1on1面談とは?|成功させるポイントや話題例も紹介

会社において「面談」と言うと、人事評価を伝える面談を想定する方が多いのではないでしょうか。しかし近年では、アメリカのシリ …


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

会社において「面談」と言うと、人事評価を伝える面談を想定する方が多いのではないでしょうか。
しかし近年では、アメリカのシリコンバレーから生まれた「1on1面談」という手法が注目を集めています。
1on1面談は、人材育成において効果的な取り組みですが、実施にあたっては面談者側の適切な理解が重要です。
この記事では、1on1面談の概要や従来型の人事面談との違い、メリットやデメリットなどについて解説します。

1on1面談とは?    

1on1面談とは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。
上司が部下と向き合い、現在の悩みや今後のキャリアに関する悩みなどについて把握し、モチベーションアップや育成・支援につなげます。また、心身の健康状態を確認したり業務・組織の改善点を吸い上げたりすることも、1on1面談の目的です。

対話によって部下の成長を促すためには、上司にはコーチングやカウンセリングなどのスキルが求められます。
導入にあたっては、必要に応じて上司に対する研修を実施することも重要です。

人事面談との違い

1on1面談について理解するために、従来の人事面談との違いを整理しましょう。

 1on1面談人事面談
実施目的悩みや不安などを引き出すこと指示・指摘・連絡を行うこと
コミュニケーションの形式対話(双方向的)通達(一方的)
実施サイクル1か月~1週間に1回半年~四半期に1回

両者の違いを簡単にまとめると、上記のとおりです。
従来の人事面談では、上司から部下に対する一方的な「通達」をメインとしており、部下を管理するための進捗管理、情報や人事評価の通達・説明などが主な目的とされています。

一方、1on1面談は上司が部下と目線を合わせて対話を行います。
部下の悩みや課題を聞き取りサポートするだけでなく、ときには上司も自らのことを話して部下と共有する場です。

従来の人事面談が上司主体の場であるとすれば、1on1面談は部下が主体となるようにさまざまな話を聞く場だと言えるでしょう。

1on1面談のメリット

1on1面談には、以下のようなメリットがあります。

【主なメリット】
・信頼関係の構築ができる
・部下の成長サポートができる

上司と部下が対話することで人間関係を構築できることが、1on1面談の大きな魅力です。部下が心配していることや課題をしっかりと聞き取ることで、人材育成につながるだけでなく貴重な人材の流出防止にもつながります。1on1面談は、部下だけでなく上司・会社にも大きなメリットがある施策なのです。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

お互いの信頼関係が構築できる              

1on1面談によって、上司と部下の信頼関係を構築できます。
部下の課題や悩みを解消し、上司が自らのことをオープンになって話すことで、お互いの距離が近くなるためです。
コミュニケーションを取れていない上司に対して、部下は悩みや課題を感じても相談できません。

悩みを抱えたままになってしまうだけでなく、場合によってはそのまま会社を辞めてしまうこともあるでしょう。
部下としてはずっと悩み続けた末での決断ですが、上司や会社からすれば突然の退職です。
人材の流出はそれ自体が会社の損失であり、突然の人員補充にもさらなるコストがかかってしまいます。

そのため、1on1面談で相互理解を深め、部下から悩みを相談しやすい関係性を構築することが大切です。

部下の成長を促進する            

部下の成長促進も、1on1面談の利点の1つです。
面談を業務の振り返りの時間にすることで振り返りを習慣化させ、自立して成果を上げられるようにサポートします。
多くの企業において、基本的な業務内容自体はOJTとして職場で教えていきます。
しかし、業務の振り返りや改善方法については教えず、多くの場合で部下に任せる状態になっていることが実態でしょう。

また、定期的に対話を続けることで、部下の評価に対する納得感も得やすくなります。

人材育成で大切なこととは? 1対1面談の実践方法も解説
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1on1面談のデメリット

1on1面談には、以下のようなデメリットがあります。

【主なデメリット】
・ 実施にあたっては一定の信頼関係が必要
・ 上司に一定のスキルが求められる
・ 時間的な負担が大きい

上司と部下に一定の信頼関係がなければ、実施しても部下の負担になるだけかもしれません。

対話の場を設けたとしても、そもそも声を上げづらい環境下では効果が薄いためです。

また、実施にあたっては、上司に一定のスキルが求められます。

話を上手にリードし、部下から話を引き出さなくてはならないためです。

スキルがない上司の場合、一方的なティーチングの場になってしまうことも考えられます。

1on1では双方向のやり取りが重要であり、一方的なやり取りでは信頼関係も構築できません。 さらに、週~月単位で定期的に実施するとなると、時間的な負担も決して無視はできないでしょう。

目的別:1on1面談の話題例

1on1面談においては、目的を持たなければ雑談のみで終わってしまうこともあります。
そのため、以下のように部下が積極的に話したくなる話題を設定することが大切です。

【話題の具体例】
・ 部下の業務へのアドバイス
・ 部下の健康やメンタルチェック
・ 部下の評価やキャリア設定
・ お互いの興味関心があること

目的1. 部下の業務へのアドバイス         

部下は、管理者・上司に対して自分の業務に関する適切なアドバイスを求めています。
部下からは言い出しにくいことが多いため、以下のような悩みを自発的に話しやすい雰囲気を作ることが大切です。

【話題例】
・ 業務の進捗に関する不安
・ 業務上のトラブルの有無
・ 職場での人間関係 など

業務改善だけでなく、寄り添って話を聞くことで部下のモチベーション維持にもつながるでしょう。

目的2. 部下の健康やメンタルチェック

部下の健康やメンタルの状態確認も、1on1面談にて行っておきたいことの1つです。
以下のような話題を取り上げ、話しているときの部下のしぐさや顔色も確認するようにしましょう。

【話題例】
・ 心身の不調
・ 人間関係の悩み
・ 労働時間・業務量について
・ 毎日眠れているか
・ 業務内容や結果に対するフォロー

悩みを抱えたままでいると、ますますストレスが溜まり体調にも悪影響を及ぼします。
休職や退職につながらないように、定期的に上司が相談に乗ってフォローすることが大切です。

目的3. 部下の評価やキャリア設定

評価・キャリア共に部下の関心は高く、キャリア設定が明確になれば部下のモチベーション・生産性の向上が期待できます。そのため、以下のような話題を積極的に取り入れましょう。

【話題例】
・ 担当業務に対する自己評価
・ 将来的に挑戦したい業務(夢)
・ 数年後の理想の自分
・ 好きな仕事
・ 得意な仕事
・ 所属を希望している部署
・ 理想のキャリアのための障壁になること

目的4. お互いの興味関心があること

お互いに興味・関心があることを話題に取り上げることもおすすめです。
プライバシーへの配慮は怠らず、お互いの理解を深めることを目的として以下の話題を取り上げましょう。また、アイスブレイクを目的として以下のような話題を取り上げることもおすすめです。

【話題例】
・ 話題になっているニュース
・ 趣味・特技
・ 休日の過ごし方
・ 最近嬉しかったこと
・ 最近見た映画や動画、テレビ番組など

1on1面談を成功させるポイント

1on1面談の成功には、以下のスキルについて理解を深めることが重要です。

【大切なスキル】
・ コーチング
・ ティーチング
・フィードバック

いずれかの方法が優れているという訳ではなく、上記3つの手法を局面に応じて上手に使い分けることが大切です。部下の成長を第一に考え、一方的なミーティングにならないようにさまざまなスキルを活用しましょう。また、部下のメンタル面の管理においても、上記のスキルを活用した双方向のコミュニケ-ションが欠かせません。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

コーチング

コーチングとは、質問や傾聴を繰り返すことで相手に問題・課題解決のための行動を促すことを指します。

「傾聴」とは、相手が話している内容をもととしてその背景にある考えを理解する、「聴く」スキルのことです。

話を聴きながら適切な問いを与えることで、相手に自分の考えを整理させて成功のための手段・方法に自ら気づかせます。

また、部下の話をしっかりと聴くことで、上司に対して安心感や信頼感を抱いてもらうことにもつながるでしょう。 答えを与えてしまうのではなく、相手が答えを持っているというスタンスで、考えを引き出すことが重要です。

ティーチング

ティーチングとは、指導によって相手を任意の方向に導くスキルのことを指します。

コーチングでは部下に考えさせることを目的としていますが、ティーチングでは上司が部下を導くことが目的です。

上司が持っている知識を示すことで、部下は効率的に業務を習得できます。

事前に答えが決まっている業務に関しては、ティーチングの手法が適しているでしょう。

ただし、知識を直接伝えるため指導される側が受け身になりやすい点には注意が必要です。 自分自身で考える機会を奪うことにもなりかねないため、コーチングとの使い分けやバランスが求められます。

フィードバック

フィードバックとは、部下の行動について上司が感じたことを、部下に伝えることです。

部下の成長のためには、成功/失敗した要因や、努力すべきポイントについても考えさせることが大切です。

ただし、フィードバックの際には一方的な批判や「人格否定」になる発言は決してしてはいけません。

例えば、「頭が悪い」、「性格が暗い」などというのは、人格否定になりパワハラとみなされてしまいます。

部下の心身にも悪影響を与えてしまうため、相手の尊厳を傷つけるような言葉は選ばないようにしましょう。

性格ではなく部下の「行動」について、個人的な感情や価値観を加えない客観的な意見を伝えることがポイントです。 決して上から目線にならないように、また、ポジティブなフィードバックも伝えるように注意しましょう。

まとめ

1on1面談とは、上司と部下が1対1になって行うミーティングのことです。

1on1面談では、従来の人事面とは異なり、一方的ではなく双方向のコミュニケーションを行います。

部下の話を傾聴し適切なアドバイスを行うことで、人間関係の構築や部下の成長促進などにつなげることが可能です。

ただし実施にあたっては、上司と部下に一定の信頼関係があることや、上司が一定のスキルを有していることが求められます。 コーチングやティーチング、そしてフィードバックを上手に活用し、1on1面談を成功に導きましょう。