後継者の候補は意外と多い!実際の選び方やポイントをご紹介

会社の経営者には様々な役割がありますが、自身の後継者である次期社長を選んで育成することも大きな仕事です。特に中小企業の場合は、大部分の裁量権を社長がもつため、社長の存在自体が会社に及ぼす影響力は大きいでしょう。 つまり、後継者を選んで育成するプロセスは、その後の会社の存続、ひいては成長を左右します。今回は、後継者の選び方と育成方法の解説をし、具体的な流れを紹介します。


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後継者候補となりうる人

最終的な後継者は1人に決められることがほとんどですが、最初の段階では後継者候補となる人材は親族内外、社内外に多くいます。選択肢を広げるためにも、後継者候補となり得る人物を確認しましょう。

親族内

親族内で後継者候補となり得る人物として、息子、娘、養子、娘婿などが挙げられます。
息子や娘など、自身の子供を後継者とするケースは比較的イメージがしやすく、実際にこの選択肢をとる経営者は多いです。

一方で、子供が会社を継ぎたがらない場合ももちろんあります。その理由としては、「会社経営に関する親のネガティブな言動」が挙げられるでしょう。

子供は親の様子をよく見ているため、家庭で何気なく発した仕事の愚痴などのネガティブな言動によって、子供の会社経営に対するイメージが悪くなることがあります。裏を返すと、将来的に自分の子供に会社を継いでほしいと考えている場合には、会社経営に対するポジティブなイメージをもってもらう必要があるということです。

幼い頃から職場見学に連れて行くことや、経営者の仕事の面白さを少しずつ伝えることで、将来的に子供が経営者という仕事に興味をもつ可能性は高まるでしょう。

「息子が後継者として好ましく、娘は好ましくない」という考え方は古来の日本からありますが、現代では時代遅れです。女性の社会進出が注目される中で、経営者の娘が会社を継いで発展させたケースは数多く見られます。「うちは娘しかいないから子供から後継者を選べない」と考えるのではなく、女性経営者の選択肢も視野に入れるべきでしょう。

また、子供が複数人いる場合、兄弟に協力させて経営を任せる場合もあります。ここでの注意点は、「株式は後継者に集中させる」という点です。

会社の形態が株式会社の場合、経営権を移譲する場合は、株式を譲渡します。兄弟に半分ずつ株式を分けてしまうと、兄弟間で対立した際に経営方針の分裂が発生し、会社が混乱してしまいます。株式を後継者に集中させることで、いざという時の経営権を統一するべきです。

親族内承継の候補者としては、娘婿や養子の選択肢もあります。
もちろん娘を後継者とすることもできますが、娘婿が経営者の資質に優れていれば後継者候補に加えることが可能です。

例として、日本の自動車メーカーであるスズキを現段階まで発展させた鈴木修会長は、娘婿として鈴木家に婿入りして後継者となりました。

また、子供に恵まれなかった場合でも、養子縁組によって養子を迎えて後継者候補とすることもできます。

親族外

親族外から後継者候補を選ぶ際には、社内の従業員と社外の人間というふたつの選択肢があります。

社内の従業員から後継者を選ぶことの最大のメリットは、すでに会社のことを良く知っているという点です。これまで会社の一員として働いてきた経験から、会社の内部の状況や、外部の取引先との関係性などの会社を取り巻く外部環境について知見があります。つまり、ゼロの状態から後継者を育成するよりも、比較的早く経営者視点を身に着けやすいということです。

一方で、単に実務能力に長けている従業員を後継者にすることには慎重になるべきでしょう。なぜなら、経営者は会社を統括する人間なので、社内をまとめ上げる力が必要になるためです。能力のみならず、人格面においても優れている人物でなければ経営者は務まらないでしょう。

また、M&Aを行うことや、外部の人材を招くなどの方法によって、社外の人間を候補者にすることも可能です。

M&Aとは、自社を買手企業に対して譲渡する手続きのことであり、後継者不足の問題が深刻化する現代においては頻繁に用いられています。しかし、自社の現状や将来のビジョンを現経営者と共有し、会社の存続と発展を約束してくれる買手を慎重に選ばなければなりません。

最悪の場合、買い手が会社の存在する土地目的でM&Aを行った際には、事業としての会社はなくなってしまう可能性もあります。

さらに、中小企業が外部から経営人材を招く際に多いのが、大企業の管理職をすぐに経営陣に加えるケースです。肩書やキャリアが充実している人材であっても、自社の環境で活躍できるとは限りません。はじめから経営陣に加えるのではなく、様子を見ながら昇進させるべきでしょう。

最適な後継者を選ぶために重要視したいポイント

候補者を選ぶ際や、候補者から後継者を絞る際に問題となるのが、「どのような人材が後継者として適しているのか」を見極めなければならないことです。

経営者には様々な資質が必要ですが、最も重要な資質は「人格」や「人間力」といえるでしょう。言い方を変えると、社内外の人間に「惚れられる人間であるか」を見極めることが重要です。

一般的に経営者に必要とされる資質は、能力と人格に大きく分けられます。どちらも備えている人物が経営者になることが理想ですが、どちらか一方を重視するならば、人格です。

経営者の役割は、社内の従業員を束ねて目標を目指すとともに、社外の関係者との信頼関係を築く点にあります。人格的に優れている人物でなければ、従業員はついて来ず、社内の一体感は醸成されません。

また、対外的にも、最終的には人間と人間との信頼関係の上に取引が成り立つので、人間としての魅力がある経営者が会社の顔となるべきです。

後継者の選び方と流れ

ここまで後継者候補となり得る人材と、後継者に求められる重要な資質について解説しました。次に、以上のポイントを踏まえて、具体的な後継者の選び方や流れについて順番に紹介します。

1:候補者をリストアップする

まずは、前述した候補者の中から実際に継ぐことが可能な人物をリストアップします。
客観的には後継者候補の人間であったとしても、実際に次期経営者として会社を引き継ぐ力に欠ける場合もあります。最初の段階で候補者を絞り過ぎる必要はありませんが、後継者として経営を任せられると少しでも思える人材をリストアップしましょう。

2:リストをもとにヒアリング・アンケートを行う

次に、作成したリストに記載された候補者に対して、「会社を承継する意思があるか」や「会社の現状や将来性についてどう考えているのか」などをヒアリングしましょう。将来的に経営を任せる可能性が少しでもあるならば、その人物がどういった問題意識や将来のビジョンをもっているかについて意見を聞く必要があります。

また、一般社員からは誰が次期社長にふさわしいと思われているかを知るために、アンケートを取ることも有効です。アンケートの結果によって、社員からの「人望」を集めているのが誰かもわかりますから、これは前項で説明した社長にふさわしい人格をもっているのが誰かが明らかになります。

3:候補者を絞り込む

ヒアリングやアンケートなどによって、候補者本人や周囲の意見を取り入れた後は、候補者を絞り込んでいきます。しかし、それぞれの候補者はそれぞれ強みをもち、ポテンシャルを秘めているため、この地点で1人に決めることはおすすめしません。実際の後継者選びの事例でも、候補者を3人選出しているケースがあります。

4:候補者を教育する

候補者を絞り込むことができたら、育成のため、一通りの部門をローテーションで経験させます。特に、財務諸表から会社の現状を読み取る力を培うために、経理、財務は必ず経験させるべきでしょう。

2~3年ごとに各部門の経験を積ませた後は、役員へ就任させることが多いです。また、社外からの人材の場合はひとつの部門長として就任させ、能力や周りからの支持を得られる人間か否かを見ていきます。

最終的には、就任直前の1年間は社長室室長として社長の仕事に同行させることで、経営者の仕事を肌で体感してもらうことに加え、取引先や金融機関に対して後継者の存在を知らせます。

育成するにあたって注意する点としては、失敗などから多くのことを学んでもらう点です。最初から経営者として完璧な資質を備えている人間はいません。失敗によって人は変わっていくため、失敗しても叱らずに、温かい目で見守りましょう。

一方、後継者を選ぶのは時間も労力も要するため、難しさや不安を感じる現経営者も多くいます。そのような時には、TOMA100年企業創りコンサルタンツへご相談ください。

TOMA100年企業創りコンサルタンツでは、今回のテーマである「事業承継」や「後継者育成」に関するサービスも充実しており、事業承継に関する数多くの実績をもつ専門家が後継者選びの手助けのみならず、後継者の育成についても丁寧にサポートします。

まとめ

後継者を選ぶ仕事は、どの経営者もいずれは経験するものです。後継者選びは、非常に時間や労力のかかる仕事ですので、つい後回しにしてしまう傾向があります。しかし、後継者は選ぶだけでなく、長い時間をかけて育成していく必要があるため、早めに行動を起こすようにしましょう。