組織における意思決定の5つのプロセス|組織で起きやすい課題とは?

会社が組織として掲げる目的を達成するには、所属する部署や個人が全員納得する意思決定の手法を確立しておくことが重要です。経営陣からの一方的な指示がまかり通ったり、個々の勝手な判断による行動が許されたりする組織は長続きしないでしょう。 この記事では、組織における意思決定の主なプロセスと課題について、わかりやすく解説します。


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組織の意思決定は「トップダウン」と「ボトムアップ」のふたつ

会社など組織における意思決定には、主に「トップダウン」と「ボトムアップ」のふたつがあります。具体的な意思決定のプロセスを理解するために、まずはトップダウンとボトムアップについてそれぞれの特徴、メリットとデメリットを解説します。

トップダウン

トップダウンとは「上意下達」とも呼ばれるものです。その呼び名のとおり、組織のトップである社長や経営陣が意思決定を行い、現場の従業員に対して指示を出します。

日本では多くの会社で古くから採用されてきた意思決定の手法です。ときとして独断的な経営を推し進めるワンマン経営として否定的にとらえられますが、業界の旗手として活躍するカリスマ経営者のなかにもトップダウンを行っている人は多くいます。

メリット

トップダウンによる意思決定のメリットは、経営のかじ取りをするトップから現場で業務を行うボトムまで、スムーズな伝達が可能なことです。決断から実行までのタイムラグが少なく、経営状況などの変化に、即座に対応できます。

さらに、経営陣と現場に共有するゴールがあれば全社で一体感をもって実行できるでしょう。

デメリット

トップダウンのデメリットには、現場で働く従業員の声が届きにくいことがあります。上から下へという流れから、現場の声が反映されづらく、ワンマン経営に陥るリスクも考えられます。

経営陣と現場とのあいだに信頼関係が構築されていなければ、意思決定に従うことに不満を抱く従業員が出てくるかもしれません。またトップの意思決定に従うことに慣れすぎると、指示がなければ動けず、組織が弱体化することもあります。

さらに、カリスマ経営者によるトップダウンで成功した組織では、経営者の交代により従業員を戸惑わせることもあるでしょう。

ボトムアップ

ボトムアップは「下意上達」とも呼ばれています。トップダウンとは逆に、現場の従業員からの意見やアイディアを組織のトップが承認することで、意思決定が行われます。

現場の声に寄り添いたいと考える組織では、有効な意思決定の手法といえるでしょう。

メリット

ボトムアップを採用すると、現場で働く従業員の声を聞き入れることができます。

そのため、組織が抱える課題を経営陣が早期に把握でき、解決につなげやすいでしょう。風通しの良い組織づくりに適した意思決定といえます。

トップに意見やアイディアを伝えやすい環境から、従業員一人ひとりが組織に貢献したいという気持ちが生まれやすくなります。トップより圧倒的に数で勝るボトムからの意見ということもあり、斬新な考えや経営改善のヒントを得られる可能性も高まります。

デメリット

ボトムアップのデメリットは、意思決定から実行までに時間がかかることです。現場からの多様な意見をまとめ、会社経営レベルの意思決定としてカタチにするには時間と手間がかかります。

そして、現場の声が組織の方向性として正しい判断になるとは限りません。取引先との関係性、業界の動向などを考えず、社内の声だけを優先していると、誤った判断を招くことも考えられます。

また、全従業員に経営理念やビジョンが浸透していなければ、一貫性のない意見が飛び交い、組織として一体感を保てなくなるというリスクもあるでしょう。

組織の意思決定が誤った判断になりやすい理由

企業組織では、会議や打ち合わせなどを通じて、複数の人間で意思決定を行うのが通常です。しかし、集団で適切な意思決定を行うことは実は難しいことだといわれます。

それでは、組織における集団での意思決定が誤った判断となりやすい理由をお伝えします。

極端な意見に偏りやすいから

集団での話し合いによる意思決定は、さまざまな意見や価値観を交わしたうえで結論を出すため、個人で行うより合理的です。

しかし、同じ組織に属しているといっても個々の従業員の立場はさまざまです。日常携わる業務にも違いがあるでしょう。そのため、他人の意見に違和感を抱いたり、自分の優位を示すためにハイリスクな意見を出したりと、話し合いの終息が見えなくなることがあります。

一方で、衝突のリスクを避けるために当たり障りのない意見に終始し、意思決定が組織にプラスに働かないことも多いようです。

このように、集団による組織の意思決定では、危険性の高い判断や保守的な判断など、結論に偏りが見られやすくなります。

同調圧力が起きやすいから

組織において集団で意思決定を行うとき、もうひとつ注意すべきなのが同調圧力です。

同調圧力とは、「全員が同じ意見に賛同すべき」と暗黙のうちに強制することを指します。日本人はとりわけ集団の和を大切にする傾向が強いため、少数派よりは多数派に意見が傾きやすく、同調圧力が起こりやすいといわれます。

意思決定を行う際も、全員が合意することを優先するあまり、誰かがその決定の誤りに気づいていたとしても、ほかの参加者の意見に合わせてしまうことがめずらしくありません。

組織における意思決定の5つのプロセス

意思決定には、主にトップダウンとボトムアップがあるとお伝えしましたが、組織の状況や環境などによって正しく意思決定を行うためのアプローチは変わります。とはいえ、適切な段階を経ることで意思決定をより良いものにすることは可能です。

それでは、組織における意思決定で押さえておきたい5つのプロセスを紹介します。

1.意思決定の種類を整理する

まず何のための意思決定であるか、対象を明確にします。そのために行うのが、意思決定の種類を整理することです。

組織において意思決定が必要となる重要な要素には、主に経営、戦略、業務の3種類が考えられます。意思決定が必要なのはどの要素であるかを明確にすれば、タイムリーかつ有効な問題解決が可能となるでしょう。

2.関連情報を集める

種類が明確になれば、次に意思決定に必要な情報を集めます。問題の捉え方は人それぞれなので、客観的に話し合いを進められるように多方面から役立つ情報を集めるようにしましょう。

情報収集と同時に内情に精通する関係者のリサーチも行うと、話し合いで現実的な意思決定を行いやすくなります。

3.問題の解決策とその根拠を検討する

意思決定に向けて、問題の解決策とその根拠を話し合います。この時点ではできるだけ多くの意見を出し合うことが重要です。さまざまな価値観を参考にし、できるだけ多くの解決策を出しましょう。

そして、問題の解決策について実現可能かどうか、どのような解決が見込まれるのか、達成後にどのように評価を行うかなどを検討します。他社の事例などのエビデンスと照らし合わせれば、さらに実現性の高い解決策を見出すことができます。

4.選択肢の中から決定し、行動に移す

複数の解決策からもっとも適したものを選び、最終的な意思決定を行います。集めた情報、関係者の意見、他社のエビデンスなど、多角的に判断したうえでの選択であることが重要です。

意思決定はただ伝えるにとどまるのではなく、期待されるゴールに向けて、具体的な行動計画や実践計画を作成しましょう。意思決定から結果を出すまで、よりスピーディに取り組むことができます。

5.意思決定を見直す

意思決定を行ったあと、一定期間を経過したら、現状を振り返って見直します。

課題を解決できているか、最適な内容であったか、現場の受け止め方はどうであったかなど、意思決定による影響を分析します。うまく機能していない場合には、修正案を考える必要があるでしょう。

いずれにせよ、トライ&エラーによって経営陣も現場も実績を積むことができるため、強い組織づくりへとつながります。

まとめ

組織における意思決定には、主にトップダウンとボトムアップがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、どちらを選ぶかよりも、どのようなプロセスで意思決定を進めていくかが重要です。

正しく意思決定を行うには一体感のある組織づくりが不可欠です。組織づくりについてお悩みなら、多くの会社でビジョン策定や後継者育成などのサポートを手がけてきた「TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社」へお任せください。