100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.115

2023.03.31 Fri

5年? 7年? 10年?帳簿・領収書等の保存期間

所得税の書類保存は5年か7年

 所得税の確定申告期間も終わり、ほっと一息ついている方も多いかもしれません。申告に使用した帳簿や領収書等の書類ですが、申告し終えたからといって破棄するわけにはいきません。青色申告の場合、仕訳帳や出納帳などの帳簿、損益計算書などの決算関係書類、領収書などの現金預金取引関係書類は、いずれも7年の保存が義務付けられています。ただし現金預金取引関係書類は、前々年分所得が300万円以下の方については、5年でよいとされています。

 白色申告の方の場合は、原則5年間が保存期間となりますが、収入金額や必要経費を記載した帳簿のみ7年間が保存期間です。

保存していないとどうなる

「何かあったときのために帳簿は保存しておきましょう」とよく言いますが、「何か」とは税務署の調査や申告内容の確認照会です。調査等で帳簿や書類の保存が無かった場合、青色申告の承認が取り消されてしまいます。また、申告に用いた証拠書類が無いということは、証拠書類が無い部分の計算については当然否認されてしまいますから、追徴課税されてしまうこともあります。

 また、国税庁は2022年10月7日の所得税基本通達において、「収入金額が300万円未満で帳簿等無し」もしくは「300万円以上でも事業所得として認められる事実が無く、帳簿等無し」の場合は雑所得に該当するとしています。  本来事業所得として申告していたものが雑所得になるということは、給与所得などとの損益通算ができず、青色申告特別控除は利用できず、少額減価償却資産の特例も適用できず、専従者給与も使えず、3年間の繰越控除もできないということになります。

法人は10年の場合もある

 法人の帳簿書類も原則7年間の保存が義務ですが、青色繰越欠損金が生じた事業年度の場合は、10年間が保存義務となります。これは欠損金が最大で10年控除できるためです。  なお、2018年4月1日以前に開始した事業年度に欠損金が生じた場合は最大9年控除のため、書類の保存期間も9年となっていました。

相続の基本 遺産をどうやって分ける?

相続の基本的な流れ

 相続とは、故人の財産を特定の人に引き継ぐことを言います。遺言書がある場合は原則遺言書に沿って相続しますが、そうでない場合は民法で定められている「誰がどれだけ相続するか」(法定相続分)に従う「法定相続」を行うか、相続人全員で協議して誰が何を相続するのかを決める「分割協議」を行うことになります。この際に相続する土地や家屋等の価値も調べることになります。誰が何を相続するのか決まったら、税がかかる場合は相続税の申告を行います。

遺産の分け方4パターン

 遺産の分け方には4つのパターンがあります。1つずつ見てみましょう。

①現物分割:自宅は長男、預貯金は長女といったように、個々の財産を各相続人へ分配する方法です。手続きが簡単で、遺産をそのままの形に残せるメリットがある一方、個々に分けられる遺産に偏りが生じやすく、不公平感が大きくなりがちです。

②代償分割:相続人の一部が、法定相続分を超える遺産を取得した場合等に、他の相続人へ法廷相続分の差額を現金等で支払う方法です。不公平感は薄れますが、現物の遺産を取得した人が他の相続人に代償金を払う資金力が必要となります。

③換価分割:遺産を金銭に換えて分割する方法です。公平な分割はできますが現物が残らず、売却の手間や費用が掛かりますし、譲渡した場合は所得税が掛かってきます。

④共有分割:相続人全員が土地や家屋等の持分を決めて遺産を共有することで、公平な分割が可能で、かつ遺産をそのままの形で残せます。ただし財産の利用や売却について、相続人全員の合意が必要となる上、保有する相続人が亡くなった場合は、利害関係が複雑になってしまいます。

遺産はケーキのようにはいかない

 相続人の経済状況や、遺産となる土地家屋への居住や利用の有無、遺産への思い入れ等、考慮すべきポイントは多々あり、ケーキを綺麗に切り分けるようにはいかないことがほとんどです。
また、相続税申告は通常被相続人が亡くなってから10か月以内です。時間の短さも留意すべきポイントかもしれません。

特定求職者雇用開発助成金とハローワーク求人

特定求職者雇用開発助成金とは

 特定求職者雇用開発助成金の種類はいくつかありますが、よく知られているのは特定就職困難者コースです。
 高年齢者(60歳~65歳未満)、障害者、母子家庭の母または父子家庭の父でお子さんが20歳未満の子を扶養している場合など就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して、助成金が支給されます。ハローワーク以外でも適正な運用が期せる対象とされる有料・無料職業紹介事業者他の紹介でも対象になります。また、65歳以上の方の雇用も生涯現役コースとして別建てでありましたが廃止され、令和5年4月より65歳以上の方も特定就職困難者コースの対象者となりました。

受給額は?

・高年齢者、母子家庭の母、父子家庭の父 対象期間1年間⇒30万円×2期
・短時間労働者の場合は 20万円×2期
・身体、知的障害者……
対象期間2年間⇒30万円×4期
短時間労働者の場合は20万円×4期
・重度障害者等……3年間⇒40万円×6期
すべて支給対象期間1期は半年毎です。6か月毎に支給されます。

ハローワーク求人に高齢者等を出す際に

 ハローワーク求人を出すとき原則的には「年齢」「性別」を区別して申し込みはできませんが、高齢者求人の場合は年齢を指定して出すこともできます。年齢理由の欄に「特定求職者雇用開発助成金活用のため」等と記載すれば高齢者求人を出すことができます。備考欄に「生涯現役を応援」「長年のキャリアを活かしてみませんか」などと呼びかけてみましょう。

 また、シングルの方(1人親)の求人ですが通常求人の備考欄に「1人親の方を応援します」とか、すでに前に同様の方を雇用しているときは「活躍中」などと記載できますが、「1人親歓迎」等と記載はできませんので、迷う時はハローワークで尋ねるのがいいでしょう。

会社は助成金というよりまずは社会的弱者を応援したいという姿勢が大事でしょう。

相続の基本 遺言書と遺留分

自分の財産をどうするのか書き残す

 遺言書は自分の財産を誰に、どれだけ残すのかという意思を書面にしておくものです。遺言には大きな効力があり、遺言書さえあれば、遺産は基本的に遺言書通りに分割されます。スムーズに相続ができるようになり、遺産の分け方をめぐっての相続人の争いも少なくなるので「争続にならないために」といったキャッチコピーでお勧めされることも多いようです。

3種類の遺言書

 遺言書には3つの種類があります。
①自筆証書遺言:自分で記述し、証人が不要、保管も自分でできるので手軽に作成でき、費用がかからないのがメリットですが、形式に厳格なルールがあるため、無効になりやすいデメリットがあります。また、自筆証書遺言の保管者や発見した相続人は遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりませんので、相続人にとっては若干の負担となります。ただし、令和2年7月から運用が開始された法務局への自筆証書補完制度を利用した場合は検認の必要はなくなります。
②公正証書遺言:公証役場に依頼し、公証人が記述する遺言書です。公証役場で原本を補完してくれるので、紛失等のリスクが少なく、検認も不要です。また、公証人に自宅や病院に出向いてもらって作成ができるため、文字を書けない状態でも作成が可能です。ただし、証人が2人必要となり、自筆証書遺言に比べると作成費用や手間がかかります。
③秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書です。遺言書があるという事実を確実にするのが目的です。遺言の内容をあまり知られたくない場合等に使うようですが、無効になりやすい、紛失や隠蔽、発見されないリスクがあり、あまり使われていません。

遺言は遺留分に気をつけて

 遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことができない遺産の一定割合のことです。
遺留分があるのは、配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)で、兄弟姉妹は遺留分を有しません。

離職後の健康保険

会社を退職した後の医療保険

 会社を退職した後、健康保険はどうすればよいのか、3つ選択肢があります。
①健康保険の任意継続被保険者
②国民健康保険の被保険者
③家族の被扶養者になる
 退職し失業給付を受給する場合は家族の被扶養者になれない場合があります。待機期間中、給付制限期間中は被扶養者になれます。しかし、受給が始まり給付金の金額(基本手当日額が3,612円以上は被扶養者になれない)によっては被扶養者になれません。失業等給付が収入とみなされるためです。

任意継続被保険者になるには

ア.資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2か月以上の被保険者期間があること
イ.資格喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を居住地の協会けんぽ支部へ提出、健康保険組合に加入していた時は健康保険組合に提出します。任意継続被保険者の保険証交付は勤務していた会社から健康保険の資格喪失届が出されて、日本年金機構が確認後作成されるので2~3週間かかります。そこで事業主の資格喪失の証明や公的機関の証明された書類の添付でも受け付けることになっています。
 保険料は退職時の標準報酬月額(上限30万円)によって決定され労使で負担していた保険料は全額本人負担となります。保険料は口座振替又は納付書は毎月払い、前納は半年か1年先払いですが割引があります。加入期間は2年間までです

国民健康保険の被保険者

 国民健康保険の被保険者を選択する場合、保険料は前年の所得で決まります。居住する市区町村で異なっていますので、事前に確認してください。退職理由が解雇などにより離職(雇用保険の特定受給資格者)したり、雇い止めなどにより離職(雇用保険の特定理由離職者)したりした場合は保険料が軽減されます。前年度の所得を100分の30として軽減されますので任意継続被保険者になるより安い場合もあります。