娘婿へ事業承継を行うメリット・デメリット!課題と解決策

事業承継は、企業の存続にかかわる重要なものであり、働いている社員にも影響を及ぼします。 経営者の中には、娘婿を後継者として引き継がせたいと考えている方もいるでしょう。とはいえ、娘婿に事業を任せることで、社員から反発が起こらないか不安に感じる面もあります。 今回は、後継者として娘の婿を選んで事業承継する場合のメリット、デメリットや、娘婿へ事業承継を成功させるためのポイントについて解説します。


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娘婿に事業承継するメリット・デメリット

自身の後継者として娘婿を指名し、事業を承継させる場合、どのような影響があるのでしょうか。まずは、娘婿に事業承継した場合のメリット、デメリットについて紹介します。

メリット

娘婿に事業を承継するメリットは、後継者がいないなかでも事業承継が行えることにあります。社内に最適な人材がいないケースでも事業を娘婿に引き継げば、途切れることなく事業を継続していくことができます。

また、親族への事業承継は、関係者からも比較的受け入れられやすいでしょう。たとえば、父親から息子へなど親子間の事業承継はそれほど珍しいものではありません。

また、第三者に事業承継することが不安な場合も、娘婿であれば人柄や能力を知ったうえで事業を引き継ぐことができる良さもあります。

デメリット

娘婿に事業承継するデメリットは、社内で親族間の事業の引き継ぎが比較的受け入れられやすい傾向にあるとはいえ、従業員からの反発が出るおそれがある点です。

とくに、実力重視で社内階級が決まっている企業の場合、娘婿に経営者としての能力がしっかりと備わっていなければ、従業員からの納得は得られないでしょう。

娘婿が異業種で働いていたなど、事業に関する経験や能力、知識がないまま引き継ぐことになれば、経営を任せるうえで不安に感じる面もあります。

また、将来的に娘と離婚した場合、娘婿は親族ではなくなります。親族ではなくなった場合に事業の先行きが不透明になることがあれば、従業員から反発が生まれるかもしれません。

娘婿に事業承継する際の課題

ここからは、娘婿に事業承継する際の課題や、事前知識として知っておきたいことについて解説します。

相続する場合は相続税がかかる

遺贈による事業承継の場合、娘婿が事業を引き継ぐことに対して「相続税」がかかる点に注意が必要です。

娘婿は、娘と婚姻関係にある場合でも直系の親族とは認められず、相続の権利をもった直系親族である「被相続人」には該当しません。

親族以外への遺贈とみなされ、配偶者や直接血統のある子どもと比べて負担が大きくなります。娘婿へ自社株式を遺贈すると、相続税が2割増になるので注意が必要です。

ただし、相続税の割増負担は、相続人と養子縁組している場合には免除となります。

贈与税の基礎控除や相続時精算課税制度が使えない

事業承継では、相続税の負担を抑えるために税制優遇制度が設けられています。しかし、娘婿に事業承継をする場合は、税制優遇制度の対象外となるので注意しましょう。

具体的には、贈与税(生前贈与で発生する税金)の基礎控除や、相続時精算課税制度などが挙げられます。

相続時精算課税制度とは、贈与した際の税負担を延納でき、相続の際に課せられる贈与税に関して2,500万円分の控除が受けられるものです。

しかし、娘婿の場合は直系親族とはみなされないため、この制度を利用することができません。事業承継に際して、自分の子どもや妻へ引き継ぐケースよりも税負担が大きくなる点に注意が必要です。

娘婿への事業承継を成功させるためのポイント

娘婿へ事業承継を成功させるには、どのようなポイントを押さえて事業の引き継ぎを行えば良いのでしょうか。

ここからは、娘婿への事業承継を成功させるためのポイントや、活用できる制度について紹介します。

事業承継税制を活用する

娘婿への事業承継では、贈与税などの優遇措置からは対象外になると上述しました。しかし、「事業承継税制」であれば、娘婿でも活用することができます。

事業承継税制とは、非上場自社株式を相続や贈与によって取得した場合に、相続税や贈与税の納税が猶予、免除される制度です。

一般措置と特例措置の2種類があり、一般措置の場合贈与100%、相続80%の納税猶予を受けることができます。

また、2018年度に新設された特例措置では、特例承継計画を提出することで贈与、相続どちらも100%の納税猶予を受けることができます。

事業承継税制は、中小企業のみが使える制度です。中小企業の定義は、資本金や従業員数などが業種ごとに異なるため、営んでいる事業の業種における基準を確認しておくことが重要です。

遺留分特例を活用する

遺留分特例であれば、娘婿に事業承継する際にも活用することができます。

相続財産における遺留分とは、法定相続人である兄弟や妻子などへの配分を差し引いた一定程度の取り分のことです。

遺留分は、遺言などで指定された法定相続人以外への相続を保証するもので、娘婿にも有する権利があります。

生前贈与で相続人に支払われた金額についても対象とされており、10年前までさかのぼって遺留分の算出対象とすることが可能です。

遺留分特例を活用する場合、自社株式を遺留分の計算から外したり、自社株主額を固定合意(合意時の時価に固定)したりできます。

固定合意を活用すれば、相続までに時間がかかって自社株式の価値が上昇しても据え置くことができます。

固定合意は自社株式にのみ利用できますが、税理士や公認会計士、弁護士などによる証明が必要となるので注意しましょう。

養子縁組も検討

事業承継にあたって、娘婿と養子縁組をすることもひとつの手段です。遺贈など、経営者が亡くなってから事業を引き継ぐのではなく、生前から事業承継を進める際に活用できます。

娘婿と養子縁組すると、被相続人として認められるようになるため、相続時精算課税制度が活用できるようになります。

贈与税の2割増なども免除され、実子と変わらない相続割合を受けることができるので、選択肢のひとつとして活用しても良いでしょう。

ただし、養親と実の両親両方の扶養義務が生じる点や、万が一娘と離婚した場合でも自動的に養子縁組が解消されることはないなどのリスクもあります。

安易に養子縁組に踏み切るのではなく、将来想定しうるさまざまなリスクをシミュレーションしたうえで検討するようにしてください。

社内外に認められる存在に育てる

娘婿への事業承継には、従業員の反発を抑えるために社内外に認められる人材に育てることが大切です。

すぐに社長として引き継ぐと反発が出ることもあるため、まずは事業の経験を積ませると良いでしょう。

後継者を社内外に認められる存在に育てるには、事業内容そのものに関する知識や経験を教えるだけでは不十分な面もあります。

そのため、管理職や経営者として従業員を率いていく能力を磨き、いわゆる「ゼネラリスト」に育てましょう。

また、後継者問題に関してお悩みであれば、TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社に一度ご相談ください。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社は、後継者問題を解決するプロとして、後継者探しから育成支援までサポートやアドバイスを行っています。

39年で1,500社の悩みを解決した実績があり、代表自身が創業者の親族外承継の経験をもっているため、実体験にもとづいたアドバイスを行います。「後継者が見つからない」など、事業承継でお悩みの際にはぜひ一度ご相談ください。

まとめ

娘婿への事業承継は、実子への事業承継と比べて成約や税制面での負担が大きく、不安に思う場合もあるでしょう。娘婿に事業を継がせるのであれば、社内外から認められる人材として育てていくことが大切です。

後継者育成がスムーズに行かない場合は、専門家の意見を聞くなどして、経営者のスキルを身に付けさせていくようサポートしてあげましょう。