退職者が多い会社の特徴|考えられる7つの原因とおこなうべき対策

退職者の多さは、人手不足に陥るだけでなく、採用教育のためのコストを掛けても無駄になってしまうなど会社の生産性の低下も招き …


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

退職者の多さは、人手不足に陥るだけでなく、採用教育のためのコストを掛けても無駄になってしまうなど会社の生産性の低下も招きます。しかし、退職者対策を講じようにもどうすればいいのか分からないという経営者も多いでしょう。まずは、なぜ退職者が多いのか原因を追究する必要があります。

この記事では、退職者の多い会社に共通する原因を紹介するとともに対策まで解説していきます。退職者問題に悩んでいる人は、対策の参考にしてみてください。

退職者が多い会社は「生産性が低い」?    

退職者が多い会社の生産性が低くなる原因として「人員不足」と「コスト」が挙げられます。退職者が続くことで、業務に対して必要な人員が確保できずに人員不足に陥るものです。在籍する社員一人ずつの業務の割合も広くなり、残業時間や業務過多から肉体的にも精神的にも大きな負担となります。この状態が慢性化すると、さらなる退職者も招く悪循環にもつながるでしょう。また、退職者が続く状況では残る社員のモチベーションにも影響が出てきます。

コストの面でも、採用のためのコストが多発するだけでなく、退職されることでそれまでの教育コストも無駄になってしまうものです。

退職者の多い状況を放置していると、会社の生産性はどんどん低下し、社内環境も悪化していきます。そのため、少しでも早く退職者の増加を防ぐ対策を取らなければならないのです。

退職者が多い会社にみられる原因

退職者が多い会社には、何かしら原因があるものです。どのような原因があるのかを理解することで、対策も立てやすくなるでしょう。大きな原因としては「労働環境」「人間関係」「会社の将来性への不安」が挙げられます。具体的な原因として、以下の7つを詳しくみていきましょう。

・ 人材育成に取り組んでいない
・ 人事評価制度が確立していない
・ 長時間労働が常態化している
・ 有給休暇の取得率が低い
・ 社員同士のコミュニケーションが乏しい
・ パワハラやセクハラが横行している
・ 給与やボーナスが少ない

人材育成に取り組んでいない

人材育成の環境が整っていないと、新人社員は働き方にストレスを感じ退職していく原因となります。教育担当者がいない、いても適切に指導しない場合、新人は業務が分からなくても相談する相手がいません。「仕事は見て覚える」「数をこなして自分で覚えていく」という前時代的な指導法では、今の若い世代には受け入れられないでしょう。

新人側としても、育成過程が分からなければ今後のスキルアップのイメージもわかず、モチベーションの低下を招きかねません。

人材育成の問題を解決するには、適切な育成プログラム作成と教育担当者の配置が必要です。また、スキルアップのための研修会などの機会を設けるのもよいでしょう。特に入社してすぐは不安を抱えやすいのでフォローの体制を整えることが大切です。

人事評価制度が確立していない              

人は自分の成果を適切に評価してもらえなければ、モチベーションが低下していくものです。「頑張ったのに認めてもらえない」「何をすれば評価してもらえるのか分からない」という状況では、仕事に対して不満を抱えてしまうでしょう。

判断基準がない、あっても判断基準があいまいという場合は、社員も自分が正しく評価されているのか分からないものです。

人事評価に対する明確な基準が必要です。営業のように明確に数値で判断できれば良いですが、すべての業務を数値化するのは難しいものです。数値化の難しい職種でも、客観的で明確な判断基準を設けて公開することで評価にする不満を解消できるでしょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

長時間労働が常態化している               

仕事量が多く残業や休日出勤など長時間労働が常態化していると、社員が心身ともにストレスを抱えてしまい退職につながります。仕事にかかる時間が増えることで、休息やプライベートの時間の確保が難しくなり精神的にも大きな負担となるものです。特に、残業や長時間労働しないと評価してもらえないという職場の場合、無駄な残業などで生産性も下がってしまいます。

残業時間や休日出勤を削減して健全な労働環境を整える必要があります。現状を把握し適切な勤怠管理の制度をまずは整えましょう。また、上司がいつまでも残っていると社員は帰りにくいものです。上司が率先して定時で帰るなど対策も同時に進めていきましょう。

有給休暇の取得率が低い

有給休暇を自由に取得できない会社において退職者が多い傾向にあります。仕事を長く続けるには、仕事をプライベート両方の時間を充実させることが大切です。また、有給休暇の取得理由が体調不良や家族の病気という場合もあるでしょう。

どのような取得理由にせよ、社員が有給休暇を取りにくい状況であれば、自然と社員が離れていく原因となります。特に、近年は、福利厚生や有給休暇取得に力を入れている企業が増えている傾向にあるため、取得しにくい会社は避けられてしまう可能性があるのです。

有給休暇取得の社内申請制度の見直しが必要です。社員が簡単に有休を申請でき、許可を得やすい環境を整えましょう。また、上司が率先して有給を使うなど使いやすい雰囲気を作ることも大切です。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

社員同士のコミュニケーションが乏しい          

コミュニケーションの不足は、業務に支障をきたすだけでなく人間関係の悪化の原因になりかねません。会社では上司だけでなく、同僚や部下・他部署の人など様々な人とのコミュニケーションが発生します。コミュニケーションが適切に取れないと、仕事を進めるうえで必要な連絡が取れていないなどの問題にも発展するでしょう。

また、コミュニケーション不足から人間関係が希薄になり、場合によっては悪化してしまうケースも珍しくありません。人間関係の悪化は退職理由としても多いため、トラブルに発展する前に対策が必要です。

社員同士が交流を持てる機会を積極的に設けることが必要です。また、トラブルに発展しそうな場合は、早い段階で人事や上司が改善に動き出すようにしましょう。リモートワークの場合でも、出勤時にはコミュニケーションを取りやすい仕組みを作る必要があります。

パワハラやセクハラが横行している

パワハラやセクハラの横行する職場は、直接の被害者が退職するだけでなく、周りにも悪影響を及ぼします。「次は自分が被害にあうのではないか」という不安を抱えながら仕事をするのは、大きなストレスとなるでしょう。また、そのような雰囲気のある職場で長く働きたいと思う人も少ないものです。

パワハラやセクハラ・悪質ないじめに対する上司の理解が必要です。研修会などを設けてどのような事例がパワハラやセクハラに該当するのかなどの理解を深めるようにしましょう。また、パワハラやセクハラの被害があるようなら、会社としてしっかりと対応する姿勢を見せることも大切です。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

給与やボーナスが少ない

給与やボーナスが少ない会社は、仕事へのモチベーションを下げてしまい退職につながります。さらに、給与の少なさから会社の経営状態や将来に不安を抱き転職のきっかけとなる場合もあるでしょう。また、昇給の仕組みが整っていない場合も注意が必要です。

スキルアップや昇格しても給与に反映されない、何を頑張ったら給与が上がるのかが分からないという状況では、働き続ける気も低下してしまうでしょう。

明確な昇給のビジョンを社員が持てるようにする必要があります。昇給基準を定めて公表することで、社員のモチベーションアップにつながり会社の生産性も向上するでしょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

退職者の増加を止めるための対策

退職者が多い会社は、少しでも早い段階で退職者対策を打ち出す必要があります。退職者の増加を止めるための対策としては、次のようなものが挙げられます。

・ 採用前になるべく多くの情報を提示する
・ 定期的に社員面談を実施する
・ 社員の教育研修を適宜実施する
・ 社員の長時間労働を改善する
・ 社員の評価基準を明瞭にする
・ 社員同士のコミュニケーションを増やす
・ 福利厚生制度を充実させる
・ 多様な働き方を許容する
・ 管理職のためのマネジメント研修を実施する
・ 社員の退職時に理由をヒアリングする


「働きやすい環境」「働きがいのある仕事」を整える必要があります。入社前には、社員のイメージと実際の仕事が乖離しないようにできるだけ多くの情報を提供しておくことが重要です。教育制度や評価基準を整えるなどといった制度の修正も必要になるでしょう。少しでも社員にとって「いつまでも働き続けたい会社」であるように、着実に改善していくことが重要です。

また、退職者の増加をストップさせるには、まずはなぜ退職するのか原因を探る必要があります。とはいえ、退職する理由は人それぞれです。 退職者にきちんと向き合いヒアリングすることで、同じ理由での退職者を防ぐことにもつながります。もちろん、退職者だけでなく日常的に社員と積極的にコミュニケーションを図り、退職の芽を早めに察知して摘み取れるようにすることも大切です。

退職者対策について、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

離職率を下げるには|改善するための対策や企業の取り組みの成功事例

まとめ

退職者が多い会社に共通する原因と対策についてお伝えしました。退職者が多い原因としては、「労働環境の悪さ」や「人間関係」が挙げられます。退職者が多い状況を放置していると、次の退職者を招くだけでなく会社の生産性も低下していくので少しでも早く改善することが大切です。
まずは、詳しい退職理由をヒアリングして何が原因なのかを追究して対策を取っていくようにしましょう。