100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.133

2023.08.04 Fri

人手不足にならない企業のしていること

人口減少が止まらない

総務省の統計では2022年12月時点で日本の15歳から64歳人口は前年同月比0.28%、20万8千人も減っています。これから働く年齢となる15歳未満人口は同9万3千人も減少しています。総人口の推移をみると2019年以降加速して減少しており2023年5月時点の概算では総人口は前年同月比57万人減となっています。

人手不足にならない企業の方法とは

 そのような中で新型コロナの5類移行を受け採用活動が活発化して人手不足感が高くなっています。このような背景でも人手が不足していない企業もあり、帝国データバンクの調査で「人手が不足していない要因」を調査すると、主に次のような施策を施している企業の姿が見えてきました。
①賃金、賞与の引き上げ(51.7%)
②働きやすい職場環境作り(35.0%)
③定年延長やシニアの再雇用(31.2%)
④福利厚生の充実(26.6%)
⑤公平で公正な人事制度(22.0%)
上記②の「働きやすい職場環境」とは清潔保持、休憩スペース、社内相談窓口の設置などです。④⑤は労働者自身が成長を感じられたり、安心できる職場にあるという施策です。他には個人の事情で長時間働けない人材にはそれに応じた働き方を提供する弾力性も求められるでしょう。

人材に心配りが求められる時代

 世界的な物価高騰を受け実質賃金が低下する中、賃金や賞与の引き上げに取り組めない企業(取り組む姿勢のない企業)は従業員満足度や安心感が下がり優秀な人材は流出します。運よく採用できても人を育てることをしないと早期離職につながります。
ただ賃金がすべてではありません。
「人は石垣、人は城」という昔の言葉がありますが、会社を支える一番の力は信頼できる人の力です。会社を信頼してくれる従業員が一人でも多く育つよう企業は自らの進む先を示しつつ率先して変革し、働く環境整備にも配慮が必要でしょう。

どちらが正しい選択

製造業は生産性が重要?

1個・売価100円・材料費10円・外注費10円・年間人件費1,000万円・その他経費1,000万円の会社で1年間に25万個売れた場合で考えてみます。
① 25万個作って25万個売れた場合
売上2,500万円-(材料費250万円+外注費250万円+人件費1.000万円+その他経費1,000万円)=製造利益0
② 50万個作って25万個売れた場合
売上2,500万円-(材料費500万円+外注費500万円+人件費1,000万円+その他経費1,000万円-期末在庫1,500万円)=製造利益1,000万円
②の方が倍作って売っているため1個当たりのコストが安いということになります。

キャッシュフローで見ると?

①25万個作って25万個売れた場合
入金は2.500万円、出金も2,500万円でトントンです。
③ 50万個作って25万個売れた場合
入金は2,500万円、出金は倍作っているので3,000万円になり500万円のマイナスです。更に利益が出ておりますから税金もかかってきます。

生産性かキャッシュフローか?

経営者としては、売上予想が25万個の場合、50万個作って在庫にするか25万個に留めるか難しい選択となります。
25万個の場合は人件費やその他経費が50万個より少ないだろうというご意見もあろうと思いますが、半分にはなかなかできませんから、若干利益は出たとしても1,000万円の製造利益は難しいと思います。

損益分岐点売上は?

損益分岐点売上とは原価を変動費と固定費に分け、何個売れれば固定費を回収できるかという考えに基づいた売上です。今回の例で計算すると。1個の限界利益=粗利益は100円-材料費10円-外注費10=80円(80%)です。固定費は人件費1,000万円その他経費1,000万円で合計2,000万円です。2,000万円÷80%=2,500万円が損益分岐点売上です。要は25万個以上売らないと利益は出ないことになります。
50万個作るか25万個に留めるかそこが問題です。

国税庁が注意喚起 TOBで上場廃止株の申告漏れ

便利な特定口座源泉徴収あり

 特定口座とは、申告分離課税が適用となる上場株式等や投資信託にかかる譲渡益の計算等を証券会社が行ってくれるものです。特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。「源泉徴収あり」を選択すると、証言会社が譲渡益にかかる所得税及び住民税を徴収してくれるため、原則その口座の譲渡益を確定申告する必要はありません。
 ただし「確定申告が不要」であっても、確定申告をすることも可能です。例えば譲渡損が出てしまった場合に他の取引口座との損益通算や、翌年以降に繰越控除を行いたい場合は、確定申告を行うことで特定口座の損失が活用できます。他にも譲渡益をふるさと納税に利用したい、住宅ローン控除額が余っているので利用したい、といった場合にも確定申告を行う必要があります。

申告「しなければならない」特殊事例

 特定口座源泉徴収ありで保有していた株式でも、申告しなければならないケースが存在します。TOB(株式公開買付)成立後、上場廃止となった後で株式を買付者などに買い取られた際に譲渡益が生じた場合は、所得税の申告が必要になります。
 これはTOB成立後、上場廃止となった株式については、買付者との取引は証券会社を通さない相対取引となるため、特定口座内で損益の計算がされなくなるからです。また、上場廃止後は他の上場株式の譲渡所得との損益通算や繰越控除ができない点にも注意が必要です。

国税庁が注意喚起

 国税庁は報道発表資料として、「サンプル的に調査等を行った」ことを明らかにしています。それによると、調査等件数379件に対して申告漏れ等の非違件数は199件となっています。報道では「特定口座で株を保有していたので、てっきり税金の清算が済んでいるものだと思っていた」と誤認していた方のコメントを紹介しています。
公開買付については公告がされるものですから、株式投資を行っている方は、こまめな情報収集を行い、上場廃止前に売却するか、廃止後の利益は忘れずに申告を行うかして、申告漏れを回避しましょう。

新築・中古・買取再販の住宅ローン控除

借入限度額が変動します

 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得または増改築等をしたものについて、住宅ローン等の年末残高に応じて自己の居住の用に供した年以後の各年の所得税を減らしてくれる制度です。
 今年、令和5年に居住開始した場合と、令和6・7年居住開始の場合では借入限度額に差異があります。

借入限度額(新築・買取再販)

各区分の住宅については13年間控除が受けられますが、例外として※印部分については、令和5年12月31日までの建築確認を受けたものか令和6年6月30日までに建築されたものについては借入限度額2,000万円として10年間の控除が受けられます。また、特例居住用家屋(床面積40平方メートル以上50平方メートル未満等の条件に適合するもの)に該当する場合は令和5年12月31日までに建築確認を受けたものが対象となります。

中古住宅を取得した場合は来年も同条件

 中古住宅を取得した場合の控除期間は令和5・6・7年とも10年となっており、借入限度額は長期優良から省エネ基準適合までが3,000万円、一般の中古住宅が2,000万円となっています。

買取再販住宅は借入限度額が新築と同条件

 業者が中古住宅を買い取り、リフォーム等を施したうえで販売される買取再販住宅に関しては、借入限度額については新築と同条件になります。
 なお、買取再販住宅については、住宅ローン控除適用要件が「住宅新築日から10年以上経過」「業者の取得日から2年以内に取得」「特定増改築等費用が売買価額の20%(300万円超の場合は300万円)以上」等となっています。

リース取引経理処理はどちらで

リース取引は2通りの処理が可能

 既にご存じのようにリース取引は、リース料の支払時に「リース料」又は「賃借料」として経費計上する方法と、リース契約時にリース料全額を固定資産に計上し減価償却する方法の2通りが認められております。
本体リース価格120万円消費税12万円リース期間5年でリースを組み、2.5年後(リース期間の半分)に新商品が出たため本体リース価格240万円消費税24万円リース期間5年で、リース残債と合わせて再リースを組んだ場合の経理処理を比較してみます。

支払い時に経費処理の場合

1か月のリース料は2万2千円ですから
リース料2万円 現預金2万2千円
仮払消費税2千円
再リース後はリース料5万5千円ですから
リース料5万円 現預金5万5千円
仮払消費税5千円
比較的簡単な処理で済みます。

固定資産に計上した場合

最初にリースを組んだ時
リース資産120万円
未払リース料132万円 仮払消費税12万円
リース料支払い時
未払いリース料2万2千円 現預金2万2千円
決算時(耐用年数6年)
減価償却費20万円 リース資産20万円
再リースを組んだ時
旧未払リース料66万円
旧リース資産70万円
固定資産除却損10万円 仮払消費税6万円
新リース資産300万円
新未払リース料330万円
仮払消費税30万円
リース契約ではリースを途中でやめた場合は残債は全額支払うこととされているため、考え方としては旧リース資産は残債を値引きし、その分新リース資産に上乗せしたと考えます。正しく処理すると以下です。
旧未払リース料66万円 値引益60万円
          仮払消費税6万円
資産除却損70万円 旧リース資産70万円
益と損は相殺されますので上記の処理となります。リース期間定額法で償却すれば原則差額は出てきません。
再リース料支払い時
新未払リース料5万5千円 現預金5万5千円
決算時(耐用年数6年)
減価償却費50万円 新リース資産50万円
消費税を一括計上できる分固定資産に計上する方がお得ですが経理処理は面倒です。