100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.114

2023.03.24 Fri

固定資産税のしくみ

土地・家屋・償却資産にかかる税

 固定資産税は、その名の通り固定資産にかかる税です。日本には明治時代から地租(土地に対する税)や家屋税(住宅にかかる税)がありましたが、戦後1950年に、シャウプ勧告に基づく地方税制改正の一環として、地租や家屋税を統廃合し、原則市町村税として創設されました。  2020年度のデータですが、固定資産の納税義務者(法人・個人合計)は、土地が4,138万人、家屋が4,214万人、償却資産が472万人とのことです。市町村税に占める固定資産税の割合は約4割と、市町村の運営に欠かせない財源となっています。

固定資産の評価方法

 土地や家屋についての固定資産税は登記をすると自動的に税額が計算され、納税通知書が送られてくるため申告不要です。償却資産については、申告が必要となります。

 各固定資産の評価方法は

土地:宅地や農地等、地目別に売買実例価額等を基礎として、評価額を計算。宅地については公示価格等の7割を目途に評価額を計算

家屋:再建築価格(その時点で新築する場合に必要となる建築費)に経年減点補正率等を乗じて評価額を計算

償却資産:取得価額を基礎として、経年減価を考慮して評価額を計算

となっています。土地・家屋の評価については3年に1度見直しを行います。また、評価額は縦覧期間に確認ができ、疑問がある場合は再審査の申し出ができるようになっています。

 評価額を基に課税標準額が決定されます。ただし、納税者の負担感に配慮し、評価額が急激に上昇した場合でも税負担をゆるやかに上昇させる負担調整措置が講じられています。

税の計算と特例

 標準課税額が土地30万円未満、家屋20万円未満、償却資産150万円未満であれば課税されません。また、標準税率は1.4%です。標準課税額の決定や税額については政策的な特例措置があり、特に課税される対象が土地や家屋、建造物等の償却資産ということもあり、特例措置も様々です。  多様な特例があるため、その特例を延長するにあたり、税制改正大綱では長々とその情報が書き連ねてあります。令和5年度税制改正大綱には「固定資産」というワードが70回以上登場しています。

個人の青色承認取消しと期限後申告

時々見かける青色承認取消しの誤解

 個人の青色申告は、所得税を正しく納税するために行う制度で、複式簿記の帳簿やそれに伴う書類を保存する必要がありますが、一定の水準を満たす場合は、最大65万円の所得控除を受けることができ、専従者給与や損失の繰越控除、減価償却の特例や貸倒引当金の計上が可能となります。

 たびたび見かける誤認は「2事業年度連続で期限内(2月16日~3月15日)に申告しないと、青色申告の承認を取り消される」というものです。

2事業年度連続で期限後申告となった場合、青色申告の承認を取り消されるのは法人の場合のみで、個人についてはこの条件で取り消されることはありません。

 税務署の対応について確認を行っている「事務運営指針」を確認しても、法人の青色申告の承認の取消しについては「無申告又は期限後申告の場合における青色申告の承認の取消し」という項目が確認できますが、個人の青色申告の承認の取消しについての事務運営指針には、その項目がありません。  個人の青色申告の承認が取り消されるのは、「帳簿書類を調査等で提示しない場合」「帳簿書類の備え付け等の税務署の指示に従わない場合」「仮装・隠ぺい等を行った場合」などです。

青色承認が取り消された場合

 税務調査等で青色申告の承認の取消しが行われた場合、その原因となった年分のうち、最も古い年分以後については、承認が取り消されたものとして扱われます。また、青色申告の承認の取消しを受けた場合、通知後1年間再申請はできません。

青色承認は取り消されないが

 個人の所得税の確定申告を、期限後に申告した場合は、青色申告特別控除の65万円(電子申告等の要件を満たさない場合は55万円控除)が受けられなくなります。これは65万円控除の要件に「期限内に申告する事」が入っているためです。なお、10万円控除の要件には期限内申告は含まれていませんので、期限後申告の場合でも10万円の青色申告特別控除は受けられます。  青色取消しにはなりませんが、無申告加算税や延滞税に加え、65万円控除不適用というペナルティーも課されてしまいますから、やはり期限内に申告するに越したことはありませんね。

相続税申告前に相続人が死亡した場合

短期間に相続が相次ぎ発生することがあります。父、母、子2人の4人の親族関係で母が4月1日に死亡、父と子2人が相続人となりましたが、相続税の申告前に父も続けて8月1日に死亡した場合の申告は、どうなるでしょうか?

申告義務は相続人に承継される

一次相続(母)の相続税申告義務は、父と子2人にありますが、父がその後、死亡したため、父の申告義務は相続人(子2人)が承継します。子2人は、一次相続(母)の相続人として相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年2月1日が申告期限となり、父から承継した一次相続(母)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。

なお、二次相続(父)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。

一次相続の遺産分割協議書の記載

子2人は父の権利義務を承継します。一次相続(母)の遺産分割協議書には、一次相続の被相続人(母)、二次相続の被相続人(父)の最後の本籍、最後の住所、出生日、死亡日、氏名と、相続人兼父相続人として子2人の本籍、住所、出生日、氏名が記載されます。  

子2人は、母の遺産分割協議に参加し、父と子2人がそれぞれ、母から相続する財産、債務について遺産分割協議書を作成します。また、父が一次相続で母の財産・債務をどのように承継するかは、父の生前の希望も尊重しつつ、二次相続の承継による税負担と併せて検討することになります。

法定相続情報は被相続人ごとに作成

一次相続(母)の相続税申告書には、一次相続(母)の法定相続情報一覧図(相続人は、父と子2人)と二次相続(父)の法定相続情報一覧図(相続人は、子2人)を、それぞれ別々に作成し、添付する必要があります。

これは、法定相続情報一覧図は、被相続人が死亡した時点で誰が法定相続人であるかを示すものだからです。

したがって一次相続(母)の法定相続情報一覧図には、被相続人は母、相続人は父と子2人の情報を記載し、二次相続(父)の法定相続情報一覧図には、被相続人は父、相続人は子2人の情報を記載します。先に死亡した母を「亡妻」と記載することもあります。2つの法定相続情報一覧図を重ねることにより、一次相続の申告は二次相続を経て子2人に承継されることが示され、遺産分割協議書の記載と整合します。

減価償却の計算方法 定額法と定率法

減価償却とは

 減価償却は、高額な機械設備等の経年劣化が生じる資産の購入費用を、購入した年にまとめて経費計上するのではなく、使用可能年数に応じて分割して経費計上することを言います。耐用年数に応じて毎年経費計上するのですが、その計算方法は大きく分けて2種類あります。毎年一定額を償却してゆく「定額法」と一定の率をかけて償却額を決定する「定率法」です。

2つの計算方法の利点と償却方法届出

 定額法は毎年同じ金額を償却するので計算がとてもシンプルです。定率法は序盤の年の費用計上の方が後半よりも大きい額となりますから、初期の節税効果が大きいと言えます。ただし、計算方法も複雑です。

 計算をシンプルにしたい、序盤の年に利益を残したいといった場合は定額法、序盤の年に経費をより多く計上したい場合は定率法と、利点も相反するものとなります。

 建物(平成19年4月1日以後に取得したもの)・建物付属設備や構築物(平成28年4月1日以後に取得したもの)・ソフトウェア等の無形固定資産については定額法しか利用できませんが、それ以外の有形固定資産については、定額法・定率法のどちらを選択しても良いとされています。

 個人の場合は、定額法 しか利用できないもの以外も、定額法を用いて計算するのが基本ですが「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することによって、定率法を選択することができます。

 法人の場合は、定額法しか利用できないもの以外は、定率法を用いて計算するのが基本となっており、定額法を利用したいものについては「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することによって定額法を選択することができます。

法人成りの際にはご注意を

 償却方法の届出書を出さないと、個人の時には定額法で計算していた、建物等の定額法で計算しなければならないもの以外は法人成りの後には定率法で計算することになりますのでご注意ください。