100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.140

2023.09.29 Fri

日払い給料等の取扱い

日払い給料と即日払い給料

 最低賃金額の改定により、給料水準を見直す機会が多くなりますが、特に大きな影響を受けるのは、時給計算が主流となるパート・アルバイト等の非正規雇用者のお給料です。また、昨今の人手不足の影響もあり、自社への応募が増えるよう、他社との差別化を図るため、各企業は給料水準を引き上げることの他、給料の支払い方法を柔軟にするなどの工夫をするようになりました。その工夫の代表例が「日払い給料」と「即日払い給料」です。
 ところで「日払い給料」と「即日払い給料」の違いはお判りでしょうか。
「日払い給料」とは給料計算の締めが1日単位である支払い方法をいい、必ずしも働いたその日に給料を支払う必要はありません。これに対して「即日払い給料」は日払い給料の一形態ですが、働いたその日に当日分の給料を支払う必要があります。

即日払い給料の注意点

 即日払い給料は、働いた当日にその支払いをする必要があるため、パート・アルバイト等の人から、領収証への捺印をしてもらうなど、給料を受取ったことの確認が必要になります。ですから、これらの人が印鑑を忘れた場合などは、その場での給料の支払いはできないことを事前に伝えておくことが重要です。また、その場合の給料の支払い方法によって、例えば後日郵送等で領収証等のやり取りが行われる場合には、郵便代等の諸経費をどちらが負担するかの取り決めも予めしておくことが必要です。
 さらに、交通費の取扱いについても注意が必要です。仮に交通費を支給しない場合には、パート・アルバイト等の人たちは日払いの給料から交通費を負担することになるため、当初の想定より低い手取りとなる場合があります。交通費の支給の有無も併せて事前に伝えましょう。
 このように「日払い」や「即日払い」の給料の支払には月払いとは異なる事務処理負担が企業にかかることがあります。とはいえこれらをおざなりにして、せっかく獲得した人材と後のトラブルになるのは避けたいところです。企業はこれら事務負担と人手の確保の両方を念頭に置き、バランスの取れた人事対策を行うことが必要になります。

インボイス制度 基本的な緩和措置等のまとめ

仕入税額控除にまつわる経過措置・特例

 2023年10月から始まるインボイス制度ですが、インボイスを機に免税事業者から発行事業者になった場合の経過措置と、免税事業者から仕入れる課税事業者に対する経過措置があります。
 期間はいつまでなのか、どのように負担が軽減されるのか、基本的な部分になりますが、見ていきましょう。

免税事業者から仕入れた際の経過措置

 適格請求書等保存方式の開始後は、本来インボイスが発行できない免税事業者からの仕入れについては、仕入税額控除を行うことができません。
 ただし、インボイス制度開始から一定期間は、適格請求書発行事業者以外、つまり免税事業者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。令和5年10月から令和8年9月までは、仕入税額相当額の80%、令和8年10月から令和11年9月までは仕入税額相当額の50%がみなし控除の認められる割合となります。
 なお、この経過措置の適用を受けるためには、帳簿及び請求書等の保存が要件となり、帳簿については「80%控除対象」等、経過措置の適用を受ける旨の記載が必要となります。

免税から課税事業者になる場合の特例

 インボイス制度を機に、免税事業者からインボイス発行事業者、つまり課税事業者になった場合は、売上に係る消費税額から、売上税額の8割を差し引いて納付税額を計算して良いという特例制度が利用できます。
 例えば売上700万円、消費税額70万円で、実際の仕入税額が15万円(仕入150万円)のサービス業の方の場合、
本則課税:70-15=納税55万円
簡易課税(みなし税額控除70万円×50%=35万円):70-35=納税35万円
2割特例:70×0.2=納税14万円
という軽減になります。
 2割特例の適用に当たっては、事前の届出は必要なく、消費税の申告時に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受けることができます。この特例を利用できる期間は、令和5年10月1月から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

免税事業者からの課税仕入れに係る控除対象外消費税額

控除対象外消費税の規定

法人税では、資産の課税仕入れに係る消費税等のうち、仕入税額控除ができない「控除対象外消費税額等」について、①課税売上割合80%以上、②棚卸資産に係るもの、③一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満、のいずれかに該当する場合は、損金経理を要件にその事業年度で全額を損金算入すること等の処理が認められています。

免税事業者からの控除対象外消費税

 本年10月1日以降適格請求書等保存方式(インボイス制度)の開始後、税抜経理を採用する企業が免税事業者等から資産の課税仕入れをした場合に算出される仮払消費税額の中に、仕入税額控除の対象外となる金額が含まれることになるとしたら、そして、上記①~③のいずれかに該当する場合だったら、一時の損金として処理することができるでしょうか。

控除対象外ではあるが

 本年10月1日以降の当面3年間に於ける、免税事業者等からの課税仕入れの額の110分の2は、法人税において仮払消費税等に該当しないものとされ、控除対象外ではあるが、それは消費税にも該当しないも
のとされているので、冒頭の「控除対象外消費税額等」にも該当しません。

消費税ではなく本体価格

 免税事業者等からの課税仕入れであることによって生じる仕入税額控除対象外の金額は資産の課税仕入れの本体価額の一部を構成することになります。課税仕入れの対象がサービス等の経費ならば経費の額に、課税仕入れの対象が減価償却資産ならばその資産の取得価額に含めることになります。もし、控除対象外消費税の扱いで期末に雑損失等で処理していたとなると、経費性のものならばそのままで認容されますが、資産性のものであったなら、減価償却費の計上限度超過額等の扱いを受けることになります。

対応してない会計ソフトだったら

 本年10月1日からのインボイス制度の開始により、免税事業者等からの課税仕入れ等について仕入税額控除が制限されるため、仕入税額控除できない額について、仕入本体価額に含めるための経理処理対応が求められていますが、会計システムの改修が必要であり、それに対応しきれていない場合には、決算時に追加的な補正・修正処理を行うことになるので、上記のような問題意識に遭遇することになります。

給料の前払い制度

前払い制度等の背景

 これまで「月払い」が一般的だった給料の支払い方法について、「日払い」や「週払い」さらには「前払い」などという方法も聞くようになりました。これら支払い方法の多様化の背景には、個人のライフスタイルの変化、つまり、働き方改革によるテレワークや副業などの働き方の変化や、また企業側の事情として、人手不足による人員確保の視点もあるといわれます。人手不足により他企業との人員獲得競争に勝つため他社との差別化を図るための施策として、これらの支払い方法を導入する企業が増えているということです。

前払い制度実務上のポイント

 給料の前払い制度とは、本来設定されている給料の支払い日を待たずに、労働をした範囲内の給料を事前に支払う方法をいいます。労働基準法17条で「前借金相殺の禁止」が規定されているため、前払いが可能なのは「既に労働している部分に限られる」ことになります。したがって、前払い制度を導入し従業員等から給料の前払いの要望があった場合には、その時点での前払い希望者の勤怠データをもとに、その日までの給料を計算する必要があり、会社の事務負担は大きくならざるを得ないでしょう。そのため近年では、「給料の前払いをサービスとして行う会社(以下「サービス会社」)」が複数存在します。

「サービス会社」を利用する場合

 企業が「サービス会社」を利用して給料の前払いを行う場合の流れは以下のようになります。
①「サービス会社」が、勤怠データを企業から受け取る
②従業員等から前払いの要望(申請)があったら「サービス会社」がその時点での前払い可能な金額を計算し、従業員等に支払う
 なお、「サービス会社」は「預託型」と呼ばれるものと「立替型」と呼ばれるものに大別されます。本稿では、それぞれの詳細については割愛をしますが、それぞれの特徴に注意しながら、「サービス会社」の利点を上手に生かし、企業の事務負担を増やすことなく、給料の前払い制度を導入するのも人材獲得競争から1歩抜け出す施策になるかもしれません。

親子会社間での配当源泉不要

非上場株式の配当に係る源泉税

 親法人が受取る子法人からの配当等は所得税の課税対象であり、配当等の支払いをする子法人は、配当等の支払時にその配当等の額の20.42%(所得税及び復興特別所得税、子法人が上場株式発行企業の場合は15.315%)の源泉徴収をしなければなりません。その後、親法人が法人税の確定申告をする時に、源泉徴収された所得税について所得税額控除の適用を受けると、税額控除又は還付金の支払いがされます。

10月1日からの新制度

 この配当源泉徴収の取扱いについて、完全子法人株式等(持分割合100%)と関連法人株式等(持分割合3分の1超)に該当する法人からの配当等については、源泉徴収を不要とするとの法律・政令が今年(2023年)10月1日に施行されます。

配当での新規定の利便点

 なお、M&Aなどでの株式取得の場合で、株式取得から配当までの期間が短い時、持分割合100%の子法人からの配当であったとしても、上記特例の完全子法人株式等からの配当に該当しないことがあります。
受取配当等の益金不算入の規定を踏まえて、配当等の額の計算期間の初日から計算期間の末日まで(1年超の場合は1年)の期間、引き続きその持分割合100%の株式を継続保有していることが必要との要件が付されているからです。
 ただし、関連法人株式等についての判定では、受取配当等の益金不算入の規定の6ヶ月間継続保有規定と異なり、配当支払者側での実務上の処理可能性への便宜的配慮として、配当等の額に係る基準日の状況で判定とされています。従って、完全子法人株式等に該当しなかったとしても、配当基準日の持株割合で関連法人株式等に該当すれば、結果的に源泉徴収不要にはなってしまいます。
 それから、100%や3分の1超の持分割合の判定は、受取配当等の益金不算入の規定が間接支配を経由したみなし直接支配で判定することにしているのと異なり、配当支払法人にとって直接100%や3分の1超の関係になっているかで判定するものとされています。
 支払配当の源泉徴収の要・不要の要点が実務処理への便宜の配慮に置かれていることが、推測されます。