黒字廃業にはたくさんのデメリットが!避けるためには?

積年の努力がみのり、取引先との関係も良好で、事業の利益が十分でている企業であっても、その事業の後継者がいなければその事業の将来はありません。 この記事では、黒字廃業についてその理由や回避方法について解説します。


この記事は約6分で読み終わります。

黒字廃業とは

会社や個人事業の経営について事業承継を考える場合、事業そのものが赤字か黒字かによって大きく変わってきます。
赤字が続き、債務超過となっている会社を承継することは非常にハードルが高いのですが、黒字企業の事業承継はどうでしょうか。まずは、黒字廃業とはどのような状況なのかを解説します。

そもそも黒字廃業とはなにか

黒字廃業とは、事業の業績が黒字のまま事業を廃業することです。
倒産は、債務の支払いが不能となり廃業せざるを得なくなることですが、廃業はあくまで「自主的に」事業を止めることです。
将来にわたって、資金繰り的には事業継続が可能であるにもかかわらず、経営者が自主的に廃業を選択するのが黒字廃業です。

黒字廃業は増えている

2017年の中小企業白書によると、2013年から2015年の3年間において黒字状態で廃業した企業は全体の50.5%であったことが報告されています。
さらに、2020年度の中小企業白書・小規模企業白書においては、2019年に休廃業等となった企業で、直前期の業績データが判明しているもののうち、61.4%の企業が黒字であったことが分かっています。このように、黒字廃業となるケースは年々増える状況にあるのです。

黒字廃業が増加している理由には、次のようなことがあります。

・経営者の高齢化
・後継者の不在
・後継者候補に事業承継の意思がない

経営者が高齢になる前にもし、適切な後継者がいれば承継することはできたはずです。
また、後継者候補が複数名いれば廃業を回避できる場合もあります。

黒字廃業の注意点

黒字で廃業を決めた場合、注意すべき点がいくつかあります。
その中でも、次の3点については十分な配慮が必要です。

従業員の解雇が必要

企業の経営者は、従業員の生活を背負っていると言えます。
廃業にあたり、従業員を解雇するには経営者には大きく、重い決断が必要です。
会社のために働いてきた従業員を黒字の状態で解雇するためには、十分な時間を取って真摯に従業員と向かい合うほかありません。
また、大きな問題なく従業員を解雇するために、事前に必要となる手続きやトラブル防止策を考えておく必要があります。

取引先がダメージを受ける

廃業によって、今まで良好な関係を保ってきた取引先とも関係が終了します。

取引先が特定の企業に集中している場合には、その特定企業の事業自体も倒産や廃業の危機にさらされる可能性があります。同条件で新たな取引先を見つけることができる保証がないためです。

廃業によりあらゆる関係性がなくなり、社会的なつながりが切れることで思わぬ波及効果があることも覚悟しなければなりません。

低価で資産が売却される

廃業に伴い、換金のために自社の資産を売却することになります。
しかし、事業用の資産はその事業が継続しているからこそ価値を保持するもので、廃業するとなれば資産の価値は低下します。
また、設備などは解体処分や原状回復にコストがかかる場合があります。
したがって、事業継続中は資産であったものも廃業が決まると、負債となってしまうケースも少なくありません。

このように、黒字廃業には多くのデメリットが見受けられます。
事業が黒字である場合、将来性を考えると廃業ではなく、まずは後継者を探して事業承継の可能性を探る道を考えるべきでしょう。

黒字廃業を避けるためには後継者を探す

中小企業では、経営者が主要株主でもある場合が多く、「経営」と「所有」の分離が十分とは言えません。また、金融機関からの融資に対し、経営者自らの個人保証が多いことなども事業承継におけるリスクと捉えられる場合があります。

これらをよく理解し、なおかつ、経営能力の優れた後継者をどのようにして見つければ良いのでしょうか。ここでは親族から探す場合と、親族以外から探す場合に分けて考えて見ましょう。

親族の中から探すポイント

中小企業において後継者候補を探す場合、第一に考えるのはやはり経営者自身の子どもでしょう。しかしながら、これは思いのほか難しい場合が多いものです。別に生計を立てている子どもなどからは、一言、「継ぎたくない」と言われ承継の可能性がなくなる場合もあり得ます。

まずは、一緒に働いている親族がいれば、その人に承継について聞いてみるのが一番です。
もし、事業を継がせたいと思う親族がいるのであれば、早くから現場を見せたり、会社のイベントに招待したりして、会社に対してポジティブな印象を持つように配慮しておきましょう。
結果、その親族が自ら「一緒に働きたい」「跡を継ぎたい」と申し出るのが一番です。

子どもは一旦、独立して自らの生活基盤を築くと、リスクを取って事業承継するという選択肢は取りにくい傾向にもあります。
そこで後継者には息子・娘の別や長子や末っ子というこだわりを捨てて、また義理の娘や息子などの選択肢も加え、親族の中に候補者が一人でもいないかを考えます。

以下の記事では、事業を娘へ承継させたい場合のポイントをまとめています。娘への事業承継を検討されている方は、こちらの記事もご確認ください。

「事業を娘に継がせるには?跡継ぎをスムーズにする方法を解説 」

親族以外から探すポイント

少子化の影響もあり、必ずしも親族に後継者がいない場合もあるでしょう。
このような場合、親族以外から後継者を探すために、経営感覚やリーダーシップに優れているかどうか、後継者としての資質を判断する必要があります。

そこで長年、現経営者と長い付き合いがあり、企業の理念や社風を理解している従業員の中から後継者を探すことで、事業承継がスムーズに行える可能性があります。従業員の中には取引先からの信頼が厚い者や、他の従業員と信頼関係を築いている者もいるため、承継後の安定的な運営が期待できるでしょう。

しかしながら、現経営者の身近にいる従業員だからといっても、後継者としての資質や能力が高いとは限りません。後継者の選考は慎重さが求められます。

経営者は常に先を見て判断して進んでいく必要があり、企業の将来はその判断に大きく左右されます。最近は、大きな環境変化のリスクにさらされるケースも多く、急激な変化に即時に対応することが求められます。

経営者が事業を進める傍ら、自ら積極的に事業承継を進めるのは難しいでしょう。なぜなら、事業承継には自社株の贈与や相続対策、後継者への教育など、検討が必要な項目が多く、それぞれ守らなければならないルールがあるからです。

それを分からないまま進めていると承継前になって後継者が辞退したり、承継後に経営が悪化したりするケースも考えられます。

そのような状況を回避するためにも、事業承継のプロによるサポートがあれば安心できるでしょう。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ」は、事業承継に関わる問題や課題をあらゆる角度から支援します。先代が守ってきた経営理念を承継し、次の3つの視点から総合的に事業承継のサポートが可能です。

・ヒト 後継者を選ぶ、育成する、守る
・モノ 自社株式の円滑移転、税金・資金対策、財産の承継
・コト 組織・経営をつなぐ

現状における経営課題のピックアップ、「継ぎたい」と思わせるポイント作りなど、承継までの道のりは不明なことや不安なことなどが多いものです。

TOMA100年企業創りコンサルタンツは、事業承継に係るこれらの不安や悩みを全般にわたって支援いたします。

まとめ

そもそも事業が黒字であるということは、その企業の経営力と社会的ニーズが合致した結果ではないでしょうか。

この経営力と社会的ニーズに、後継者の力量が加われば事業承継に自信が持てるはずです。
後継者の育成は容易にできるものではありません。そのために必要なノウハウを外部サポートから受け、客観的な評価を得ながら、粘り強い事業承継を進めましょう。