事業承継の成功事例3選!成功のポイントと失敗するケースとは?

事業承継は、過去に多くの成功事例があります。ただし、事業承継の戦略は多種多様あるため、参考になる方法はその立場や環境によって変わることでしょう。そこで今回は実際にあった事業承継の成功事例をいくつかご紹介し、その上で、事業承継を成功に導くポイントを項目別に解説していきます。ぜひ事業承継の際に、お役立てください。


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事業承継の成功事例

中小企業を経営する場合、オーナーの高齢化や後継者不足による事業承継問題を常に意識しておかなければなりません。そこで、かつて実施された事業承継の成功事例を把握しておくと、具体的な事業承継プランから成功につなげる道筋までイメージしやすくなるはずです。

実際に、事業承継に成功した中小企業のオーナーは、どのような戦略で事業継承を実行したのでしょうか。
順に見ていきましょう。

成功事例1.株式会社龍角散

ひとつ目の事業承継の成功事例は、株式会社龍角散です。株式会社龍角散は1963年に藤井康男氏によって設立されますが、その会社のルーツは200年以上前までさかのぼります。

会社の転機は、1994年です。小林製薬、三菱化成で修行の後、龍角散へと入社した藤井隆太氏がいなきり経営手腕を問われます。これは役員による放漫経営が原因で年商を超す負債が発覚したためです。事業承継直後だった8代目は、胃腸薬や風邪薬なども販売する多角化経営だった株式会社龍角散を、のどの専門メーカーにする「選択と集中」の決断を下します。

こうして生まれた「龍角散ののどすっきり飴」は大ヒットを飛ばし、龍角散ブランドの価値を一気に向上させたのです。事業承継直後であったからこそ、経営の軸を見つめ直しやすかったこともありますが、ブランド向上のためにほかの分野を切った選択はさすがといえるでしょう。

成功事例2.株式会社新生堂

次にご紹介する事業承継の成功事例は、株式会社新生堂です。大正元年から続く老舗でしたが、途中、店を畳む予定でした。

和菓子屋、新星堂が妻の実家であった渡辺仁久氏は印刷所で働いていましたが、店を畳む話を聞き、和菓子屋を引き継ぐ決心をします。そこから製菓学校で猛勉強を行った末に、「切腹最中」を考案します。これは新生堂に忠臣蔵があったという歴史的背景から誕生したお菓子です。

当初こそ売れ行きが悪かったものの、サラリーマンが詫びの際に、切腹最中を取引先にもって行くと許してもらえた、という口コミが徐々に広まり、大ヒットを果たします。娘婿を後継者にして事業が成功した好例です。

成功事例3.鈴廣かまぼこ株式会社

最後の事業承継の成功事例は、鈴廣かまぼこ株式会社です。「鈴廣は老舗にあって老舗にあらず」という創業当時の社是を大切にし続けている会社です。

つまり経営の軸は、伝統のかまぼこの製造にあるけれども、それでも革新は止めるなという心意気です。1996年に社長に就任した鈴木博晶氏は、自社のかまぼこのブランド強化および新規顧客の獲得のために、かまぼこ博物館を開館しています。

また、かまぼこ製品の保存料を不使用とし、人材育成や技術開発のために研究所まで開設しています。伝統と革新を常に意識しながら、今でもかまぼこを極め続けている事例を紹介しました。

事業承継を成功に導くポイント

ここからは、事業承継を成功に導くポイントを項目別に確認していきます。何より、時間が掛かる点に留意して、各項目を把握するとプランが立てやすいはずです。

後継者の教育を行う

後継者の教育を、長期的に行えるように時間を確保しておきましょう。後継者の育成は、最低でも5~10年かかるといわれています。後継者に十分に経営方針やビジョンを理解してもらうことは、それほど期間を要するからです。

また、取引先や銀行などの金融機関との信頼関係を築くことも容易ではありません。ほかにも従業員からの賛同を得られないケースも念頭に置いて、事業承継を進める必要があります。

まずは後継者を会社の役員や取締役などに任命し、経営経験を積ませていきましょう。その上で、必要なスキルの習得と並行して、取引先との関係構築を図るよう計画を練っていきましょう。

従業員に引退することを早めに伝える

後継者のプランが完成した段階で、従業員に対して引退する旨を早めに伝えることが重要です。忙しい経営者は事業承継が後回しになってしまった結果、引退の旨を伝える時期が遅れてしまうというケースが頻発しているからです。

従業員および後継者が混乱しないようにするためにも、経営者が60代になる前に、後継者が決まっているくらいの進捗状況を目安にして行動しておきましょう。

自社株対策を行う

後継者が、事業承継後に経営権をきちんと確保できる環境が肝要です。そのためにも自社株対策をしておきましょう。持ち株比率が半数以上であれば、株主総会(普通決議)を単独可決できるので、まずは過半数のラインを後継者に託せるように手配しておきます。そうすれば、後継者は会社を継いだ後に、経営の意思決定をほとんど担うことができます。

ただし特別決議などを考慮すると、本当に安定した経営を行うためには、自己株式の3分の2以上を保有する必要があるでしょう。

事業承継計画を作成する

事業承継対策は、計画を作成するだけでも時間が掛かります。また実際にプランを行動に移すことを考えると、長期間になるので、しっかりと計画書を作成しておく必要があります。
具体的には自社株の承継、後継者の育成方法や期間、また今後の経営方針についてです。どの項目も会社の経営を大きく左右する重要な項目ですので、緻密に計画を作成しましょう。

事業承継の専門家に相談する

事業承継で大切なポイントは、事業、財産の承継や税負担の削減など表面上の数字を考えるだけでは、経営が上手くいかないというところです。これまで会社が築き上げてきた「経営理念」の承継が何より大事であり、その意志をきちんと理解した人材を探し出し、加えて十分な育成を行えるように準備していくのが理想ですが、そう簡単な話ではありません。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ」なら、経営理念の明確化から相続対策、経営改善からサポートした上で、しっかりと未来に続く事業承継のサポートをしていきます。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

事業承継が失敗してしまうケース

最後に、事業承継が失敗してしまうケースを紹介していきます。よくある失敗例ですので、一度、目を通しておくと失敗を未然に防げるはずです。

安易にM&Aを決定してしまった

容易なM&Aによって、これまでの財産を失ってしまうケースがある点を把握しておきましょう。たとえばM&A後に会社の業態を変えられてしまったり、また社屋が解体されたりなど経営存続の危機に関する問題が発生する恐れがあります。

事業承継後に先代が経営に口出ししてしまう

会社を大事に思う経営者ほど、承継後も経営の意思決定に意見しようとすることがあります。会社のために発言するのと、後継者に信頼を寄せていないために口を挟んでしまうのでは、訳が違います。ただし周りから見ると、その差異はよく分かりません。

弊害として、従業員や取引先、また金融機関などの関係者は、まだ意思決定権が前経営者にあるのだと勘違いさせてしまう恐れがあります。また、後継者の信頼を失わせてしまう危険性も生じます。何より、従業員が会社を離れてしまうリスクが高まってしまうので、口出しは最低限に留めましょう。

ちなみにほかの失敗事例のケースは、こちらでも紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
【事業承継の失敗事例】経営者が知っておくべき成功のポイント

まとめ

事業承継の成功事例を紹介した上で、事業承継をさせるために必要な要素を紹介しました。

事業承継には親族内承継、親族外承継と大きくふたつの選択肢があります。
どちらの方法でも、十分な計画と準備期間が必要です。これらは専門家との連携により、事業承継の成功率は格段に上昇します。ぜひ事業承継に経験豊富な相談相手を見つけ、時間の余裕をもって後継者育成に取り組んでいきましょう。