100年企業創りレポート
2023.02.28 Tue
赤文字:藤間のコメント
黒太文字:引用
(義農味噌株式会社 代表取締役 田中正志 月刊誌『れいろう』心に残る話 令和2年8月号より)
私の父は、愛媛県にある麦味噌メーカーの創業者です。今は、私が二代目を引き継ぎ、経営しています。
父が亡くなって五年が過ぎましたが、今でも毎日夕食後に家族で仏壇に集まり、お念仏を称えてその日のことなどを話しています。
振り返ると、私は父に褒められたいがために、しゃにむに頑張ってきた気がします。
あるとき、尊敬する経営者の方が勧めてくださったセミナーに参加する機会がありました。そのセミナーの中で、自分と向き合う時間があり、私は父への憤りを力の限りぶつけ、一晩中涙を流し、訴え続けました。
すると、暗闇の中でもがいていた私に、不思議と明るい光が見えてきました。ふと父と私が入れ替わった気がしたのです。不思議な感覚でした。その瞬間、私自身が父を認めていないことに気がつきました。会社を創業した父は、母と二人で想像を絶するほどの苦労をして、今の会社を創り上げてくれました。そのようなすばらしい会社を私に引き継いでくれたのです。
私はセミナーの後、父のところに駆けつけました。「父さん、いい会社を創ったね。ありがとう」。その後は涙で言葉になりませんでした。
現在は父の二人の孫(私の子)が入社し、「ともかくやってみる」「人の恩を忘れない」「明日の種を残しておく」という父の三つの創業精神を受け継ごうとしています。
経営や宗教でも同じですが、常に元を大切にすることが必要です。なぜならば創業者がいなければ今がないからです。創業者に感謝しなければ誰に感謝するのでしょうか。
仕事は、社員・家族・お客様・社会に感謝しなければ上手くいきません。そのためには、まず元に感謝しないと!先祖・両親・創業者・先代に感謝することからスタートです。
(編集長インタビュー ファーストリテイリング会長兼社長 柳井正 『日経ビジネス』2023年1月9日号より)
- 2022年8月期には2期連続で最高益を更新しました。
- 過去があって、現在があって、未来がある。一足飛びに未来だけが訪れることはありません。過去や現在を知らずに「未来はこうなる」と予見はできない。全ては一連の流れの結果ですよね。
- 「ユニクロだったら買って安心」「いつ行っても欲しい商品がある」—。そうした会社やブランドに進化しなければ駄目だと思います。「商品を売る前に、ブランドを売れ」とよく言うでしょう。それと同じで、「ここだったら買ってもいいな」と思われることが一番だと思います。
- 海外進出時に考える3つの問いがあります。まず、「他ブランドと差別化できているか」。次に、「世界を良くするためにどのような行動をしてきたか」。最後が、「進出する国に対してどんな貢献ができるか」です。
- 不確実性が高まる現代に勝ち残るために、リーダーシップとはどうあるべきだとお考えですか。日本の経営者に足りないものは何でしょう。 僕がいつも言っているのは「即断、即決、即実行」です。「これは想定外だ」と言っている間に状況はさらに悪化するだけですよ。だた、この3つを実行しようと思ったら、自分で計画を持っていないといけない。 例えば、3年間にどれだけ成長するか、そのためにどんな準備が必要かなどです。計画と準備があれば、事態が想定外だったとしても、何をすべきかを考えられます。計画を前倒しにするだけかもしれません。 もう一つ言っているのは、「後始末は時間が経過するほど手間がかかる」ということ。即実行する場合と、1週間後、1カ月後、1年後に実行する場合の難度は全然違います。悪いことはすぐ広まりますからね。 だから、即断、即決、即実行が大事。それを実行できる人材が必要です。企業経営で基本的な考え方は古今東西変わらないと思うんです。大事なのは良識ですよね。最近亡くなった元京セラ創業者の稲盛(和夫)さんが語っておられたのは、このスピリッツの話じゃないですか。
- 後継者についてはどのように考えていますか。 条件はやはり即断、即決、即実行ができる人材。そして皆から尊敬される人物じゃないといけない。経営はチームプレー。いくら社長が優れていても、優れたチームがない限り経営はできないですよね。
山口県宇部市の洋服店を継いでから39年。飽くなき成長への意欲の源泉は、「世界を相手に商売できたらいいな」という学生時代の夢を今も変わらず追い続けているからだそうです。
ユニクロは世界企業です。柳井さんは若い頃から、世界を見据えてきたのではないでしょうか。前に河野デジタル大臣が、「AKBは日本の1億2000万人をターゲットにしたグループ。韓国BTSは世界80億人をターゲットにしたグループ」と話したことがありました。BTSは世界のミュージシャンになりました。
柳井さんの「即断、即決、即実行」は、これからの時代に必要な成長の金言だと思います。決断できず、決定できず、実行せずの経営者は、今後生き残れないと思います。私も社長の時は即断、即決、即実行していました。失敗も多かったけど、必ず成長・発展し続けていました。失敗は反省して修正し、同じ失敗を繰り返さない仕組みをつくってきました。
(主幹コラム 藤尾秀昭 『致知』致知出版社 2021年3月1日 発行/ 4 月号 より)
1.「人生の成功不成功のみならず、経営の成功不成功を決めるものも人の心です。私は、京セラ創業直後から人の心が経営を決めることに気づき、それ以来、心をベースとした経営を実行してきました。
「皆さんに心をきれいにすることの大事さを説いているが、不況や困難に立ち向かうには勇気が必要。絶対に目標を達成するという気概が必要だ。経営は意志である。リーダーは目標に向かって、なりふり構わず、闘争心、ガッツ、執念をもって立ち向かっていかなければならない」
2.あらゆる人に通じる人生の要諦を説いた稲盛氏の言葉を紹介しておきたい。これは古今、多くの先哲が唱えてきたことと一致している。
「災難や苦難に遭ったら、嘆かず、腐らず、恨まず、愚痴をこぼさず、ひたすら前向きに明るく努力を続けていく。これから将来、よいことが起きるためにこの苦難があるのだと耐え、与えられた苦難に感謝すること。
よいことが起きれば、驕らず、偉ぶらず、謙虚さを失わず、自分がこんなよい機会に恵まれていいのだろうか、自分にはもったいないことだと感謝する。
これが素晴らしい人生を生きるための絶対の条件です」
実行するは我にあり。実行を積み重ねて初めて真価を発揮する言葉である。
昨年末東京で、1000人近くの盛和塾の仲間と「稲盛和夫さんの偲ぶ会」をしました。稲盛さんから「やり方でなく、人間としての、そして経営者としてのあり方」を学びました。稲盛さんの教えはいつまでも朽ちない教えだと思います。
(『月刊社長のミカタ』2023年1月号 発行:エヌピー通信社 より)
芸能界を代表するアイドル事務所「ジャニーズ」の副社長と子会社社長を兼任していた滝沢秀明氏が 〝電撃退社〟した。創業者であるジャニー喜多川氏の懐刀として活躍してきた同氏の退社の背景には、後継者である二代目社長との確執があったとも噂される。有能な重臣の離反は時として、中小法人にとっては事業継続の危機をもたらしかねない。今回の事例を教訓に、同族・オーナー経営での「重臣の扱い方」を学びたい。
創業者の衰えから歯車が狂い出す
ジャニーズ事務所副社長および関連子会社の社長を退任して両社から去った滝沢秀明氏について、事務所はその理由を本人の意向によるものと説明した。だが各種報道では、現社長であるジュリー藤島氏との確執が原因ではないかともささやかれている。
退社の陰に二代目との確執か
事業承継が必ずしも円滑に行われなかった同族会社にとって、有能な人材は事業の中核を任せられる頼もしい存在だ。そしてジャニーズ事務所にとっては、滝沢氏がその存在だった。滝沢氏はタレントとして現場で活動していたが、マネジメント手腕を買われて経営サイドに移ってからは事務所内の綱紀粛正に着手。不祥事を起こしたメンバーに対する処分を厳しくすると同時に新事業の立ち上げや国際進出、それまで事務所が消極的だったインターネットの活用にも乗り出し、着々と成果を上げていった。
信頼していた中継ぎ社長の裏切り
事業を支えてくれる重臣は、中小経営者にとって宝のような存在だが、決してオーナー一族ではない。もし子や孫の代まで創業家としての影響力を残したいのであれば、自社株を持たせないなどの一線を引くのは当然のことだ。ただ一方で、そうした扱いで重臣が不満を募らせ、部下や取引先を引き連れるかたちで離脱するような事態になれば、事業存続に関わる深刻なダメージを受けてしまう。
拙著でも書きましたが、代替わりの時、幹部社員の一部がやめることが多く、それはチャンスでありリスクだとも思います。代替わりで若返ることや、先代の番頭を変えるチャンスです。しかし、社員を連れての引き抜きは防止しないといけません。そのような幹部とは、よくコミュニケーションをとり、あいだに誰か入ってもらい、慰留しなければなりません。