会社の個人面談をする目的とは?部下と話す内容や質問例も紹介

組織が成長していくには、職場メンバーの一人ひとりが成長していくことが求められます。そして、上司と職場メンバーの「個人面談 …


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

組織が成長していくには、職場メンバーの一人ひとりが成長していくことが求められます。
そして、上司と職場メンバーの「個人面談」の実施は、個々の成長を促すのに欠かせません。
ただし、面談してただそれぞれがしたい話をするだけでは、効果的な個人面談とはいえないでしょう。この記事では、個人面談の目的や重要なステップ、成功に導くためのポイントについて解説します。

会社で個人面談を行う目的とは?    

会社における個人面談は、主に以下の目的で実施します。

【主な目的】
・ 業務へのモチベーションを高める
・ 評価の質を高める

会社において個人面談は、より良い組織へと成長するために欠かせません。
個人面談の重要な目的は、従業員のモチベーション管理や公正な人事評価です。従業員がよりイキイキと働くため、そして公正な評価を行うためには、適切な方法で個人面談を行うことが必要でしょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

業務へのモチベーションを高めるため

業務へのモチベーション向上は、個人面談の大きな目的の1つです。
一人ひとりのチームメンバーと話し合うことで、それぞれのモチベーションを確認できます。
そしてもしモチベーションが下がっているメンバーがいればしっかりと対話を行い、不安や悩み、課題の解決につなげることが大切です。

また、メンバーそれぞれが希望する仕事や理想の将来像について把握し、どのようなことがモチベーションにつながるのかを理解することも面談の重要なポイントでしょう。

評価の質を高めるため

個人面談の目的としては、評価の質を高めることも重要です。本人の話も聞いて参考にすることで、より公正な評価につなげることができるでしょう。

業務の進捗や自己評価を聞き、評価の参考にします。
ただし、個人面談自体は評価の場ではないため、その場で評価を告げることは避けるべきです。

個人面談に大切な7つのステップ              

会社で個人面談を行うにあたって基本となる、以下の7ステップを紹介します。

【基本の7ステップ】

  1. 一人ひとりに個人面談のゴールを設定
  2. 質問する内容を決めておく
  3. 面談記録を残す
  4. お礼と現状の把握から始める
  5. 相手から話を引き出す
  6. 話の深掘りを行う
  7. フィードバックをする

1.一人ひとりに個人面談のゴールを設定する

まずは、メンバーの一人ひとりに対して個人面談のゴールを設定することが必要です。
ゴールを設定して面談の方針を明らかにしておくと、時間を効率的・効果的に使うことができます。

目的があいまいなままで面談を始めると、話が脱線した際に主題へと戻すことが難しくなってしまいます。
重要でない話ばかりを続けて面談が終わってしまわないように、ゴールを明確に設定するようにしましょう。

2.質問する内容を決めておく

面談時に質問する内容は、必ず事前に決めておくようにします。
マニュアル通りの質問をするのではなく、各メンバーの面談目的に合わせて個別に質問を考えることが大切です。

その際、面談のゴールからずれた質問になることを防ぐため、あらかじめ質問内容をいくつか考えておくことをおすすめします。例えば、メンバーの成長について確認したい場合は、以下のような内容の質問を盛り込んでみましょう。

【質問例】
● 業務内容への理解度
● 業務スキルだけでなく精神的にも成長しているか
● 私(上司)はあなたの成長に寄与できているか

特に最後の質問は、メンバーの成長に上司である自分が役立っているか、成長を阻害していないかを判断するために有効です。個人面談を実施する際にはぜひ取り入れてみてください。

3.面談記録を残す

面談はただ行うだけでなく、しっかりと記録に残すことが重要です。
記録に残していないと、面談の効果について検証できないためです。

個人面談は1度で終わりではなく、定期的に実施します。
記録しておけば、次の面談時に改善すべき点や押さえておきたいポイントを把握しやすくなります。

また、自分だけでなく他の上司が確認してもわかるように、面談内容を記録する仕組みを作ることも重要です。
人事部や人事担当の部署であらかじめ面談シートを作成しておくと、効率的に面談結果を共有できます。

4.お礼と現状の把握から始める

実際の面談はお礼から始めます。
面談は上司のスケジュールに合わせて予定することが基本であり、部下は自分の業務をやりくりして面談時間を合わせているためです。

そして面談の開始時に、個人面談の趣旨を明確に伝えます。
目的を最初に共有しておくことで、部下としても趣旨に合った回答をすることができます。

具体的な質問の構成としては、「現在→過去→未来」の流れをおすすめします。
まず現状をお互いに把握することで、その後の話において食い違いが少なくなるためです。

5.相手から話を引き出す

面談において重要なのは指導ではなく、部下の話を引き出すことです。

メンバーのなかに口数が少ない人もいるかもしれませんが、「〇〇さんは話さない」などと決めつけてはいけません。
部下が話しやすいような環境を、上司が作り上げることが大切です。

面談時だけでなく、普段から話す時間を作るように心がけ、部下の変化や業務の進捗や達成度を把握しておきましょう。

6.話の深掘りを行う

個人面談では話を切り上げるタイミングを事前に決めず、話を深堀するようにします。
部下の性格やアドバイスの内容を決めつけて臨むと、無意識に相手の発言を誘導してしまうかもしれません。

現状をできるだけ正確に把握するためには、できるだけ部下の本音を引き出す必要があります。
話のなかで気になった部分を深堀していくことで、面談前には把握できていなかった問題・課題に気づくことができるでしょう。

7.フィードバックをする

個人面談の実施後は、面談を今後に生かすためにフィードバックを行うことが大切です。
ただし、この際には評価を伝えてはいけません。部下の成長につながるように、アドバイスを行います。

アドバイス時に重要なのは、上司の主観的な評価を含めないようにすることです。客観的な事実をもとに課題を伝え、今後とるべき行動計画を立てていきます。
次回までの行動計画について部下が考えられるようであれば一緒に考え、できないようであれば上司が考えてあげましょう。

個人面談を成功に導くためのポイント               

個人面談を成功に導くためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

【成功へのポイント】
・ 一番大切なテーマに絞って話を深掘りする
・ フィードバックは日常的に行う
・ 「増大理論」をもとにフィードバックする
・ 相手の強みを自認させて結果に導く
・ 「機会」を与えて最後までやらせる
・ 関係の質を構築したうえでマネジメントする

重要なのは、信頼関係を築きそのうえで部下に行動の機会を与えることです。相手に行動してもらうには、まずこちらを信頼してもらわなければなりません。そして部下の可能性を信じ、成長につながるように工夫しましょう。コントロールしようとするのではなく、強みを自認させて結果まで導くスタンスが重要です。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

一番大切なテーマに絞って話を深掘りする

テーマは絞り、深堀していくことで部下から話を引き出します。
幅広く網羅的にテーマを扱うと、どの部分に注力すべきか部下に印象付けづらくなってしまうためです。
部下の成長にとって最も重要だと判断できるテーマに絞り、深堀していくなかで課題を明確化していきましょう。

フィードバックは日常的に行う

フィードバックは、日常的に行うことが重要です。
面談の場は日常とは離れた場であり、そこでフィードバックを行っても、職場に戻れば忘れてしまう可能性があるため、部下に重要性を認識してもらうことが難しいのです。

面談を行ったうえで日常的な業務のなかでフィードバックを行うことで、部下に成長を促せるでしょう。
そしてフィードバックは一度にまとめて行うよりも、小出しにしつつ日常業務を行うなかで繰り返し実施した方が効果的です。

「増大理論」をもとにフィードバックする

フィードバックにおいては、「増大理論」を根底に持つことが大切です。
増大理論とは、「人の知能は変えられる」という考え方であり、真逆の考え方として「固定理論」があります。

【人の知能に対する考え方】
・ 増大理論:努力によって変えられる
・ 固定理論:生まれつき決まっている

「努力次第で変われる」という考えに基づいたフィードバックの方が、部下の成長を早めやすい傾向があります。
また、部下にも同様の考え方が浸透し、職場のカルチャーとして継承していくことができれば、組織として人材育成にかかる時間を短くすることにもつながるでしょう。

相手の強みを自認させて結果に導く

個人面談の際、相手に強みを自認させることが大切です。
得意なことをより成長させると、結果につながりやすくなります。

部下が自分の強みを認識できるように、面談時の質問を工夫しましょう。
メンバーそれぞれが自分の強みを発揮してお互いに補い合うことで、組織の成長につなげられます。

「機会」を与えて最後までやらせる

助言をしても機会を与えなくては、部下の成長にはつながりません。

機会を与えたうえで、目標とそこに至るまでの順序についてアドバイスして、部下の行動を促しましょう。

また、機会を与えたら部下に最後までやりきってもらうことも重要です。
最後までやりきれば、その過程で新たな課題を見つけることができます。
そして課題を克服することで、部下は成長していくのです。

関係の質を構築したうえでマネジメントする

組織の成長を考えると、「関係の質」を構築したうえでのマネジメントが重要です。
関係の質とは、MIT組織学習センターの共同創始者であるダニエル・キム氏が提唱した、「成功の循環」モデルにおける考え方です。

【成功の循環モデル】

  1. 関係の質
  2. 思考の質
  3. 行動の質
  4. 結果の質

同モデルでは、組織の成長を上記4つの質で捉えます。
「関係の質が良くなれば思考の質が良くなり、行動の質にも好影響を与えることで最終的に結果につながる」というものです。

そして、関係の質が良い状態とは、オープンで信頼のもとに関係性が成り立っていることを指します。

マネジメントにおいては、まず結果を求めがちです。
しかし、その前提となる思考の質や行動の質を改善しようとしても、相手に対して否定的な気持ちがあるとうまくいきません。

まずは信頼関係を築き、関係の質を良くすることが、最終的な組織の成長につながっていくのです。

まとめ

個人面談は、職場メンバーのモチベーションを高めること、評価の質を高めることを主な目的として実施されます。
実施においては事前の準備が大切であり、話をするテーマや質問内容はあらかじめ決めておくと効率的です。
部下をコントロールしようとするのではなく、自ら行動し成長していくように導くスタンスに立ち、そして相手に行動を促す前提条件として、信頼関係の構築をこころがけましょう。