後継者不足はなぜ起こる?原因と対策方法を解説

今、日本の6割強の経営者が「後継者がいない」と答えており、後継者不足は経営者共通の課題です。しかし、何も対策を講じないまま日々の業務に追われている経営者が多いのではないでしょうか? ここでは、経営者不足の現状と原因、対策方法について解説します。


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後継者不足の現状

帝国データバンクが行った「2020年全国企業『後継者不在率』動向調査」によると、全国26万6,000社の約65.1%(約17万社)が後継者不在であると回答しました。2019年の同調査では約65.2%だったので、0.1ポイント低下したことになります。

ここ10年の傾向を見ると、2011年には63.9%でしたが2017年には66.5%まで上昇し、その後は低下傾向にあります。しかし、依然として6割以上の企業で後継者が決まっていない事態となっています。

それでは、地域別や業種別にみた後継者不足の状況、さらには後継者候補の属性について見てみましょう。

地域別にみる後継者不足の現状

さきほど見たように、後継者不在率の全国平均は65.1%ですが、地域別に見ると北海道が72.4%、中国地方が70.8%と平均を大きく上回っています。この2地域は2011年からずっと7割を超えています。

一方、後継者不在率が低い地域は四国地方が55.5%、ついで北陸地方が57.7%となっていますが、2地域とも2019年からポイントが上がっています。特に、四国地方は2011年の後継者不在率49.0%から、10年間で6.5ポイントも上昇しています。

2019年よりも後継者不在率が上昇した地域は四国、北陸地方のほかに中部、中国、九州地方で、西日本で顕著になっています。また、多くの企業が集まる関東、近畿地方については、関東地方が65.2%、近畿地方が66.3%でした。両地域とも、2019年よりも減少し、最近10年間で最低になりました。

また、都道府県別で見ると、81.2%の沖縄県がトップ。不在率がいちばん低かったのは44.8%の和歌山県でした。しかし、沖縄県は昨年から1ポイント以上下がっており、4年連続で減少しています。一方、和歌山県は昨年から1.8ポイント上昇しています。

業種別にみる後継者不足の現状

次は建設、製造、卸売、小売、運輸、通信、サービス、不動産、その他の8業種別に後継者不足の状況を見てみましょう。その他を除く全7業種中、建築業が70.5%で最も高い不在率になりました。最も低いのは製造業の57.9%です。

しかし、建築業は2年連続で低下し、2019年よりも0.1ポイント減少しました。一方、小売業は2019年よりも0.4ポイント上昇し、後継者不在率は66.4%に。その他を除く7業種で前年に比べて増加したのは小売業だけでした。小売業を詳細に見て見ると、飲食店71.6%や自動車類小売71.7%が特に高くなっています。

後継者候補の属性と事業承継の動向

次は、後継者候補の属性や事業承継の動向について見てみましょう。

・後継者候補の属性
後継候補がわかっている全国約9万3,000社について、後継者候補の属性を見ると、「子ども」40.4%、「非同族」33.2%、「親族」19.7%、「配偶者」6.8%となりました。

また、現社長の就任経緯別に後継者候補の属性を見ると、以下の表のようになりました。

後継者候補 子ども 配偶者 親族 非同族
現社長の就任経緯
創業者 59.0%(-0.4pt) 10.3%(0.1pt) 11.9%(-0.2pt) 18.7%(0.5pt)
同族承継 49.9%(0.4pt) 8.5%(0.1pt) 36.7%(-0.7pt) 4.9%(0.3pt)
内部昇格 10.2%(0.3pt) 1.2%(-0.1pt) 4.5%(-0.2pt) 84.2%(0.0pt)
外部招聘 6.7%(-0.3pt) 0.8%(-0.1pt) 2.5%(0.2pt) 89.9%(0.1pt)
その他(買収など) 13.9%(0.4pt) 2.2%(-0.2pt) 6.1%(-0.1pt) 77.8%(-0.1pt)
全体 40.4%(0.3pt) 6.8%(0.0pt) 19.7%(-0.1pt) 33.2%(0.0pt)

※( )は対2019年増減比

現社長が創業者である、または同族から承継した場合は、5割以上が子どもを後継者に選んでいます。しかし、内部昇格や外部招聘、その他によって就任した社長は、ほとんどが非同族を後継者候補と位置付けています。

全体では子どもを後継者に選ぶ企業が多く、2019年よりも増加しています。しかし、創業者が社長の場合は2019年よりも減少し、社長が同族承継によって就任している場合は2019年よりも増加するなど、現社長の就任経緯によって異なる動向が見られます。

・事業承継の動向
2018年以降、事業承継が判明した約3万3,000社について、先代社長との関係性ごとに就任経緯を集計すると「同族承継」34.2%、「内部昇格」34.1%、「その他」15.3%、「外部招聘」8.3%、「創業者」4.8%となりました。

同族承継は2018年の42.7%に比べると8.5ポイント下降し、内部昇格と拮抗しています。一方、内部昇格は2018年には31.4%だったので、2020年は2.7ポイント上昇しました。また、外部招聘が2018年の6.9%から1.4ポイント上昇しており、社長の親族以外の人間が会社を承継する流れはますます強まると考えられます。

出典:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)

後継者不足が起こる原因とは

では、後継者不足はなぜ起こるのでしょうか。その背景を探っていきましょう。

後継者を探す努力をしていない

後継者不足の原因として、そもそも経営者自身が後継者を探す努力をしていない点が挙げられます。事業を維持、拡大するために、経営者の目の前には数多くの取り組むべき課題が立ちふさがっています。

経営者が50代なら、後継者探しはまだまだ先だと感じるかもしれません。新規顧客獲得の施策や取引先との付き合い、社内組織の整備など、今すぐやるべきことに比べると、後継者探しなど今すぐにしなくても良いと後回しになってしまいます。

後継者候補を定めてから育成し、実際に事業承継ができるまでになるには、何年も時間がかかります。育成期間を考えると、目の前の業務と並行して後継者探しを進めておくことが望ましいでしょう。

ところが、いざ後継者を探すとなると「どうやって探せば良いのだろう?」と途方に暮れてしまうケースは少なくありません。後継者探しの方法がわからないまま、問題を放置しがちになります。

価値観の多様化

日本の中小企業で長らく共有されてきた「親の事業は子や親族が継ぐ」という価値観が崩れてきたことも、後継者不足の原因のひとつです。

特に子どもに事業承継が行われるケースが減少している背景には、少子化の影響もありますが、経営者が子に事業を安易に引き継がせないと考えていることもあります。経営者になるには、それにふさわしい能力や資質を備えている必要がありますが、「自分の子はその器にない」と経営者が考えたり、子ども自身も継ぐことを拒否したりすることは少なくありません。

後継者不足の対策方法

後継者不足に対応するにはどうすれば良いか、対策方法をご紹介します。

事業承継計画の作成と実行

事業承継を実行するにあたり、事業承継計画を立てて事業承継計画書を作成する必要があります。事業承継計画書とは、事業承継の方法や企業の目標、事業承継を円滑に進めるための課題を整理し、これから事業承継完了までに何をすれば良いかをまとめた計画書です。中小企業庁のホームページで事業承継計画の作成方法が紹介されています。

参考:
中小企業庁「事業承継計画の作成」

事業承継計画書を作成するには準備が必要です。準備から計画書作成、事業承継完了までの流れは次のとおりです。

【準備】
・経営者とその家族、社内の幹部社員など、事業承継に関係する人間関係を整理
・会社の経営資源や経営課題を把握
・経営改善など、事業承継の完了までに取り組むべきことを実行

【事業承継計画書を作成】
以下の3つを並行して進めるよう計画に盛り込む。事業承継完了まで、1年ごとに何をするかを具体的に記載する。

①後継者の選定、育成
②現経営者の財産の承継、自社株式の移転、税金資金の準備
③後継者のための経営改善や組織再編

【事業承継実行~完了】
後継者への引き継ぎが完了する。

専門家に相談する

後継者不足を自覚しながらも、なかなか実行に移せないでいる原因は目先の業務に追われているからです。事業承継にかかわる準備には相続や税などの専門知識が必要になるシーンも多く、経営者がひとりで行うことは難しいでしょう。高度な専門知識と経験豊富な事業承継の専門家に相談しながら、準備を進めていく必要があります。

TOMA100年企業創りコンサルタンツなら、相続対策や相続不動産の売却や有効活用、親族外承継対策など事業承継にかかわるさまざまな実務を、TOMAグループのプロが連携してトータルでサポートします。後継者問題の解決にあたり、一歩踏み出したい方はぜひTOMA100年企業創りコンサルタンツにお問い合わせください。

まとめ

後継者がいない経営者の多くは、危機感を覚えながらも日々の業務に忙殺されて後継者問題の解決に着手できない状況です。事業承継には時間と計画性、さらには専門知識が必要とされ、親族内承継、親族外承継のいずれにおいても独力で行うのは難しいのが現実です。事業承継支援の経験が豊富なプロのサポートを受けながら、進めることをおすすめします。