親の会社を継ぐ|メリットから必要な能力・ポイントまで

親が会社経営者や個人の事業経営者(以下、まとめて「会社(経営者)」とします)である場合、子どもの立場として、跡を継ぐ可能性を考えることがあるでしょう。 親が経営している会社を、以前から自分に継いでほしいと言っていて、かつ引退の時期も近づいてくれば、本格的に会社を引き継ぐことについて考え出すはずです。 実際に親の会社の引継ぎを検討するのであれば、「会社を継ぐ」とはどういうことなのかを頭に入れておく必要があります。ここでは会社を継ぐメリットや適性、注意点を中心に見ていきます。


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親の会社を継ぐメリット

経営者としての親の仕事ぶりを身近に見ているだけに、会社を継ぐことには楽しみより「大変そう」との不安な気持ちの方が勝るかもしれません。しかし、親の会社を継ぐメリットは非常に多いのです。以下、代表的なメリットを挙げてみます。

自分で経営できる

親の会社を継ぐことは、親が会社経営者でない者には決して得られない貴重なチャンスです。子どもが跡を継ぐことがほぼ義務化していたような昔と違い、社長の子どもとして生まれることは、それだけで自分の将来の可能性がひとつ増えることになります。

自分が会社を経営する責任は確かに大きいですが、今後の方向性、経営方針の取捨選択、取引先の開拓や新たな事業への取り組みなど、あらゆることを自分で決められることは大きな魅力です。仕事に関する裁量も自身で判断できますし、何より「自分の会社を自分が経営することで、更なる発展を目指す」というやりがいを感じながら、仕事をすることができるでしょう。

勤務スタイルを決めることができる

会社に雇用されている従業員の立場では、月々の勤務日や日々の勤務時間は、原則会社により決められています。有給休暇の使用は予め申請が必要で、他の従業員の休暇と重ならないように配慮も必要になるでしょう。

しかし自分の会社であれば、自身で働く時間を調節することができます。もちろん経営者として事業に滞りがなく、結果、経過に問題がないことが前提ですが、自分のスタイルに合った時間帯で働けます。

同様に、働く場所や休日もある程度自分で決められます。会社へ出社する必要が無ければ、自宅やカフェなどでその日の業務を行ったり、場合によってはその日を休日として過ごしたりすることも可能です。

新たな人脈ができる

業種にもよりますが、経営者は自ら新しい人脈を築いていくことも重要な仕事のひとつです。自分次第ではありますが、努力次第で人脈はどんどん広がっていきますし、それが会社経営の発展に繋がることも多いはずです。

会社員ではどうしても内輪や取引先を中心とした繋がりになりますが、経営者は地域、同業者・異業者との交流、経営に関するコンサルタントや士業など専門家とも繋がることができ、さまざまな知識や情報、刺激を得る機会が持てます。

定年やリストラがない

会社の業績や自分の成績でリストラされるのでは、という不安を感じながら仕事をする必要がありません。引き際も自分で決められます。経営者からは退いても、将来の後継者が納得する形で一定の業務に携わることができるのも魅力です。

親の会社を継ぐために必要な力

親の跡を継ぐ場合を含め、会社の経営者になる者として必要な力は、大きく分けて以下の4点です。

・経営力
・実務能力
・統率力
・人間力
どれも欠かせない能力です。ひとつずつ確認していきましょう。

経営力

その名のとおり、会社のトップ、責任者に必要な経営者としての能力ですが、非常に多角的な力の総称でもあります。
財務経理など、個人事業主で自身がすべて行う場合はもちろん、従業員が行う場合でも経営者にある程度知識がなければ、経費や設備投資などにかかる費用の判断をすることができません。

法務関係も同様で、専門家に従うのではなく、経営者としての意見を取り入れたうえで、どう対処すべきか自分でも考えられるくらいの知識は備えておく必要があります。そして何より、これらの知識や情報を積極的に得ようとする姿勢が大切です。

実務能力

会社の規模にもよりますが、経営者自らがこなす実務は少なからずあります。また、普段従業員が行っている実務であっても、いざというときの担い手として、経営者には、やはりある程度の能力が求められます。

普段直接かかわらない現場や部署だからと、実際の業務内容や現状を把握していない経営者は、結局リーダーとして会社全体を束ねることができなくなってくるでしょう。そのため、普段から従業員がどのような業務を行っているのかを把握し、いつでも自身が遂行できるような実務能力が必要です。

統率力

前述のふたつの力を持っている経営者であれば、自ずと備わるであろう力が統率力です。会社の発展や業績の向上に尽力する経営者の姿は、従業員や関係者に信頼感を与え、会社にまとまりを作ります。

また、従業員や関係者にも会社の発展や業績アップに貢献してもらえるよう、普段からコミュニケーションを取ることも、経営者に必要な統率力に関わってきます。

普段のコミュニケーションの中から、従業員や関係者の適性や能力を知っておくためです。そして、ベストなタイミングに、適切に意思決定をする必要があるため、経営者には統率力が欠かせません。

人間力

統率力の要素のひとつでもありますが、経営者自身の人間的な魅力は重要な要素で、会社に欠かせない財産です。優秀な人材は「この人の下なら安心して働けるし、この人のために頑張りたい」と思わせる経営者の下に集まります。気配りができる、経営理念がしっかりしているが柔軟性もあるなど、要素はさまざまです。特に子どもが引き継ぐと親と比べられることが多く大変ですが、自分は自分と割り切って考えることが大切です。

親の会社を継ぐ際のポイント

親の会社ならではの引継ぎ後の注意点がいくつかあります。ある意味一番大切なポイントかもしれません。以下で紹介するポイントを身に着け、受け継いだ会社を経営していきましょう。

先代との関係を築く

いくら経営権が変わっても、全てを刷新することは避け、先代の経営者として「親」が築いてきたものを大切にしましょう。
会社は経営者だけで成り立つものではありません。従業員、取引先、地域の関係者などの変わらぬサポートがあってこそ、継続していくのだという意識と謙虚な姿勢、そして感謝の心を忘れないことです。

一方で、あまりに先代に頼り過ぎたり何事にも周りの目を気にしすぎたりと、自信のなさがあからさまに出ると、従業員に不安感を持たれてしまうかもしれません。高圧的な態度や言動は裏目に出ますが、経営者としての威厳は常に忘れないようにしましょう。

執着しすぎない

会社を自分の代で終わらせてはいけない、もっと発展させていきたい意欲はもちろん大切です。しかし、自分の会社であることに執着しすぎて、何ひとつ人に任せず経営の全てを一手に担うことになっては、遅かれ早かれ行き詰ることは明らかです。任すべきところは任せ、頼るべきところは頼り、適材適所を心がけたバランスの良い経営者を目指しましょう。

まとめ

親の会社を継ぐことを具体的に検討しているのであれば、必要な知識を得たうえで手続きの流れを把握し、計画的に承継を進めるべきでしょう。その場合、不安材料を専門家に相談することをおすすめします。

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会社の引き継ぎは今後の人生設計を考えていく上で重要なフローですので、慎重に進めていく必要があります。会社の引き継ぎについて検討している方はぜひ一度ご相談ください。