心理的安全性とは?|企業やチームにもたらす7つのメリットを紹介

心理的安全性は生産性の向上やイノベーションの創出に結びつくとされ、大企業からスタートアップまでさまざまな企業が注目してい …


この記事は約15分で読み終わります。

監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

心理的安全性は生産性の向上やイノベーションの創出に結びつくとされ、大企業からスタートアップまでさまざまな企業が注目しています。Googleのリサーチによると、実際に、成功しているチームほど心理的安全性が高いことが明らかになっています。

ただ、「心理的安全性は重要だ」と感じながらも、具体的にどのようなメリットがあるのか、どうやって向上させればいいのか分からない方も多いでしょう。

この記事では、心理的安全性とは何かを説明し、もたらされる効果やメリット、向上させるための具体的な方法を紹介します。

心理的安全性とは    

「心理的安全性(psychological safety)」とは、職場や組織の中でメンバー同士が自由に発言できる空気の度合いを示すものです。心理的安全性が高いほど風通しが良く、イノベーションが生まれやすいといわれています。

ここではまず、心理的安全性の意味と心理的安全性が注目される理由を紹介します。

心理的安全性の意味

心理的安全性は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)教授によって提唱された考えです。エイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性を次のように定義しています。

I define psychology safety as a belief that one will not be punished or humiliated for speaking up with ideas, questions, concerns or mistakes, and that the team is safe for inter-personal risk-taking.

出典:Amy C. Edmondson

翻訳すると、次のとおりです。

私は心理的安全性を、アイデア、質問、懸念、ミスを発言しても罰せられたり、恥をかかされたりしないという信念であり、チーム全体が人間関係のリスクを取っても安全であると感じられることだと定義します。

心理的安全性が高い状態であれば、組織やグループのメンバーは自己表現をしやすく、失敗やミスに対しても気兼ねなく向き合うことができます。その結果、創造性や生産性の向上、ストレスや不満の軽減、チームワークの強化などの効果が期待されます。

心理的安全性が注目される理由

心理的安全性が注目されるようになったのは、Google社が2012年におこなったプロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)と呼ばれる企業向けリサーチが背景にあります。プロジェクト・アリストテレスでは世界中から集めた180のチームを分析し、「どのような力学がチームに影響を与えるか」を導き出しました。

その結果、判明した力学は以下の5つです。

  1. 心理的安全性:チームのメンバーがリスクを犯しても、馬鹿にされたり罰せられたりしない状態
  2. 相互信頼:チームのメンバーがクオリティの高い仕事を時間内に仕上げられる関係
  3. 構造と明確さ:仕事の職務やプロセス、目標、成果指標がメンバーにとって理解できるものになっているか
  4. 仕事の意味:チームメンバーが属人的な目的(経済的な安定を得るため、家族を支えるため、など)を持っているか
  5. インパクト:「意義がある」とメンバーが主観的に思える仕事か

中でもGoogleによって「圧倒的に重要」と述べられているのが心理的安全性です。
Googleの分析によると、「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低いうえに収益性が高く、ポジティブな評価を与えられる機会が2倍多い」と判明しています。

※参考:Google reWork|「効果的なチームとは何か」を知る

心理的安全性という概念に対して、近年、世界的に注目が高まってきています。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

心理的安全性が低くなることによるリスク

心理的安全性が低いと、さまざまなリスクが発生します。提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授は、TEDxHGSEのスピーチ*で「4つの心理的安全性を損なう要因と特徴行動」として次のように述べています。

・ Ignorant(無知だと思われる不安)によって、質問ができなくなってしまう
・ Incompetent(無能だと思われる不安)によって、ミスを認めなくなってしまう
・ Incompetent(邪魔をしていると思われる不安)によって、アイデアを出さなくなる
・ Negative(ネガティブだと思われる不安)によって、現状を批判しなくなる

ここでは、その結果としてもたらされるリスクを次の4つに分けて紹介します。

1. 相談しにくい空気が醸成される
2. 挑戦しにくくなってしまう
3. チームワークが悪くなる
4. 意見や本音が言えなくなってしまう

*参考:YouTube|Building a psychologically safe workplace | Amy Edmondson | TEDxHGSE

相談しにくい空気が醸成される             

心理的安全性が低い環境では、メンバーが「『そんなことも知らないのか』と思われるかもしれない」と感じ、相談しにくい空気が醸成されます。結果として、さまざまなトラブルが発生しかねません。

例えば連絡や報告を怠ったり、意味や内容を理解しないまま仕事を進めたりして、重大な事態に発展してしまうかもしれません。小さな問題や不満が表面化せずに放置されることで、問題が大きくなり、最悪の場合は組織の崩壊につながるリスクもあります。

挑戦しにくくなってしまう

心理的安全性が低くなると、「『なんでこれができないんだ』と思われるかもしれない」と感じ、ミスを認めなくなってしまいます。失敗を恐れたり批判的な目で見られることを避けたりするため、チームの成長やイノベーションの創出が阻害される恐れがあるでしょう。

特に、イノベーションの創出は日本社会が抱える喫緊の課題です。
経済産業省も次のように述べています。

我が国が第4次産業革命の新たな汎用技術(AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、分散台帳技術(ブロックチェーン)等)を最大限にいかし、生産性向上や経済成長につなげるためには、企業によるイノベーションの実行が重要です。

出典:経済産業省|日本企業におけるイノベーション創出に向けた経営について

心理的安全性が低くなることでメンバーの挑戦心を損ねてしまうと、イノベーションの創出につながりません。生産性の低下や人材の離職なども懸念されます。

チームワークが悪くなる

心理的安全性が低いチームでは、「自分はチームの邪魔をしているかもしれない」と感じ、相手の意見や行動を受け入れることが難しくなります。メンバーの足並みが揃わず、信頼関係が希薄になり、お互いにサポートし合うことができなくってしまうでしょう。

その結果、プロジェクトの進捗が遅れたり、品質が低下したりするリスクが考えられます。

意見や本音が言えなくなってしまう              

心理的安全性が低い環境では、メンバーが自分の本音や意見を言いにくくなります。「『あの人はすぐに人の意見を否定する』と思われるのではないか」と感じ、自分の意見を出さなくなってしまうでしょう。

意見や本音が言えなくなってしまうと、仕事にやらされ感が出てしまい、モチベーションの低下を招きかねません。場合によっては、退職者や休職者が続出するケースも想定されます。

心理的安全性がもたらす効果やメリット

心理的安全性を高めることにはさまざまな効果やメリットがあります。ここでは次の2つに分けて、効果やメリットを紹介します。

・企業における効果やメリット
・チームやメンバーにおける効果やメリット

企業における効果やメリット

企業における効果やメリットは4つあります。

  • 生産性が高まり、売上の増加につながる
  • イノベーションが促進されやすくなる
  • 離職率が下がり、優秀な人材の定着が期待できる
  • トラブルを未然に防ぐことができる

生産性が高まり、売上の増加につながる

心理的安全性が高い環境は、生産性向上につながります。自由に発言ができる風土があるため、よりクリエイティブで建設的なアイデアを生み出し、効率的な問題解決や改善策を提案できるからです。
また、コミュニケーションがスムーズに進み、情報共有が円滑に行われることから、プロジェクトの品質向上も期待できるでしょう。さらに、メンバー同士が相互に信頼し合い、目標に向かって働くことができるため、チーム全体のモチベーションアップにもつながります。

イノベーションが促進されやすくなる

心理的安全性が高い企業は、メンバーが自由に意見を出し合うため、さまざまな考え方やアプローチが生まれます。新しいアイデアや斬新な提案が次々と誕生し、イノベーションが創出されやすくなるでしょう。

さらに、心理的安全性が高くなるとメンバーが自分自身を自由に表現でき、スキルや知識を最大限に発揮できます。こうした環境が整えば自己実現や成長が促進され、イノベーションにつながる新規事業を生み出すことができるでしょう。

離職率が下がり、優秀な人材の定着が期待できる

心理的安全性が高ければ、離職率が低下します。自分の意見や本音を伝えやすくなり、人間関係の改善が期待できるためです。 厚生労働省によれば、男女ともに約10%〜15%の方が「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由で離職に至っています。

人間関係が理由で離職した人の割合

種類男性女性
25~29歳15.2%14.6%
30~34歳10.4%11.6%
35~39歳9.6%13.0%
参考:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」

心理的安全性を確保できれば、人間関係に悩まされるリスクが少なくなるため、離職率の改善や優秀な人材の定着が期待できるでしょう。

トラブルを未然に防ぐことができる

心理的安全性が高い職場はトラブルの防止も期待できます。メンバーが自分自身のミスや失敗を正直に報告し、相互にサポートし合うことができるためです。

例えば、製品の不具合や顧客からの苦情に対してもメンバーが素早く報告し、チーム全員で問題解決に取り組むことができるでしょう。コミュニケーションが円滑になることから、トラブル自体が減少する可能性も高いです。 結果として、企業にとってはコスト削減やブランドイメージの向上につながることが期待できます。

チームやメンバーにおける効果やメリット

心理的安全性は企業だけでなく、チームやメンバーにもさまざまな効果やメリットがあります。主な効果やメリットは以下の3つです。

・職場の風通しが良くなる
・不測の事態に対応しやすくなる
・仕事に対するモチベーションが高くなる

職場の風通しが良くなる

心理的安全性が高まることで、職場の風通しが良くなります。チームメンバーが意見を言い合うことができ、個人的な感情や考えを正直に伝えられるためです。どのような意見も否定されることがないため、建設的な議論ができるようになるでしょう。
また、一人で悩みを抱えず、仕事上の問題を共有することで、ストレスやプレッシャーを軽減することができるのも大きなメリットです。
厚生労働省によると、半分以上の労働者が仕事に強い不安や悩み、ストレスを感じています。

参考:厚生労働省|令和2年版過労死等防止対策白書

心理的安全性が高い風通しの良い職場を作ることができれば、ストレッサーが少なくなるため健康的に仕事に取り組めるでしょう。

不測の事態に対応しやすくなる

心理的安全性が高いチームやメンバーは、不測の事態が起きても柔軟に対応することができます。さまざまな提案や発言が否定されることなく聞き入れてもらえるためです。 心理的安全性が低いとミスやトラブルが発生しても、「報告したら怒られるかもしれない」と感じ、放置してしまいかねません。
そうすると企業に大きな損害を与えるだけでなく、メンバー個人のトラブルに対応できる能力も磨かれなくなってしまいます。

仕事に対するモチベーションが高くなる

心理的安全性が高い環境では、メンバーが自由にアイデアや意見を出し合い、課題に対して積極的に取り組むことができます。その結果、自己実現や成長の機会が増え、仕事に対するモチベーションが高まります。
厚生労働省によると、「仕事に対する意欲が低くなった理由」の第3位が「職場のコミュニケーションが円滑でないから」です。

画像出典:厚生労働省「働く人の意識と社会の課題」

心理的安全性が確保されているチームでは、発言や提案が否定されたり批判されたりすることはありません。コミュニケーションが取りやすくなることから、仕事のモチベーションアップにもつながります。

心理的安全性を向上させる方法

心理的安全性を向上させる方法はいくつかありますが、ここでは特に重要とされる4つの手法を紹介します。

・ 面談(1on1ミーティング)
・ OKR(Objectives and Key Results)
・ ピアボーナス
・ フィードバック

面談(1on1ミーティング)

面談(1on1ミーティング)は、上司と部下による1対1のミーティングを意味します。適切に実施することで上司と部下の距離が近くなり、心理的安全性が保たれやすくなるでしょう。

Googleによるプロジェクト・オキシゲン(Project Oxygen)においても「評価の高いマネージャーほど頻繁にチームメンバーとの1対1でミーティングを行っている」と明らかになっています。Googleがおすすめする1対1ミーティングの手法は以下のとおりです。

定期的にミーティングを開く:決まった時間に定期的(毎週もしくは隔週)に実施する
議題を決める:アジェンダを作成し、共有する
1対1で会う:開始時刻と終了時刻を守り、アジェンダに従う

ただ、毎週もしくは隔週、定期的に1on1ミーティングを実施するのは容易ではありません。定期的な1on1ミーティングが難しい場合、月1回15分程度実施するだけでも効果があります。

参考:Google re:Work|マネージャーにコーチングを指導する

1on1ミーティングを実施する際は、相手の話を傾聴し、アクティブリスニングに徹する姿勢が大切です。むやみに反対したり反論したりしてしまうと、かえって心理的安全性が低くなってしまいます。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

1on1面談とは? | 成功させるポイントや話題例も紹介

OKR(Objectives and Key Results)

OKRとは企業や組織の目標を定め、その達成に向けた「Key Results(キーリザルト/重要な成果)」を明確にするフレームワークです。なぜOKRが心理的安全性の向上につながるかというと、メンバーの自発性を高められるものだからです。

Googleの調査によると、OKRの効果について以下の2点が明らかになっています。

・ 目標を定めて取り組むと、メンバーのパフォーマンスを改善できる
・ 目標の難易度を上げて明確なゴールを設定すると、メンバーのエンゲージメントが向上する

自発性が高まると自主的な発言や提案が増え、職場やチーム内の風通しが良くなり、心理的安全性の改善が期待できるでしょう。Googleが提唱するOKRのポイントは次のとおりです。

・ 目標はすこし高いレベルに設定する
・ 成果指標は数値化し、評価しやすいようにする
・ OKRは組織の全員に公開し、お互いの作業状況を確認できるようにする
・ 目標に対して60~70%の達成率を理想とする

ここで重要なのが、OKRは従業員の評価ツールやタスク管理ツールではないという点です。あくまで目標達成に向けたフレームワークであるという点を忘れないようにしてください。評価が低いメンバーに対しては、次のOKRを改善するためのデータとして捉えましょう。

参考:Google re:Work|OKRを設定する

ピアボーナス

ピアボーナスとはチームメンバー同士が互いに評価し合い、優れた成果を挙げた人に対して報酬を与える制度です。ピアボーナスを導入することで信頼関係が育まれ、お互いの業務に対する責任感が高まります。

例えば、Googleでは一人につき16,000円程度の現金を「他のメンバーに支給できる」という制度が実施されています。ボーナスを受け取ることでモチベーションが高まり、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。

国内においても、ピアボーナスを導入する企業は増えています。

・ 信金中央金庫
・ 富士製薬工業株式会社
・ アース製薬株式会社
・ 株式会社メルカリ
・ 株式会社マイナビなど

フィードバック

フィードバックとは、他者から評価や意見を受け取ることを指します。適切なフィードバックを実施することで、心理的安全性の向上につながります。

大切なのが「適切にフィードバックする」という点です。やり方を間違えてしまうとメンバーにプレッシャーを与えてしまい、かえって心理的安全性が悪化する恐れがあるでしょう。最悪の場合、パワーハラスメントとみなされかねません。

フィードバックの手法は主に3つあります。

・ サンドイッチ型:ポジティブな点、改善点、再度ポジティブな点の順番で伝える手法
・ SBI型:Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(影響)の順番で伝える手法
・ ペンドルトン型:話すことの確認、ポジティブな良かった点、改善点、今後の計画といった順番で伝える手法

メンバーとの関係性や状況、フィードバック対象などによって手法を変えてみましょう。

まとめ

心理的安全性が低くなると、相談しにくい空気が醸成され、メンバーの離職やモチベーションの低下につながってしまいます。反対に、心理的安全性が高いと生産性の向上やイノベーションの創出が期待できるでしょう。

心理的安全性を向上させる方法として挙げられるのが面談(1on1ミーティング)やOKRの設定、ピアボーナス、フィードバックです。ただし、単に実施するだけではあまり効果がありません。チームの状況やメンバーの立場を踏まえて、どのような方法が最適かを考えましょう。