100年企業創り通信
2023.08.10 Thu
「労働基準監督署が来た!」 ドキッとしますよね。ただし、労働基準監督署の調査といっても「労働基準監督署のどの部署が来たのか」でその内容は全く異なります。
ここでは、労働基準監督署の組織とその組織ごとの調査内容についての概略をお話ししたいと思います。
日本における労働基準行政のトップ機関は厚生労働省です。その下部組織として全国47都道府県に都道府県労働局があり、さらにその下の組織として全国に321の労働基準監督署と4つの支署があります。また、労働基準監督署の内部にはその地方により若干の名称の違いがあるところもあるようですが、おおむね①監督課(若しくは方面)②安全衛生課③労災課④業務課(若しくは監督課庶務係)と呼ばれる組織が置かれています。
① 監督課(若しくは方面)
主に労働基準監督官が配属されている部署で、一般的なイメージの労働基準監督署による調査(正式には監督)が行われ、調査の種類には、実際に監督官が現場に赴き調査をする「臨検監督」、代表者や人事担当者に監督署に来てもらい、聞き取り等の調査を行う「呼出監督」などがあります。
② 安全衛生課
労働災害が起こった場合の調査や、労働災害が起こらないようにするための事前の調査が行われます。具体的には製造業や建設業における設備の状況等に関する調査の他にも、労働者の健康確保のための指導(メンタルヘルス指導など)も行います。
③ 労災課
労働災害保険申請時の書類審査や必要に応じて実地調査を行い、労災保険の支給決定を行います。また、労働保険料徴収に関する業務もここで行われます。
④ 業務課(監督課庶務係)
基本的には、監督署内における労務管理や経費の管理などの庶務が行われる部署になりますが、賃金構造基本統計調査などの統計調査の取りまとめを行う部署でもあります。これらの各部署の業務内容を踏まえ「労働基準監督署が来たが、どこの部署で何を調査に来たのか」確認をして慌てずに対処しましょう。
臨検監督とは、労働基準監督官が会社(事業場)を訪問し、その会社が労働関係法令を遵守しているかを確認するため、帳簿等の書類を調べたり、会社内部の人に事情聴取をしたりする行為です。臨検監督によりその会社に労働関係法令の法違反が認められる場合には、是正や改善を求める文書(是正報告書)がその会社に公布されます。また、労働基準監督官は、臨検監督のため許可なく事業場に立ち入ることが法律で認められているため、会社は事実上臨検監督を拒否することはできません。
労働基準監督官とは、厚生労働省の専門職員で行政職員と特別司法警察官の身分を併せ持つ存在です。つまり、事業場への立入権限等を活用した会社への監督指導(行政指導)によって、労働基準関係法令違反の是正を促し、労働条件の確保や向上を図る目的がある一方、悪質・重大な違反を行う会社に対しては、逮捕や送検などの強制力をもってその指導実行力を強化しています。ちなみに、この行政職員と特別司法警察官の両方を併せ持つ労働基準監督官の性格は、ILO(国際労働機関)条約によるものであり国際的なルールでもあります。
臨検監督の対象となる会社はどのように選ばれるのでしょうか。1つには労働者からの情報提供(申告)に基づきその会社を訪れる申告監督がありますが、もう1つ定期監督というものがあります。
これは、1年に1度厚生労働省において当年度の調査方針(労働行政運営指針中央版)が決められ、これを基に各都道府県労働局が各自の調査方針(労働行政運営指針地方版)を決定し、各管轄労働基準監督署はこれに基づく年間計画を月別に立て、所属する労働基準監督官に割り当てます。労働基準監督官は、割り当てられた計画を具体的に実施しますが、どこの会社に行くかや日程調整などのスケジュールは各労働基準監督官の裁量に委ねられます。以前は、訪問前に電話で訪問を伝えていましたが、現在は厚生労働省から予告をしないよう指示が出ていますので事前予告はないと考えたほうが良いでしょう。
災害見舞金はその名の通り、被災した人や企業に支払われるお見舞金です。例えば、個人が被災した際に自治体から支払われるものや、所属している企業から従業員に支払われるもの等があります。
個人が受領する災害見舞金等に関しては①被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金など、支給する法令の規定上非課税とされているもの、②心身又は資産に加えられた損害について支払を受ける義援金や見舞金で、その受贈者の社会的地位、贈与者との関係などに照らし社会通念上相当と認められるものについては非課税とされています。
法人から従業員等への災害見舞金については損害につき支払いを受ける相当の見舞金であれば、所得税は非課税となり、法人側は福利厚生費として損金算入が可能です。相当の見舞金とは、法人が被災者の所有資産の被害の程度に基づき見舞金の額を決めるなどの一定の基準をもって支給額を定めているものを言います。
この「一定の基準」については、社内規定等で定めていることを指しますが「災害を機に新たに定めた規定等であっても該当するものとして取り扱う」とされています。
また、退職した従業員・採用内定者・従業員の親族等に対して従業員と同一の基準で支給した災害見舞金であっても、法人の福利厚生費として損金の額に算入可能です。
法人が災害前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先に対して行った災害見舞金の支出や事業用資産の供与等に要した費用は、交際費等に該当しないものとして損金の額に算入されます。受け取った側は益金として処理が必要です。
ただし、法人が取引先の役員や使用人に対して個別に支出する災害見舞金については、取引先救済のための費用ではなく、慰安や贈答に該当する費用と判定されるため、交際費等として取り扱われます。
取引先に対する売掛金等の免除、低利又は無利息による融資の通常収受すべき利息との差額、自社製品等の被災者に対する提供についても、損金算入が認められています。
現在では「年金ネット」で自分の国民年金・厚生年金の加入記録の確認や将来の見込み額の試算も簡単にできるようになっています。将来の試算額より多くもらえるようにするには次のような方法が取れます。
①繰り下げ受給・・・特別支給の老齢厚生年金が受給できる方を除けば老齢年金の受給開始は65歳です。この開始時期を本人の希望で66歳以降に遅らせることにより受給額を増やします。
これを「繰り下げ受給」といいます。繰り下げを行うことによって老齢年金の受給額は繰り下げ1か月につき0.7%増額されます。繰り下げ受給は66歳から75歳までの間に請求できます。ただし、昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳になるまでです。
例えば70歳までですと42%、75歳までですと84%増額され率は生涯変わりません。自分の健康具合などを考えて決めましょう。
②70歳まで働く・・・働いて厚生年金に加入し続ければ加入期間が増えるので年金額も増えます。その間の繰り下げも考えられます。会社が継続勤務を認める会社であれば可能となるでしょう。
③保険料の追納・・・経済的な理由で国民年金保険料の全部または一部の免除を受けた期間のある人は、その内容に応じて年金額が減額されます。10年以内に保険料を追納すれば追納保険料が反映されます。学生納付特例制度などの納付猶予を利用した方も10年以内なら追納しておけば反映されます。
④国民年金の任意加入・・・60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合、70歳未満の方で40年間の納付期間が足らず満額受給できない場合なども60歳以降に任意加入することができます。ただし、厚生年金保険、共済組合に加入中の方は任意加入できません。
また、国民年金には付加保険料(月額400円)を支払うと将来の受け取りは200円×付加加入月数分が受け取れます。
⑤厚生年金の任意加入・・・会社に勤めていて70歳になれば厚生年金から外れますが継続して働くとき、老齢年金を受けるのに加入期間が不足しているときは事業主が同意すれば保険料は折半、同意しなければ本人が労使分の保険料を支払う任意加入制度があります。