M&A(合併・買収)のメリットとデメリットとは。売り手と買い手の視点を解説!

M&Aは企業間で行われる経営戦略の一環であり、会社同士が合併または買収するプロセスを指します。このプロセスは、業界や経済の変化に対応し、企業の競争力を向上させるために行われます。


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

M&A(合併・買収)とは何か

M&Aは企業間で行われる経営戦略の一環であり、会社同士が合併または買収するプロセスを指します。このプロセスは、業界や経済の変化に対応し、企業の競争力を向上させるために行われます。

M&Aのメリット

M&A(合併・買収)は企業にとって様々なメリットをもたらす重要な戦略的手段です。売り手と買い手の視点から見てみましょう。

メリット: 売り手の視点

売り手企業にとってM&Aは、成長の機会や企業価値の最大化に向けた戦略的な動きとなります。最初に挙げられるメリットは、資産の最適な活用です。不採算な事業や不要な資産を売却することで、企業のポートフォリオをスリム化し、収益性を向上させることが可能です。
また、M&Aは資金調達の手段としても利用されます。売却益や取引による現金の流入は、新規事業の展開や既存事業の強化に活用できます。これにより、企業は市場での競争力を高め、持続可能な成長へとつなげることが期待されます。

メリット: 買い手の視点

買い手企業にとってM&Aは、成長戦略や競争力強化の手段として重要な位置を占めています。まず、市場進出や新規事業展開により、企業は新たな収益源を獲得することができます。買収対象企業の技術や顧客ベースを取り込むことで、自社の事業領域を拡大し、市場での存在感を高めることが期待されます。
さらに、M&Aは競合他社の排除や業界内でのリーダーシップの確立にも貢献します。買収により獲得したリソースや専門知識を活用し、市場でのポジションを向上させることができます。これにより、企業は市場の変化に強く対応し、持続可能な成長を実現する道を拓くのです。

総じて、M&Aは売り手と買い手の両方にとって、戦略的なメリットをもたらす重要なビジネスプロセスと言えます。成功するM&Aには綿密な計画と実行が必要であり、両者の利害調整が鍵となります。

M&Aのデメリット

M&A(合併・買収)が企業にもたらすメリットと同様に、注意深い検討と戦略が必要な理由は、デメリットも同様に存在します。売り手と買い手の視点から、これらの課題に焦点を当ててみましょう。

デメリット: 売り手の視点

売り手企業にとって、M&Aは潜在的なリスクを伴います。最初に挙げられるのは、文化の不一致や従業員の不安です。異なる企業文化の統合は難しく、これが不成功に終わると組織内の不協和音や生産性の低下を引き起こす可能性があります。また、M&Aによる事業再編は、従業員の雇用に不確実性をもたらし、モラルやモチベーションに影響を及ぼすことがあります。
さらに、法的課題も懸念されます。契約違反や未解決の法的問題が後々浮上すると、責任の追及や訴訟のリスクが生じる可能性があります。これらの要素が事前に適切に評価されない場合、企業価値の低下や信頼の喪失につながるかもしれません。

デメリット: 買い手の視点

買い手企業もM&Aにおいてデメリットに直面します。最初に挙げられるのは、統合の複雑さです。異なる企業文化や業務プロセスの調整がスムーズにいかないと、期待した効果を得るのは難しいでしょう。また、合併後の組織再編は、従業員の適切な配置と統合が成功するかどうかが鍵となります。
財務面でもデメリットが潜んでいます。取引に伴うコストや支出が予測以上にかさみ、企業の財務パフォーマンスに圧力をかける可能性があります。さらに、市場の変動や不確実性がM&Aの成果を左右する要因となり、買い手はこれらのリスクに慎重に対処しなければなりません。

総じて、M&Aは潜在的なデメリットにも注意を払う必要があります。事前の詳細な調査と計画が不可欠であり、デメリットを最小限に抑えながらメリットを最大化することが成功への鍵です。

M&Aの成功要因

M&Aの成功には慎重で計画的なアプローチが欠かせません。特に、戦略的プランニングと統合プロセスの二つの要因が特に重要です。

成功要因: 戦略的プランニング

戦略的プランニングはM&Aの基盤です。成功するM&Aには、事前に明確な戦略と目標を設定し、これを実現するための手段を計画することが求められます。これには、マーケットの動向や競合状況の分析、リスクの評価などが含まれます。適切なプランがなければ、M&Aが企業にとって利益をもたらすことは難しいでしょう。

成功要因: 統合プロセス

M&A後の統合プロセスも成功に不可欠です。企業文化の調和や従業員の順応、システムやプロセスの統合が迅速で円滑に進むことが重要です。統合計画が不足していたり、適切なコミュニケーションが取れていない場合、混乱や抵抗が生じ、成果を最大化するのが難しくなります。定期的かつ透明なコミュニケーションが、統合の成功に向けた鍵となります。

成功したM&Aは、これらの成功要因がバランスよく組み合わさることで成り立ちます。戦略的なプランニングが統合プロセスを指導し、逆もまた然りです。絶え間ない調整と柔軟性を備え、変化する市場に対応することが、M&Aの成功につながるのです。

M&Aの失敗要因

M&A(合併・買収)が成功する一方で、失敗に繋がる要因も存在します。文化の不一致と財務の誤算は、その中でも特に重要な失敗要因です。

失敗要因: 文化の不一致

文化の不一致は、M&Aにおける最も深刻な障害の一つです。企業同士の異なる文化や価値観が調和しないと、統合プロセスは複雑化し、従業員の協力が得にくくなります。これが起きると、生産性の低下や人材流出といった問題が生じ、最終的には企業の目標達成を阻害します。文化の統合が成功するためには、リーダーシップの積極的な役割と徹底的なコミュニケーションが必要です。

失敗要因: 財務の誤算

財務の誤算もM&Aの失敗につながる重要な要因です。デューディリジェンスが不十分であったり、財務の健全性が適切に評価されなかった場合、潜在的なリスクが見過ごされることがあります。これにより、買収企業は予測外の負債や法的問題に直面し、取引の失敗が経済的な損失に繋がります。徹底的なデューディリジェンスと専門家の助言を活用し、財務の正確な把握が必要です。

M&Aが成功するためには、これらの失敗要因に対処することが重要です。潜在的な課題を明確にし、適切な対策を講じることで、企業はM&Aプロセスをスムーズに進め、持続可能な成果を得ることができます。

M&Aの実施ステップ

M&A(合併・買収)の実施には慎重なプロセスが求められます。以下は、主要な実施ステップの一部です。

ステップ1: デューディリジェンス

デューディリジェンスはM&Aプロセスの基盤を築く重要なステップです。これには買収対象企業の資産評価、財務状況の確認、法的な検証などが含まれます。目的は隠れたリスクや機会を発見し、取引に関する正確な情報を得ることです。徹底的なデューディリジェンスは、将来的な問題を回避し、成功した統合の基盤を築く鍵となります。

ステップ2: 合意と交渉

合意と交渉は、双方の企業が合意に達するためのプロセスです。価格の交渉や契約条件の調整が含まれます。この際、透明性と公平性が重要であり、双方が満足できる合意を形成することが目標です。戦略的な交渉は、将来の協力関係に良いスタートを切ることが期待されます。

これらのステップは、M&Aプロセスにおいて成功するための土台を築くものであり、各段階での計画と注意深い実行が求められます。途中で発生する問題にも柔軟に対応し、持続可能な成果を追求することが重要です。

M&Aの法的側面

M&A(合併・買収)における法的側面は、取引の成功と持続性を確保する上で不可欠です。以下はその主要な法的側面の一部です。

法的側面: 合意書と契約

合意書と契約はM&Aプロセスにおいて法的な基盤を構築します。取引の条件や責任、紛争解決のメカニズムなどが含まれます。これらの文書は詳細かつ具体的に起草され、両当事者が合意するプロセスを明確にします。法的な専門家の助言を受けつつ、公平かつ明快な契約文書の作成が不可欠です。

法的側面: 税務と規制

税務と規制はM&Aにおいて複雑な問題を引き起こす可能性があります。税務面では、取引に伴う課税効果や節税の機会を検討する必要があります。また、規制面では地域や業界に応じて法的制約が存在し、これに適合するための戦略が求められます。専門的なアドバイスを得ながら、税務および規制上のリスクを最小限に抑えることが重要です。

これらの法的側面に対処することで、M&A取引は法的リスクを最小化し、双方の当事者が安心して取引を進めることができます。法的な専門家の適切な参加が、取引の円滑な進行と成功に不可欠です。

M&Aと企業価値

M&A(合併・買収)は企業価値に直接影響を与える重要な要素です。以下はその主要な側面の一部です。

企業価値の変動

M&Aは企業価値に変動をもたらします。成功裏なM&Aは、市場での競争力向上や収益増加をもたらし、企業価値を上昇させることが期待されます。逆に、失敗すれば企業価値の低下や損失が発生します。買収により得られるシナジー効果や新たな市場への進出が、企業価値の変動に大きな影響を与えます。

企業価値の最大化

M&Aの最終目標は、企業価値を最大化することです。これには慎重な戦略的プランニング、適切なデューディリジェンス、効果的な統合プロセスが必要です。買い手と売り手が共通の目標を追求し、リーダーシップが変革を促進することが成功の鍵です。また、持続可能な成果を得るためには、取引後も市場の変化や競争力強化に柔軟に対応することが不可欠です。

M&Aは企業価値の変動と最大化において戦略的なアプローチが求められる重要な手段であり、成功するためには計画と実行が一体となった総合的な戦略が欠かせません。

M&Aの国際的展望

M&A(合併・買収)は国際的な展望で企業にさまざまなチャンスと課題をもたらします。以下はその主要な側面の一部です。

国際的展望: グローバル化の影響

グローバル化の進展は、M&Aに大きな影響を与えています。企業は国境を越えて事業を展開することで、新たな市場への進出や顧客基盤の拡大を目指します。しかし、異なる国の法制度や規制、為替リスクなどを考慮する必要があります。成功するためには、国際市場における環境への理解と、それに対応する柔軟性が求められます。

国際的展望: 文化と違い

文化の違いは、国際的なM&Aにおける主要な課題の一つです。異なる言語、価値観、ビジネス慣習が統合プロセスを複雑化させる可能性があります。リーダーシップは文化の理解と調和を促進し、従業員の適応を支援する必要があります。また、成功した国際的M&Aには、地元のパートナーシップの構築や、コミュニケーションの円滑化が不可欠です。

国際的展望においては、地域ごとの特異性を理解し、それに適応する戦略が求められます。成功するためには、国際的な視野を持ち、柔軟性と効果的なコミュニケーションが欠かせません。

最終手段としてのM&A

M&A(合併・買収)は事業継続において有効な手段ですが、その決定は慎重に行われるべきです。事業継続が企業の根幹であることから、M&Aは最終手段として選択されるべきです。企業はまず内部での改革や戦略の見直しを試み、成果が得られない場合に外部からの資源統合を検討します。M&Aが最終手段とされる理由は、統合プロセスが複雑でリスクが伴い、従業員や文化の統合が難しいからです。事業の連続性を保ちつつ、外部資源の活用を検討することが、持続可能な成長と企業価値の向上につながります。

まとめ

M&Aは慎重な選択が必要な最終手段である。事業継続を確保しつつ、競争力を高め、成長を促進するための戦略的手法として活用される。成功の鍵は事前の計画とリーダーシップの適切な役割。持続的な価値創造を追求し、統合プロセスにおいて従業員や文化の調和を重視することが企業の成果を最大化するポイントだ。