100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.132

2023.07.28 Fri

ストックオプションへの課税Q&A 最終改訂版が公表されました

ストックオプションへの課税Q&A公表

2023年5月29日に国税庁と経済産業省によるストックオプション税制説明会が開催されました。信託型ストックオプションについては行使時に給与課税として処理される旨が説明されましたが、その際に話題にあがった、税制適格ストックオプションの権利行使価額の設定に向けた株価算定方法についても、国税庁が公表したストックオプションに対する課税(Q&A)の中で、具体的にいくつかのパターン例をあげて詳しく説明されています。

今回の公表でより明確になったポイント

1つ目に純資産法による株価算定は原則前期末B/Sベースの純資産について算出するものとされました。しかし、以下のケースでは利用不可で仮決算が必要と明記されました。
・付与契約日が直前期末から6か月を経過し、かつ、その日の純資産価額>直前期末の純資産価額の2倍の場合
・直前期末からストックオプション付与契約日までに株式発行している場合
2つ目に1円でのストックオプション発行が可能と明示されました。スタートアップでは、会社全体の純資産が正でも、黒字化していても、ベンチャーキャピタルから優先株で資金調達をしている場合では、累積調達額を差し引いた純資産はマイナスになることが多く、国税庁が示す純資産法の計算によっては、行使価格1円の適格ストックオプションも設計可能になると思われていましたが、その理解で問題ないことが明記されました。
3つ目に過去に発行した税制適格ストックオプションの再利用について明示されました。原則として、契約で定めた事項を変更した場合には税制適格ストックオプションに該当しないこととなります、としているものの、一定の条件のもと権利行使価額を引き下げる契約変更を認める旨が明示されています。

トランスジェンダー公務員のトイレ使用制限は無効!

トランスジェンダー職員にトイレ使用制限

 最高裁(第三小法廷)は、令和5(2023)年7月11日、経済産業省に勤務するトランスジェンダー職員に対し、人事院の判定のもと行われた「執務階とその上下階の女子トイレの使用制限」を違法と判断しました。
 この職員は、戸籍は出生時の男性のまま、カミングアウト後は女性の服装で勤務し、女子トイレを使用していました。健康上の理由で、性別適合手術は受けていません。
 経済産業省は、この職員に約5年間も、執務階から2フロア以上離れた階の女子トイレを使用するように求めていました。

最高裁は何を重視して判断したか?

 最高裁が、本件の女子トイレの使用制限を違法と判断した要素がいくつかあります。
①制限されていない階の女子トイレの利用で、何の問題も生じてないこと。
②女子職員への説明会で、一部の女子職員が違和感を抱いているように「見えた」としているが、明確な異議は出ておらず、トランスジェンダーに対する理解も不十分で、研修で相当程度払拭できたはずなのに、取り組んでいないこと。
③職員に性別適用手術を受けるよう、反復して催促していたことが挙げられます。
 一方、カミングアウト直後に「執務階とその上下階の女子トイレの使用を制限」したことは、他の女子職員への激変緩和措置として、やむを得なかったとしています。
 最高裁は、約5年間も制限の見直しや研修が行われず、放置されていたことを重視して判断したものと思われます。
なお、一審は職員の勝訴、二審は国が勝訴していましたので、裁判所の判断が二度も変わったことになります。

判決が社会に与える影響

 令和5(2023)年6月に、「LGBT法案」が国会で可決成立し、公布されました。
 民間企業も、性的マイノリティと言われる社員のトイレ等の施設利用については、試行錯誤されているのではないでしょうか。
この判決は、今後の民間企業の取り組みにも大きな影響を与える可能性があると思われます。

災害に遭った時の個人の税の減免措置

日ごろの備えは十分ですか?

 ご存じの通り、日本は天災が多い国です。今年も大きな地震や風水害がすでに発生している地域があります。被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。
 やはり災害については日ごろからの防災意識が肝要です。自治体が公表しているハザードマップを一度眺めるだけでもいざという時の対応に差が出ます。ぜひ一度、ご確認いただければと思います。

災害を受けた時の税の軽減・免除

災害によって住宅や家財に被害を受けた時は、雑損控除と災害減免法の所得税の軽減免除のどちらかが適用できます。それぞれ計算方法や適用条件が異なるので、見てみましょう。

雑損控除の計算方法

(災害金額+災害等関連支出の金額-保険金等)-総所得金額等の10% 又は
(災害関連支出の金額-保険金等)-5万円のいずれか多い方の金額

雑損控除の特徴

雑損控除の計算方法所得金額の合計額等による適用上限が無い
当年の所得から引き切れなかった場合は繰越控除が可能(最大3年間)
盗難や横領についても適用可能

災害減免法の所得税の減免の計算方法

所得金額500万円以下:所得税全額免除
500~750万円以下:所得税1/2軽減
750~1,000万円以下:所得税1/4軽減

災害減免法の所得税の軽減免除の特徴

所得1,000万円以上の場合適用できない
損害額が住宅または家財の価額の1/2以上でないと適用できない

住民税の扱いはどうなる?

 住民税にも雑損控除はありますから、所得税同様に税の計算に適用されます。地方税の減免措置については所得税の減免を定めている「災害減免法」とは異なり「地方税法」の管轄になっており、各自治体の条例により定められることになっています。総務省の自治体への技術的助言を見てみると、損害額が住宅又は家財の50%超では所得税の減免計算と同様ですが、損害が30%程度でもある程度減額が受けられる設計になっているようです。

税理士業務の保険 税理士職業賠償責任保険とは

ユーチューバーの税金トラブル?

 2023年7月初頭、人気ユーチューバーの自宅等に国税の査察が入る事態となったようで、これによりユーチューバー・所属事務所・担当会計事務所間のトラブルがあったと報じられています。
 内容についての真偽はともかく、ユーチューバー側の主張を配信した動画の中で、税理士が「訴えてくれれば保険を使える」と発言したとされるシーンがありました。この保険についてはおそらく「税理士職業賠償責任保険」(税賠)というもので、税理士または税理士法人が、その資格に基づいて行った業務に起因して損害賠償請求を受け、法律上の賠償責任を負担したことにより被る損害に対して保険金を支払ってくれるものです。

契約タイプや加入状況

 税賠は個人事務所用の保険と税理士法人用の保険の2タイプに分かれており、支払限度額が1請求につき500万円・保険期間中1,000万円の1型から、3億円・6億円の7型までとなっています。保険料は事務所の人数や税理士の人数により異なります。また、事前税務相談特約と情報漏えい特約が用意されています。
 2023年4月時点の加入状況も公表されており、それによると個人用保険は開業税理士数を分母としての計算で54.36%、法人用保険は税理士法人本店数を分母として、87.18%となっています。

ペナルティ税や本来の税金はNG

 税賠が補償してくれるのは、税理士のミスにより発生してしまった税金です。例えば消費税の簡易・本則の選択適用を誤り本来より過大に納付してしまった税金や、有利になる税制の適用を失念してしまった場合に受けられなかった優遇措置分等です。
 本来支払うべき税金の額や、過少申告加算税・延滞税等の附帯税は、保険金の支払い対象にはなっていません。

加入パンフレットに書かれていること

「職業専門家が依頼者に損害を与えた場合に、その損害について賠償が可能であることが専門家としての要件ともいわれています」というのは、確かにうなずける部分ではあります。ミスはないに越したことはありませんし、我々専門家は日々努力していますが、万が一の時でもお客様が安心できるように、こういった保険も用意されています。

経理ってなに?

経理ってなに?

企業には必ず経理担当者や経理部門があります。経理担当者がいない零細な企業でも、社長自身や奥様など誰かが必ず現金・預金の出納帳や、取引の記録を記帳しています。記帳といっても現在ではパソコンへの入力です。
現在の制度会計(法律で定められた会計方法)では、複式簿記という方法で記帳することとされております。経理ソフトに入力された科目や摘要や金額は、自動的にこの複式簿記の方法で集計され結果として決算書(貸借対照表と損益計算書)に集約されます。

複式簿記とは

複式簿記のそもそもの起源は、諸説ありますが、13世紀末から14世紀のイタリアルネサンス時代に発明され、15世紀から17世紀の大航海時代に普及したという説が有力です。
大航海時代、商人は船を仕立てて積み荷や食料や船員を雇い入れ、遠くアフリカやインドへ出向き、香辛料や宝石を安く仕入れ、それをヨーロッパで換金し儲けたわけです。 大変な危険を伴い、命を落としかねないリスクのある航海です。リスクが高い分儲けも多かったのだと思います。
しかし儲けようと思った商人達は、決してそんな危険な航海には行きません。航海に出て行ったのは、命知らずの何処の馬の骨とも知らない荒くれ者です。そんな荒くれ者ですから、取引した商品を隠し持ってはいないか? 積み荷をごまかしてはいないか? 商人たちは、全く彼らを信用していませんでした。彼らを監視しごまかしようのない管理方法として考えだされたのが、複式簿記による記帳=帳簿作成だといわれています。

経理の本質は

要は取引現場にいない者が、取引が正しく行われたか否かを管理し監視するシステムが経理なのです。
 つまり経理業務は取引現場に居ない人のために、取引がどのように行われたかを報告する行為です。
取引現場にいない人とは大企業であれば管理職や役員や株主です。零細企業の場合は社長自らが取引現場にいるため、経理業務が重視されず、おろそかになりがちです。
 一番重宝しているのは税務署です。