ウェルビーイングとは|5つの要素や実現に向けて企業が取り組むべきこと

ウェルビーイングは肉体的、精神的、社会的に満たされた状態のことを指し、企業にとっても重要な考え方です。本記事では、ウェル …


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監修 藤間 秋男 -AKIO TOMA-
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

200名の専門家を擁する「TOMAコンサルタンツグループ」の創業者。100年企業創りをライフワークとし、後継者問題に悩む中小企業に事業承継の支援を行う。自身の経営者としての経験を交えた、熱意あふれるセミナーでは、「あきらめない、しぶとい経営」を経営者に説く。

ウェルビーイングは肉体的、精神的、社会的に満たされた状態のことを指し、企業にとっても重要な考え方です。
本記事では、ウェルビーイングの概要から得られるメリット、ウェルビーイングを実現させるための具体的な取り組みなどをご紹介していきます。

ウェルビーイングとは     

ウェルビーイングとは、直訳すると「健康」「幸福」「福祉」という意味を持ちます。
健康と言っても身体の健康のみの狭い意味ではなく、心身や社会的な健康を指し、心身や社会的に満たした良好な状況を表す言葉です。
この言葉は、1946年の世界保健機構(WHO)の設立時に登場した言葉で、次のように定義されています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。

引用:公益社団法人 日本WHO協会

ウェルビーイングは経営手法としてビジネス面でも使われる言葉です。「社員が心身・社会的な面でも満たされる組織環境」を整え、企業に関わる人の幸福に焦点を集める経営方法として、世界的に注目されています。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

ウェルフェアとの違い

ウェルビーイングと同じような言葉にウェルフェア(welfare)があります。
どちらも社員の健康維持や幸福のための言葉ですが、意味が異なります。
ウェルフェアは、直訳すると「福祉」という意味です。
ビジネスでは「福利厚生」という意味で解釈されており、「ウェルフェアサービス」と呼ばれることもあります。
ウェルフェアとウェルビーイングの関係は、ちょうど「目的」と「手段」と言えるでしょう。
ウェルビーイングが社員や企業に関わる人の幸福という目的となり、ウェルビーイングを達成するためにウェルフェア(福利厚生)があるのです。

ウェルビーイングの5つの要素


ウェルビーイングが指す「幸福」はさまざまな要素で成り立っているものです。
現在では、その要素は主に次の2つ指標で示されています。
・ PERMA理論
・ ギャラップ社の調査

PERMA理論による5つの要素              

PERMA理論とは、アメリカの心理学者マーティン・セグリマン教授によって提唱された理論です。
教授の提唱するポジティブ心理学では、幸せを実現するための指標として、次の5つの要素が考案されました。

PERMA理論の5要素

・Positive Emotion:ポジティブな感情
・Engagement:エンゲージメント
・Relationship:良好な人間関係
・Meaning and Purpose:意味や目的
・Accomplishment:達成感

・Positive Emotion:ポジティブな感情
希望や喜び・楽しい・快楽・ぬくもり・愛と言ったポジティブな感情のこと
ポジティブな感情を持つことで心身や社会的な豊かさにつながる

Engagement:エンゲージメント
完全に集中している状態
時間を忘れて仕事や活動に没頭することは幸福なことと言える

・Relationship:良好な人間関係
パートナーや家族・友人など他者から大切にされていると感じられる良好な関係のこと

Meaning and Purpose:意味や目的
生きる意味や意義・目的を自覚すること
人生の目的をもつことで幸せにつながるだけでなく逆境を乗り越えることもできる

Accomplishment:達成感
目標を持って取り組むことで達成感を得られる
達成感は自信を高め幸福感につながる

上記の頭文字を取ってPERMA理論と呼ばれています。
PERMA理論では、これらの要素を満たすことで幸福感や満足感を向上させていくことでウェルビーイングを目指しているのです。

ギャラップ社による5つの要素               

ウェルビューイングに要素、有名なものにギャラップ社の5つの要素があります。
ギャラップ社では、ウェルビーイングに関する調査を実施し、その中で次の5つの要素を定義しました。

ギャラップ社の5要素

・Career Well-being(キャリア ウェルビーイング)
・Social Well-being(ソーシャル ウェルビーイング)
・Financial Well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
・Physical Well-being(フィジカル ウェルビーイング)
・Community Well-being(コミュニティ ウェルビーイング)

・Career Well-being(キャリア ウェルビーイング)
活動に対する充実感や納得感のこと
キャリアには仕事だけでなく勉強や育児などさまざまな活動が含まれる

・Social Well-being(ソーシャル ウェルビーイング)
社交的や良好的な人間関係を築くこと
良好な人間関係や親しい人を持つことで人生の幸せにつながる

・Financial Well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
経済的な幸福のこと
単に収入の多さを言うのではなく、お金の使い方も問われる
他人の為や慈善活動・体験への支出は幸福度が高いと考えられている

・Physical Well-being(フィジカル ウェルビーイング)
身体的に幸福であること
健康状態が良好で活力が十分にある

・Community Well-being(コミュニティ ウェルビーイング)
地域や他人とのコミュニティに参加したり貢献したりすることによる幸福感
コミュニティへの影響力があることで自分に自信が持てるようになる

ギャラップ社の5つの要素は、統計的に導いた幸福の要素です。

ウェルビーイングへの関心が高まっている背景

世界的にウェルビーイングへの関心が高まる中、日本のビジネスにおいてもウェルビーイングへの関心が高まっています。

ウェルビーイングが注目される背景として、次のような要素があります。

・ 働き方改革の推進
・ ダイバーシティの推進
・ SDGsの推進
・ 新型コロナウイルス感染症の流行

働き方改革の推進           

働き方改革が推進され、さまざまな働き方を選べる社会が変化しつつあります。
テレワークやフレックスタイムの導入など、それまでの職場に通勤という働き方にとらわれない働き方ができるようになることで、改めて働き方と向き合うきっかけとなっています。 その中で、社員のモチベーションを上げいきいきと働くための指針としてウェルビーイングが注目されているのです。

ダイバーシティの推進

ダイバーシティとは、多様性・相違点という意味を持ち、年齢や性別・人種・宗教などさまざまな属性の人が集まる集団のことを指します。
ビジネスにおいてもダイバーシティ経営が注目されるように、性別や国籍、年齢を問わず多種多様な人材の活用機会を提供することが必要となっているのです。 このように多様な価値観や人でも安心して働くために、ウェルビーイングが重要になります。

SDGsの推進

2030年までに目指す国際的な指標として「SDGs(持続可能な開発目標)」が存在感を増しています。
SDGsには17のゴールが掲げられていますが、その中の一つに「GOOD HEALTH AND WELL-BEING(すべての人に健康と福祉を)」があるのです。
SDGsはビジネス界にも普及しており、取り入れる企業は増えている傾向があります。

新型コロナウイルス感染症の流行

新型コロナウイルス感染症が流行した影響は、人々の生活を一変させました。
その中で、働き方も変わりリモートワークや時差出勤などさまざまな働き方が推進されています。
多様な働き方が実現しつつある中、その中で社員の満足度や幸福を維持できるかが課題となり、ウェルビーイングへの注目度が高まっているのです。

ウェルビーイングの実現で企業が得られる効果

ウェルビーイングは社員の幸福度を上げるだけでなく、企業にとってもメリットがあるものです。
企業にとってのメリットとしては、次の3つが考えられます。
・ 離職率が下がる
・ 人材採用がしやすくなる
・ 生産性が向上する

離職率が下がる

ウェルビーイングを追求することで、社員にとって働きやすい会社となります。
福利厚生の充実や多様な働き方の選択などを取り入れることで、社員のストレスが軽減できるだけでなく満足度やモチベーションアップにもつながるでしょう。
「この会社で働き続けたい」と思われることで、離職率を低下させることも期待できます。

人材採用がしやすくなる

社員の満足度を高めて働きやすい職場にすることは、採用にも有利になるものです。
離職率が低いことやウェルビーイング経営を実践していることは、企業イメージの向上にもつながり、よりよい人材の確保がしやすくなるでしょう。

生産性が向上する

働きやすく働きがいのある職場にすることで、仕事へのモチベーションも上がり生産性の向上が期待できます。
心身の幸福を実現する過程で、休暇の取得や福利厚生を充実させることは、社員の心身の健康維持にもつながり、欠勤や休職も減少するものです。
厚生労働省の調査によると、従業員と顧客満足度も両方を重視する企業は、顧客満足度のみを重視する企業よりも業績が増加しているという結果が出ています。
制度を整えモチベーションを向上させることで、労働時間を短くしても、短時間で仕事の効率が上がることも期待できます。
また、離職率が低下することで、採用コストの削減や人材の育成が進み、より生産性にも寄与できるでしょう。

ウェルビーイングの実現に向けた取り組み方法

ウェルビーイングを会社で取り入れようと思っても、具体的に何をすればいいのか分からないという経営者も多いでしょう。 ここでは、ウェルビーイング実現の取り組みを具体的に紹介します。

社内のコミュニケーションを増やす

ウェルビーイングでは、人間関係を良好に保つことが必要不可欠です。
社内のコミュニケーションを活性化させることは、人間関係を良好に保つのに役立ちます。 また、気軽にコミュニケーションを取れる職場であれば、相談もしやすくなり精神的な健康も維持しやすくなるでしょう。

定期的にコミュニケーションの機会を設けることやコミュニケーションツールの導入などの方法があります。また誕生会やクラブ活動と言った福利厚生を充実させることもコミュニケーションの活性化につながるでしょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

定期的に社員面談を実施する

社員の悩みや不安を解決することで、精神的なストレスの緩和ができ健康維持や働きやすさにつながります。
とはいえ、悩みを抱えている社員が自ら上司に報告してくれればいいですが、多くの人は一人で抱えてしまっているものです。
定期的に上司と面談の機会を設けることで、悩みを相談しやすくなるでしょう。
また、上司の方からも日常的にコミュニケーションを測ることで面談へのハードルが下がるだけでなく、いつでも気軽に相談しやすい環境を整えることが可能です。
上司には相談しにくいという人や上司がらみの悩みを抱えている人もいます。そのような人に対して相談窓口を設けることもおすすめです。

社員の教育研修を適宜実施する

社員の教育研修が不十分だと、働き方に不安を抱えてしまいストレスになってしまう場合があります。
特に、新入社員はきちんと教育研修しなければ、モチベーションが低下して退職につながってしまう恐れもあるのです。
教育や研修の機会を設けることで、社員のスキルアップにもなり働く意欲の向上にもつながるでしょう。

教育研修は、勤続年数別や職種別・階級別など細かい分類で実施することで社員のスキルアップも図りやすくなります。また、熱心に教育してくれる職場であると分かることで社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

社員の評価基準を明確にする

頑張っても評価されない、今の自分がなぜこの評価か分からないという職場では、仕事へのモチベーションも低下します。
また、正しく評価されないことで会社への不満にもつながるでしょう。
自分の頑張りが正しく評価されることは、働きがいには必要不可欠です。
評価基準がない、あってもあいまいという場合は、基準を明確にして社員に公表するようにしましょう。
また、評価機人があっても一方的に評価して終わりではなく、面談でフィードバックすることも大切です。営業のように数字で表せない職種であっても、評価に納得できるきちんとした基準が必要です。

社員の多様な働き方に対応する

現在は、リモートワークやフレックスタイム制度などさまざまな働き方が増えてきています。
会社に出勤することに固執するのではなく、柔軟な働き方に対応することで社員も働きやすくなるでしょう。
ただ、リモートワークがすべての社員に適しているというわけではありません。
多様な働き方に対応するというのは、リモートワーク一択にするということではなく、様々な選択肢を取れるように制度を整えることが大切です。

リモートワークの場合、社員間のコミュニケーションが希薄になる可能性があります。出社時にはコミュニケーションをとる機会を設けることやコミュニケーションツールの導入なども検討するようにしましょう。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

社員の長時間労働を改善する

労働時間が長いと肉体的にも精神的にも大きな負担となり、健康や幸福感とはかけ離れてしまいます。
現状の勤務状況を把握し、残業や休日出勤を減らせるように、適切な勤怠管理制度を整えましょう。

残業しないと評価されない、上司が帰らないと帰れないという雰囲気がある会社もあるでしょう。まずは、上司が積極的に定時で帰るようにし、職場の雰囲気を変えることも重要です。

監修 藤間 秋男
TOMAコンサルタンツグループ株式会社 代表取締役会長 公認会計士 税理士

まとめ

ウェルビーイングについて、その意味や取り入れ方をお伝えしました。
心身や社会的に満たされ健康な状態であるウェルビーイングをビジネスでも取り入れることで、社員の満足度の向上につながります。
さらには、採用の効率アップや生産性アップにもつながり、会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。
ウェルビューイングの取り入れ方には、福利厚生の充実や働きやすい環境を整えるなどの手法があるので、この記事を参考に会社に合った方法で取り入れてみてはいかがでしょう。