社長が引退すべき年齢|事業承継するなら考えておきたいこと

会社を経営する社長には定年がありません。しかし、スムーズな事業承継のためには引退の適齢期を知り、自分自身の進退を決めておくことが大切です。 この記事では、事業承継を考える経営者に向けて、引退に適した年齢の考え方、引退後の選択肢や行動について具体的にお伝えします。


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社長の引退は65歳までが理想!その理由は?

中小企業庁が公表している「事業承継ガイドライン(2016年版)」(※)によると、日本の経営者の平均年齢は、59歳9ヶ月で経営者の高齢化が進んでいることがわかります。それにともない、経営者の引退年齢は30年以上前に比べて6~8歳ほどあがっており、67~70歳ほどで引退する社長が多いようです。

しかし社長を引退する理想的な年齢は、従業員の平均的な引退年齢と同じく65歳までだとされています。ここではまず65歳までの引退が支持される理由を説明しましょう。

(※)出典:中小企業庁「事業承継ガイドライン」

経営者としての体力と能力は失われるから

経営者としての知力はあっても、年齢を重ねるとともに体力面や健康面に不安が出てくることは誰しも避けようがないでしょう。もし事業承継が置き去りにされたまま、経営者が突然倒れることになれば、会社は混乱し、経営が傾く可能性もゼロではありません。

また50代から60代を迎えると、長年の経験から自分なりの考えを確立した経営者がほとんどです。会社経営ではときとして斬新な発想や柔軟な思考が求められます。揺らがない信念をもって経営判断を下すことも大切ですが、自分の考えに固執しすぎると会社の発展に影を落とすでしょう。

つまり、経営者が年齢を重ねれば、身体面だけではなく経営能力にも不安が芽生えるのです。

経営者本人が気力、体力ともじゅうぶんだと感じていたとしても、従業員や取引会社に不安を与えることも考えられます。

時代の変化に対応できなくなるから

近年の技術革新は目覚ましく、インターネットを活用したマーケティングや各種サービスのAI化などIT関連を中心に、会社経営は大きな変革を続けています。こうした技術革新は年々スピードを早めていて、会社として新しい技術に適応する力が必要です。

しかし経営者が高齢になると、新技術への対応力や時代を読む目が衰える可能性は大きいでしょう。経営者が新しいチャレンジに躊躇するなどして経営判断が遅れると、会社が発展するチャンスを逃す可能性もあります。

今後も会社のさらなる成長を望むのであれば、IT技術に親しんだ若い世代に会社を任せる決断が大切です。

後継者の育成が間に合わなくなるから

経営者の引退後も会社を存続させるには後継者が必要です。そして、会社の事業承継を考えるときには、後継者の選定や育成にはそれなりの時間がかかることを考慮しなければなりません。

自身の子どもや親族が後継者になると考えていても、当人にその意志がないケースもよくあります。事業承継を検討しはじめたら、まず後継者候補に引き継ぐ意思があるかを確認しておきましょう。

また、後継者の資質にもよりますが、後継者の育成にかかる時間は数年から10年ほどが一般的だといわれています。後継者が決まっても、すぐに経営交代するのは現実的ではありません。もし経営者が突然倒れれば、教育が不十分なままで後継者が経営トップにつくことになり、会社経営に多大な影響を及ぼします。

後継者を育てるなら、できるだけ若く健康面の不安が少ないうちに余裕をもって計画し、行動を起こすようにするべきです。

社長引退後のふたつの選択肢

社長引退にはふたつの考え方があり、どちらを選ぶかによって引退後の人生が変わります。そこで、社長引退後の選択肢について、それぞれを詳しく紹介します。

社長を辞めて完全に会社から退く

ひとつ目の選択肢は、社長を辞めたあと、完全に会社経営から退いて第二の人生をスタートさせるというものです。

経営者自身が築きあげた会社であれば、経営のすべてを後継者に委ねるのは勇気のいる決断かもしれません。仕事に情熱を注いできたなら手放しにくいのは当然です。しかし、十分な老後資金を準備できているなら、家族との時間や趣味を充実させるなど新しい生活を楽しむのも良いでしょう。

ただし、これまで経営者だった方が会社から退くには、経営を引き継ぐ後継者や残された従業員、取引先などに迷惑がかからないよう、引継ぎや挨拶まわりを念入りに行うことが必要です。また、ときには相談やアドバイスに乗るなど、会社へのフォローやバックアップの気持ちを忘れないでいてください。

会長として経営のサポートを行う

社長を引退したあとも、引き続き会社経営に携わる方は珍しくありません。よくみられるのが「代表取締役会長」や「取締役会長」として、新たに経営を引き継いだ社長をサポートするケースです。

こうした会長職には定められた職務があるわけではありません。経営交代後も社長時代と変わらず、積極的に経営参加する方も多いようです。

しかし、会長が経営に参画すればするほど、後継者である新社長は経験や能力を積みにくくなります。また、会長の影響力が大きすぎると新社長が実質的な経営権をもてず、会社の意思決定が遅れるリスクも考えられます。

先代の社長がいつまでもトップに立っていては、新社長の求心力に悪影響を与えかねません。会長職に就くなら、会社の事業承継を円滑に進め、経営をサポ―トする役割であることを意識しましょう。また、あらかじめ5~10年ほどの就任期間を設定しておくことも重要です。

社長の引退を決定したらはじめにすべきこと

引退時期を意識しはじめたら、社長としてまず行動すべきことが3つあります。スムーズな事業承継のために、意識しておきたい行動について解説します。

引退時期を考える

何よりも大切なのは、社長の引退時期を考えることです。会社の経営状況、後継者問題、取引先との関係など、多方面から判断して引退する適切な時期を見極めます。

また、唐突な経営交代は多かれ少なかれ不信感や戸惑いを与えるため、引退時期が決まったら会社関係者や従業員に公表しておくことも重要です。

そのうえで、顧問税理士や公認会計士などの専門家に相談し、会社の事業承継をスムーズに進める、最善のスケジュールや計画を具体化していきましょう。

後継者を探す

引退時期や事業承継のプランが具体化したら、後継者を選定します。

後継者を探す方法には3つあり、子どもや親族を対象とした親族内承継、役員や従業員などを対象とした社内承継、そして後継者がみつからないときには外部から後継者を迎えるM&Aを検討することもあります。

会社の雰囲気や経営に対する考え方を熟知した親族や従業員が後継者となるのが、理想的な事業承継のスタイルといえます。どうしても後継者に適した人物がみつからないときには、会社の存続を願い、M&Aを選ぶことになるでしょう。

このとき注意したいのがM&Aです。後継者候補が増えるうえ、会社の売却代金を手にすることができるM&Aはメリットもありますが、新しい経営陣による会社の解体や事業転換などから、社長として積み上げたものを失うリスクが考えられます。

後継者を育てる

後継者が決定したら、会社の事業内容を知って経営者としての資質を磨くために、後継者の育成を行います。

教育方法はさまざまですが、各部門や役職を経験させて会社の事業を理解する、社長の理念や経営方針を共有させる、などがあるでしょう。また経営者として広い視野をもつために、異業種で一定期間働くなど、社外で経験を積むのもおすすめです。

新社長として就任する1年ほど前からは社長室長として社長と行動をともにし、経営者としての実務や手腕を身につけることも大切です。経営者にしか感じられない仕事の感触を肌で実感できるでしょう。

また、社長引退を検討しはじめたら、事業承継に豊富な支援実績をもつ「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」へぜひ一度ご相談ください。後継者の選定や育成のサポートまで丁寧に行いますので、安心して引退準備を進められます。

まとめ

社長が自身の引退時期を見極めて、計画的に事業承継することは、会社の存続や発展には欠かせません。生涯現役の考え方もありますが、時代の変化に飲み込まれないよう、若い世代へ経営交代する判断が大切です。

しかし、社長職を退くには後継者の選定や育成、従業員や関係先への配慮など、綿密に計画を練って対処していかなければなりません。会社の事業承継を多数手掛ける「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」は、引退に向けて最適な選択や行動をサポートします。ぜひ一度ご相談ください。