下請けを続けるのは危険?中小企業が下請けから脱却するための戦術

日本で働く人口のうち、7割近くの人が中小企業で働いています。また全国の企業数のうち中小企業が占める割合は実に99.7%となっており、中小企業は日本経済の礎となる存在です。 出典:「2021年度版 小規模企業白書」(中小企業庁) しかし、中小企業では大手からの下請けで成り立っている企業が多いのも現実です。大手への依存状態を改善し下請けから脱却して、自社の力で勝負したいという経営者も多いでしょう。下請け脱却には何が必要か、詳しく説明します。


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【当てはまっていない?】下請けから脱却できない理由

大手からの下請けによる経営の大きなメリットは、安定性があることです。しかし、社会状況の将来的な見通しが立ちにくい今、この安定性が揺らぎつつあります。

下請けから脱却できない企業には、以下のようないくつかの共通点があります。

営業力が足りていない

下請け企業は元請け企業からの受注を受け、要望に沿って生産し納品するというルーティンワークに慣れてしまっており、自社を売り込んで新たな取引先を獲得する姿勢が弱くなっています。

下請けがメインでない企業において営業は非常に重要な部門であるところ、下請け企業は人材が少なかったり、営業スキルが身に付いていなかったりする場合があります。

すなわち営業のノウハウに欠けているため、自社の技術力などの自社の魅力をアピールして顧客を得ることができず、下請けから脱却できないのです。

データの分析をしていない

たとえ営業に力を入れるとしても、自社についてデータがなく、あったとしてもそれを客観的に分析しなければ売り込みをかけることはできません。

たとえ自社の技術力に自信があっても、それを他者に論理的に説明するためには、根拠となるデータを揃え、解析する必要があります。

例えば、ある商品がヒットしたとして、なぜそれが売れたのか、どのような客層に売れたのかといった定性的なデータを集め、さらに今後の商品開発に活かすべく専門的知見を加えて分析するといった作業を常日頃から行っておくことなどがあげられます。

下請けだけに頼っているとこういった分析がおろそかになりがちで、いざ下請けから脱却しようとしても今後の方向性を見出せず、結局二の足を踏むことになってしまいます。

挑戦意欲に欠けている

下請けは元請けの指示通りの仕事や生産ができておりさえすれば一定の売上が期待できる立場にあります。納期をこなすのに精いっぱいで下請け以外の仕事をする余裕がない企業も多いでしょう。

ただ、そのような企業は新しい挑戦に対して慎重になり、守りの経営体質になってしまいます。結果、下請けから脱却しようとする意欲そのものが弱くなってしまうのです。

【このままだと危険?】下請けのままでいるとどうなる?

下請けのままでも安定は得られるし、従業員のためにも新しい挑戦をしないという選択肢もあるでしょう。

ただし、下請けメインの経営はいくつかのデメリットと隣り合わせになります。特に、売上の3割以上を1社からの受注に依存している企業は「倒産予備軍」といえるほど危険な状態です。

このまま下請けを続けることで、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

安い単価での受注となる

元請けから直接下請けを受注する場合で発生する中間マージンは、孫請け、ひ孫請け…と下がるにつれて利益率は悪くなっていきます。複数のマージンが発生した結果、最終受注の報酬は直接受注していれば得られた本来の額の数割程度となってしまいます。

元請けが依頼された内容と同じ仕事量にも関わらず単価が安くなるので、利益が上がらないまま経営を続けることになるでしょう。

短納期を求められる

下請けの納期は、本来の依頼から元請け、元請けから下請け、と間に会社を挟むごとに時間が経ち、余裕がなくなっていきます。納品についても順送りされるため納期はさらに短くなるでしょう。

元々の納期は急なトラブルにも対応可能だったはずが、最終的に短くなることで対応が難しくなったり、納期を守らなければ次の仕事の受注に差し障りが生じたり、従業員のストレスと労働時間の増加につながります。下請け企業の従業員に及ぼす心身への悪影響は、大きな懸念材料です。

人材確保が難しくなる

下請け企業では、上記のように低単価、短納期での仕事が求められるため、従業員に仕事に見合った報酬を与えることが難しくなります。そのため、人材確保の点でも困難が生じてしまいます。

大手企業でなくても、自社のブランドがあり商品開発や顧客獲得などやりがいのある企業であれば優秀な人材がそれでも確保できるかもしれませんが、下請けメインの中小企業ではかなり難しいでしょう。

取引先の業績に売上が左右される

下請けのメリットである安定性はあくまでも売上げを依存している元請けや取引先の業績の安定が前提であり、取引先の業績悪化はストレートに下請け企業に影響を及ぼします。

取引先の業績が突然急激に悪化することは、今回のコロナ禍のように極端な場合でなくとも常に起こり得ます。生産量が減少する、需要がなくなるといった状況で一番痛手を被るのは受注を減らされる下請け企業なのです。

また、取引先の経営方針変更によりいきなり受注そのものがなくなってしまう可能性もゼロではありません。

下請けから脱却するためには?

下請けからの脱却は一朝一夕に実現できるものではありません。以下にあげる戦略をどれもやみくもに取り入れるのでなく、自社の業務や業績、技術力をデータ化し、分析したうえでより自社に効果的な方法を見出しましょう。元請けへの依存をなくすのでなく、徐々に減らしていけるようにするのです。

自社製品の開発・販売をする

下請けを行う日本の中小企業の技術力、特に製造業における部品等基礎となる部分については世界に誇れるものです。この技術力を活かし、受注を待つだけでなく自ら新たな製品を開発する、すなわち自社がオリジナル製品のメーカーとなることで生き残りを図ります。

自社が培った技術力は現在下請けとしている業種、業界以外にも応用が効くかもしれません。発想の転換により新たな活路を見出した企業の例を調べ、可能性を探ってみましょう。

しかし、自社の技術や製品を一番知っているのは自分たちだからとすべて内々で行うことはおすすめできません。自業種だけでなく他業種にも詳しい外部の専門家などに相談してみるのも一手です。自分たちだけでは考えもしなかった製品開発の意外なヒントが手に入るかもしれません。

元請け以外の取引先を開拓する

下請けだけに頼った経営は、上述したように常にリスクを伴っています。たとえすぐに下請けからの脱却が難しくとも、複数の元請け会社から受注できていれば最悪の事態は避けられます。

もちろんそもそも元請け会社一社からの受注生産をこなすのに手いっぱいという会社も多いでしょうが、その場合であってもやはり直接の取引先を開拓し、元請けへの依存度を下げていくのが良いでしょう。現在業績が安定しているのであれば、焦らず長期計画で少しずつ下請けの割合を減らします。

新規製品や取引先の開発は下請け業務とはしっかり線引きをしないとどうしても「今求められている」下請け業務に流されてしまうので、新規関連のみを行う別会社を設立する「両利きの経営」もおすすめです。開発、営業を専門とし、狙うべきターゲットを定めて新規取引先を開拓しましょう。

まとめ

下請けを脱却する方法は「自社製品の新たな販路を見つけること」にまとめられますが、もちろん簡単なことではありません。

いきなり新製品に取り組むのでなく、まずは現在の自社の強みを分析し、どのような顧客層と取引すべきかを定め、セールスポイントを絞ることから始めましょう。焦る必要はありませんが、「下請けから脱却する!」という強い気持ちを持ち続けることが大切です。

TOMA100年企業コンサルタンツ」であれば、企業のあらゆる課題に対して、専門家の知見からアドバイスを行います。もし下請けからの脱却を考えているのであれば、ぜひ一度ご相談ください。