業績をV字回復した企業事例|危機的状況から立ち直る方法

企業努力を怠っていたわけではなくとも、業績不振に陥る会社は少なくありません。業績が落ちてしまう理由には、さまざまな要因が考えられます。 今回は、実際に悪化した業績を再び回復させた企業の共通点を探り、業績回復のプロセスを紹介します。


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業績を回復した企業事例

以下の3社は業績悪化の主因はそれぞれ異なりますが、その後V字回復を果たしています。具体的にどのような努力をしたのでしょうか。

株式会社龍角散

1871年創業という長い歴史を持つ株式会社龍角散は、現在のど飴やのど薬を中心に人気商品を展開している有名な老舗企業だけあって、経営危機があったことを知らない人も多いのではないでしょうか。

龍角散は1970年代から売り上げが落ち始め、1995年には年間売上とほぼ同額の40億円もの負債を抱え、倒産の危機に瀕していました。

業績が落ちた大きな原因は老舗ブランドゆえの危機感のなさでした。従来の製品、新製品ともに宣伝しても売上が伸びず、薬品界の流通の変化への対応も遅れていました。

新たな分野、例えば胃腸薬への参入なども考えられましたが、1995年に就任した社長は、売上が落ちたとはいえ根強い顧客が一定数いることに目をつけ、徹底的にユーザーへのヒアリングを行ったのです。

その結果、龍角散の「のどを守る」効果への信頼感が非常に大きいことに気づき、他分野に手を拡げることをやめ、不採算事業を大胆カットし「のどに関連する商品」に注力し、製品群を拡大したところ、大ヒットしたのです。

株式会社リンガーハット

長崎ちゃんぽん専門店をはじめとした飲食店チェーンを全国に展開している株式会社リンガーハットは、2009年に24億円の赤字を出すなど経営的な危機を迎えていました。

主な原因として、飲食店業界における低価格競争があげられます。リンガーハットも顧客獲得のため商品の価格を下げたのですが、それにともなうコストカットとして人件費を削減しました。その結果サービスの質が低下し、売上も伸びず、商品自体の質まで下がるという悪循環に陥ってしまったのです。

そこでリンガーハットは消費者が自社の商品に求めているものは値段以外に何があるのかに着目し、調査研究を重ねました。そして昨今のヘルシー志向や低カロリー志向を受け、100%国内野菜の「野菜たっぷりちゃんぽん」や、麺なしの「野菜たっぷり食べるスープ」を開発しました。

メニューは女性を中心にヒットし、2016年には過去最高の売上高と営業利益を更新するなど、V字回復を遂げました。

まるか食品株式会社

カップ焼きそば「ペヤング」を中心にカップ麺や即席麺の製造販売をおこなうまるか食品は順調に業績を上げていました。

しかし2014年、「ペヤング異物混入事件」が起きます。まるか食品はSNSで異物混入の写真が出た翌日に現物を、またその9日後には全商品の販売中止を決め、自主回収を求めました。

原因追求と再発防止のため工場の稼働を停止し、その間もちろん商品の流通は完全に止まりました。

結果的に異物混入商品であった「ペヤングソースやきそば」が市場に再登場したのは半年後でしたが、たちまち即席カップ麺分野での国内シェア1位の座についたのです。

もちろん再販売を待っていた根強いファンも多かったのですが、業績回復の主因は会社の真摯かつスピーディーな対応が社会に好感を持たれたからでしょう。工場は閉鎖している間に食品安全システムの構築を国際基準にまで進め、従業員の給与カットやリストラなども行いませんでした。

復活後も次々と注目を集める商品を開発し、攻めの姿勢が話題となっています。

業績を回復した企業に共通している特徴

業績不振の原因や戦略は違えども、これら業績回復に成功した企業にはいくつかの共通点があります。

新たな戦略を打ち出している

長く一定の業績を上げてきた事業を持っていると、新しいことを挑戦することに慎重になることがあります。しかし、業績回復を遂げた多くの企業は、一歩踏み出す勇気を持ち、新たな戦略を打ち出しています。

新たな分野・事業への参入も「新たな戦略」ではありますが、やみくもに手を拡げるのではなく、現在の主力製品を見直すことでコストを抑えた戦略を立てる方が、新事業を立ち上げるより効率的です。注力分野を明確にし、これまで培ってきた技術力やノウハウを活かして注力分野でのヒット商品を新たに生み出すよう取り組むのです。

商品のニーズや流通方法、サービスにおける社会情勢は日々変化しています。これまでの商品製造や販売方法に胡坐をかかず、常に挑戦する姿勢を持ち続けることが大切です。

消費者のニーズをとらえている

インターネット、とりわけSNSは敏感に消費者のニーズを反映します。ネットで評判になりたちまち売り切れ続出となるヒット商品が続々生まれる一方で、すぐに需要がなくなり在庫過剰となる商品も少なくありません。

「今」の業績に満足するのではなく、常に消費者のニーズに応える商品を開発していくことは、必要不可欠とはいえ大変なことです。そのため、ある程度消費者のターゲットを絞ることが重要です。

上述した企業をはじめ、業績回復した企業の多くは「何を」「どの層に」アピールしてニーズを捉えるかを明確にしており、それに沿ったマーケティング戦略を打ち出しています。

業績を回復させるためのプロセス

ここまでである程度業績回復のヒントは掴めてきたと思います。最後に業績を回復させるために実践していきたいプロセスを説明します。

1.現状を分析する

業績が上がらない企業には必ず課題があります。まずは、自社の業績が低迷している原因を分析しましょう。

完全に赤字に転ずる前の「減益」時期を分析することがポイントです。自社商品の何が高評価・低評価なのか、収支分岐点売上はいくらなのかなどを入念にリサーチし、ある程度の長期的スパンで目標金額の着地点を定め、目標達成に必要な施策を考えていきます。

2.経営環境を変える

現状を打開するためには自社はもちろん、自社が属する業界の経営環境を俯瞰し、必要であれば経営環境を変えることも大切です。

自社の経営環境は社長や役員だけでは把握できないところがあります。従業員にも意見を求めたりアイデアを募ったり、力になってもらいましょう。

いわゆる「ワンマン社長」で従業員が意見できない、あるいは意見しようにも会社の情報を知らないという環境になっていないか自問し、自由な意見交換が可能な環境に変えていきましょう。

また自社を俯瞰してみる、業界環境を知るのに外部からのサポートを取り入れるのもひとつの手です。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ」では豊富な専門知識と実績で企業の業績回復をサポートしています。業績不振でお悩みの際は、ぜひご相談ください。

3.業績回復に向けた施策の策定、実行

自社と業界を内外から見つめ、従業員と専門家と意見交換を行ったあとは、業績回復に向けた具体的な施策の策定と実行を行います。施策は新商品の開発や販路の拡大などさまざまです。業績不振の原因の解決となるか考えたうえで策定しましょう。

また、業務における無駄なコストを削減することも業績回復に必要です。

これまでコストを漫然とかけていた業務があれば種類を細かく分類し、不要なもの、システム導入によって効率化できるものがないかチェックしましょう。結果として業務のうち、自社に不要なものが見つかり丸ごとカットできるかもしれません。

施策を実行する際は、業績回復の目標を数値で具体的に設定したうえで、達成可能なものから行いましょう。

まとめ

会社の業績回復のために大切なことはまず自社の現状を分析することですが、経営者や役員のみで打開するのではなく、客観的な意見を取り上げることが必須といえます。専門家に相談する、役員を外部から取り入れる、社内における情報の風通しを良くするなど業種や会社の規模に合った方法をまずは模索してみましょう。