事業承継対策は時間をかけてヒト・モノ・コトの引き継ぎを

自身の高齢化にともない、事業承継を考えている経営者の方は多いのではないでしょうか。しかし、事業承継を行うにあたり、なにから始めたら良いかわからないと悩みを抱える経営者の方も多く見られます。 そこで、ここでは事業承継をどう行えば良いのか、対策や相談先について詳しく解説します。


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事業承継対策に欠かせない「人」「資産」「無形資産」の承継

事業承継とは、簡単にいうと「後継者に事業を引き継ぐこと」をいいます。では「事業を引き継ぐ」とは具体的になにを指すのでしょうか。

事業承継では、大きく分けて「人」「資産」「無形資産」の3つを承継します。ここではそれぞれ3つ承継について詳しく見ていきましょう。

【人】後継者の指名と育成

人の承継とは、後継者を誰にするのかということです。そこで、まずは後継者を探すことから始める必要があります。後継者を探す方法には「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&Aなど)」があります。それぞれについて見ていきましょう。

■親族内承継
親族内承継とは、経営者の親族の中から後継者を選ぶ方法です。経営者の親族の中から後継者を選ぶのは、昔から行われてきた方法です。そのため、従業者や取引先などの関係者から受け入れられやすく、業承継が比較的スムーズに進みやすいでしょう。また、親族内であれば資産の承継もしやすいというメリットもあります。

■従業員承継
従業員承継とは、会社の従業員に事業を承継する方法です。親族の中に後継者になる人がいない場合などに行われます。従業員承継では、自社の経営や実務の高い能力や資質をもった人に承継できるメリットがあります。後継者は自社の仕事内容や方針についてもわかっているため、承継後の事業も問題なく進みます。

■第三者承継(M&Aなど)
第三者承継とは、親族や従業員でない第三者に事業を承継する方法です。第三者承継では、見つかりさえすれば、最初から経営者の資質や能力のある人材を後継者にできるメリットがあります。

ここまで、後継者を探す方法について見てきましたが、承継後に事業がスムーズに進むように、できれば従業員や取引先などの関係者から反対が出にくい、親族内承継や従業員承継を第一に考えます。

親族内承継や従業員承継では、後継者となる人材の育成が欠かせません。会社の各部門を経験させたり、外部の研修に参加させたりするなど、後継者教育の社内体制を整備する必要があります。

【資産】自社株式・事業用資産の承継

資産の承継とは、後継者に自社株式や事業用資産を承継させることです。経営者が所有する自社株式や事業用資産を後継者や協力的な株主に集中させることで、他社の介入を防ぐなど、承継後の事業を進めやすくしておきます。とくに、株式は後継者に2/3以上は渡しておく必要があります。

後継者に株式などを承継する方法には、次の方法があります。

・生前贈与や遺言
・会社や後継者による買い取り
・種類株主の導入
・株価対策
・税制上の優遇措置を念頭に財産構成の見直し

【無形資産】知的財産・企業文化・従業員の能力などの承継

無形資産の承継とは、知的財産・企業文化・従業員の能力などを承継することです。事業承継とは、株や資産など形があるものだけを承継するわけではありません。

特許や著作権、ビジネスモデル、ノウハウといった知的財産、企業文化、従業員がもっている技術なども引き継ぐ必要があります。とくに特許や著作権などは、承継しておかなければ承継後のビジネスに影響を与える可能性があります。

また、企業がいままで培ってきたノウハウといった知的財産、企業文化、その企業独自のブランド力や昔からの顧客・ファンなどを長く受け継ぐことができます。従業員がもっている技術を引き継げば、商品の品質などを保つことができます。このように、無形資産の承継も事業承継では重要です。

事業承継対策は中長期的な視野で行う

事業承継は、1年や2年といった短期間で終わるものではありません。中長期間を考えておく必要があります。ここからは、事業承継の期間や事業承継計画書の作成について見ていきましょう。

事業承継は少なくとも5年以上かかる

事業承継をする際に気になるのが、事業承継にかかる期間ではないでしょうか。中小企業庁が公表している『中小企業白書2019』によると、後継者決定後、実際に引き継ぐまでの期間は、親族内承継をした中小企業の内76.4%が3年未満の一方、12.8%が5年以上かかると回答しています。

また、『中小企業白書2014』の後継者の育成期間に対する調査結果によると、後継者の育成期間に5年以上10年未満かかった企業は中規模企業で47.4%、小規模事業者で39.9%と一番多い結果となっています。

このことから、後継者を育成し事業承継するまでには、少なくとも5年以上かかることがわかります。

中長期で計画的に事業承継を進めるには「事業承継計画書の作成が必須です。事業承継計画書とは、事業承継について「いつ、何をするか」をわかるようにしたものです。会社の経営計画に合わせて、どのように事業承継を進めるかわかるように作成していきます。

事業承継計画書作成の手順

事業承継に必要な事業承継計画書には、決まった形はありませんが、書式として参考になるのは中小企業庁が示しているフォーマットです。

出典:中小企業庁 事業承継計画

出典:中小企業庁 事業承継計画書(計画表)

はじめに事業承継計画を立て、次に具体的な事業承継計画書(計画表)を作成します。一般的な事業承継計画書作成の手順は、以下のとおりです。

1.現状把握、整理

まずは、自社の現状を把握し、整理をします。

・経営理念・経営ビジョン・方向性の整理
・経営者個人の資産、会社の経営資源(有形・無形の資産)を把握・整理
・事業承継にかかわる関係者の状況、後継者候補の状況
・現状から導き出される課題

2.事業承継の具体的な対策とその実施時期を考える

現状の把握や整理ができたら、事業承継の具体的な対策やその実施時期を考えます。

・後継者への権限委譲と現経営者の引退の時期
・後継者教育
・株式・財産の分配方法と対策
・そのほか必要な対策

3.事業承継計画の作成

具体的な対策や実施時期が見えてきたら、それを事業計画に記載し、事業計画をもとに事業承継計画書(計画表)を作成します。

事業承継対策は専門家の支援をうまく活用しよう

事業承継は、現状の把握や事業承継計画の作成など、経営者がひとりで行うとなると複雑で時間がかかることが多くあります。そこで、事業承継対策は専門家の支援をうまく活用しましょう。

専門家の支援には、公的機関によるものと企業の専門家によるもののふたつがあります。

公的機関

公的機関による事業承継支援の代表的な機関が「よろず支援拠点」と「中小機構」です。どちらも無料で相談ができることが大きなメリットです。

よろず支援拠点とは、国が設置した無料の経営相談所です。多様な分野に精通した専門家が在籍しているので、事業承継などの支援を受けることができます。

中小機構は経済産業省が所管している独立行政法人で、経営相談から事業承継問題まで中小企業のさまざまな相談に応じています。

専門家への相談

事業承継についてしっかりとした相談や提案を受けるのであれば、民間の専門家に相談するのがおすすめです。専門家であれば、事業承継のプロが各企業の状況やニーズに沿った最適なサポートを行います。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社では、専門家が事業承継のサポートのみならず後継者の育成サービスを行っています。事業承継対策会議サービスでは、お客様の状況やニーズに沿ってオーダーメイドで事業承継対策の提案と実施をサポートさせていただきます。

後継者育成サービスは、後継者の方に1年間で経営を学んでいただくコーチングサービスです。経営者としての自覚と自信をもつサポート、「100年先も求められる企業」を創るための事業承継のお手伝いをいたします。

事業承継でお困りごとなどございましたら、お気軽にTOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社までご相談ください。

ご紹介した各サービスについては、次のページで詳しく紹介しています。ぜひご参照ください。

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後継者育成サービスはこちら

まとめ

事業承継とは、「人」「資産」「無形資産」の3つを引き継ぎます。

事業承継は1年や2年といった短期間で終わるものではなく、少なくとも5年以上かかります。そのため、中長期的な視野に立ち、現状の把握や事業計画の作成などを進めていく必要があります。

事業承継は、経営者ひとりの力で解決することは難しく、専門家への相談が必要不可欠です。専門知識が高く経験の豊富な専門家に相談し、「100年先も求められる企業」となるよう、しっかりと事業承継を行うことが重要です。