100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.130

2023.07.14 Fri

国税庁法人番号公表サイトで英語表記の登録をおススメします

国税庁法人番号サイトで英語表記の公表

 経済活動が国際化している中、商号等の英語表記が使用される機会が多くなっています。会社の存在証明の公的書類は登記簿謄本ですが、法務局で英語版の発行はありません。公的書類とするには、翻訳会社等で英訳を作り、公証役場・領事館等で認証してもらうことになります。もしくは、(準公的証明書として)東京商工会議所から日本法人証明(英文)を発行してもらい、存在確認証に代える手もあります。しかしながら、いずれも安くはない費用が発生します。
 そこで、無料で常に最新情報が確認できる、法人番号公表サイトでの英語表記の公表がお薦めです。初期表示に英語表記はありませんので、英語表記を望む場合には国税庁に英語表記の登録が必要となります。 

英語表記のための手続き(e-Tax/郵送)

 英語表記のための登録は、法人番号公表サイトのオンライン上で必要情報を入力し、そのままオンラインから送信します。送信後、送信票と印鑑証明書の写しなどの法人確認書類を国税庁法人番号管理室にe-Tax又は郵送などの方法により提出します。
 書類送付の方法は郵送が簡単で手軽ですが、e-Taxから送信票と確認書類をPDFで送信(イメージ送信)することもできます。e-Taxでの送信は、慣れないと少し戸惑いますが、そんな時はヘルプデスクに電話して操作方法を教えてもらいましょう。電子送信なので、結果としてすぐに送達されるのでこちらの方が早い手続きとなります。
 オンライン上の説明では、「1か月後程度で法人番号課から書面での通知」とありますが、1週間程度で法人番号サイトにおいて英語登録が更新されていたケースもありました。送信後は書面を待たずとも、たまにサイトに確認しに行って進展状況を確認すればよいでしょう。

日本語表記の変更の際は改めて登録が必要

 英語表記は「商号又は名称(和)」の日本語表記に対応する表記として登録されます。そのため、商号変更等により日本語の「商号又は名称」を変更した場合、変更前の「商号又は名称」に対応した英語表記は表示されなくなります。変更後の「商号又は名称(和)」に対応する英語表記は、改めて登録が必要となります。ご注意ください。

処分に不服がある時 再調査・審査請求・訴訟

国税に不服の申し立てができる

 税務署が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服がある時は、処分通知を受けた日の翌日から3か月以内に再調査の請求が行えます。再調査を行った後の処分になお不服がある場合は、再調査決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内に国税不服審判所に審査請求を行うことができます。

 また、再調査の請求をせずに直接国税不服審判所に審査請求を出すこともできます。この場合の期限も再調査の請求と同じく、処分通知を受けた日の翌日から3か月以内となります。  

 国税不服審判所の裁決にも不服がある場合は、裁決から6か月以内であれば裁判所に対して訴訟を提起することが可能です。

地方税も不服申し立てができる

 都道府県民税や市区町村民税の課税処分や徴収処分について不服がある場合は、審査庁に対し審査請求することができます。
 審査請求は処分庁の長、都道府県知事や市区町村長に提出することになります。国税と異なるのは、国税不服審判所のような独立した組織に審査請求をするのではなく、処分庁=審判庁となるところです。ただし、審査については行政不服審査会という、判断の妥当性をチェックするために設けられた第三者機関が諮問・答申を行います。国税で言うところの再調査と不服審判を合わせたような制度設計です。
 審査請求期限は国税同様、処分通知を受けた日の翌日から3か月以内で、裁決から6か月以内であれば、裁判所に対して訴訟を提起することが可能です。

国税の令和4年度認容割合等

 国税庁は毎年国税に関する再調査・審査請求・訴訟の統計を公表しています。それによると令和4年度の認容(主張の一部または全部が認められること)割合等は、再調査が4.6%、審査請求が7.1%、訴訟の国側敗訴割合が5.4%とのことです。なお、発生件数は再調査1,533件、審査請求3,034件、訴訟173件となっています。
 不服を訴え出ることはできますが、認められる割合は僅少です。審査請求や訴訟となれば、法的根拠の整備や審判の想定等に非常に手間がかかりますから、リスクやコストを見極める必要があります。

「年収の壁」とは 社会保険の加入

岸田首相の少子化対策の一環で

 パートタイム労働者の給与が一定の金額を超えると税金や保険料の負担が増えて手取りが少なくなり、働き損(?)が生じてしまう「年収の壁」。岸田首相は会見で「106万円、130万円の壁について被用者が新たに106万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取り組みの支援などを導入し、さらに制度見直しに取り組む」と発言しました。
 誰でも働いて賃金を得れば一定の要件の下に厚生年金の適用者(第2号被保険者)になることが義務付けられます。
 低賃金の方であれば国民年金保険料を負担するより安い場合があり得ますが、すでに3号被保険者で被扶養者である人(多くはパートの主婦)は保険料の支払いが生じ手取りが減るという現象になります。

年収の壁問題は前からあった

 近年、年収の壁の問題が脚光を浴びているのは最低賃金の水準が持続的に大きく引き上げられていることがあります。
 一般に働く側から見れば賃上げは好ましいはずですが、ラインぎりぎりで働く人はそれだけ年間時間数を抑制します。企業から見れば賃上げしても抑制されるのでメリットが少なくなります。事実、2022年の全国平均の最低賃金は時給の平均は961円で10年前より28%増となり1,000円台近くまで上がっています。

立ちはだかる社会保険の加入の壁

 1つ目の壁が年収「106万円の壁」(月額8.8万円)で、令和6年の10月に被保険者51人以上事業所に働く人も適用対象になります。もう1つの壁は年収「130万円の壁」です。
 社会保険の被扶養者は年収130万未満が対象ですが、ここでは労働時間を伸ばせば加入の対象になり、扶養から外れます。事業主負担のある厚生年金加入は有利な場合もあり、必ずしも不利とばかりは言えませんが手取りは下がるでしょう。
 パートタイマー主婦に大きく依存しているサービス業などでは、人集めのために時給を上げると逆に年末の多忙な時期に就業してもらえないなどと逆効果です。労働者は働きたくとも十分に働けず、企業も人手不足対策が取れないという八方ふさがりの状況です。

エンジェル税制の改正

エンジェル税制とは

 エンジェル税制とは、スタートアップ企業へ投資を行った個人投資家に対しての税制上の優遇措置です。所得税の計算上、(対象企業への投資額-2,000円)がその年の給与等の総所得金額から控除(総所得×40%か800万円のいずれか低い方が上限)される優遇措置Aと、対象企業への投資額全額がその年の株式譲渡益から控除される優遇措置Bの選択適用となります。
 令和5年3月31日までのエンジェル税制は利益が出た場合「課税の繰延」をするに留まっており、若い企業に投資を行うリスクにチャレンジした見返りが少ないものでした。

繰延から非課税へ一部改正

 改正前のエンジェル税制は「課税の繰延」の扱いとなっており、たとえば他の株式譲渡益が5,000万円ある年にエンジェル税制対象企業に5,000万円の投資を行って優遇措置Bを選択、売却時には1億円となったとして見てみると、
【投資時】
他株式譲渡益5,000万円-エンジェル税制適用5,000万円=課税所得0円
【売却時】
エンジェル適用株式譲渡益1億円-取得費0円(課税の繰延)=課税所得1億円
といった具合に、売却時には先に控除を受けていた結果、取得価格は0円として考えなければなりませんでした。
 令和5年度税制改正によって、設立5年未満の株式会社で各事業年度の営業損益金額が0未満等の条件を満たすプレシード・シード期のスタートアップ企業に投資する場合や自己資金による起業時に限られますが、20億円までの出資であれば優遇措置Bは繰延ではなく非課税となりました。先ほどの例示で見てみると、
【投資時】
他株式譲渡益5,000万円-エンジェル税制適用5,000万円=課税所得0円
【売却時】
エンジェル適用株式譲渡益1億円-取得費5,000万円=課税所得5,000万円
といった具合です。
 ちなみに売却時点で損失が出た場合は、改正前・後のいずれも、他の株式譲渡益と通算や、損失の繰越はできますが、投資年に優遇措置を受けていた分については控除対象になりません。

悩ましい女性の年金問題

年金制度は世帯単位から個人単位へ

 日本の年金制度はもともと官公庁や大企業の福利厚生として、雇用する世帯主とその家族の老後や障害者の生活保障という趣旨で世帯単位の設計になっていました。厚生年金・共済組合の被用者保険は世帯主の年金で夫婦2人が生活できるような給付水準として作られてきました。他方、国民皆保険実現のために被用者(会社などに雇われている人)以外を対象とした国民年金は個人単位の強制加入となっています。
 1985年以前は被扶養配偶者は任意加入制度がありました。国庫補助金も付き、当時専業主婦の7割が加入していたといいます。しかし世帯主の年金と合わせて過大になる、任意加入していないと離婚した場合は配偶者が無年金になる等と問題の指摘があり、被用者の配偶者も国民年金の強制加入者となり、3号被保険者制度ができました。国民任意加入制度は廃止となりましたが、今では税制が優遇されている国民年金基金やiDeCoも厚生年金等の補完的機能を持っています。

年金の負担と給付の公平性は

 単身者や共働きの配偶者は同じ賃金額であれば専業主婦の配偶者と同じ保険料を負担しています。世帯主の配偶者の内助の功のコストを他の被保険者の共同のコストであると考えると制度の疑問がわいてきます。専業主婦世帯の賃金は夫婦共同で稼いだとするならば第1号被保険者として自己負担するのが妥当にも見えます。
 2022年10月からの改定で101人以上の被保険者がいる事業所に週20時間以上働くと社会保険の加入対象者となり、2024年10月からは51人以上の事業所でも対象になります。厚生年金の保険料は給与に連動するので賃金が低い場合、国民年金よりも保険料が安くなることがあります。国民年金より安い保険料で将来厚生年金も受けられるのです。事業主負担があるからこその違いなのです。一方、従業員5人未満の個人事業主に雇われている人達は2019年で504万人いますが強制でないため厚生年金に入っていません。
また、自営業などの妻は被扶養者でも国民年金保険料支払い義務があります。ともあれ、制度の矛盾や負担の公平性がぶつかり合いバランスをとるのは難しい状況です。