会社の課題は後継者育成!後継者の育成における課題とは

事業承継において、後継者の育成が何よりの課題です。後継者として、その事業を承継し、その後20年、30年とその会社をけん引する人材を育てるには何が必要なのでしょうか。この記事では、後継者の育成における課題とその解決方法について解説します。


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後継者育成の実態と傾向

中小企業の事業承継は、影響範囲を考えると単にその会社だけの問題に終わりません。特に、地域経済や雇用を支える企業においては社会的な問題といえます。

後継者育成の実態と重要性

後継者問題は、特に中小企業で深刻です。経済産業省によると、令和5年までに70歳を超える中小企業の経営者は約245万人で、その半数の127万人が後継者未定となっています。
そして、後継者不在が理由で廃業する中小企業の数は、年間約7万社にのぼり、その廃業時の経営状況は約5割が経常黒字という悲しい現実もあります。
経営者としては後継者問題を意識しつつも、実際に着手し始めるのが遅くなるという傾向のようです。

事業承継の型としては、親族外での事業承継は増えているとはいえ、やはり親から子など親族内の事業承継には根強いものがあります。
親子間承継は、自社株式の引き継ぎが比較的容易であり、従業員や関係者の理解が得られやすいというメリットがあります。反面、親子であるがゆえ素直に向き合えないことがあります。現経営者の胸のうちで事業承継を決めても、向き合わなければ事業承継はできません。
親子間の単なる意見のすれ違いが大きくなり、事業そのものに大きく影響する危険性もあります。

出典:経済産業省 令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助事業」に係る補助事業者募集要領より

後継者育成の現状と必要なスキル

中小企業庁の資料において経営者の後継者教育への意識を見ると、次のような結果となっています。

引き継ぎの型 後継者教育を行った 後継者教育を行っていない
親族内承継 48.3% 51.7%
親族外承継 従業員等 47.8% 52.2%
第三者 30.4% 69.6%

上の結果から、中小企業においては、親族内承継や役員・従業員への承継の場合、約半数が「後継者教育」を意識し、実行していることがわかります。

次に、後継者教育の内容では、役員や従業員等への承継においては「経営について」の教育が約64%と高くなっています。そして、親族外承継における後継者教育で最も多かったのは、「自社事業の技術・ノウハウについて」が約71%となっています。
また、親族内承継で目立つのは、同業者集会や社外セミナーへの参加、資格取得などの社外教育です。

社内の役員や従業員への引き継ぎには、経営方針や経営戦略など事業への考え方、取り組み方などベーシックな部分に関する教育を、社外の方への引き継ぎには、まずは技術的な教育を行うケースが多いようです。そして、親族内承継では、社外における教育に力点を置いているのが目立ちます。

したがって、後継者教育には社内だけでなく社外における教育も利用されていることがわかります。

出典:中小企業庁 平成30年度中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査に係る委託事業

社内での後継者育成方法

まず、社内における後継者育成方法として、次の3項目を挙げておきましょう。

社内の主要部門をローテーションさせる

後継者には、1~3年ごとに社内の部門をローテーションで体験させることです。
すべての部門でなくとも主要部門だけに絞っても良いのですが、その中には必ず会社全体を見渡す力をつけるために、経理・財務部門を入れておきます。「数字を読む」ことにより計数感覚だけでなく、俯瞰する力、全体を見渡す力が養えます。
創始者にはスペシャリストが多いのですが、後継者にはゼネラリストとして多方面から事業を把握するという力が必要です。したがって、主要部門での体験は生きた教育といえるでしょう。

意思決定のできる地位につける

後継者には、経営幹部として経営上の意思決定や対外的な折衝の機会を多く持たせるようにし、社内におけるリーダーシップを養成します。後継者としての自覚が生まれるよう、責任のある地位につけるわけです。

そして、後継者には「失敗から学ぶ」ことを、身をもって体験させます。
現経営者には「後継者が、自らの失敗を認め、分析し、失敗のダメージを自分自身の成長の糧に変えるという過程」を現経営者は慎重に見守ります。現経営者による調整は最小限にとどめ、後継者中心に社内が一枚岩となれる体制を敷いておきます。
最終的には、さまざまな失敗を自身で乗り越えてきた人だけが、引き継いだ事業を存続させることができるのです。

現経営者による直接指導

後継者とは、現経営者は相互にコミュニケーションを取りながら育成します。
経営理念や企業イメージ、ビジネス戦略など企業の根幹に係わる概念の浸透を図るべく、定期ミーティングや業務同行により、現経営者が直接指導します。このとき、先ほどの後継者の「失敗」には寛大であるべきです。

これらのステップを継続することで、後継者としての経営手腕を磨くとともに、社長にふさわしい人格が形成されていきます。後継者の能力そのものではなく、人間力ともいうべき経営を根本から支える力を養うことこそ、後継者教育といえます。そして、「育てる」だけでなく、「育つ」ことを待つのも教育です。

社外での後継者育成方法

後継者教育は、社内育成だけでなく、社外での育成と併用することで相乗効果が得られます。
社外における後継者育成方法として、次の3項目を挙げておきましょう。

他社での勤務

親族内の後継者には、他社、他業種で経験を積ませることが重要です。
他社、他業種で勤務することは、新たな人脈づくりや別の視点からの経営手法を学ぶ機会を生むからです。特に広い視野が期待できるのは、金融機関や広告代理店などでしょう。
反対に、取引先での勤務では、「得意先の次期社長」という取り扱いになると、本来の下積み経験ができなくなるため、おすすめできません。

セミナーの利用

経営に必要な一般知識やスキルの取得が必要であれば、各種セミナーを利用するのも良いでしょう。
社外セミナーの受講は、社内における後継者教育と並行して進めることができます。
民間のセミナー以外にも、中小企業大学校による研修や全国の商工会議所などでも経営者向けのセミナーが開催されています。特に企業の後継者向けのセミナーでは、同じ意識をもつ仲間と刺激し合える機会に恵まれることもあります。

後継者育成サービスの利用

後継者教育については社内、社外を問わず、自社やその後継者に合った育成方法を準備しなければなりません。どんなセミナーでも、後継者に響かなければ教育の効果は得られません。
後継者の能力や適性に見合った教育を見極めるには、高い専門知識や豊富な経験値を持つ専門家を活用することをおすすめします。

事業承継のスペシャリストであるTOMA100年企業創りコンサルタンツは、後継者育成コーチングを軸に、後継者育成のためのお手伝いをしています。
知識や能力偏重の詰込み型教育では、後継者は育成できません。
まずは、後継者への個人としての目標をどこに置くか、承継の計画はどうあるべきかなど、後継者の事業承継意識を確認することから始めます。承継について、冷静に現経営者と後継者において再確認します。
その上に立って、将来の経営者としてのロールプレイなどを実施し、次期社長としての経営理念、経営戦略などのプログラムに取り組んでいきます。

まとめ

後継者教育とひとくちでいっても、やるべきことは実にたくさんあります。
現経営者にとっては、後継者に思いが伝わらず歯がゆい思いをすることもあるかもしれません。
そこで、後継者として選んだ人材をよく見極めるために「他者の目」を通すということが、適度な距離感を保持し、効率の良い承継につながるのではないでしょうか。