事業承継にM&Aを選択する|基礎知識や注意点を紹介

中小企業の経営者が後継者問題に直面したとき、選択肢のひとつとなるのがM&Aです。しかし、M&Aにはデメリットもあるため、安易に選択するのはリスクが高いでしょう。 この記事では、事業承継でM&Aを活用する前に知っておくべき基礎知識を詳しく解説します。


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【事業承継問題の解決策】M&Aによる事業承継とは

そもそも事業承継とは、会社の手がける事業の全て、もしくは一部について、その経営権を後継者に譲り渡すことを表します。

事業承継の手法は主にふたつです。ひとつは現経営者の子どもや親族へ経営権を譲る親族内承継、もうひとつが社内の役員や従業員など親族以外へ経営権を譲る親族外承継です。M&Aによる事業承継は親族外承継に含まれ、社外の第三者を後継者として事業を譲渡することを指します。

この中でも、近年増加しているのがM&Aによる事業承継です。M&Aといえば、大企業がさらなる躍進を目指し、他社を買収するイメージが強いかもしれません。それがなぜ、事業承継の手法として活用されるようになってきたのでしょうか。

かつて中小企業では親族内承継が主流でした。会社の事業は大きな資産でもあるため、経営者が近しい関係にある子どもや親族に譲りたいと考えるのはごく自然なことでしょう。

ただし時代は変わり、現在では「家業は継ぐもの」という意識が薄れ、親族内承継は難しくなりつつあるといわれています。後継者とされる側に経営権を継ぐ意思があるとは限らないことや、経営者としての資質がなく従業員から支持されないことが要因となって、親族の中からの後継者選びに困難を感じる経営者も多くみられるようになってきました。

万が一、後継者がみつからないまま経営者が70代や80代を迎えると健康面などの経営上の懸念が増え、最悪の場合は会社を廃業せざるを得ないことも考えられます。そこで、事業や従業員の雇用を守り、会社を存続させる方法として、M&Aを選ぶ経営者が増えているのです。

このように、会社を存続させることを目的としたM&Aは、事業承継型M&Aとも呼ばれています。たとえ親族や社内の人間に後継者となる人物がみつからない場合でも、これまで築き上げてきた事業を失うことなく、会社を継続させる解決策として期待されます。

M&Aによる事業承継には、どんなメリットとデメリットがあるのか

M&Aによる事業承継は、親族内で後継者が見つからなくても会社を存続させることができる有効な手法として注目されています。しかし、M&Aの活用はメリットばかりではありません。検討中の経営者はデメリットも念頭に置いたうえで、慎重に選択しなければなりません。

ここでは、事業承継型M&Aのメリットとデメリットをお伝えしましょう。

M&Aのメリット

事業承継にM&Aを活用する最大のメリットは、後継者問題を解消できることです。親族や従業員だけではなく社外にまで後継者候補を広げれば、事業を承継する候補の選択肢が増えます。

また、M&Aによって後継者不在から会社を廃業するリスクを回避できます。急な廃業は、経営者だけではなく、従業員や取引先の人生も左右する大きな問題です。そのため、M&Aによって従業員の雇用を守り、取引先との関係を維持することも、大きな魅力といえるでしょう。

また、経営者はM&Aによって第三者に事業を売却することになるため、売却益としてまとまった資金を得られます。会社の抱える債務などの負債からも解放されるため、経営者がリタイアしたあとの人生設計にもプラスに作用するでしょう。

M&Aのデメリット

経営者にとって魅力が多いと感じられる事業承継型M&Aですが、M&Aは社外の第三者との交渉を経て成立するものです。そのため、親族内承継とは違い、思わぬデメリットを被る可能性も考慮しなければなりません。

まず、M&Aは交渉相手がみつからなければ始まりません。会社の事業を正当に評価してくれるかどうかなど、経営者の希望する交渉条件に見合う最適な譲渡先をみつけるのは、難しいでしょう。

承継先の候補がみつかっても、M&Aは早くても半年から1年と交渉にかなりの時間を要するのが一般的です。また、交渉を対等に進めるためには、自社の企業価値を証明するなどM&Aについての専門的な知識も必要になってくるでしょう。経営者としての日常業務と並行して行うには、手間や負担が大きくなりがちです。

また、時間をかけて交渉したからといって必ずしも交渉が成立するとは限らないのも、大きなデメリットといえるでしょう。

さらに、たとえM&Aが成立して事業を譲渡できたとしても、従業員が離職したり取引先との関係が悪化したりといったトラブルも想定されます。

これまで会社や事業とは縁のなかった第三者がいきなりトップに立つことは、多かれ少なかれ、社内外に混乱を招くことになるでしょう。譲渡後に経営方針を大きく変えられてしまい、従業員や取引先が次々に離れていくこともありえます。

その結果、会社としては存続できたとしても、経営者の理想とする形で事業承継できないことも考えられるのです。

事業承継において「安易なM&A」はおすすめできない

M&Aによる事業承継は、後継者問題に悩む経営者にとって、有効な選択肢といえます。売却益により資産を増やせるなど、経営者個人の受ける恩恵も大きいでしょう。

しかし、先述のとおり、デメリットとして気になる点は多く、安易に実行するべき手法とはいえません。最適な譲渡先を見つけられなかった場合、これまで経営者が積み上げてきた事業をうまく承継できないリスクもあるのです。

また、専門的な知識が必要となるM&Aを行うにあたり、M&A仲介会社に譲渡先の選定や交渉を依頼するケースもあるのではないでしょうか。しかし、こうした仲介手数料は約500~2000万円と高額になる場合が多く、中には成功報酬を目的とした経営を行っている会社もあるでしょう。依頼元の会社の将来を深く考えていない可能性があるため、注意が必要です。

特に近年は、事業承継型M&Aが活況のため、本当に信頼できるかどうか、M&A仲介会社の資質を正しく判断することが重要です。

事業承継の目的は会社の存続、そしてさらなる成長のはずです。その目的を達成するためには、やはり会社の経営方針を理解し、従業員や取引先を大切にできる後継者を探すのがいちばんといえるでしょう。

会社の将来を考えるのであれば、M&Aはあくまでも事業承継における「最後の選択肢」と捉えておくことをおすすめします。

とはいえ、会社によっては後継者難が深刻で、事業承継に悩まされる経営者も多いでしょう。そんなときには、事業承継に関する豊富な支援実績をもつ「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」にぜひ一度ご相談下さい。

事業承継に精通した専門家が、クライアントとなる会社の状況に応じて最適な事業承継をサポートします。M&Aによる事業承継についても熟知しているため、あらゆる手法から最善の選択をすることが可能です。

後継者選びから、事業承継後を見据えた自社株対策や組織再編、相続や贈与などの税金問題など、事業承継にまつわるあらゆる事柄に幅広く対応します。事業承継にはどのようなトラブルが起こるかわかりません。検討を始めたタイミングでご相談することをおすすめします。

まとめ

事業承継の後継者選びに悩まされる経営者の方も多いのではないでしょうか。会社の理念や経営方針を理解する親族や従業員に経営権を譲り渡すのが理想ですが、後継者となる人材がみつからず、M&Aにより第三者に譲渡するケースが増えています。

M&Aで事業承継を成功させるには専門的な知識や交渉術が必要であり、また譲渡後に経営方針を変更されれば、経営者の築き上げてきた事業が失われることも考えられます。

事業承継を検討し始めたら、「TOMA100年企業創りコンサルタンツ」までぜひ一度ご相談下さい。企業の発展を見据え、後継者選びをはじめとした経営上のあらゆる問題をサポートいたします。