【企業の生き残り戦略】会社が買収されるとどうなるのか?

後継者不足や経営状態の悪化などさまざまな理由から、企業買収によって会社の存続を考える経営者が増えています。そこで、会社を売却するという大きな決断をするには、会社や社員に与える影響を明確にしておきたいところです。 この記事では会社が買収されるとどうなるのか、買収後に想定される社内の変化について紹介します。


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そもそも「企業買収」とは

企業買収とはある企業が別企業の経営権を支配するために行う行為で、「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」を略した「M&A」としても知られています。一般的に、株主総会の議決権の過半数以上を獲得できるだけの株式を取得したり、部門ごと買い取ったりするなどして実施されます。

経済産業省のデータによると、日本では年々、企業買収の件数が急速に増加しています。2017年には年3,050件を記録し、2000年の1,635件に比べると約2倍近い件数です。

出典:「中小企業白書の概要(第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命)」(経済産業省)

さらにリーマン・ショック直後の2019年には、海外企業の買収が活発化した影響から、4,088件(※2)と約1,000件も増加しています。

出典: 「グラフで見るM&A動向」(株式会社レコフデータ)

中小企業においても企業買収は加速しています。少子高齢化による人材不足が企業買収を増加させている原因とされています。会社の存続には有望な人材が欠かせませんが、企業間の奪い合いで思うように人材が集まらず、悩める経営者が増えているのです。

大手企業にとっての企業買収は会社のさらなる発展が目的ですが、中小企業にとっては会社を存続させ、社員(従業員)の雇用を守るための選択肢となっているのです。

買収されるとどうなる?企業買収後に起こること

企業買収が行われた後、通常であれば会社の資産や人材、経営ノウハウなどすべてが新しい会社に引き継がれ、滞りなく経営が続きます。会社はそれまでと変わりなく存続することがほとんどです。

しかし、経営権が他社に移ることによる影響はゼロではないでしょう。そこで、企業買収後に起こりうる変化を紹介します。

会社全体に起こること

企業買収が実施される際には、買収する側とされる側、双方が同意のうえで契約書を交わします。そのため、契約内容が納得できるものであれば、買収後も会社の運営に問題が起こることはほとんどありません。

しかし、買収相手が異なる業種や規模の違う会社であれば、社風や企業理念に変化を及ぼす可能性があります。企業理念の違い、トップダウンやボトムアップといった決定手法の違い、人事制度や福利厚生など仕組みの違いなど、少しの違いが会社を大きく変えます。

以前と同じように働けると考えていた社員(従業員)が、以前とのギャップにストレスを感じてしまうことは多々あります。社風や文化の変化が大きければ、多くの退職者を生むこともあるでしょう。

社員(従業員)に起こること

企業買収後、社員(従業員)の労働条件は買収前と変わらないケースがほとんどです。しかし、労働条件は同じでも、社員の評価基準が変更されることで、結果として給与規定などの待遇が変わることもあります。

待遇は良くなることもあれば悪くなることもありますが、いずれにせよ、買収前に分かっていることは社員に対して十分に説明しておくことが大切です。

役員に起こること

社員とは異なり、企業買収によって立場を左右されることになるのが役員です。

買収する側の企業にとって、現場で働き、会社の売上げに貢献する社員とは異なり、役員の力量は不透明だと捉えられがちです。特に経営者の親族など勤務実態の伴わない役員や非常勤役員の場合、買収後に退任となることが珍しくありません。

一方、企業風土を支えている、社外に強いネットワークがあるなど、存在意義のある常勤役員は会社に残ることもあります。

ただし、役員報酬は株主総会で決定されるため、役員として会社に残っても、これまで通りの収入が保証されるわけではありません。

社長に起こること

会社の経営者である社長は、企業買収によって良い結果を得られるといえます。

企業買収を行うということは、多くの場合、社長自身のリタイアを意味します。会社の売却益はリタイア後の生活資金となり、安定した老後の糧となるはずです。また、会社のトップとして頭を悩ませていた後継者問題からも解放されます。

一方で、会社の先行きは心配でも、まだリタイアしたくないという方もいるでしょう。そのような場合、相手との交渉次第で、企業買収後も社長として経営トップに残れる可能性はあります。

とはいえ、安易な企業買収(M&A)には要注意

企業買収、いわゆるM&Aを行ったとしても、通常は会社の経営や社員(従業員)の雇用にそれほど大きな変化は起こりません。さらに経営者であれば、会社の経営にまつわる心配がなくなり、会社の売却益まで手に入るとあって良いことばかりのように感じられるでしょう。

しかし、安易に企業買収を選択するのはリスクが高いといえます。そこで、企業買収(M&A)を選択するときの注意点を紹介します。

場合によっては会社が解体されてしまうことも

後継者不足に悩む中小企業の経営者にとって、企業買収は会社を存続させる手段のひとつとなっています。

しかし、企業買収は経営者が築き上げてきたものをすべて売り渡すという行為です。会社の存続を願う行動であっても、買収後は会社の経営に口を出せなくなってしまいます。

買収先の判断によっては、これまでと全く異なる業態へ変えられる、社屋を売却されてしまうなど、経営者の想いに反する経営をされてしまうかもしれません。

経営者がこれまでの人生をかけて積み上げてきたものがすべて失われる可能性があることは、企業買収において最大のリスクといえるでしょう。

ポイントは「買い手と売り手との理念共有」

企業買収におけるリスクを避けるためには、安易に買収先を決めないことに尽きます。

今すぐ後継者を見つけなければならないといった切羽つまった状況や買収先の信頼性が極めて高いなど絶好のタイミングであれば、機会を逃さず、決断する必要があります。その際、経営者の理念を共有し合える相手に事業を譲り渡すことが、企業買収を成功させるための重要なポイントです。

また、後継者不足を含めた経営に関する問題は、企業買収以外の方法でも解消できることがあります。専門家の手を借りることも検討すると良いでしょう。

TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社なら、経験豊富な専門家が会社経営におけるあらゆる悩みごと、困りごとをワンストップで解決いたします。企業買収についてのアドバイスはもちろん、後継者問題、収支の改善、組織再編など、多方面からのサポートが可能です。

会社の現状を踏まえた最善の最適な解決方法を提案しますので、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

日本における企業買収の件数は、会社存続の方法のひとつとして、増え続けています。

しかし、会社が買収されるとどうなるのか、不透明な状態のままで安易に会社を売却するのはリスクの高い行動です。買収先の判断によっては、経営者がこれまで積み上げてきたものが一瞬にして壊れてしまう可能性もゼロではありません。

会社の経営に行き詰まったら、企業買収も含め、さまざまな選択肢から最適な方法を選ぶようにしましょう。会社経営の専門家からアドバイスを受けると、新たな解決策が見い出せる可能性があります。経営についてお困りならTOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社へぜひご相談ください。