100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.113

2023.03.17 Fri

所得税の還付申告 不正還付が増加傾向

確定申告で納め過ぎた税は還付されるが

 所得税の申告手続きにおいて、例えば給与収入の年末調整で清算されていない各種控除を追加する場合に、還付申告をすることで所得税の還付を受けることができます。
 この制度を悪用して、虚偽の内容を記した申告書を税務署に提出して、所得税の還付を不正に受ける事案が横行していると、ニュースサイトが報じています。
 具体的な件数を国税庁が発表していて、それによると、不正還付申告として処理された件数は令和3事務年度で191件、追徴税額は本税で約1億6千万円、加算税は4,700万円に上っています。また、令和2事務年度と比べると、件数と追徴税額は増加傾向です。

仮装・隠蔽は追徴課税

 報道によると、ある女性が代行業者から指南を受け業者が架空の源泉徴収税額を記載した還付申告書を提出し、4年間で300万円ほどの還付を請求。税務署が不審な点に気付いて還付はされず、調査の結果、仮装・隠蔽に当たるとして重加算税を含め約400万円を追徴課税されたとのことです。

 給与の源泉徴収をした個人・会社は、税務署に法定調書(源泉徴収票)を提出していますから、ちょっと税務署が調べれば虚偽であると分かるものであり、「仮装・隠蔽」とも言えないような稚拙な手口です。

 偽装した確定申告書を出した女性は、代行業者とは会うことなく、やりとりは無料通話アプリで行ったとのことです。最近社会を騒がせている、闇バイトの強盗事件に似た荒っぽさを連想します。

怪しい話には気をつけて!

 税金まわりでよく言われるのは、「節税」と「脱税」の違いです。「節税」は優遇措置や有利選択等の制度を活用して、税金の額を減らすこと、「脱税」は仮装・隠蔽を行うことです。脱税にはペナルティーである加算税が課せられる他、詐欺罪など刑事上の責任追及が行われる可能性があります。
 また、本人が脱税と思っていなかったとしても、今回の事例のようにそそのかされ、実際に申告書を出してしまえば、その本人も責めを負うことになります。源泉徴収の流れを知っていれば「すぐに不正が発覚するじゃないか」と思い当たるはず。税に携わる者としては残念でなりません。

オンライン事業所年金情報サービス始まる

オンライン事業所年金情報サービスとは

 日本年金機構は事業主が毎月の社会保険料額情報等の電子データをe-Govのマイページで受け取れるサービスを2023年1月にスタートしました。利用申し込みから各種情報・通知書の受け取りまでがオンラインで完結し初回の申し込み以降は定期的に受け取れるようになります。

サービスのメリット

①紙の通知よりも早く受け取り確認ができます。納入告知書などの到着前に毎月の社会保険料額を確認できる等、これまでよりも早く各種情報・通知書の受け取りができるようになりました。

②定期的に受け取りも可能に。一度申し込みをすれば定期的に届きます。これまでのように随時電話で確認する等は必要ありません。

③データの活用が可能に。電子データで受け取れるため、社内システムで取り込み、自社で保有するデータとの突合を行うなど業務効率化等、DX推進の一助になります。

電子データで受け取れる各種情報や通知書

・社会保険料額情報

・保険料増減内訳書

・基本保険料算出内訳書

・賞与保険料算出内訳書

・届け出に必要な被保険者データ ・決定通知書

サービスの利用方法

 これを利用するためにはGビズIDが必要です。GビズIDとはデジタル庁が運営している認証システムです。1つのアカウント(ID・パスワード)で複数の行政手続きが可能になり無料で利用することができます。発行まで2週間程度かかります。すでにGビズIDを取得している事業所はすぐに利用ができます。
オンライン事業所年金情報サービスの利用はGビズID取得後e-Govのマイページにログインし、利用の申し込みをするとマイページにデータが届きます。
官庁も郵送を減らしていくことと、迅速な通知体制を進めていますね。

昨年の実質賃金0.9%減額

現金給与総額は

毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報により昨年支払われた現金給与総額と実質賃金との関係を見てみると、現金給与総額は前年比2.1%増の326,157円となり1991年以来31年ぶりの伸び幅となりました。所定内給与で見ると一般労働者は318,904円、1.3%増、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,242円、1.6%増です。

実質賃金は

一方物価の変動を反映した実質賃金は前年比0.9%減少と2年ぶりのマイナスとなりました。現金給与総額はコロナ禍で落ち込んだ経済の回復を背景に2.1%増加しました。給与総額のうち基本給に当たる所定内給与は1.2%増、残業代などの所定外給与は5%増となりました。賞与などについては5.1%増と大きく伸びています。しかし、賃金の実質水準を算出する指標となる物価が3.0%の上昇となったため実質賃金はマイナスとなりました。  働いている形態で見ると正社員等一般労働者の給与総額は2.3%増、パートタイム労働者は2.6%増でした。コロナ禍で落ち込んでいたボーナスが4年ぶりに増加するなど給与は増加傾向にありますが、物価の上昇に追い付いていません。

労働時間と雇用状況はどう変化?

労働者一人平均の総実労働時間は昨年比0.1%増の136.2時間でした。そのうち所定内労働時間は0.3%減の126.1時間、所定外労働時間は4.6%増の10.1時間となりました。

雇用状況では常用雇用者は昨年比0.9%増の5,134万2千人でした。就業形態別に見ると一般労働者は0.5%増の3,513万人、パートタイム労働者は1.9%増の1,621万2千人でした。

賃上げして従業員に報いたいという気もちは経営者の変わらぬ思いでしょう。しかし物価上昇に追い付かない状況ではなかなか経営努力が目に見えにくいということかもしれません。

昨年の実質賃金0.9%減額

現金給与総額は

毎月勤労統計調査 令和4年分結果速報により昨年支払われた現金給与総額と実質賃金との関係を見てみると、現金給与総額は前年比2.1%増の326,157円となり1991年以来31年ぶりの伸び幅となりました。所定内給与で見ると一般労働者は318,904円、1.3%増、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,242円、1.6%増です。

実質賃金は

一方物価の変動を反映した実質賃金は前年比0.9%減少と2年ぶりのマイナスとなりました。現金給与総額はコロナ禍で落ち込んだ経済の回復を背景に2.1%増加しました。給与総額のうち基本給に当たる所定内給与は1.2%増、残業代などの所定外給与は5%増となりました。賞与などについては5.1%増と大きく伸びています。しかし、賃金の実質水準を算出する指標となる物価が3.0%の上昇となったため実質賃金はマイナスとなりました。  働いている形態で見ると正社員等一般労働者の給与総額は2.3%増、パートタイム労働者は2.6%増でした。コロナ禍で落ち込んでいたボーナスが4年ぶりに増加するなど給与は増加傾向にありますが、物価の上昇に追い付いていません。

労働時間と雇用状況はどう変化?

労働者一人平均の総実労働時間は昨年比0.1%増の136.2時間でした。そのうち所定内労働時間は0.3%減の126.1時間、所定外労働時間は4.6%増の10.1時間となりました。

雇用状況では常用雇用者は昨年比0.9%増の5,134万2千人でした。就業形態別に見ると一般労働者は0.5%増の3,513万人、パートタイム労働者は1.9%増の1,621万2千人でした。

賃上げして従業員に報いたいという気もちは経営者の変わらぬ思いでしょう。しかし物価上昇に追い付かない状況ではなかなか経営努力が目に見えにくいということかもしれません。

税金よもやま話 所得税の歴史

所得税は「申告納税制度」

 所得税は、納税者が自ら税務署へ所得等の申告を行い、税額が確定して自らが納税します。これを「申告納税制度」と言います。対して行政機関の処分により税額を確定する方法を賦課課税制度と言います。地方税ではこの方法が一般的です。

 実は国税でも、戦前は賦課課税制度が採用されていました。どんな方法だったのか、所得税の歴史と併せて見てみましょう。

創設初期の所得税

 所得税の創設は明治20年(1887年)。創設当初は国税の収入の1%~2%程度にすぎませんでした。ちなみに令和2年度の税の内訳を見てみると、国税の収入の約30%が所得税です。当時の所得税は年間所得金額300円以上の人のみを対象としており、納税者の0.3%しかいなかったため「名誉税」と呼ばれることもあったようです。

 個人所得にのみ課税されていた所得税ですが、民間企業の増加に伴い、明治32年(1899年)に所得税の大改正が行われ、法人所得にも課税されることになりました。また、所得税の事務を管轄する税務署(税務管理局)は明治29年に誕生しています。

所得調査委員会が所得を決定

 明治20年から昭和22年までの個人所得税は、納税者が所得高を申告すると、税務署が標準率をもとに一律に推計した数値を基本として所得金額を算出し、その後「所得調査委員会」が地域や納税者の実情に応じて勘案、所得金額を決定するというプロセスでした。この方式は課税の公平感が少なく、委員会が納税者ごとの斟酌交渉の場となることもあり、批判もあったようです。  また、大正時代には会社企業の発達がめざましく、勤労所得者が増加したため勤労所得控除が採用されました。現在も名前が残っている扶養控除、生命保険料控除等も大正時代に導入されたものです。

昭和22年に申告納税制度が開始

 戦後の昭和22年(1947年)、所得税及び法人税に申告納税制度が導入されました。当初の確定申告期限は1月末日、昭和26年の改正で2月末日に延長され、昭和27年分から、現在と同じ3月15日となりました。

ふるさと納税 上限を超えた寄附でもお得?

フジロックのチケットが返礼品に

 個人のその年の所得・控除によって決まる控除上限金額以内の寄附であれば、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。今年はフジロックのチケットが返礼品として貰えるようになり、少し話題となりました。  返礼品の価値は寄附額の3割以下という総務省のルールがあるため、1日券で見てみると、通常購入料金が21,000円から23,000円となっているのに対し、寄附は8万円行う必要があります。

上限を超えた寄附でもお得なのか

 例えば今年の所得や控除で計算したふるさと納税控除上限金額が7万円の方が、フジロックの一日券がどうしても欲しいと8万円寄附してチケットを入手したとして計算してみると、確定申告を行った場合、約9,500円が自己負担となります。本来7万円までの寄附にしておけば、自己負担は2,000円となりますが、8万円の寄附を行うと、上限を超えている部分については全く税額を控除されない訳ではなく「住民税をたくさん引いてくれるふるさと納税だけに許されている控除」部分が反映されなくなりますが、それ以外の部分で少しだけ税金を引いてくれます。よってトータルの負担は1万円余分に寄附をしても12,000円ではなく、約9,500円となります。  チケット代金は少なくとも21,000円ですから、差額の11,500円分はお得、ということになります。

基本的に上限以内の寄附の方がお得

 7万円の寄附で食料品等の生活必需品を返礼品として貰った場合、すべて返礼品が寄附額の3割だとすると、21,000円相当のものが自己負担2,000円で貰えます。チケット代の21,000円をふるさと納税で節約した結果捻出できた、つまり2,000円でチケットが入手できたことになります。  今回のケースは「通常購入できるもの」「他に必要なものがあった場合」で考えたため、ふるさと納税で必需品を貰う方がお得感が出ましたが、「ふるさと納税限定のものが欲しい」「日用品は別段必要としていない」といった場合は、上限を多少超えて寄附をしても、お得感がある内容となります。上限を超える寄附を検討する際は、参考にしていただければと思います。