100年企業創り通信
2023.06.23 Fri
信託型ストックオプション(以下、ストックオプションをSOと記載)とは、SOの権利行使価額を発行時点の時価とし、発行時点ではなく後で、付与対象者および付与数を特定し発行できる特徴があります。そのため、将来採用する人材に、入社後の成果や貢献度等を見てからSOの付与が可能です。
課税においては税制適格SOと同様に行使時、株式売却の2つの課税タイミングのうち、行使時は給与所得課税最大55%が無く、株式売却時に20%の譲渡課税のみとの認識で、スタートアップ等の急成長する会社において、多く利用されておりました。
2023年5月29日に国税庁と経済産業省によるSO税制説明会が開催され、信託型SOについては行使時に給与課税として処理される旨が説明され、過去の行使および売却した分についても過去5年に関しては遡及して納税義務を負うとのことでした。これまで上場企業含めて約800社が信託型SOを導入しており、スタートアップに及ぼす影響は少なくないと考えられます。
SO税制説明会では、税制適格SOの株価算定ルールもあわせて説明されました。これまでの業界標準とは異なり、株価算定時にセーフハーバーとして純資産法での算出が可能というものでした。これにより、スタートアップはこれまでと比較しても安価にSOの付与が可能になるため、今後スタートアップへの転職者が増える可能性があると思えるものでした。 なお、税制適格SOとは、ある一定の条件(譲渡禁止、年間権利行使に限度額がある等)を満たすことで、SO行使時、株式売却の2つの課税タイミングのうち株式売却時に20%の譲渡課税のみというものです。
成長の見込まれる事業を切り出し、グループ全体の企業価値向上をはかる仕組みの一つとして、パーシャルスピンオフの活用が上場企業で期待されています。
スピンオフは、平成29年度の税制改正で創設された事業再編の手法です。法人が事業の一部を切り出し、その事業を営む子会社の株式を株主に交付することにより、それぞれの会社は独立して中核事業に専念し、機動的に経営することができます。
完全子会社を設立し、事業の切り出しと同時に、子会社株式を株主に交付する方式(単独新設分割型分割)とスピンオフする事業を既に営む完全子会社の株式を株主に交付する方式(株式分配)とがあります。株式全部の交付など一定の要件を満たすと適格組織再編となり、事業譲渡益は繰延べられ、株主の配当にも課税されません。
パーシャルスピンオフは、令和5年度税制改正で、スピンオフの適格要件が一部緩和され、事業を切り出した後も子会社株式の20%未満であれば保有できる制度として新たに創設されました。スピンオフの後もグループ会社間のシナジー効果を高めながら、それぞれの事業の成長をはかるメリットが生まれます。
現状は令和6年3月31日まで一年限りの制度ですが、次の税制改正にて制度の延長または恒久化を見越し、制度活用の検討開始を公表する上場企業も出てきました。
適格組織再編となる要件は次の通りです。
① 産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受ける
② 分割法人又は現物分配法人の株主の持株数に応じ、完全子法人の株式のみ交付
③ 発行済株式の保有は20%未満
④ 完全子法人の従業者の概ね90%以上が引き続き、事業に従事
⑤ スピンオフの前後を通じ、他の者による支配関係がない、支配関係がない見込み
⑥ 主要資産負債引継要件、主要事業継続要件、特定役員継続要件を満たす
⑦ 関係事業者等の特定役員に新株予約権が付与され又は付与される見込み
一方、上場企業が海外の投資ファンドから事業のスピンオフを要求される事例も出ており、短期の投資回収か、長期的な事業育成を目指すのか、攻防が続きそうです。
本事業は、「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」に基づき、特定ものづくり基盤技術(情報処理、精密加工、立体造形等の 12 技術分野)及びIoT、AI等の先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発等の取組を支援し、中小企業のものづくり基盤技術及びサービスの高度化を通じて、イノベーションによる我が国製造業及びサービス業の国際競争力の強化を図ることを目的としています。
具体的には、中小企業者等が大学や公設試等の研究機関等と連携して行う、事業化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組を最大3年間支援するものです。あくまでも研究開発を支援するための事業であり、生産を目的とした設備備品の導入や営利活動に関する補助事業ではありません。
本事業は単独では申請できず、中小企業者等を中心とした共同体を構成する必要があります。共同体は研究等実施機関や事業管理機関を含む2者以上で構成する必要があります。また、中小企業者等が「主たる研究等実施機関」として参画している必要があります。
本事業の補助対象は事業化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組までですが、事業化までの道筋が明確に描けているものが対象となります。そのため、研究開発計画の終了後1年以内までに、サンプル出荷等川下製造業者等からの評価を受けることが可能な計画となっていることが必要となります。
補助事業期間:2年度又は3年度
補助金額(上限額):単年度 4,500 万円以下、2年度の合計で、7,500 万円以下、3年度の合計で、9,750 万円以下
(中小企業者等が受け取る補助金額が補助金総額の2/3以上であること)
補助率:中小企業者等2/3以内
エン・ジャパン株式会社が「残業」について社会人1万人余りに実施したエン・ジャパンのユーザーアンケート結果を公表しました。運営する「エン転職」上でアンケートを実施、12,940名から回答を得ました。
その中で顕著なのは「残業の有無や平均時間」が転職先選びに影響していると回答した人が84%もいたことです。
「転職活動をするうえで残業の有無や平均時間などは、企業選びにどの程度影響しますか?」の質問に対し「とても影響する」が最多で49%、「少し影響する」は35%で合わせて84%が「影響する」と回答しています。
年代別では20代・55%、30代・56%と半数以上が「とても影響する」と答えています。「少し影響すると合わせると20代・89%、30代88%に上ります。
男女別でみると「とても影響する」と回答した男性44%と比べると女性は10%高い54%でした。男性より女性の方が残業時間を重要視しているようです。
「ここ数年であなたの残時間は増加、減少どちらですか?」では「増加」26%、「減少」24%でほぼ同率、半数は「変わらない」ということでした。業種別で増加傾向だったのは「コンサルティング・士業」が最多で36%、減少傾向は「メーカー(機械・電気・電子)」が最多でした。
残業時間が増加したと回答した人に理由を尋ねると「人手不足」が75%、「仕事量の増加」が67%と続きます。一方残業時間の減少があった理由は「残業の制限」が最多でした。
この4月に中小企業でも残業時間が月60時間を超える残業代の割増率が50%に引き上げられることを知っている人は39%で4割弱という結果でした。割増率の引き上げが「とても良い、良いと思う」は80%の人が好感を示しており、「よくないと思う」という声も9%ありました。
2023年5月31日、2065年までとしていた高速道路の料金徴収期限を50年延長し、2115年までとする改正道路整備特別措置法が参院本会議で可決成立しました。
日本初の有料高速道路は1963年開通の名神高速道路で、当初は借入金で道路を作り利用者が払う料金で返済を終えたら料金は無料になるという計画で、有料の期限は25年とされていました。しかしながら利用料金については高速道路の新設や整備に回されるようになり、有料期間は何度も延長が繰り返されました。
実際に昭和40年代以降、この制度で日本中に高速道路網が作られ、物流の動脈として高度経済成長を支えたのも事実です。ただし、高速道路の整備を料金だけで賄うのは難しく、当時の日本道路公団の借入金は約40兆円にまで達していました。
体質改善のため民営化に踏み切ったのが2005年、この時の返済期限は2050年と法律で定められました。しかし笹子トンネル天井板崩落事故により老朽化リスクが浮き彫りになり、更新事業費確保のため、返済期限が2065年となります。そして今回、「想定以上の損傷が進んでいる」として2115年までの料金徴収期限の延長となりました。今生きている人のほとんどが亡くなるまで、高速道路は有料ということになります。「本来無料」という建前の方を何とかした方が手間がかからないので良いのでは、と思ってしまいます。
現在自動車にかかる税金は、自動車/軽自動車税・自動車重量税・環境性能割・消費税・ガソリン税などです。自動車重量税は国の道路整備を行うための道路特定財源として生まれ、ガソリン税も同様に本来の税率よりも高い税率が課せられていました。
2009年に道路特定財源が廃止され、使い道は道路整備等に限定されない一般財源となったのですが、引き続き徴収が続いています。
なんだか道路関係の計画や財源、徴収の約束事については全般的に杜撰というか、建前を維持することに終始しているように見えてしまいます。生活に必要なものだからと言って、この状態で良いのでしょうか。