事業承継ローン(融資)について解説|後継者の負担軽減に役立つ制度

事業承継の際には税金や株式の買取などのために、まとまった費用が必要になります。経営者が後継者を選んだ後に気になるのは、後継者への経済的負担ではないでしょうか。このことが原因で、事業承継を躊躇してしまうケースもあります。 このようなときに活用したいのが、民間および公的金融機関による「事業承継ローン(融資)」です。ここでは、事業承継ローンの基本について解説します。


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事業承継ローン(融資)の主な利用目的は3つ

事業承継ローンとは、事業承継にともなって発生する費用の支払いを目的とした融資のことで、多くの民間の金融機関や公的機関で提供されています。

事業承継を行う際、後継者には贈与税、相続税などの税金や、資産、株式の買い取り資金など、一時的にまとまった資金を工面しなければならないことが多いです。こうした支出を会社の資金から捻出すると経営にも負担となるため、事業承継ローンを活用します。

事業承継ローンは「融資」なので当然、返済をしなければなりません。しかし、事業承継ローンを活用することで、会社の事業資金を本来の事業のために使うことができるのです。

事業承継ローンがよく利用されるケースとして、次の3つが挙げられます。

1.事業用資産の買い取りに利用してもらう

事業承継が完了する前に万が一、現在の経営者が亡くなった場合、店舗や土地などの事業用資産が無関係な相続人の手にわたってしまうことがあります。そのままにしていると、後継者が事業を行っていく際に支障をきたすでしょう。

相続した人から事業用資産を買い取るには、現金が必要です。そこで事業承継ローンを活用し、事業用資産を相続した人から資産を買い取る資金に充てます。

2.事業承継後の資金繰りに利用してもらう

事業承継の方法によっては、承継したのちに後継者の費用負担が大きくなることがあります。特に、経営者の多くは会社の借入金に対して個人で連帯保証を組んでいることが多いでしょう。事業承継にあたり、個人の連帯保証も引き継ぐことになります。

しかし、連帯保証が後継者の負担になることから、経営者の中には自分の代で個人保証を解除しようと考える人もいるでしょう。経営者が個人保証を解除すると、金融機関は後継者の信用度や実績の乏しさを理由に新たな融資に消極的になるケースがあります。そのようなとき、事業資金として有効なのが事業承継ローンです。

3.相続税などの納税資金として利用してもらう

経営者が亡くなったとき、相続財産があると後継者に相続税が発生します。相続財産が土地や建物など現金以外である場合、すぐにお金に変えることが難しいため、税金を支払うための現金が不足することもあるでしょう。また、経営者が存命の状況で後継者に贈与が行われた場合は、贈与税がかかることがあります。

このように、事業承継にかかわる税金を支払う資金を確保するために、事業承継ローンを活用します。

事業承継ローンは大きく分けて2種類

事業承継ローンは金融機関によってさまざまな名称で呼ばれていますが、民間の金融機関が提供するものと、日本政策金融公庫など政府系金融機関が提供するものに大別されます。

ここでは、2つのローンを紹介するとともに、日本政策金融公庫の事業承継ローンについて詳しく説明しましょう。

金融機関の事業承継ローン

民間の銀行や信用金庫による事業承継ローンは、後述する政府系ローンに比べると審査は通りやすくなっています。融資を受ける条件や内容は金融機関によって違いがあり、例えば「担保・保証人は必要なし」「最大融資可能額は5,000万円」「据置期間あり」「返済期間は10年」などとしているところがあります。具体的な融資条件や内容は、取引のある金融機関の担当者に相談すると良いでしょう。

政府系の事業承継ローン

政府系の事業承継ローンとしてよく知られているのが、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」です。このローンには個人事業主・小規模企業向けのものと中小企業向けのものがありますが、ここでは中小企業向けのものについてご紹介します。

中小企業向けの「事業承継・集約・活性化支援資金」は、地域経済の産業活動の維持・発展のために、事業を紹介したり集約化したりする中小企業の資金調達を支援することが目的です。融資限度額は直接貸付7億2,000万円と、かなり大きな額を借りることができますが、このローンを利用するには「案定的な経営権の確保等により、事業の承継・集約を行う方」「事業の承継・集約を契機に、新たに第二創業または新たな取り組みを図る方」など、5つの要件のいずれかに当てはまることが必要です。

また、当てはまる要件によって、資金の使い道や利率が決まっています。たとえば「中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者とともに事業承継計画を策定している方」という要件を満たしている場合、資金の用途は「事業承継計画を実施するために必要な設備資金および長期運転資金」に限られます。利率は融資額や貸付期間、担保の有無などによって変動しますが、年率0.46%~3%です。

なお、返済期間は5つの要件とも共通で、設備資金の用途なら20年以内、運転資金の用途なら7年以内となっています。担保や保証人の設定の有無については、申し込み企業の状況によって決められ、場合によっては経営者の個人保証が必要です。

民間の金融機関が提供する事業承継ローンに比べると、さまざまな制約がありますが、審査に通れば民間に比べて大きな額の融資を低利率で受けることができます。「資金繰りがうまくいかないので、事業承継ができなくて困っている」という人には心強い制度です。

経営状態や資産状況によって、ひとつの金融機関から受けられる融資の金額は限られています。都銀・地銀・信金および政府系銀行など、複数の金融機関からバランスよく借りることが大切です。

事業承継ローンについて分からなければ専門家に相談する

事業承継ローンの申し込みを考えたら、一般的には税理士に相談します。税理士は相続税や贈与税などの事業承継にかかわる税や、融資について豊富な知識を持っているからです。

また、税理士のほかに、事業承継をトータルにサポートしてくれる「事業承継コンサルタント」会社もあります。ホームページなどを確認し、支援実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。

「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」なら、事業承継について熟知した専門家が、クライアント企業のニーズに応じた最適な事業承継対策をご提案します。

事業承継を行うにあたり、クライアント企業が抱えている課題は多様です。TOMAでは独自の「事業承継対策会議サービス」により、税金対策や事業承継ローンを活用した資金調達、自社株対策、後継者教育、組織再編など、さまざまな課題の解決を多面的にサポートします。

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まとめ

事業承継時に発生するさまざまな費用の支払いや、事業承継直後の資金繰りに活用できることから、事業承継ローンの活用は後継者の経済的負担の軽減につながります。

事業承継ローンは民間と政府系の金融機関で提供されています。いずれの金融機関で事業承継ローンを申し込む場合でも、綿密な事業承継計画が必要です。事業承継ローンの活用も含め、事業承継にかかわるさまざまな課題を解決するには、実績の豊富な税理士や事業承継コンサルタントのサポートを受けることをおすすめします。