TOMA100年企業創りコンサルタンツ株式会社

100年企業創りレポート

藤間秋男の100年企業創りレポート vol.313 2024.6月号

2024.05.31 Fri

赤文字:藤間のコメント

黒太文字:引用

1.後継者選定の条件  稲盛和夫

(『 京セラ創業者・稲盛和夫の言葉』 日経トップリーダー 日経BP 2024年3月 )

 企業の存亡に関わる後継者選定の条件をどこに置けばよいのでしょうか。このことについて、私はかつてある塾生の質問に答えて、社長にすべき人の5つの条件について述べたことがあります。それは、次のようなものでした。
①判断・決断の基準を心の中に持つ
 1番目に、社長とはその企業において物事を決める最終の地位にいる人であり、そのために、判断・決断の基準を心の中に持っている人でなければなりません。(略)
 判断・決断の基準を心の座標軸として持っていなければなりません。そしてその基準とは、「人間として何が正しいのか」ということです。
 私は創業の頃から、「人間として何が正しいのか」「原理原則に基づいて経営する」ということを心の座標軸として、常に自問自答を繰り返してきました。この判断基準を持っていなければ、人間はともすれば自分にとって都合がよいか悪いか、損か得かという利己的な欲望や本能に基づいて物事を判断してしまいます。
 社長とは、絶大な権力を持っているがゆえに、そうした一切の私心を排し、「従業員のため」「会社のため」、さらには「世のため人のため」という「利他の心」ですべての経営判断を行っていくことができる人物でなければなりません。(略)
 『稲盛和夫がこの場にいたならば、この問題をどう考え、どう行動していただろうか』ということを踏まえた上で、物事を決めていってほしい。(略)
 皆さんの後継者となる人も、「先代なら、前の社長ならどう考えるか」と考えられるような人であるべきです。
 そのためにも、皆さん自身が、企業の中の判断基準のような存在でなければなりません。つまり、社員が何かを判断するときに、「社長であればこう判断するはずだ」と手本にするような存在を目指していただきたいと思います。
②企業に対する無限大の責任感を持つ
 社長に求められる条件の2番目は、全責任は自分にあるのだという企業に対する無限大の責任感を持つことができる人でなければなりません。(略)
 社長としての責任を自覚し、社員のため、社会のために仕事をするのだという使命感を喜びとして、経営の舵取りを行える人であることが求められます。
③自らのすべてを会社に注入する
 3番目に、社長は自らのすべてを会社に注入できる人でなければなりません。(略)
 言い換えれば、社長が四六時中会社のことを考えている間は、会社の組織も生きています。しかし、会社の頭脳に当たる社長が家に帰り、個人に返ることで、会社という組織はその間、意識を失ったも同然になります。
 「自分自身のことは犠牲にしてでも、会社のことに常に意識を働かすことが自分の仕事なのだ」と考え、実践できる人でなければなりません。
④従業員のために誰にも負けない努力をする
 従業員の物心両面の幸福の追求のため、誰よりも努力する存在でなければなりません。(略)
 従業員のために誰よりも懸命に働く人でなければ、誰もついてきません。
 また、社長自身も、誰よりも努力しているからこそ、従業員を厳しく叱ったり、注意したりすることができるのです。
⑤従業員から尊敬される
 社長は従業員から尊敬される存在でなければなりません。そのためには素晴らしい人格、見識を備えた人であることが求められます。そのような素晴らしい心根を持った尊敬される人になるには、心を高めることが必要です。
 以上述べた5つのことを備えている人が、後継者を選ぶ際の条件になろうかと思います。それは端的に言えば、無私の心を持って自分の全人格を会社に注ぎ込むことができる人であり、そうした素晴らしい人間性、人格、人柄を備えているということに尽きます。もちろん、こうしたことに加えて、実践的な会計学の知識を備えていることや、事業を伸ばしていくための才覚にあふれていることなども、企業を経営していく上では必要不可欠です。しかし、最も大切な要件は、今述べてきたような素晴らしい人間性、人格、人柄を持っているかどうかであります。
才覚と人間性どちらを選ぶか
 この「才覚か人間性か」という議論は、中国では才と徳の問題として古来なされてきました。中国の歴史書『資治通鑑』では、この才と徳に関して人物を4つの類型に分けています。才も徳もある人を「聖人」、才も徳もない人を「愚人」、徳が才に勝っている人を「君子」、才が徳に勝っている人を「小人」と言っています。その上で、人材を選ぶ場合には、できれば才も徳も備わっている聖人、もしくは徳が才に勝っている君子を採用したいところだが、それがかなわなければ、才覚に長けている人よりは才も徳もない「愚人」を採用するほうがまだましだと言っています。それは、才覚だけが飛び抜けてそれを制御する徳がない場合には、悪をなす可能性があり、才覚がないために悪をなすこともない「愚人」よりもはるかに危険だからです。
トップの器で会社の発展が決まる
 そうした立派な人間性を持った人物を得ることができるかどうか、また育てていくことができるかどうかは、ひとえに経営者である皆さん自身の器にかかっています。「割れ鍋に綴じ蓋」と言うように、トップの器の大きさに応じてしか人材は集まりませんし、育ちません。トップが「割れ鍋」程度の器であれば、その割れ鍋に合った「綴じ蓋」のような後継者しか得ることはできません。また、そのトップの器、器量の分しか会社も発展することはありません。(略)
 まずはトップである皆さん自身が心を高め続けなければなりません。そうして自分の人間性、人格、人生観、哲学、考え方といったものを向上させていく努力を重ねることで、自らの器が大きくなっていきます。そしてその器の大きさに応じて、立派な人材が育ち、後継者にも恵まれ、事業を安定的に伸ばしていくことができるのです。それはまさに、(盛和塾のモットーである)「心を高める、経営を伸ばす」ということそのものだと思います。

結論は、
・先代が、人間性・人格・人生観を向上する努力をし続ける。
・それを後継・幹部によく話し続ける。
・後継者は、才より徳の人を選ぶ。
・①〜⑤までの人を選ぶ。
 私もTOMAコンサルタンツグループにおいて、次の代は人間性のある人を選びました。人間性の
ある人が、才ある人をたばねるので良いと考えました。

2.ナニダレの法則 「何を言うかではなく、誰が言うかが重要」

(角田識之『 社長のビタミン・一日一語』 第5954号 2024年3月19日 )

同じことを言っても、尊敬・心服で聞かせる人、何も響かない人、逆に”底が浅い人がよく言うよ”と馬鹿にされる人と様々だ。頭に借り物で留まっている言葉は、相手の頭にしか響かない。
言葉が、血肉になっている、腹落ちしていると「言霊」になり、相手の心や魂に響く。
では、どうすれば「言霊」になるか?
1.「仕入れ先」が大事
  元ネタが、偉人の言葉のように、元々「言霊」として使われていたもの。
2.「言行一致」の量稽古が大事
  言うこととやることの一致を重ねた回数、日数の量稽古が決め手。
例えば、「全ての因は我に在り」という言葉、臥龍も30年間、自分なりに「言行一致」に努めていると、この言葉を経営者に発したとき、経営者が心や魂レベルで受け止めてくれるようになった。

 尊敬されたり、好かれている人から言われると素直に聞けるが、そうでない人に言われるとパワハ
ラ・セクハラなどと思われてしまう。幹部は早く出社し、明るく元気な挨拶をし、約束を守り、間違っていれば素直にすぐ謝ることが必要ですね。

3.イケアのルールは「過ちを犯さなければいけない」

(『 創業者カンプラード氏の理念 貧しさが生んだ挑戦魂 サステナブルの民主化へ』 日経ビジネス 日経BP 2022年12月19日号)

「寝ているときだけは、誰も失敗しない」。イケアの創業者、イングヴァル・カンプラード氏が残した言葉だ。
企業規模が大きくなると保守的、官僚的になりがちです。従業員が挑戦を続けるためにどのように企業
風土をつくっているのでしょうか。
 いい質問ですね。私もまだ学んでいる最中なのですが、リーダーシップや行動、企業風土を考えなければいけません。企業風土は影響力が大きく、悪い風土は変えるのがとても難しい。創業者のイングヴァル・カンプラードは、企業の方針や義務はいろいろあっても、イケアにあるのは1つのルールだけだ、とよく言っていました。それが、「過ちを犯さなければいけない」です。
 大企業では多くの人がいて多くの決断が下されますよね。イケアで多くの人が集まってシンプルで強力な決断をしたいときどうするか・・・・・・これをお見せしましょう(ポケットからカードを取り出す)。イケアではみんなに「GO BANANAS!(熱くなっていい)」と発破をかけています。
 私は自分のチーム全員に「もし何かにトライして失敗しても、私が許可したこと。2人で謝りにいこう」と伝えています。これをお見せするつもりはなかったのですが、質問が出ましたからね。
 間違いを犯すことへの恐怖をどのように取り除くか、また、どのようにアイデアをテストし、実務作業と並行するか。完璧な手法は作れませんが、企業風土ならつくることができます。私は、従業員が本当に信頼を寄せられるような風土をつくることに全力を尽くしています。
チーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)のマーカス・エングマン氏も「イケアで多くミスをしたことに誇りを持っている」と話していました。
 マーカスはとても親しい同僚でもあります。彼の仕事は新しいものを見つけ出すことですから、実験的な要素が多くあります。当然、時には失敗することもあるし、時にはお宝を見つけることもあります。将来について好奇心を持つ文化がなければ、つり合いは保てません。後進するか、前進するかのどちらかです。
 多くの場合、失敗した場合のブランドや金銭的なリスクは低いでしょう。真のリスクは挑戦しないことです。

 TOMAグループもたくさんの失敗をしてきました。いろんな失敗を重ねる中で、その失敗を一つ一つ
改善をしていきながら、今があるというふうに思います。チャレンジをし、失敗することによって、ダメであれば、またそれに近づける何かをしていくということで、過ちを犯さないというのはある気がいたします。
 松下幸之助さんも稲盛和夫さんも創業の時に、色々な意味で問題があり、失敗をおこしました。
それを反省して今がある。TOMAもたくさん失敗して今があります。
 やはりチャレンジしないと、他と同じことをしていたら結果的には成長できませんよね。ぜひ皆さん
でそのことを考えていただけたらいいかなと思います。