事業撤退はまだ早い!不採算事業立て直しに必要な5つのプロセス

企業を取り巻く環境が変わり続ける現代、不採算事業に対する的確ですばやいアクションが経営者に求められています。しかし事業のやめ時を見極めるのは難しく、たとえ事業を切り捨てても、業績改善の根本的な解決にならない可能性もあります。 この記事では、不採算事業の撤退基準とともに、事業を立て直して業績を改善する方法を解説します。


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不採算事業をそのままにしておくのは危険!

どんな事業にも浮き沈みはつきものです。それでもマイナス収支が続く事業、いわゆる不採算事業をそのままにしておくのは、会社経営において非常に危険といえます。

いくつかの事業を運営している会社であれば、他の事業の利益で不採算事業の赤字を埋めることができます。会社としては安定した経営を行っているようにみえますが、不採算事業のマイナスが続けば穴埋めが追いつかなくなり、やがて経営そのものをひっ迫させてしまうのです。

最悪の場合、不採算事業の業績が大きく傾いたことが原因で、会社が倒産してしまうこともあります。

不採算事業の現状を直視するのは、経営者にとって苦しいものです。だからといって決断を先延ばしても、会社にとってダメージにしかならないことを覚えておきましょう。

「立て直し」か「撤退」か?不採算事業の判断基準

不採算事業への対処法はいくつか考えられますが、まず「立て直し」か「撤退」を決断するのが一般的です。継続と撤退の相反する選択肢からどちらを選ぶには、なぜマイナス収支に陥っているのか、事業が抱える問題を正確に把握することが大切です。

それでは、不採算事業の立て直しと撤退を判断する基準についてお伝えします。

その事業は会社の理念に沿っているか

企業が掲げている理念やビジョンにそぐわない事業は、いくらやってもなかなか伸びない可能性があります。そもそも、理念やビジョンを掲げていない場合は、会社としての指針もないことになるので、事業を行うべきかどうかの判断もつきません。

不採算事業がある場合は、その事業が理念にあっているか、もし会社に理念がない場合は理念を整えるところから行うとその事業について撤退すべきか続けるべきかが見えるでしょう。

撤退することで他の事業に影響が出ないか?

不採算事業はマイナス収支の事業です。赤字を生み出し続けるなら撤退するのが適切だと感じられるかもしれませんが、事業そのものは赤字でも他の事業に何らかのメリットを与えている可能性があります。

たとえば、不採算事業のおかげで他の事業の流通がスムーズだったり商品の仕入れ値が下がったりといったメリットがあるなら、撤退によって他の事業に混乱をもたらすでしょう。

また、本社や設備の維持費、営業活動費などは、全ての事業が業績ごとに共通して受け持ちます(共通コストの配賦)。たとえば不採算事業でも売上が高ければ、配賦される共通コストも大きくなります。

不採算事業が撤退しても共通コストの額は変わりません。そのため、他の事業の共通コストが増え、会社全体が赤字に転落することもあるのです。

「立て直し」か「撤退」を決めるときには、不採算事業の赤字にばかり目を向けるのではなく、他の事業との関連性や会社への貢献度なども考慮する必要があります。

今後の収益が見込めるか?

事業の成長サイクルは大きく4つに分かれています。不採算事業が4つのサイクルのうちどのフェーズにあるのかによっても、「立て直し」か「撤退」かの判断が変わります。

・ 創業期:事業の起ち上げ
・ 成長期:顧客が増えて事業が拡大
・ 成熟期:事業拡大による停滞
・ 衰退期:収益が低下

それぞれのサイクルごとに様々な課題はありますが、創業期成長期は赤字が出たとしても、今後の事業の発展でプラス収支になる可能性はおおいに考えられます。人件費確保や業務の効率化など、事業拡大のための投資を行うといいでしょう。

しかし成熟期から衰退期に入った事業の場合、新たな市場の開拓や経営改革によるシェア奪回など、更なる成長戦略を練らなければ事業の収益性は低下していきます。

事業に改革する余地を感じない、あるいは事業を展開する業界そのものが衰退しているなど、事業の黒字化をのぞめないようなら撤退を検討するのがおすすめです。

不採算事業立て直しプロセス

赤字の膨らんだ不採算事業であってもいざ撤退するとなると事業への思い入れ、働く従業員や関連会社のことを思うと、簡単に切り捨てることもできないでしょう。

撤退の判断がつかない不採算事業があるなら、積極的な改革によって早急に立て直しを目指すのがおすすめです。ここでは、不採算事業立て直しのプロセスについて順を追って解説します。

1.現状を分析する

不採算事業の立て直しは、事業を赤字にしている課題を明確にするために現状を分析することから始めます。このとき、どれだけ具体的に課題を浮き彫りにできるかが、立て直しのカギを握るのです。

具体的には、過去10年について事業に関連する数値と数値以外の部分で分析します。

数値とは、売上など事業の業績を示すものです。各期・各年度の数値を確認し、仕入と売上にミスマッチや赤字に傾いた期の事業の動向など、不採算事業となった経緯と原因を探ります。

数値以外とは、企業や事業の体制、業界の動向、事業の強みや弱みなどです。事業では働く従業員の存在は無視できません。従業員が満足して働けるような環境であるか、従業員が仕事へのモチベーションを持てる目標があるかなども、大切な分析基準です。

これらを分析すれば、業績改善や経営判断に役立てることができるでしょう。

2.無駄なコストをカットする

事業をマイナス収支にする原因のひとつとして、無駄なコストの存在があげられます。

人件費、仕入費、外注費など、事業の運営には様々なコストがかかっています。

無駄が生じやすいのは接待交際費です。販路拡大や取引先との関係改善など目的があってのコストであっても、その支出が事業の発展に役立つものでなければ意味はありません。また、割引率にひかれて商品を大量仕入れしたのに、結局在庫を抱えることになれば、赤字になってしまいます。

気をつけたいのが人件費の扱いです。安易に給与カットを行えば、従業員の仕事へのモチベーションを下げて、かえって赤字が膨らむことも考えられます。また、リストラによる人員削減は従業員の生活に大きな影響を及ぼすので、じゅうぶんな対話と再就職先の斡旋などの配慮が必要です。

コストカットをするときは、商品やサービスのクオリティを維持し、事業全体の信頼を落とさないことが大切です。

3.売上を向上させる

コストカットで支出を抑えたら、売上を向上させて不採算事業の黒字化を目指します。

売上を上げるのにもっとも簡単な方法は、商品やサービスを値上げして客単価をあげることでしょう。しかし、やみくもに単価を上げれば顧客離れが起こり、結果としてさらに業績が悪化する恐れもあります。とはいえ、新たな商品やサービスでヒットを生み出すのは簡単なことではありません。

そこでおすすめなのが営業方法の見直しです。

商品やサービスの売り方を改善する、顧客へのアプローチ法を変える、リピーターを生む仕組みを作る、売れ筋商品に付加価値をつけたバックエンド商品を開発するなど、様々な見直しが考えられます。

営業方法には、広告宣伝費にコストをかけたり値下げによる薄利多売に路線変更したりといった方法もあります。しかしすでに赤字化している不採算事業で行うと、収支のバランスがさらに悪化してしまう可能性があるので注意して下さい。

4.利益を改善する

売上はそれなりにあるものの、利益が少ないようなら、不採算事業となった原因に仕入原価の高さ、価格設定の低さ、廃棄などによる損失の発生などが考えられます。まずは原因を特定して、現状を改善していくことが大切です。

たとえば、仕入原価が高すぎるなら、仕入先を変更したり仕入値を交渉したりするといいでしょう。価格が低すぎる場合は、原価や市場動向を把握して適正なものに変えます。また、廃棄などによる損失に対しては、無駄な工程がないか業務効率を見直すのが有効です。

5.従業員に当事者意識を持たせる

不採算事業で働く従業員は、仕事にストレスを抱え、ネガティブな想いを抱くものです。そこで重要となるのが、従業員に事業の命運を握る当事者としての意識を持たせることです。

立て直しの計画を立てるのは経営者であっても、実行するのは現場の従業員です。経営者が懸命に取り組む姿勢を見せ、従業員とのあいだに信頼関係を築くことが大切です。

経営者と従業員とのあいだに「不採算事業の立て直しに向けて働く」という気持ちの共有がなければ、事業は改善に動かず内部から崩壊してしまうかもしれません。

現場の声を聞き入れて積極的にフィードバックを行い、目標や事業計画の認識を高めるなど、「立て直し」という大変な状況下でも、経営者として従業員がポジティブに働ける環境を整えるようにしましょう。

まとめ

不採算事業の生み出す赤字は、経営者にとって悩みのタネでしょう。不採算事業を放っておくと会社の経営にも悪影響です。

しかし、「立て直し」と「撤退」を決断するのは難しいですが、赤字の部分のみで判断するのではなく、他の事業との関連性や今後の収益性などを見極めるようにして下さい。

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不採算事業の立て直しは容易ではありませんが、経費削減や売上増などを無駄なく計画的に行えば不可能ではありません。経営者と現場の従業員が共通したゴールに向かい、一丸となって進むことが成功の決め手となるでしょう。