できる人が辞めていく会社とは|5つの特徴とおこなうべき対策を解説

人材が定着しない、なかでもできる人が会社を去ってしまう、とお悩みの経営者も多いのではないでしょうか。じつは、優秀な人ほど …


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

人材が定着しない、なかでもできる人が会社を去ってしまう、とお悩みの経営者も多いのではないでしょうか。じつは、優秀な人ほど辞めてしまうのには、理由があります。

本記事では、できる人が辞めてしまう会社の特徴とその理由をお伝えし、具体的な解決策を紹介します。優秀な人材に長く活躍してもらえる会社作りをしたい方は、ぜひ参考にしてください。

できる人が辞めていく会社はどうなるか     

できる人が辞めていく会社はどうなるのかというと、まず起こるのは仕事が回らなくなることです。優秀な人の穴を埋めるのは容易ではなく、残った社員に仕事が集中するようになってしまいます。それにより残業や休日出勤が発生し、これを負担に感じた社員も辞めてしまうといった悪循環にも陥ってしまいます。

またできる人が辞めてしまい業務負担が増えたことにより、基本的な業務すら滞ってしまう事態を引き起こしてしまうと、業績にまで悪い影響を与えてしまいかねません。取引先からの信頼を失い、契約を切られてしまうのです。

こういった負のループに陥らないためには、できる社員が一人辞めてしまった時点で対策を講じることが大切です。

できる人が辞めていく会社の特徴         

優秀な社員が辞めていく会社には特徴があります。

● 長時間労働・休日出勤が常態化している
● スキルや業務内容に給与が見合っていない
● 社員の業務量に大きな差がある
● 会社の理念・ビジョンが明確ではない
● 評価基準が曖昧かつ公平性がない

どれも、社員の不満が溜まりやすい環境だと言えるでしょう。
ここからは、それぞれについて詳しく説明していきます。

長時間労働・休日出勤が常態化している

長時間労働や休日出勤の常態化など、労働環境や労働時間に問題がある会社は、できる人が辞めていく会社といえるでしょう。

仕事とプライベートの両立ができないと、転職を検討する可能性が高くなるでしょう。有休が自由に使えなかったり、休日出勤を強要されたりする会社はストレスが溜まりやすく、心身の疲れを癒やす時間も満足に取れません。最悪の場合、病気になってしまいます。

また圧倒的に時間が足りないことにより、資格取得などのスキルアップのための勉強に割く時間の確保も困難です。このような環境では、優秀な人ほど冷静に状況を判断して辞めていってしまいます。 これを防ぐためには、労働時間の管理・業務量と人材配置のバランスなどを見直し適正化を図る必要があります。

スキルや業務内容に給与が見合っていない              

スキルや業務内容が給与に見合っていないと、社員は努力が報われていないと感じ、とくに優秀な人材はそんな環境にモチベーションを保てなくなり会社を去っていってしまいます。

たとえば、初任給からほとんど昇給がなかったり、サービス残業が多すぎて時給換算するとフリーター以下となってしまったりするような状況の場合、ほかに給料のよい仕事を見つけたら転職してしまうのも頷けます。 同じ時間働いて業務内容も同じであれば、給料がよい方を選ぶ人は少なくないのは簡単に推察できます。そういった状況を避けるためには、しっかりとした評価制度・給与制度を整えることが欠かせません。

社員の業務量に大きな差がある                 

優秀な社員ほど短い時間で効率的に業務をこなすことができるため、ほかの従業員よりも多くの仕事を任される傾向にあります。適度な負荷はモチベーションの向上にもつながりますが、過度な偏り・不平等は不満を生んでしまい離職の原因となりかねません。

優秀な人にとっては、優秀なほど負担が大きくなり「どうして自分ばかり忙しいのか」と不満に感じてしまいます。一方、周囲の人にとっては優秀な人が特別扱いされているように感じられ嫉妬が生まれてしまうなど、人間関係に支障が出てしまいます。とくに中小企業では、人員が限られているため能力の高い人が重宝されてたくさんの仕事を任されがちですが、それを容認してしまうと格差や不公平感が生まれてしまいます。 社員の中で業務量や責任に偏りが生じているのは、よい状況であるとは言えません。管理者が社員の心情にも配慮して、業務量を管理する必要があります。また評価制度を可視化することで、不要な諍いを避けることもできるでしょう。

会社の理念・ビジョンが明確ではない               

お金のためだけに働くのでは、モチベーションはどんどん低下してしまいかねません。もちろんお金は多くの人にとって働く目的の大きなひとつですが、自分の仕事に意義を見出だせないとモチベーションを失い退職につながってしまいます。

会社の理念・ビジョンなどの目指すところが自分の目指しているものと違うと、疎外感を感じるでしょう。また、理念・ビジョンが見えない状況では、自分がなんのために仕事をしているのかわからず、やりがいを感じられません。 このような状況では、どんなに給与や福利厚生などの条件がよくても、社員は「ここは自分の居場所ではない」と感じて離職してしまいます。社員に定着してもらうためには、しっかりとした理念、ビジョンを掲げて社員と共有、社内に浸透させることが重要です。

評価基準が曖昧かつ公平性がない

自分は会社に大きく貢献したと感じたのに、それに対して思ったとおりの評価が得られなかった場合にも、社員はやる気を失ってしまいます。

意外に思われるかも知れませんが、中小企業では社長が自分の感覚で明確な基準などなく社員の給料を決めることは、珍しくありません。個人の能力やスキル、働きを正しく評価されないことは意外と多いのです。

正しく評価されないと、社員は会社を去ってしまいます。状況改善には、会社が個々人の働きをよく見て、しっかりと評価することが欠かせません。

できる人が定着する会社経営のポイント

ここまで説明してきたことを踏まえ、ここからは優秀な社員が定着する会社経営のポイントを説明します。

優秀な社員を定着させる経営のポイント

●  経営理念・ビジョンを明確にする
●  評価制度を整える
●  給与制度を整える
●  人材を育てる仕組み・環境を整える

まずは、経営理念とビジョンを全社員と共有しなければなりません。そのうえで、全社員が納得できてモチベーションを保てる人事評価制度を整えましょう。重要なのは、誰もが理解、納得できる制度を作り、それを全社で共有することです。

また、人材育成の仕組みも作っておきましょう。たとえば、リーダーに部下の人事評価を徹底させれば、基準を持ち正確に評価することを繰り返したリーダーは管理者として成長します。優秀なリーダーの下で働けばメンバーも成長するので、会社全体の人材レベルが上がります。人事評価制度の中に育成の要素を組み込めば、社員の実力はどんどん上がるのです。 共通点は、「社員への情報開示」です。理念やビジョンも、評価制度も、給与体系も、社員に開示して共有することが人材は定着する会社作りには欠かせません。

理念を作ったら壁に掛けたり社員手帳に記載したりするだけでなく、目で見て唱和して、全員が暗唱できるくらいに浸透させるための仕組みを作る。そして根拠なく、ただ給与アップをするなど、表面的に取り組んで終わりではなく、人材を定着させるためにはそれぞれの行動がどんな影響を与えるのかまで考えて行動しましょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

まとめ           

本記事では、できる人が辞めていくと人材の流出が止められなくなる、業績の悪化を招くなどのリスクがあるため早急に対策することが大切であると、述べてきました。そして、その具体的な対策を紹介しました。

最大のポイントは、「社員への情報開示」です。経営理念、ビジョンから評価や給与の仕組みまで、情報を社員と共有することで、高いモチベーションを保ちながら仕事をしてもらえる環境作りをしましょう。優秀な人材の定着は会社の維持・成長に欠かせません。腰を据えてできる人材が定着する会社作りに取り組みましょう。