廃業と倒産は何が違う?それぞれの手続き方法を紹介

後継者不足や、コロナ禍などの社会情勢の不安定さによる業績不振を打開できないなどの理由から、会社をたたむことを視野に入れる経営者が増えているのではないでしょうか。 ここでは廃業と倒産の違い、それぞれに必要な手続き、また廃業を回避できる可能性などを解説します。


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「廃業」は自発的に事業をやめること

「廃業」とは理由が何であれ、経営者が自ら事業を終わらせることです。廃業する理由は、業績不振だけではありません。今の事業を終わらせ新たな事業を展開する積極的廃業ともいえるケースもあるでしょう。

しかし、中小企業庁のデータによると、一般的には以下のグラフのような理由が廃業の要因となっているようです。

参考:「廃業に関する検討状況及び課題」(中小企業庁)

ここでは、上位を占めた3つの理由について紹介します。なお「当初から一代限りの予定」は「会社の将来性がない」と同率ですが、予定通りの廃業ということでここでは検討を割愛します。

資金繰りが困難である

廃業を考える理由として、主に売上の減少業績の不振が挙げられます。1期のみなど短期間の赤字であればまだ頑張ろうという思いが勝つでしょう。しかし、売上減少が長期間続くと挽回が困難になってきますし、何より事業資金が不足してきます。

資金融資を試みても、業績不振が長期化している会社が融資先を見つけることは簡単ではありません。これは、業績不振によって信用力が下がってしまうためです。

仮に融資を受けられても根本的な業績改善につながらなければ、結局支払い不能となってしまいます。

そのような状態になる前に廃業しておけば痛手が少なくて済むと考えるのはもっともなことでしょう。

事業の将来性が乏しい

現在の経営状況は黒字であっても、社会情勢や業界の流れなどから、近い将来、会社経営が困難になることが高確率で見込まれる場合に廃業するケースです。

余力があるうちは、負債があっても計画的に完済可能です。また、取引先に迷惑をかけないようフェードアウトの時間が取れること、従業員の再就職の手助けをすることもできます。

アナログからデジタル中心の時代になり、様々な企業が経営の転換を試みました。一方で、時代の流れについていけず、自社事業の先細りを避けられないことを理由に廃業した会社も少なくありません。

現代においてもコロナ禍や世界情勢への不安などから厳しい選択を迫られる企業が増えていると考えられます。

後継者が不足している

「後継者不足」と「高齢のため」は理由として連動しているといえます。良い後継者が見つからないまま事業を継続し、結果自身の気力や体力、判断力の衰えにより廃業を決意することになるからです。

事業がうまく回っていて売上も資金力も問題なしという場合、廃業を決めるのは経営者にとってまさに身を切られる思いでしょう。

しかし、このケースは事業承継についてある程度余裕を持って考えておくことで解決できる可能性が残っています。

債務超過などで事業をやめざるを得ない場合は「倒産」する

会社の債務が超過して支払いや返済が不可能になると、事実上事業の継続が出来なくなります。そのような場合に、経営者の意思によらず会社を廃業せざるをえないことが「倒産」です。

具体的には6ヶ月以内に2度の不渡り(支払期日に代金分の資金が口座になく決済ができないこと)が生じ、銀行取引停止処分とされる場合などがあります。

倒産の一般的なイメージは会社そのものがなくなってしまうというものかもしれません。

しかし、実際には裁判所が関与する倒産には「再建型倒産(民事再生手続)」と「清算型倒産(破産手続)」の2つがあります。このうち、再建型倒産は再建が成功すれば会社存続は可能となります。

廃業・倒産の場合はどちらも手続きが必要!

廃業でも倒産であっても、会社の関係者に対する説明はもちろん、法的な手続きも進めなければなりません。ここでは、廃業と倒産について、それぞれに必要な手続きを説明します。

廃業する場合の手続き

廃業で、現債務の支払いに問題がない場合であれば、以下のような手続きの流れになります。

手続内容 概要
解散・清算準備 取引先や従業員に廃業することを知らせ、契約終了について協議する。
解散決議 株主総会にて解散決議を行う。議決権の3分の2以上の同意が必要となる。解散決議とあわせて清算人(基本的には経営者)を選任する。
解散・清算人選任の登記 解散決議から2週間以内に解散登記と清算人選任登記を行う。
清算 清算人は債務の返済、債権の取り立て、現務の完了などを行う。また、保険・税金関係の廃止届も提出する。
申告 解散日までを事業年度とした決算報告の作成と確定申告を行う。その後、清算期間中に残余財産が確定すれば、各丁未の翌日から1ヶ月以内に確定申告を行う。

倒産する場合の手続き

先述のように、倒産については裁判上「民事再生手続」と「破産手続」があります。破産手続は「破産法」、再生手続は「民事再生法」に則って進められます。

破産手続

破産手続は、事業を清算して、会社自体を消滅させる手続きです。

破産手続そのものは経営者自身でも行えますが、倒産に際してしなければならないことが多いです。そのうえ、破産手続には裁判上の専門知識も必要となるため、会社関係を専門としている弁護士に相談することをおすすめします。

会社の財産を保全し、一部の役員や債権者に支払われることを防ぐためにも弁護士に依頼すると良いでしょう。

弁護士への正式な依頼が完了したら、破産申立書や報告書、財産目録などの必要書類を準備し、裁判所へ破産手続開始の申立てを行います。

提出書類について要件を満たしている場合、裁判所によって破産手続開始決定と破産管財人の選任がされます。また、破産手続開始決定の主文などの公告も行われ、官報に掲載されます。

裁判所により選任された破産会社の財産の管理処分権限を持つ破産管財人は、会社代表者や弁護士と今後の手続きの進め方を打ち合わせします。会社財産の債権者への配当などがすべて終了すれば破産手続は完了します。

民事再生手続

会社や事業存続を目指す手続きです。こちらも専門としている弁護士に依頼するのが無難です。

手続内容 概要
民事再生申立て 必要書類を準備し、裁判所に民事再生と保全処分の申立てを行う。裁判所による保全処分の決定後、会社は債務の支払いから一旦解放される。
監査委員の選任 保全処分と同時に再生手続きの監督委員が選任される。

廃業・倒産手続きを行う前に!債務を完済できるか確認しよう

廃業を検討していても、債務の完済が難しい場合は結局廃業ではなく倒産になってしまいます。廃業を考える際は、債務を問題なく完済できるかどうかを確認しましょう。

廃業時には債務返済のみならず、手続きにかかる費用や取引先への違約金の支払いも考えなければなりません。現在の会社資産を実際の評価額に修正したうえで、すべてを賄えるか確認してから手続きに取り掛かることが大切です。

会社の廃業完了までにかかる手続き費用の目安は以下のようになっています。

・登記費用総額…4万1000円
内訳は解散登記30,000円、清算人の選任登記9,000円、清算結了登記2,000円
・官報公告への掲載費用…3~4万円
公告1行につき3,589円(税込)
・弁護士など専門家への手続き依頼手数料…数十万円

まとめ

廃業と倒産の原因を踏まえ、それぞれの違いについて紹介しました。廃業、倒産のどちらを行う場合でもしっかりと手順を踏んだ手続きが必要になります。

債務超過により、倒産するしか選択肢がなければ仕方ありません。ただ、廃業であれば、理由によっては事業承継を検討することで、取引先や従業員などに迷惑をかけず、事業を継続できる可能性を開けます。

事業承継は、その道の専門家に相談することで費用的にも精神的にも負担の軽減が期待できます。

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