100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.117

2023.04.14 Fri

法人税・所得税の税務調査統計

法人の方が入られるイメージ?

 税務調査とは、法人・個人が行った申告に対して、申告内容が正しいかどうかを税務署が調査することです。何となく法人の方が「税務調査を受けやすい」というイメージが強いのではないでしょうか。

 国税庁は令和3事業年度(令和3年7月~令和4年6月)に実施した調査の統計を公表しています。それによると法人税の実地調査件数は約4.1万件、所得税の実地調査件数は約3.1万件、となっています。

 件数だけ見ると確かに法人税の調査の方が多いのですが、それほど差があるようには感じません。ただ、申告件数は令和3年のデータで法人税が306万件、所得税が2,285万件(うち申告納税額があるのは657万件)ですから母数が違います。申告数を含めて見ると「法人の方が税務調査を受ける確率が高い」と言えるでしょう。

簡易な接触は所得税が圧倒的に多い

 簡易な接触とは、税務署が原則、納税者の会社や自宅等に臨場するのではなく、文書・電話による連絡や来署依頼によって面接を行い、申告内容等の見直しをしてもらう対処です。こちらは法人への簡易な接触が6.7万件、所得税が56.8万件です。申告件数から見ると妥当な差なのかもしれません。

この「簡易な接触」によって追徴された税額は、法人が104億円、所得税が254億円となっており、実地調査の法人税1,438億円、所得税804億円と比べるとスケールは小さくなるものの、それなりにボリュームのある金額にはなっています。

所得税もしっかり見ているが

 調査1件当たりの平均追徴税額を見てみると、所得税の実地調査は256万円、簡易な接触は4万円となっています。税務署は額の大小を問わず、申告書の間違いや未提出等を確認して、連絡するようにしている、という姿勢が見て取れます。そして、実際の税額との乖離が大きいと踏めば調査にやってくるのです。

 法人税の調査1件当たりの追徴税額は352万円と、所得税に比べるとやや額が大きく、報道されるケースもあり目に付く機会も多いため「税務調査と言えば法人」というイメージがあるのかもしれませんね。

期中で適格請求書発行事業者となる免税事業者の経理

10月1日登録日でもいまから要経理変更

 いよいよ今年10月1日からインボイス制度がスタートします。10月1日からの適格請求書発行に向けて準備は進んでいますか? “まだ半年も先だし、会計事務所がサポートしてくれるから大丈夫”と高をくくってはいないでしょうか。  これまで免税事業者であっても、取引環境を鑑みて、適格請求書発行事業者としての登録を受けることを選択した方も多いかと思われます。登録を受けると消費税の課税事業者となり、消費税申告の義務が発生し、それに伴い日常の会計記帳の方法も変わってきます。個人事業者の方や日本で多い3月決算の会社等は、10月1日を待たずに新たな経理方法で記帳を始めた方が良い時期がじつはすでに始まっているのです。

申告データ収集を考え課税区分の入力開始

 新たに令和5年10月1日から登録事業者となった場合、登録日から課税期間の末日までの期間について、消費税申告が必要となります。個人事業者の場合は同年10月1日から12月31日まで、3月決算法人の場合は同10月1日から令和6年3月31日までの消費税データが最初の申告に必要となります。では、10月1日以降の分から課税データがあれば十分なのでしょうか? その年の申告のことだけを考えるとそれで十分です。しかしながら、“将来の「基準期間の課税売上高」となる課税売上高”の算定のことを念頭に置くと、9月30日までの免税期間も含めた当課税期間全体で算定することと考えられることから、期首からの仕訳に課税区分を入力した方が良いようです。

会計事務所に相談して万全の体制を!!

 適格請求書発行事業者の登録日である令和5年10月1日が属する課税期間開始の日から登録日の前日である9月30日までは免税事業者であるため税込み経理をしつつ課税区分を分け、10月1日以降は税抜き経理に切り替えていくことになりそうです。その点からすると、インボイス制度開始に伴い、免税事業者が期の途中で適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、すでに新たな経理処理がスタートしていると言えます。  貴社の経理をどう処理すべきか顧問の会計事務所とよく相談してください。後から遡って面倒な処理をしなければならなくならないよう、万全な対応が望まれます。

インボイス制度開始:10/1 登録事業者の簡易課税選択届

急激な事務負担の緩和に簡易課税の検討を

インボイス制度の開始に際して、取引環境の問題から、登録事業者を選ばざるを得なかった事業者も少なくないと思われます。これまで消費税に関しては何もしなくともよかった事業者もいざ登録事業者となると、適格請求書を発行し、会計帳簿では課税区分と税抜き経理を行い、消費税の申告書を作成し、消費税の納税を行うことになり、一挙に事務負担等が増えることになります。

簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。簡易課税制度の採用による事務負担の軽減等も検討してみましょう。

本来の簡易課税制度選択届の提出期限

 簡易課税制度を選択するには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に届出しなければなりません。提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までとされています。 課税事業者は、簡易課税制度を採用した方が自社にとって有利なのか否かを検討し、期限までに提出するか、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し本則課税に戻るかします。届出書の提出期限遵守は重要な手続きであり、税理士損害賠償保険の事故事例としても件数・支払金額とも大きな割合を占めている要注意手続きです。

インボイス制度導入に伴う経過措置あり

 今回のインボイス制度導入に際してはいくつかの経過措置が取られています。その一つとして、免税事業者が令和5年 10 月1日から登録の効果が生じ課税事業者となるということがあります。この経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます。 初めての課税事業者となる事業者にとって、有利・不利の検討を、その課税期間開始後もできることはありがたい制度です。経過措置が当てはまるか否かを課税期間の開始前までに行い、当てはまるのならば使いたいものです。

生命保険契約に関する権利

家族の将来の生活保障と資産形成のため生命保険を掛けている場合、保険の対象としていた被保険者が亡くなる前に、保険料を支払っていた保険料負担者が亡くなると思わぬ課税を受けることがあります。

生命保険契約の権利に課税される要件

次の要件に該当する場合、生命保険契約の承継者には、取得した生命保険契約に関する権利に解約返戻金相当額で相続税が課されます。

① 解約返戻金のある生命保険であること

例えば夫が妻に生命保険を掛けます。掛け捨ての保険ではなく、解約返戻金のある終身保険や養老保険で、保険契約者は夫、保険料も夫が負担しているとします。

② 保険料負担者が先に死亡すること

保険金の支払事由(被保険者である妻の死亡、あるいは満期到来)の発生前に保険料負担者の夫が死亡しました。

契約の承継者に相続税が課税される

妻に掛けた生命保険契約は解約しない限り、妻が死亡するまで継続するので、夫の相続人となる妻と子の誰かが契約を引き継ぐことになります。契約を引き継いだ者は、保険契約を解約すると解約返戻金を受けることができます。そこで契約者の地位を承継する相続人を遺産分割協議によって決めると、承継者には解約返戻金相当額で相続税が課されます。

遺産分割協議を要しない場合

上記のケースで保険契約者が妻であった場合、保険料負担者である夫の死亡前から保険契約者の地位は妻にあるので、契約者の承継は遺産分割協議の対象とはならず、夫の死亡により、妻に相続財産の取得があったとみなされ、相続税が課されます。

生命保険契約の名義変更に注意

被保険者が死亡する前に、生命保険契約を名義変更する場合、名義変更しただけですぐに課税されることはありません。その後、保険料負担者である契約者が死亡すると、相続人には上記のように相続税が課されます。
ところで保険契約を変更した時から相当期間が経過し、契約者も死亡している場合、誰が保険料を負担していたか判明しないことがあります。預金通帳や生命保険会社の記録から保険料支払者を推定することになりますが、保険会社でも調査や解約返戻金の算定に時間がかかります。保険契約は相続開始前に整理して、課税関係をきちんと把握しておくと良いですね。

生命保険契約の名義変更に注意

被保険者が死亡する前に、生命保険契約を名義変更する場合、名義変更しただけですぐに課税されることはありません。その後、保険料負担者である契約者が死亡すると、相続人には上記のように相続税が課されます。

ところで保険契約を変更した時から相当期間が経過し、契約者も死亡している場合、誰が保険料を負担していたか判明しないことがあります。預金通帳や生命保険会社の記録から保険料支払者を推定することになりますが、保険会社でも調査や解約返戻金の算定に時間がかかります。保険契約は相続開始前に整理して、課税関係をきちんと把握しておくと良いですね。

相続の基本 遺産分割協議の流れ

遺産分割協議の流れ

 遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。

 遺言書がある場合は、原則遺言書通りに遺産分割をしますが、遺言書にない遺産については分割協議の対象となります。

 遺産分割協議は相続人全員の参加が必須です。参加すべき相続人を調査する必要がある場合、戸籍資料などから確認します。

 遺産分割の対象になる相続財産を調査・把握する必要もあります。遺産が後から出てきた場合、遺産分割をやり直すことになる場合もありますが、分割協議書に後から出てきた遺産の取扱いを記載しておけばその通りに扱うことになります。

 遺言書の有無、相続人の確認、遺産分割の対象になる財産の把握を終えた後、遺産分割の協議を行い、合意内容を記載した遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印し、1通ずつ所持すれば遺産分割協議は終了です。  遺産分割には法律上の期限はありませんが、相続税の申告は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」となっているため、それまでに遺産分割を完了しておくとスムーズです。

分割ができなかった場合の相続税申告

 10か月以内に遺産分割が終わらない場合は、暫定的に法定相続分による相続税申告を行います。後に修正申告や更正の請求を行うことになりますが、小規模宅地等の特例や配偶者控除等の適用を受けるためには原則期限内申告をしなければいけません。期限後に優遇措置を受けるためには、暫定的な申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要があります。

遺産分割協議で決まらなかったら

 遺産分割協議が決裂してしまった場合、家庭裁判所で調停が行われます。裁判官が提示する調停案に相続人全員が同意すれば調停は成立します。  遺産分割調停も不成立になった場合は、家庭裁判所が審判を行います。法定相続分を基準としますが、相続人から提出された主張や資料を総合的に考慮して、遺産分割の方法は決定されます。