100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.131

2023.07.21 Fri

エンジェル税制 住民税の申告では要注意

投資時点でのエンジェル税制の優遇措置

 投資時点での優遇措置であるエンジェル税制の優遇措置A(みなし寄附金)、優遇措置B(みなし譲渡損)、起業時特例(20億円限度非課税みなし譲渡損)、プレシード・シード期(設立5年未満・営業赤字等々)特例(20億円限度非課税みなし譲渡損)は、所得税のみに認められている制度で、住民税には適用がありません。

売却時点でのエンジェル税制の優遇措置

 それに対して、売却時点でのエンジェル税制優遇措置があります。この売却時優遇措置では、エンジェル税制対象企業の株式売却により生じた損失を、その年の他の株式譲渡益(上場・非上場問わず)と通算(相殺)できることになっています。また、その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年に亘って順次株式譲渡益と通算(相殺)できます。この優遇措置は、所得税及び住民税の両方に認められています。

課税の繰り延べとしての優遇

 なお、投資時点での優遇措置を受けていた場合、優遇措置A、優遇措置B、及び起業時特例(20億円超部分)、プレシード・シード期特例(20億円超部分)は、課税の繰り延べ措置なので、優遇適用を受けた金額を株式の取得価額から控除しなければなりません。しかしその時、住民税では特に優遇措置されていないので、住民税法上では、株式の取得価額からの控除は無く、原始取得価額がそのまま生きています。

課税の繰り延べのない住民税への無配慮

 ところが、投資時点での優遇措置を受けていた場合の、売却時点でのエンジェル税制の適用では、所得税と住民税では、株式取得価額の金額が異なることになるものの、現行の申告制度では、この相違が自動的に確認できるような仕組みになっていないので、住民税での課税所得も、所得税と同じく減額された株式取得価額で計算されてしまうことになってしまいます。

自力救済しないと無視され損をする

 そのため、確定申告書(分離課税用)の「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の中の、エンジェル税制利用により調整された株式の取得費の欄に、住民税では所得税と異なり原始取得価額が適用されるべき旨のメッセージをメモしておくとか、住民税を管轄する区役所や市役所の担当者に直接説明する対応を採るとかの必要がある、と言われています。

相続に関わる手続上の期限

3か月(熟慮期間)以内に

 相続が発生した場合、相続人は相続の開始及び自己が相続人であることを知ってから3か月(熟慮期間)以内に単純承認・相続放棄・限定承認の中からどれかを選択しなければなりません。熟慮期間の間に相続放棄または限定承認がされなかった場合は、単純承認したとみなされます。また、3か月の熟慮期間中に被相続人の預金から現金を引き出して使うなどの行為があった場合は、単純承認をしたとみなされ、相続放棄や限定承認を選択することができなくなります。

4か月以内に

 相続人は、被相続人の相続開始年の1月1日から死亡の日までの期間の所得金額及び所得税額を計算して、相続の開始があったことを知ってから4か月以内に準確定申告書を提出し、納税をしなければなりません。

10か月以内に

 被相続人からの相続による取得財産に係る課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合、その財産を取得した人は、相続の開始があったことを知った日から10か月以内に、相続税の申告書を提出し、納付をしなければなりません。

1年以内に

 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間で時効により消滅します。

3年以内に

 令和6年4月以後は、所有権の登記名義人について相続の開始があった時は、その相続により所有権を取得した者は、相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記申請をしなければなりません。遺産分割で所有権を取得した際は、分割の日から3年以内の登記申請も義務づけられています。

10年以内に

 令和5年4月以後は、遺産分割協議に関して、特別受益と寄与分の主張をすることができる期間を相続開始の時から10年とするという内容の期限が設けられており、その結果、遺産分割協議に実質的に10年の期限が設けられることになりました。相続人全員の同意がない限り、法定相続分でしか遺産分割することができなくなりました。

退職所得課税の行方

 岸田首相の骨太方針2023では、雇用の流動化を見据え、公平かつ多様な働き方に中立的な税制を目指すとして、退職所得課税の是正を提言しています。

退職所得課税の優遇措置

 退職金を一時金で受け取り、そのまま給与所得として課税所得に合算すると大きな税負担が生じます。退職金は老後の生活保障としての役割をもち、担税力は低いため、退職所得として、退職所得控除、1/2課税、分離課税など、税負担を軽減する優遇措置がとられています。
 なお、平成24年度税制改正で、勤続年数5年以下の役員等に支給される退職金には1/2課税を適用せず、さらに令和3年度税制改正では、令和4年1月から役員等以外で勤続年数5年以下の者に支給される退職金で退職所得控除額を控除した残額が300万円を超える部分についても、1/2課税を適用しないなど、優遇措置の一部が制限されています。

退職所得の要件

 退職所得となる要件は、勤務関係が終了していること、労務対価の後払いとしての性格をもつこと、一時金で支給されることの3つを満たすか、これらの要件を満たさない場合でも、退職金制度の制定や改正、定年再雇用、役員、執行役員就任などに伴い支給されるものも退職所得となります。

退職年金は雑所得で毎年課税

 一方、退職金を年金で受け取るときは雑所得として課税され、退職所得のような手厚い優遇措置はありません。同じ退職金を一時金で受け取るか年金で受け取るかで課税が異なり、税負担に違いが出ることは問題ともいえます。

骨太方針が示す退職所得課税の姿は?

 骨太方針2023は、これまでの終身雇用を前提とした制度からリスキリングで人材育成し、成長産業への移動を促す制度への転換を目指しています。そのため、長く勤務する人ほど優遇される退職所得課税の見直しが検討されています。優遇措置はさらに制限されることが予想され、終身雇用を前提とした退職所得課税は、その使命を終えるのかもしれません。そこでは老後の生活保障の備えとして、自身で株式や個人年金で資産形成をはかることが求められますが、経済格差を拡大させるリスクも持ちます。税制には、本来、人生設計に干渉しない中立性が求められます。退職所得を含む税制のあり方は、さらに検討が必要です。

マイナンバーカード 情報が誤っていた時

マイナンバーカード情報が誤っていたら?

 マイナンバーカードに紐づけされた情報の誤りが次々と見つかっています。万一誤った情報が登録されていると気づいた場合の対処法はどのようにするのでしょうか。

健康保険証情報

 この情報の誤りに気付いた時はフリーダイヤル(0120-95-0178。音声ガイダンスに従い「4-2」に進む)か、加入している医療保険の保険者に問い合わせます。正しく登録されているかを確認する場合は、マイナポータルにログインし、「注目の情報」の「最新健康保険証の情報の確認」を押して「あなたの健康保険証情報」から、登録されている健康保険証情報を確認します。

公金受取口座情報

 マイナポータルにログインし「注目の情報」の「公金受取口座の登録・変更」を押して「公金受取口座の登録状況ページ」にて、登録されている情報を確認します。口座情報に誤りがある場合にはこのページから登録口座の削除を行います。

マイナポイントに関する情報

 「マイナポイント」アプリ・サイトのトップ画面から「申込み状況を確認」を押すと、マイナポイント申請が正しく登録されているか確認できます。
申込みをした覚えがない、心当たりのない決済サービスが登録されていた場合は、上記フリーダイヤルで音声ガイダンスに従って「5」に進むか、申し込みをした自治体(手続支援窓口)に問い合わせます
 問い合わせの際は、上記サイト・アプリの「申込状況の確認」から「マイキーID」「申込日時」「決済サービス」「決済サービスID」の情報が必要になります。

マイナ保険証、会社の保険証はどうなる?

 会社を通じて従業員に保険証は渡されますが、 マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、健康保険証の発送を待たずに利用できますし健保証はカードの中にあることになります。 会社として健康保険関連の入社・退社・扶養に関する手続は引き続き必要になります。 マイナンバーカードの健康保険証登録は本人が行うため、会社としての手続はありません。現在登録をしていない方でもいずれは健保証を得るために登録が必要となるでしょう。