有限会社の事業承継|ポイントや注意点を解説

有限会社は、過去に日本で認められていた会社形態です。ただし2021年現在、有限会社による新規設立は不可能となっています。一方、有限会社の事業を継続する場合は例外で、今でも形を少し変えた上での存続が認められており、有限会社を事業承継することも可能です。 そこで今回は、有限会社の特徴からメリット・デメリットまでを順にご紹介していきます。 また、有限会社から株式会社へ移行したい際に必要となる手続きの流れも、あわせて解説します。


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事業承継前に確認|有限会社の基本

有限会社はかつて日本で認められていましたが、2006年に有限会社法が廃止されたため、新規設立は不可となりました。そのため2006年から存続している有限会社は「特例有限会社」という、一種の株式会社の形態で事業を続けています。以下、本記事では、特例有限会社をすべて有限会社と表記を統一して説明していきます。

有限会社は、小規模な会社に適した形態になっており、役員に任期が設定されていません。加えて、株式の譲渡制限がかけられているなどの特徴をもちます。

事業承継における有限会社のメリット・デメリット

今まで有限会社であった会社が事業承継をする場合、どのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか。主に、株式会社との違いを比較した上で見ていきます。

有限会社ならではのメリット

有限会社ならではのメリットとして、大きく以下の点が挙げられます。

・取締役の任期制限がない
・変更登記を行わなくても解散とみなされない
・商号変更登記の必要がない
・決算公告義務がない
・会計監査の義務がない

株式会社の場合、取締役の任期は最大10年ですが、有限会社には任期の制限がありません。そのため、変更登記も不要です。ほかにも有限会社は決算公告の必要がなく、長い間、経営陣を変更しない方針である会社には、有限会社の方が向いているといえます。また、有限会社と名乗ることで、会社の歴史が長い旨を暗に取引先に伝えることが可能です。

有限会社ならではのデメリット

次に、有限会社のデメリットを見ていきます。そもそも有限会社は株主の交代を予定していない設計であるため、事業承継の観点で考えると、どうしてもデメリットの方が目立つでしょう。ただし特徴が会社の方針と合致している場合は有利に働くケースもあるので、一概に有限会社だから悪いのではなく、会社の指針と有限会社の特徴を天秤にかけて、その是非を判断する必要があります。

・株式の譲渡制限とその例外
・組織再編の制限がかけられる
・上場できない
・信用力が低い

有限会社では、株主間の株の譲渡が自由です。例外として株主以外の者に株を譲渡する場合のみ、承認が必要ですが、基本的に株主間の譲渡に会社の関与は必要ありません。そのため、会社の経営の際に重要となる株の持分比率が自由に切り替わる恐れがあります。株主のパワーバランスが知らぬ間に変動している可能性があり、会社の経営に悪影響を及ぼす株式移動となることも否定できません。

また、有限会社では組織再編に制限がかけられています。具体的には整備法37条により、有限会社を存続会社とする吸収合併や、有限会社を承継会社とする吸収分割は出来ないと明記されています。加えて有限会社は株式交換や株式転移が不可能であるため、有限会社は吸収合併などをする側に立てないというデメリットが生じます。

また、有限会社は上場ができない点もデメリットです。そのため、社会における信用力が低くなってしまうケースが、しばしば見受けられます。

有限会社から株式会社へ移行する場合|手続きの流れ

では、将来の事業承継のためにも有限会社から株式会社へ移行しようと考えた際に、どのような手続きが必要なのでしょうか。

ここからは実際の手続きに関する流れを、順番に紹介していきます。有限会社から株式会社へ移行する際に発生する金銭および時間コストを把握しておくと、今後の計画が立てやすいはずです。

1.株式会社としての定款変更案の作成

「株式会社としての定款変更案」の作成を行う必要があります。また、特例有限会社の商号変更による「株式会社設立登記申請書」と特例有限会社の商号変更による「解散登記申請書」を法務局に提出しなければなりません。

そもそも定款とは、会社の目的などを定めた根本規則であるのですが、一度決定してしまうと変更は株主による決議が必要です。そのため、定款変更案を作成した後に、株主総会を行い、株式会社に移行する了承を得た後、それらを証明する書類を作成して法務局に提出する流れを取っていきます。

2.株主総会の招集を決定する

株主総会の招集が決定したら、各株主に収集通知を送ります。注意事項として、株非公開の会社は、1週間前までには発信する必要があります。また議決を書類にした場合は、2週間前までには発信しなければなりません。

3.定款承認のための株主総会特別決議

定款の変更をする場合には、「株主総会特別決議」が必要です。
特別決議とは、定足数を満たしているかつ株主の保有する議決権の3分の2以上が賛成しているという条件を満たしている決議を指します。もし株主が出席できない場合は代理人を株主総会へ出席させることで、代わりに議決権を行使できます。

上記のようなルールのため、経営者が保有する株の比率が非常に重要になっていきます。経営者が株主の3分の2以上保有していれば、単独での決議が可能であるからです。

こうして定款が承認された株主総会後から、議事録を作成していきます。その後、完成した書類に株主総会に出席した取締役が押印します。これにより、議事録の信頼性が担保されるのです。

ちなみに株主総会の決議内容は原則、決議が成立した時点で効力が発生します。そのため、何らかの事情により効力の時期を遅らせたい場合には条件を追加したり、期限付きの決議を実施したりもできます。

4.役員の選任をする

有限会社の場合、役員を選任する必要はありませんでした。一方で株式会社は絶対に役員を選任しなければなりません。例外として有限会社の役員が株式会社の役員となる場合に限り、役員を再任する必要はありません。

5.有限会社の解散登記

有限会社の解散登記を行う際は、2週間以内に法務局で解散と清算人選任の登記登録が必要です。あらかじめ必要書類を準備しておきましょう。株主総会の議事録、代表清算人の印鑑証明書、また会社の実印などが手続きの際に必要です。
加えて解散の登記には3万円、清算人選任の登記に9,000円と費用が掛かる点にも注意しておきましょう。

6.株式会社の設立登記

最後に、「株式会社」と表記するための商号変更を行います。現時点の事業目的から、新たな目的に変更する場合は、あわせて登記も必要です。また、本店所在地の変更もこの段階で行います。

スムーズな事業承継の実現には専門家のサポートが不可欠

以上が、有限会社から株式会社へと移行する一連の流れです。いくつかの段階を踏む必要があり、スムーズな事業承継の実現には専門家のサポートが不可欠です。
もし有限会社の事業承継、および株式会社の移行を考えている場合には、ぜひ「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」へご相談ください。
弊社では豊富な支援実績をもとに、最適なサポートを行っております。

まとめ

有限会社と株式会社では特徴が異なります。そのため事業承継の際には、思わぬ落とし穴に見舞われる危険性があります。もし、有限会社から株式会社に移行しようと考えた際には、法務局へ必要書類を提出しなければならないなどルールも多いです。

そこで有限会社を株式会社に移行した上で事業承継を考えている方は、ぜひ一度、専門家にご相談されてみることをおすすめします。有限会社のまま事業承継を考えている方も、同様です。それほど事業承継は複雑で、かつ会社の未来を左右します。

TOMAコンサルタンツグループでは経験豊富な専門家が、事業承継をしっかりとサポートしています。少しでも、お力添えできれば幸いです。ぜひご検討ください。