100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.116

2023.04.07 Fri

相続の基本 配偶者控除と法定相続人

遺産の総額から一定額控除できる金額

 相続税は「相続した財産(+3年以内の贈与財産)から、負債や葬式費用等を差し引いた後の額」が基礎控除額を上回っている場合にかかります。

 基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数となります。この基礎控除を引いた後の課税遺産の総額を相続人ごとの法定相続割合で按分したものに税率がかかり、相続税額が決まります。

 相続税にも「配偶者控除」が設定されており、配偶者が取得した正味の遺産額が、①1億6,000万円②遺産額に配偶者の法定相続分(子供がいる場合は1/2)を掛けた金額 のどちらか多い金額までは相続税がかからない仕組みになっています。

配偶者がとても優遇される制度になっていますが、これには「財産の維持形成に対する配偶者の内助の功や今後の生活の保障などを考慮して設けられている」という説明がなされています。

法定相続人と順位

 法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続できる人です。遺言書があれば相続できる人は法定相続人に限られませんが、遺言書が無い場合は法定相続人に遺産が相続されます。

 法定相続人は「配偶者」と「被相続人の血族」です。血族相続人には相続順位が定められています。

第1順位:子供、代襲相続人(直系卑属)

第2順位:親、祖父母(直系尊属)

第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人(傍系血族)

「代襲相続人」とは、「本来の相続人」が亡くなっていた場合に代わりに相続人となれる人のことで、その相続人の子等(直系卑属)です。

法定相続で割合が異なる

 民法で定められている法定相続を行う際には、この法定相続人の順位によって分割割合が異なります。例えば、配偶者と子供がいる場合は配偶者1/2、子供1/2が法定相続分で、配偶者と兄弟姉妹がいる場合は配偶者3/4、兄弟姉妹1/4が法定相続分です。また、子や兄弟姉妹が複数人いる場合は、それぞれの法定相続分を人数で割って算出することになります。

社会保険の「年収130万円の壁」 注意点や例外

「年収130万円の壁」が国会で議論される

岸田総理大臣は、今年2月の衆議院予算委員会で「年収130万円の壁」について、「制度を見直す。どんな対応が出来るのか、幅広く検討する」と発言しました。

「年収130万円の壁」とは、社会保険被保険者である給与所得者の配偶者については給与所得者が負担する保険料のみで、配偶者の健康保険料及び国民年金保険料まで賄われるという年収の分岐点のことです。

社会保険の扶養から外れないよう、配偶者のパート社員が就業調整することによる人手不足への影響が問題とされています。

昨年10月以降、社会保険被保険者101人以上の企業では、①週の所定労働20時間以上、②月額賃金8.8万円(年約106万円)以上、③2か月以上雇用の見込、④学生でない、の4つの条件を満たす場合、パート社員自ら社会保険被保険者となり、社会保険の扶養から外されています(来年10月以降51人以上企業に拡大予定)。

通勤手当等も年収に含みます!

社会保険の年収には、通勤手当や家族手当、住宅手当、物価上昇で支給される物価手当等も含まれます。

通勤手当を支給されているパート社員は多いと思いますが、通勤手当を除いて年収130万円未満でも、含めると年収130万円を超える場合、扶養から外れてしまいます。

年収130万円(標準報酬月額11万円)の場合、健康保険料は月約6,600円(介護保険料含む)、厚生年金保険料は約1万円の自己負担増(給与控除)となります。

60歳以上・障がい者は「180万円の壁」

意外と見落とされやすいのが、60歳以上や障がい者の方は、年収130万円ではなく、年収180万円まで社会保険上の扶養に入れる「180万円の壁」とされています。

社会保険料負担に関しては、高齢者や障がい者の雇用は、企業に有利となります。

なお、被扶養者は被保険者の年収の半分未満という条件もあり、扶養する方の年収が低い場合は、注意が必要です。

令和5年5月12日締切 「事業承継・引継ぎ補助金」5次募集

本補助金の内容

事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む)を契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを行おうとする中小企業者等を後押しするため、「事業承継・引継ぎ補助金」による支援を実施します。

補助率と対象経費

補助率:2/3又は1/2

補助上限:600万円以内又は800万円以内。

※一定の賃上げを実施する場合は補助上限を800万円に引き上げ。

補助対象経費:設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用などが該当します。

支援対象者と検討してほしい方

経営革新事業……事業承継、M&Aを契機として、経営革新等に挑戦する中小企業・小規模事業者
・新しい商品の開発やサービスの提供を行いたい
・新たな顧客層の開拓に取り組みたい
・今まで行っていなかった事業活動を始めたい
専門家活用事業……M&Aにより経営資源を他者から引き継ぐ、あるいは他者に引き継ぐ予定の中小企業・小規模事業者
・M&Aの成約に向けて取組を進めている方
・M&Aに着手しようと考えている方
廃業・再チャレンジ事業……事業承継・M&Aに伴い既存の事業を廃業し、新たな取組にチャレンジする予定の中小企業・小規模事業者。注:再チャレンジの主体は、法人の場合は株主、個人事業主の場合は個人事業主本人となります。
・事業の廃業を考えている方

留意事項

本事業の申請書の提出方法はインターネットを利用した「電子申請(Jグランツ)」のみでの受付となります。

Jグランツの申請にあたっては、事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。アカウントの取得には2~3週間程度が必要となるため、公募締め切りに余裕をもって手続を実施してください。

創業時の個人保証を不要とする 新しい信用保証制度開始

スタートアップ創出促進保証制度

2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえ、創業時の経営者保証を不要とする新しい信用保証制度として、「スタートアップ創出促進保証制度」が2023年3月15日より開始されました。
これまでも原則無担保無保証での融資は日本政策金融公庫の創業融資等がありましたが、起業を考えられている方の約8割が借金や個人保証を抱えることを懸念され、起業に踏み切れない阻害要因になっておりましたので、起業・創業の促進につながるよう新しい制度が始まりました。

最長3年以内の元本返済の据置期間も

本制度の保証対象者は創業を予定(これから2か月以内に法人を設立予定)の個人もしくは創業5年未満の法人になります。保証限度額は3,500万円で、運転資金および設備資金の両方に使えます。保証期間は10年以内となりますが、1年(条件を満たせば最長で3年)以内の元本返済の据置期間がありますので、資金が特に必要な創業期にある程度資金の心配をせずに事業に集中できます。
保証料率については、無担保無保証であるため、各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率となっています。

本制度の留意点

本制度を受けるためには、創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要となります。保証申込の受付時点で税務申告1期未終了の創業者にあっては創業資金総額の1/10以上の自己資金を有している必要があるので注意しましょう。

また、本制度の融資後には原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受ける必要があります。

年金払積立傷害保険の課税

事故により重度の後遺障害が生じたとき、あるいは死亡したときに保障され、満期になると年金で保険金を受け取れるのが「年金払積立傷害保険」です。

年金受取人の雑所得に課税

保険料負担者と年金受取人が同一の場合、年金は全額が雑所得として課税されます。

雑所得金額=総収入金額-必要経費

総収入金額=その年の年金支払額

必要経費=その年の年金支払額×払込保険料総額/年金支払総額

なお、年金受給者が受給期間中に死亡した場合は、残存期間の年金現価を一時金として法定相続人が受給することとなり、相続税が課税されます。

年金受取人への贈与課税に注意!

年金受取人を保険料負担者以外の配偶者や子供に設定すると年金受給開始時に年金現価に贈与税が課税されます。保険料の負担者と年金受給者が異なるときは、財産が当事者間で移転しているので課税関係が生じます。契約途中での契約者や受取人の名義変更は、課税関係に注意しましょう。

所得税との二重課税は回避される

年金受取開始時に贈与税が課税されるので、その後は運用益部分を除き、所得税は課税されません。これは、生命保険の年金に対する課税を巡る訴訟において最高裁が、相続時に年金受給権に相続税が課税された後、年金受取時に再び所得税で課税することは運用益部分を除き、二重課税になると判示したことを踏まえて立法化されたもので年金払積立傷害保険にも適用されます。
年金の運用益部分に対する雑所得の計算には、所得税申告書の付表「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書」を使用します。

相続等に基づく年金の雑所得の計算

相続・遺贈・贈与(相続等)のあった年は、年金の現価部分に相続税または贈与税が課税され、翌年以後は年金の運用益相当部分が雑所得として課税されます。

雑所得金額は、運用益部分の収入金額から必要経費を控除して算定します。運用益部分の収入金額は、年金総額から年金受給権の相続税評価額を控除した残額を年金を受給する各年に配分して求めます。所得税は、初年度は全額非課税、2年目以降は課税部分が毎年、階段状に増加していきます。必要経費は、その年の年金支払額に、払込保険料総額の年金支払総額に占める割合を乗じ、各年に配分して算出します。