100年企業創り通信
2023.02.24 Fri
大手ドラッグストアチェーンの各店舗に、節電を理由として、暖房の使用を控えるようにとの「暖房禁止令」が出され、従業員や来店客から寒すぎると苦情が出ているとの報道がありました。
このドラッグストア本部は、店舗に「12月以降も暖房を原則使用しない」方針を通達したことを認め、改めて「臨機応変に対応するよう」周知したそうです。
同社は、春と秋の冷暖房使用を禁止しており、例年12月から暖房を使用開始していたものの、政府の節電要請を受けて、12月以降も暖房停止を継続したのが経緯のようです。なお、同様の暖房禁止令は、大手カラオケチェーンでも出されていたようです。
企業は、労働者に対して安全配慮義務が課されており、労働環境衛生を維持向上することが労働安全衛生法を中心とする法令で求められています。
職場の衛生基準については、厚生労働省令の「事務所衛生基準規則」に様々な項目が定められています。
例えば、事務所内の浮遊粉じん、空気中の一酸化炭素及び二酸化炭素、ホルムアルデヒドの上限濃度等が定められています。
また、事務所の照度は、一般的な事務作業で300ルクス以上と定められています。
トイレについても、男女別に人数に応じた便器・便室の数が定められています。
同規則4条で「室の気温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない」「冷房する場合は、外気温より著しく低くしてはならない」(衣類等での調整可)としています。
さらに、同5条で「空調設備を設置している場合は、18度以上28度以下及び相対湿度40%以上70%以下」とする努力義務が定められています。罰則はなく、冷暖房禁止自体が違法とは言えませんが、節電が過ぎて、温度・湿度を維持できなければ、法令違反を問われる可能性はあります。
所得税の源泉徴収制度は、原理的には、申告納税制度を前提とした場合、所得税・法人税の前払い的性質を持ち、確定申告の手続きを経て精算する仕組みです。
ただし、完全子法人株式等・関連法人株式等に係る配当については、益金不算入の制度になっているため、所得を構成しないにもかかわらず源泉徴収をすることになってしまっています。そのため、課税所得に係る税額の前払いの性質を持っていません。
上記の指摘は、会計検査院が令和2年11月10日に内閣に送付した「令和元年度決算検査報告」においてしたものです。
会計検査院は、3年間に亘り、1667法人を追跡調査したところ、1兆1345億1974万円の源泉税控除があり、内9934億1336万円(88%)が法人課税所得を構成しない配当等に係る源泉所得税であり、納付法人税額を超える源泉所得税となって還付された額は1262法人の8898億6092万円(90%)だったと、記しています。
さらに、888法人に還付加算金が生じ、その額は3億6563万円でした。
会計検査院は、法人側の納付も、国税側の還付も無駄な事務作業で、還付加算金は税金の無駄使い、とのスタンスです。
会計検査院の指摘した問題は、令和4年度の税制改正で解決され、完全子法人株式等と3分の1超所有の株式等とに係る配当について所得税課税対象外となり、その支払いをする法人の源泉徴収事務も不要とされました。施行は、令和5年10月1日です。
ただし、与党税制改正大綱の「基本的考え方」の中で、「配当に係る源泉徴収の見直しにより、令和5年度の税収が減少すると見込まれること等を踏まえ、その影響を緩和するための必要な対応等について、令和5年度税制改正において検討する」としていました。
令和5年度の税制改正大綱の諸項目の中に、予告されていた「税収減への必要な対応」に該当するものは見当たりません。
M&A等での新たな子会社からの早期の配当では、源泉所得税額控除の月割計算に該当することがあったので、その留意点はなくなりました。
国税庁のWebサイトに、所得税等の確定申告の際に、誤りの多い事例が挙げられています。ちょっと見てみましょう。
①副収入の申告漏れ 今や副業をするのが公式に認められる企業も多い半面、インターネットによるサイドビジネス、NFTなど暗号資産の売買に伴う所得等の申告漏れが多いようです。
②給与所得・雑所得の計算誤り 令和2年分から給与所得控除額・公的年金等控除額が一律10万円引き下げられて、控除上限額が変更されました。また、給与収入が850万円を超えている方が一定の条件下で受けられる所得金額調整控除は、基本的には年末調整可能ですが、給与所得と年金所得がある場合に受けられるものについては年末調整できません。確定申告を忘れないようにしましょう。
③医療費控除の計算誤り 薬局購入の日用品は医療費控除の対象になりません。高額療養費制度や出産育児一時金、生命保険会社からの給付金等の、補填される金額については、その給付の対象となった医療費の金額を限度として、医療費の額から差し引かなければなりません。
④寄附金控除の適用漏れ 確定申告を行う場合、ふるさと納税のワンストップ特例の申請書を提出している方でも、確定申告にてふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて申告する必要があります。
確定申告を提出した後に、誤りに気がついた場合は、申告期限(3月15日)までならば、「訂正申告」として確定申告書を出し直すことができます。特に確定申告書と変わった形式ではなく、紙の申告であれば再度提出するだけ、e-Taxの場合も再度送信するだけです。税務署は基本的に、後から出した申告書を訂正申告として受理してくれます。
なお、還付される税金がすでに支払われている状態で、再提出した確定申告書の還付される税金が先に提出していた申告書の還付される税金より少ない場合は、差額分の還付済金額を納付する手続きが必要となります。
減価償却は、高額な機械設備等の経年劣化が生じる資産の購入費用を、購入した年にまとめて経費計上するのではなく、使用可能年数に応じて分割して経費計上することを言います。
減価償却は19世紀の鉄道会社が発明したといわれています。車両・線路・駅舎・鉄橋等、鉄道会社は固定資産が多く、当時は車両や線路の質も今よりは悪かったため壊れやすく、鉄道事業の運営にはコストがかかるため、投資家からの出資がなければ事業運営は困難でした。投資家が安定した配当を目指し投資を行うため、鉄道会社は減価償却を生み出し、年ごとに費用計上を行い「安定して利益が出ていますよ」という説明をしたのでしょう。
減価償却の対象は、有形・無形の固定資産のうち10万円以上のもので、かつ年を重ねて消耗して価値が減ってゆくものです。有形の資産の例は建物、機械装置、車両運搬具等です。また、無形の資産とは、ソフトウェアや営業権等となります。
固定資産でも「消耗して価値が減ってゆく」が適用条件となっているので、土地や絵画、骨董品等の時間が経っても価値が減少しない資産は減価償却できません。また、使用可能な期間が1年未満のものや、取得価額が10万円未満のものについても減価償却ができません。
なお、20万円未満10万円以上の減価償却資産は一括償却(3年間)可能、中小企業者等は30万円未満の減価償却資産は300万円を限度として全額損金算入可能等の制度があります。
減価償却は使用可能年数で分割して年ごとに必要経費を計上しますが、この使用可能年数は、法定耐用年数として公的に決まっています。
素材や用途に応じて耐用年数が異なるものもあり、例えば「事務所用の建物」の場合、
木・合成樹脂 24年
木骨モルタル 22年
鉄筋コンクリ―ト 50年
金属製 骨格材の肉厚により22~38年
などと様々です。