ワンマン経営は「悪」ではない?向いているケースと脱却のポイント

「ワンマン」という言葉は自分勝手、独裁的という意味合いで使われることが多く、一般的に良いイメージではありません。 しかし、創業したばかりの企業はワンマン経営から始まることが多く、会社経営が順調であれば、必ずしも悪いことではありません。 この記事ではワンマン経営のメリット・デメリットやワンマン経営が向いているケース、逆に脱却した方が良い場合の脱却方法などについて解説します。


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ワンマン経営とは「一人で会社の舵取りをしている」状態のこと

ワンマン経営とは、社長(経営者)が強いリーダーシップを持ち、すべての経営判断を一人で行う会社体制を指します。

新会社法が成立した後、株式会社を一人でも設立できるようになり、いわゆる「一人会社」が増えました。社員(従業員)を雇わぬまま一人で会社を経営している場合も広義の意味でのワンマン経営といえます。

しかしここでは、複数の社員を抱えていることを前提に、経営や意思決定について社内で話し合うことなく、社長が一人で切り盛りしていることをワンマン経営の定義とします。

設立したばかりの会社は、必然的にワンマン経営になることがほとんどです。ワンマン経営は、必ずしも悪というわけではありません。

ワンマン経営のメリットとデメリット

中小企業ではその規模などから役員などを置かず、実質的にワンマン経営となっているところも多いでしょう。ワンマン経営にはメリットとデメリットがそれぞれあります。

自身がワンマンなのでは、と思う社長は以下の点をチェックしてみましょう。

ワンマン経営のメリット

ワンマン経営によるメリットには以下のようなものがあります。

意思決定のスピードが早い

意思決定から直ちに行動に移るスピードの速さは、ワンマン経営の最大のメリットです。

日々変容する社会情勢や新たなニーズを敏感にとらえ、迅速に反応してビジネスチャンスを得るためには、会議や意見交換をその都度経ていては間に合わないかもしれません。

特に初動の遅れが業績に大きく響く業種では、経営判断のスピード感は重要なポイントです。

責任の所在が明確になる

社長が事業の方針をすべて決定し、行動を起こすため、その結果に対する責任も明確に社長一人が負うことになります。

トラブルがあった際に責任の所在が不明な状態では、社員同士が責任を押し付け合い、社内の雰囲気が悪化しかねません。社長という明確な責任者がいることで、社内のトラブルの防止につながります。

社員に緊張感が生まれる

ワンマン経営では、社長の言動が社員に強い影響を与えるため、社員に緊張感が生まれます。ほどよい緊張感は社員のやる気を引き出し、業務の効率を上げるのにも効果的でしょう。

ワンマン経営のデメリット

一方、ワンマン経営には以下のようなデメリットもあります。

社員の自主性が育ちにくくなる

社長が経営を一手に担っている会社だと、社員は「社長の言うとおりにしていれば良い」「自分の意見など聞いてもらえない」という諦めから向上心が育ちにくくなります。

さらに、自分に意見したり逆らったりする社員を容赦なく切り捨てる社長だと、次第に社員は委縮し、イエスマンだけが残るようになります。ワンマン経営で生まれる緊張感は方向性を誤るとデメリットになってしまうのです。

経営者に負担がかかりやすい

何かあったときの責任をすべて社長である自分が負うのは、大変なストレスがかかることです。経営状態が悪化すれば自分だけでなく、社員やその家族が路頭に迷ってしまうため、精神的負担は相当なものでしょう。

さらに、会社業務のすべてを自分が掌握しなければ気が済まない社長の場合、多忙による身体的な負担もかかることになります。

社長の判断ミスに気付きにくい

大切な意思決定や行動をすべて社長が行い、社員はただその指示に従っているだけだと、もし社長が判断ミスを犯しても気付く人がおらず、取り返しがつかなくなるおそれがあります。

また、他者の意見を聞かず長年ワンマン経営を続けた結果、社会情勢の変化や市場の動きについていけず、会社が時代に取り残されてしまうということもあります。

悪いことだけじゃない!ワンマン経営が向いているケース

ワンマン経営のメリットとデメリットは前述のように裏表の関係にあります。ワンマン経営が向いているかどうかは、社長がメリットの部分を表にできるかどうかが大きいといえるでしょう。

スタートアップや規模の小さい会社である

業種にもよりますが、新たに事業を興し、既成の市場に踏み込んでいかなければならないスタートアップ時には、やはり意思決定のスピード感と会社を引っ張っていくリーダーシップを併せもったワンマン社長による経営が向いています。

また、規模の小さい会社は社長が隅々まで目を配ることが比較的簡単なので、むしろワンマンの方が統一感のある、バランスの取れた経営ができるかもしれません。

社内に「ナンバー2」となる人物がいる

ワンマン経営のデメリットの多くは、社長と社員の間を取り持つ存在がいないことが原因で生まれます。

双方に理解を示し、ときには潤滑油に、ときには緩衝材となる「ナンバー2」がいれば、社員は働きやすくなりますし、社長も負担が軽減するでしょう。もとよりそのように頼れる側近を見つけられる社長であれば、人を見る目があるので会社もしっかり回るでしょう。

また、もし社長に何かあってもナンバー2が代行することができ、後に後継者となれば会社の長期継続が見込めます。

社長が社員から信頼されている

ワンマン経営であっても、社長に魅力があり、人望が厚ければ社員の離職率は低くなります。

社員とコミュニケーションを取ることももちろん必要ですが、大切なのは公平感を失わないことです。

自身の好き嫌いだけで社員を動かしたりせず、会社のトップとして正当に評価し、社員への感謝の気持ちを忘れない社長であれば、社員は信頼し、社長についていくでしょう。

ワンマン経営から脱却するための3つのポイント

自分がワンマンであることを認めつつ、上記のデメリットを実感している社長は、ワンマン経営からの脱却を図るのもひとつの手です。その方法を探ってみましょう。

1.社員に「指示」だけでなく「支援」をする

社員に対し、一方的な指示のみを行うことを控え、ときには決定権を社員に与え、社員のやり方に任せてみましょう。

ただし、任せたあとは放っておくのでなく、必要であればヒントを与えるなどの支援を行い、最初のうちは失敗も想定したうえで見守ることが大切です。

仕事を任せるうちに、次第に社員の自主性が芽生え、主体的に業務を進めるようになるでしょう。

2.ナンバー2となる後継者を育てる

信頼できるナンバー2を社長と社員の取り持ち役だけに納めるのはもったいないことです。自身の経営をサポートしてもらい、より合理的な経営判断を行えるようになれば、ワンマンからの脱却ができるでしょう。

さらにナンバー2にリーダー候補であることを伝え、明確に権限をもたせ後継者として育てましょう。

3.企業理念を浸透させる

企業理念は、会社経営を行う際の方向性や価値観、判断軸を示すものであり、設立者である社長の想いでもあります。

自社の企業理念を明確に言葉にし、社内外に浸透させることで、その想いに賛同する社員が集まりやすくなり、今いる社員もビジョンが明らかになり仕事がしやすくなるでしょう。社員の自主性を育てることにも役立ちます。

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まとめ

ワンマン経営は、小規模で意思決定にスピードが求められる会社などに向いています。しかし、社長に責任感と人望がなければ社員は離れてしまい、会社が社長一代で終わってしまうおそれもあります。

会社に活気がない、自分はワンマン向きではないのではと悩んでいる社長は、思い切ってワンマンからの脱却に取り組んでみてはいかがでしょうか。