多角経営には種類がある!メリット・デメリットを知ろう

日本経済の先行きは、見通しが立ちにくい状況が続いています。自身の事業はこのままでいいのか、ほかにも展開していくべきなのか迷っている経営者の方も多いでしょう。そのような状況下において、長期的に企業を存続させるために「多角経営」を取り入れる企業が増えてきています。 ここでは「多角経営」の定義や種類、メリット・デメリットなどを紹介していきます。


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多角経営とは

多角経営とは、企業がひとつの業種に縛られず多種多様な分野へと経営活動を展開していくことです。

多角経営を行う企業には、業績の低迷で新たな分野を模索するケースや、よりニーズのある分野に経営を広げるケースなど、もともと主力事業分野をもつ企業もいれば、特に主力事業分野をもたず、複数の事業を経営する企業もみられます。

特にコロナ禍において、隆盛を極めていた業種や企業がたちまちのうちに経営危機に陥ってしまうケースがよく見られました。経営姿勢や評判などに問題はなくても、ただひとつの分野に特化することはリスクがともなうといえるでしょう。

不安定な社会で企業の成長と継続を図るために、新たな方向性を見つけ出し、多角経営でリスクの分化を図ることが注目されています。

多角経営戦略の種類

多角経営の戦略として、以下の4種類が挙げられます。

垂直型

垂直型は、企業が現在行っている事業を上流、もしくは下流に向けて展開していく経営方法です。すでに関わりのある取引先や市場を利用できるため、比較的導入しやすくなっています。

垂直型の例としては、以下のケースが挙げられます。

・レストランが食材の生産を行う畑を経営し、野菜などを調達する(下流→上流)
・印刷会社が本を出版する(上流→下流)
・インテリア会社が自社の家具を使ったカフェを展開する(上流→下流)

チョコレート製造機械を手掛ける会社が「自社の機械で最高の作品を作りたい」と、チョコレート専門店を立ち上げたというユニークな例もあります。

水平型

水平型は、既存事業のノウハウをある程度そのまま使える業種へ新規展開する経営戦略です。

水平型の例としては、以下のケースが挙げられます。

・自動車メーカーがバイクを開発する
・ファミリーレストランチェーンがテイクアウト専門店を展開する

集中型

集中型は、既存事業のノウハウを活かす点は水平型と同じですが、その知識を元に新たな分野に進出するのが特徴です。

集中型の例としては、以下のケースが挙げられます。

・写真フィルムの会社が、既存技術とフィルムで使用するコラーゲンを用いて化粧品を開発する
・カメラの製造会社が医療機器を開発する

発想の転換に加えて新たな設備が必要になる場合もありますが、社会の変化に沿いながら企業を発展・継続させやすい形です。

コングロマリット型

「コングロマリット」とは本来業種に関連性のない事業が集まった複合企業という意味です。一企業が現在の事業とは関係のない、新しい分野で事業を展開する多角経営方法をコングロマリット型と呼びます。

コングロマリット型の例としては、以下のケースがあげられます。

・コンビニがATMなどの金融サービスを展開する
・電機メーカーが損保サービスを展開する

多角経営戦略のメリット・デメリット

多角経営を検討している企業にとって大切なのは、多角経営戦略のメリットとデメリットを把握しておくことです。

ここからは、多角経営のメリットとデメリットを紹介します。

メリット

多角経営のメリットは以下のとおりです。

リスク分散ができる

多角経営のメリットは、なんといってもリスク分散ができることです。

ひとつの事業に頼った経営では、消費者の需要や社会情勢の変化による経営悪化に太刀打ちできないおそれがあります。

カメラや印刷業界のように、ニーズの減少を見越せる場合は次の手を考える時間はあるでしょう。しかし、予想できない事態が起きた場合はどうしようもありません。

多角経営をしていれば、ひとつの事業の売上が落ち込んだときも他事業である程度収益を確保でき、状況を見つつ別の事業にシフトしていくことも可能です。

相乗効果が期待できる

次に、多角経営による相乗効果が期待できるというメリットがあります。

流通経路や取引先、ノウハウなどの一部は、ほかの事業でも有効活用できるでしょう。特許や商標などの知的財産、設備や施設も同様です。多角経営は、これらのリソースを活用し、企業活動の活性化をうながします。

また、多角化することで、単独事業であれば本来それぞれにかかるべきコストが削減できるかもしれません。

たとえば、製薬会社がスキンケア事業を展開する際に、自社ブランドの信頼性や医学的見地を活用することでコストを削減でき、かつ新規参入であってもある程度のシェアが見込めるといった例が挙げられます。

ほかにも、人員を効率的に活用できたり、事業への投資を共通化して大規模で行えたりなどの効果も考えられます。

社員のモチベーションが高まりやすくなる

複数の事業があれば、その分主要ポストも増えるので社員のモチベーションが高まります。新事業で自分の可能性を試したいという、意欲のある社員を発掘できることもあるでしょう。

また、経営陣が事業展開に関する社員の意見やアイディアを聞く姿勢を示せば、より社員が主体性をもって仕事に取り組むようになることも期待できます。

デメリット

多角経営のデメリットは以下のとおりです。

投資コストがかかる

多角経営のデメリットとして挙げられるのは、投資コストがかかることです。

既存の経営資源を活用できるとはいえ、新たな事業を立ち上げるのですからコストは当然かかります。

特に多角化で将来的なリスク分散を考えるのであれば、ある程度の規模の事業にするための投資が短期間で必要です。さらに、実際に収益を得られるまでには時間がかかることを覚悟しなければなりません。

初期投資と収益が出るまでの期間を持ちこたえられるだけの資金力が求められます。

投資コストがかかる

次に、企業ブランドが不明瞭になりやすいというデメリットがあります。

既存事業が既にその業界で高い信頼性を得ていた場合、あまりに多角経営を進めると、既存事業についていた顧客がロイヤリティを見出せなくなり、離れてしまうおそれがあります。

一般消費者からも「この会社はいったい何がしたいのか」と不信感をもたれかねません。

多角経営を進める際は、これまでの顧客にも配慮しつつ、慎重に展開していくようにしましょう。

共倒れのおそれがある

また、本業がしっかりしていないと共倒れのおそれがあるのもデメリットです。

将来を見据えての多角経営戦略は、あくまでも現在の事業が安定した収益を得ていることを前提に考えるべきです。

すでに経営が不安定な状況での新事業展開は、十分な投資ができず中途半端になったり、既存事業に回す資本がなくなったりと、結局互いの首を絞め合うことになりかねません。

長期的ビジョンを実現できる資金力と本業の安定性があってこそ、多角経営の基盤となるのです。

コングロマリット型はリスクが大きい

コングロマリット型は、新事業に一から投資することになります。

ノウハウや設備などの共有がほぼなく、分野が違うと新たに人員も確保しなければなりません。初期投資がかさむうえ、もし収益化に失敗した場合に既存事業に再活用しにくいという問題もあります。

まったく異なる分野への進出は十分にリサーチし、リスクを想定したうえで慎重に行いましょう。

多角経営を検討しているが方法がわからない、リスク面で不安があるという方は、ぜひTOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社へご相談ください。

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まとめ

多角経営は、リスクを分散させ企業の発展や長期継続に繋がるものであり、相乗効果や企業に活気をもたらすなどメリットが多い一方で、コスト面などのデメリットもあります。

自社の現状や将来性、資金力などを、専門家を交えて冷静に分析したうえで検討しましょう。