100年企業創り通信
2023.03.10 Fri
毎年春闘のころになると賃上げの話題を耳にすることが増えますが、今年はコロナ縮小、物価高もあり2023年1月に経団連が「賃上げは企業の責務」というメッセージを出し「物価高に負けない賃上げを目指す」という方針を掲げました。 どこまで賃上げに取り組むかは各企業によってまちまちですが、人件費負担を考えるのであれば賃上げの検討前に自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認してみてはどうでしょうか。
業種業態によって異なっています。
①労働分配率=人件費÷付加価値
②付加価値の算出
●控除方式:主に製造業で使用
付加価値=売上高-外部購入価値(製品仕入高、直接材料費、外注加工費等)
●加算方式:主に非製造業で使用
付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費
平均的な労働分配率や付加価値は、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データを参考にしてください。自社の3~5年程度の労働分配率を計算し適正と思われる利益の年度を基準にするとよいでしょう。
①定期昇給は企業の決める賃金テーブルに基づき賃金が従業員の年齢や勤続年数で自動的に昇給する。昨今は成果が反映されないので各企業で見直しされています
②ベースアップは賃金テーブルそのものを書き換えて全従業員の給与水準を一斉に引き上げることを言います。
昇給を賞与や退職金に連動しないようにするには賞与は基本給非連動型で業績連動型として業績指標を反映。退職金については定額制、別メニュー方式、他に成果を反映にさせるにはポイント制になるでしょう。また、社会保険料も賃上げで上がるので考慮しておかなくてはなりません。
賃上げした時は以後の人件費は増大するので足元の業績が良かった時でも利益分配は昇給でなく賞与で報いるということもあります。賃上げ前にメリット・デメリット、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう
新型コロナの収束も見え、採用活動が活発になってきました。しかし求人を出しても採用できないという話や、昔は採用できたのにということをよく聞きます。今と昔、何が変わって、どうすれば採用ができるのかを考察します。
どのぐらい減ったのか見てみましょう。
成人になった人数と生まれた赤ちゃんの人数を見れば簡易的にわかります。
2002年の成人………152万人
2022年の成人………120万人
2021年に生まれた赤ちゃん………81万人
ここから見えてくるのは20年で30万人~40万人、労働市場に入ってくる人口が減っていることがわかります。少なくなっている中で人材を取り合うのですから昔より採用難度は高まっています。
成功する採用はたった2要素で決まります。「見られる場所に掲載して」「応募される募集を出す」、この2要素です。
「見られる場所に掲載」といっても意外にできていないことが多いのです。単純にハローワークに出していませんか? ハローワークが良くないということではありません。自分の求めている人材がハローワーク求人を見ているか考えることが重要です。基本的には月間閲覧数が多いであろう媒体に出すことが応募期待値を高めます。
2つめの「応募される求人募集を出す」とは、「求職者目線に立っているか」が重要です。単に給料と勤務時間と仕事内容を書いているだけになっていませんか? 求職者が職を変えるときは今の職で満足していなくて変化を求めているときです。その変化を自社なら実現できるよとアピールすることが必要です。具体的には
①会社の未来が描かれていること
⇒ないと変化が実現できるかわからない
②具体的表現で書くこと
⇒抽象表現だとよくわからず離脱される
③働く側のメリットを書く
⇒ないと何でわざわざ転職するの?となり離脱される
上記はお金をかけずにできることばかりです。採用を成功させてこそ企業の未来の成長になることでしょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大で売上が減った企業を支援するための融資で、実質無利子・無担保で融資が受けられたことから「ゼロゼロ融資」と呼ばれた支援策は2022年9月に終了しています。
ゼロゼロ融資を受けた場合の据置期間は5年以内ですが、3年前後で設定した中小企業が多いようで、2023年夏ごろから返済が本格化すると見られています。
しかしながら現況を鑑みると、コロナの影響の長期化だけでなく、原材料費高騰での物価高など、多くの中小企業が厳しい状況にある中、積みあがった債務の返済負担は重くのしかかっています。 国は一定の要件を満たした中小企業者が金融機関との対話を通じた「経営行動計画書」を作成した上で、金融機関の伴走支援を受けることを条件にした、借入時の信用保証料を大幅に引き下げる「コロナ借換保証制度」を2023年1月10日より開始しています。この制度は2021年4月1日より開始された「伴走支援型特別保証制度」の適用要件を緩和したものとなっています。概要や要件を確認してみましょう。
保証限度額:1億円(民間金融機関のゼロゼロ融資上限額である6,000万円を上回る額)
保証期間:10年以内
据置期間:5年以内
金利:金融機関所定
保証料(事業者負担):0.2%等(補助前は0.85%等)
その他:100%保証の融資は100%保証での借換えが可能
コロナ借換保証の適用要件は、
①セーフティネット4号か5号の認定
②売上高が5%以上減少
③売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少
のいずれかです。
また、上記適用要件に加えて、金融機関による継続的な伴走支援と経営行動計画書の作成が要件となっています。
厚生労働省ではカスタマーハラスメントについて「顧客や取引先のクレームや言動のうち、要求の妥当性を欠いたり態度が社会通念上ふさわしくなかったりして労働環境が害されるもの」をカスハラと定義しています。昨年12月に公表された連合の調査によるとカスハラで一番多いのは「暴言」55.3%、次に「説教など権威的な態度」46.7%だそうです。
同調査は最近5年間で発生件数が増えたと回答した人は36.9%あり、人手不足によるサービスの変化や低下、中でも「コロナで発生件数が増えた」と答えたのは22年11月では23.1%ありました。コロナ禍のストレスで怒りの沸点の低下が挙げられます。 カスハラが発生するきっかけは、勘違い、嫌がらせ、商品・サービスへの不満もありますが「制度上の不備」との回答も16.3%あり、それは「不備な体制や制度の放置」でもあり、会社の責任もあるということを言っているようです。
20年10月の厚労省の調査では約6千社のうちカスハラの取り組みを「特にしていない」企業は57.3%で「顧客の理不尽な要望への対応も優れたサービスへの一環として我慢して見逃してる企業も多い」とのことです。カスハラの取り組みが進まない要因は、多頻度、長時間などのクレーム等、どこからがカスハラなのか難しく対策の立て方にもわかりにくい面があることです。
カスハラを受けた人は「心身に不調をきたした」26.7%、「仕事を辞めた・変えた」10.5%などの回答もあります。
カスハラにより従業員のストレスが高まって心身に不調を来たし、業務が行えなくなる様子などを見た他の従業員が辞めてしまう、そのような情報が広まり採用難になるといった悪循環に陥らないようにしたいものです。
カスハラを放置せず発生した場合の相談窓口、カスハラの判断基準、社内規定、対策マニュアル整備等を進めると同時にクレームに1人で対処せず初期対応の重要性を指摘し会社と情報を共有することが大事です。
ある一定額を超えた財産を持っている場合、調書にその内容をまとめて税務署に提出しなければならない制度があります。それが「財産債務調書制度」と「国外財産調書制度」です。
財産債務調書制度は①その年の退職所得を除く所得金額の合計額が2,000万円超、かつ②その年の12月31日において合計3億円以上の財産か、1億円以上の国外転出特例対象資産を持っている方が対象で、財産債務調書の提出が必要です。令和5年以降は上記条件の他に「10億円以上の財産を持っている」場合も対象になります。 国外財産調書制度はその年の12月31日において、5,000万円を超える国外財産を有する非永住者以外の居住者が対象です。
調書に記載がある財産に関して、所得税等・相続税の申告漏れが生じた場合、その財産に課される過少申告加算税や無申告加算税が5パーセント軽減されます。
逆に、調書の提出がない場合、または提出された調書に記載すべきものを記載しなかった場合、その財産に課される過少申告加算税や無申告加算税は5パーセント加重されます。 また、国外財産調書については、偽りの記載をして提出した場合や、提出をしなかった場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあります。ただ、意図的な虚偽記載や不提出ではなく、うっかり提出していなかった、といった事情であれば、その刑を免除することができるとされています。
国税庁が発表している資料によると、令和3年分国外財産調書の提出件数は12,109件で、令和3事務年度における過少申告加算税及び無申告加算税の特例措置は
軽減措置:135件 41億9,893万円
加重措置:293件 439億2,378万円
だったということです。
また、少し古い記事ですが2019年には国外財産調書不提出で国税局が告発しているのをニュースサイトで確認できます。