会社全体の理想や目標を抽象的に表しているのに対し、クレドは従業員が実践しやすい具体的な信条を明文化しているのです。

そのため、クレドは経営理念よりも従業員の行動に反映されやすく、個々の判断基準を左右するものとされています。

クレドの目的

クレドの目的は、従業員個人の視点に立った企業理念の浸透と共有です。

会社の成功には経営理念の浸透が欠かせません。どれだけ優秀な人材が集まっていようとも、会社の心臓となる理念が一人ひとりに共有されていなければ、会社の求める理想的な行動を取るとは限りません。

また、会社から何を求められているのか、どう動くべきかという根幹を知らなければ、従業員も自信を持って働くことができないでしょう。

クレドを通じて従業員が企業理念を主体的に理解できれば、企業改革や組織の環境改善、コンプライアンス経営の実現などにつながります。

クレドが注目されている理由

クレドの注目が高まったのは、2000年代に入った頃です。2001年にエンロン社、2002年にワールドコム社など、大手企業での不祥事が次々に発覚して世界中で企業モラルを問われるようになりました。

当時、日本でも食品の産地偽装など、企業による不祥事が連日のように報道されました。そのため、2006年には金融商品取引法や公益通報者保護法が施行され、企業の内部統制強化や内部告発をする従業員の保護などが定められたのです。

そしてこの法整備を機に、コンプライアンス遵守の考えが企業に根付き始めました。

そこで注目されたのがクレドです。経営層と現場の従業員が同じ価値観を共有し、従業員に意識改革を促すためには、より具体的かつ実践的な行動指針が必要だと考えられたのです。

クレドを導入することの具体的なメリット

クレドを導入すると、企業にはどのようなメリットが生じるのでしょうか。ここでは具体的なクレド導入のメリットを6つに絞って解説します。

主体性を持った人材の育成に役立つ

将来の成長を見据えた企業経営には、優秀な人材の育成が不可欠です。しかし、会社の実務に関する知識を与えるだけでは、経営に適した行動や判断を取れるようになるとは限りません。

身につけた業務上の知識や経験を活かし、さらに経営者と同じ発想で行動や判断といったアクションを起こせる人材にするには、クレドによる価値観の共有が最適です。

まずは従業員全員が共有すべき価値観を可視化するために、クレドを作成しましょう。そして、クレドに繰り返し触れて日々の実務に生かすことができれば、会社の求める行動を従業員自らが主体的に行えるようになるはずです。

定性的な人事評価につながる

企業の人事評価には、営業成績の達成度などの数値で評価する定量的評価と、数値で表せない人間性や勤務態度などで評価する定性的評価があります。

このうち、はっきりとした数値では測れない定性的評価は客観的な評価が難しいとされています。上司ひとりが評価をすれば偏りが出るリスクがあり、また複数の人物から多面的な評価を得るにしても、個々の基準が違えば、やはり公平性が保ちにくいでしょう。

クレドがあれば、会社が求める人物像は明確です。定性的評価を下す際にも、客観性が高くなり、会社と従業員の双方にとって満足度の高い結果となります。また、従業員が自身の評価アップに向けて目標を立てやすいというメリットもあります。

入社後のミスマッチ防止につながる

せっかく採用した従業員がすぐに退社してしまうことは珍しくありません。退社理由には個人差がありますが、大きな理由のひとつとされるのは会社と求職者とのあいだに生じるミスマッチです。

ミスマッチを防ぐために、求人を出す時点でクレドを示しておくのがおすすめです。応募する際にクレドを把握していれば、会社の求める人物像が自分の意向に沿ったものか、求職者は具体的に判断できます。また、入社前からクレドを意識することで、浸透にも時間がかからないでしょう。

組織文化を作るのに役立つ

クレドは企業の組織文化を作り上げるのにも役立ちます。従業員としての具体的かつ実践的な行動指針を掲げるクレドがあれば、同じ考え方を共有しながら働けます。自分の考えではなくクレドに則って行動できる人材がそろえば、会社は自然とまとまるでしょう。

また、すでに構築された企業風土を新たなビジョンを元に刷新したいときにも、クレドの作成が有効です。

サービスレベルの向上につながる

先述の通り、クレドの浸透は会社の求める人物像を明確にし、主体性をもって行動する従業員を育みます。クレドが日々の活動の根幹になるため、マニュアルに頼りすぎることなく、個々がクレドの達成に向けて自主性を持つようになるのです。

企業にとって理想となる行動、判断を行う努力は、従業員のサービスレベル向上につながります。その結果、顧客満足度が上がり、引いてはクレド導入が会社を成長させることになります。

従業員のモチベーション向上につながる

クレドがあれば、従業員は会社の存在意義や従業員としての信条を意識できます。会社で自分がなすべきことが言語化されるため、業務に対する従業員のモチベーション向上につながりやすいといえるでしょう。

ライフワークバランスを重視する人が増えた現代では、金銭的な報酬よりも働きがいを求める従業員が増えています。これからの会社経営では、クレド導入によって能力アップや社会貢献といった内面的な報酬を実感してもらうことも大切です。

クレド導入の企業事例

会社にも従業員にもメリットの大きいクレドですが、実際に導入した企業ではクレドによってどのような変化が起こっているのでしょうか。

ここでは、クレドを導入した有名企業の事例を紹介します。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの事例

そもそもクレドの始まりは、アメリカの大手医療品メーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソンが1943年に作成した「Our Credo(我が信条)」という言葉です。

製品、株主や社員、地域社会に対して責任を持って行動するという決意が込められた、このシンプルかつ明快な言葉が、そのままクレドというビジネス用語として広まりました。

1982年、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「タイレノール事件」と呼ばれる同社の頭痛薬「タイレノール」への毒物混入事件を経験します。この事件を機にジョンソン・エンド・ジョンソンに対する社会的信頼は失墜しました。

しかしその後、「Our Credo」に基づく同社の行動は、ビジネスにおける史上もっともすぐれた対応として賞賛されることになります。

責任逃れの発言をすることなく製品をすみやかに自主回収し、製造過程が要因か、もしくは第三者による犯行かの特定を急ぐかたわら、三層密封構造によるパッケージという解決策を生み出しました。さらに医療関係者への説明、専用フリーダイヤルの設置など、信頼回復への努力を重ねたのです。

その結果、発生からわずか2ヶ月で「タイレノール」の売上を事件前の約80%まで回復させました。

ザ・リッツ・カールトンの事例

世界に名だたるホテル「ザ・リッツ・カールトン」もまた、クレドを重んじる企業として有名です。

同社の理念「ゴールドスタンダード」を元に作成されたクレドには、利用客の心のうちに潜むニーズまでを満たすサービス提供を使命とすることが具体的に提示されています。

利用客にとって最高のサービスと施設とは何かを常に意識づけるため、従業員は常にクレドの書かれたカードを携行しています。このカードには、従業員は大切な資源であるという会社からの「従業員との約束」も明示されており、従業員のモチベーション向上にもつながっています。

自社に最適なクレドの作成ならTOMAにお任せください!

有名企業でのクレド導入事例は、経営者にとって参考になるものです。しかし、それぞれの企業の求めるものや風土は違いますから、他社のクレドをそのまま利用するわけにはいきません。また、せっかく作ったクレドも現場に浸透しなければ効力を発揮しないでしょう。

自社に最適なクレドの作成、そしてスムーズな浸透を目指すなら、専門家の手を借りるのがおすすめです。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社では企業理念・クレド導入のコンサルティングサービスを行っています。長年培ってきたノウハウを元に、経営者の想いを形にする経営理念、全従業員を巻き込んだクレド作成を通じて、理想とする企業像を実現するサポートをいたします。

まとめ

従業員の行動指針を具体的に示すクレドは、円滑な企業活動や主体的な人材の育成など、様々な導入メリットがあります。

クレド導入によって従業員のベクトルをひとつに向け、100年先も続く強い企業を実現させましょう。