100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.107

2023.02.03 Fri

休職時の社会保険料の 労使負担は?

社員が病気やけがで休職した時

従業員が病気やけがで労働の提供が難しくなった時休職にすることがあります。最近では精神疾患を発症して休職をするケースが増えています。

休職制度は労働基準法上絶対に設けなければならないものではありませんが、設けていなければ従業員がけがや病気になり、それが一定程度長期にわたるときは会社としてどのように休んでもらうかを決めておかないと困った事態になってしまいます。期間はいつまでか、休職を認める条件とは何か、復帰の条件や届け出についてなど、就業規則に規定しておくとトラブルが回避できるでしょう。

休職期間中の社会保険料の負担について

休職中は給与の支払いは原則として必要ありませんが、休職中でも社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は免除されませんので、従業員負担分・事業主負担分ともに保険料を納めることになります(産前産後、育児休業期間中は労使とも保険料免除制度があります)。休職している従業員から自己負担分を徴収する必要があります。

休職期間中にも給与を支払っている会社なら控除はできますが、そのような会社は限られています。一般的には休職期間中の給与支払いがないので、従業員からの保険料の徴収方法を具体的に決めておくことがいいでしょう。休職に入る際には本人によく説明しておきましょう

社会保険料の徴収方法

①休職中の社員が傷病手当金の対象者であるなら傷病手当金をいったん会社が受領し、社会保険料控除後に本人に支払う。この場合は傷病手当金申請書の受け取り代理人の欄に記載し本人の同意が必要です。

②休職している従業員に毎月、社会保険料の請求書を出し期限を定めて会社に支払ってもらう。

③会社が立替えて支払い復職後に徴収する。

④復職後の賞与で相殺する。

⑤退職金支給対象者なら退職金で相殺する。

③~⑤の方法は復職できない場合や退職した場合は相殺できないことがあります。②の方法が適当でしょう。会社は労力がかかりますが、ルールを決めて金銭トラブルにならないようにしましょう。

令和4年分確定申告書 第1表の主な変更点

確定申告書は一本化されました

そろそろ確定申告の時期です。令和4年分以降の確定申告書を見てみると、予告されていた通り、申告書A・Bの2種類ではなく、1種類の申告書のみとなっています。

今まで収入が給与や年金のみで、医療費控除や寄附金控除のみの申告の場合に使えた簡易版である申告書Aを利用されていた方の中には「欄が増えていてすごく複雑そうだ」と思う方もいるかもしれませんが、落ち着いて項目ごとに見ていただければ、今までと変わらない項目がありますから、慌てずにご利用ください。

届け出不要で「振替継続希望」欄新設

令和5年1月1日から、納税地の異動があった場合に必要だった「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」は、「申告書の住所が変わっていれば異動があったと分かる」という理由から、異動後の納税地を申告書に記載すれば提出は不要となりました。

それに伴い申告書に新設されたのが「振替継続希望」の欄です。管轄の税務署が変わった場合、従来ならば提出すべき異動届にあった「振替納税を引き続き希望する」という項目のかわりに、確定申告書にこの欄ができた次第です。

なお、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書(届出書)」を提出することもでき、そちらを提出している場合は申告書の「振替継続希望」に丸を付ける必要はありません。

「修正申告」欄で第5表がなくなる

申告書第1表の右側中ほどには「修正申告」という項目が新たに作られました。こちらは修正申告時に「修正前の税額がいくらだったか」「修正した後の税額との差額はいくらなのか」を入力する部分となります。

従来修正申告時には、修正前の課税額を入力する第5表が必要でしたが、これを廃止したために新たに追加された項目です。ちなみに修正によって異動した事項については、第2表の「特例適用条文等」という欄の広めの部分に書き添えるようになります。

この変更も異動届同様に「元の申告書があれば変わった額は分かる」という理由からでしょうか。変更部分を見てみると、各項目「スマートになったな」という印象が持てますね。

令和4年分確定申告 住宅ローン控除初年度にご用心

今回が初年度の方は要注意

個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築・取得・増改築等をして、一定の要件を満たす場合、年末借入残高を基にして計算した金額を所得税額から控除する「住宅借入金等特別控除」が受けられます。

去年の令和4年に居住開始した場合については、税制改正で条件が複雑化した上に「契約日が一定期間の場合は特別に異なる条件になる」といったルールがあり、例外的にパターンが多くなっています。

令和3年条件で控除が受けられるパターン

令和4年に居住開始した場合に適用される住宅ローン控除制度には、令和3年条件(特別特例取得)が適用されるものと、令和4年改正が適用されるものがあります。

令和3年条件(特別特例取得)とは

①消費税額等の税率が10%であり、かつ

②新築(注文住宅)の場合は令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間、分譲住宅または中古住宅の取得の場合は令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間に契約している

上記の条件を満たしている住宅です。

令和4年改正の住宅ローン控除と大きく異なるのは控除率で、新制度は0.7%に対して、令和3年条件に適合するものは1%となっています。

合計所得金額の制限にも差があります

令和3年条件に該当する住宅ローン控除の場合は、合計所得金額が3,000万円以下であれば控除が受けられるのに対し、令和4年以降の住宅ローン控除は、合計所得金額が2,000万円以下でないと控除が受けられません。

なお、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である特例住宅等の場合、特別特例取得であっても令和4年以降の住宅ローン控除でも、合計所得金額が1,000万円以下でないと控除が受けられません。

控除額の最大額も異なります

最大控除となる借入限度額は令和3年条件の場合は認定長期優良住宅等が5,000万円、その他の一般住宅4,000万円ですが、令和4年改正は新たにZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円(その他一般住宅は3,000万円)の最大控除額設定が追加されています。

年々枠組みが複雑になる印象のある住宅ローン控除ですが、去年居住開始された方については特に注意が必要です。

DX推進とは何をするのか

中小企業が取り組むべき課題の1つ

デジタルトランスフォメーション(以下DX)とは、ITを活用して事業を抜本的に変革することをいいます。従来のIT活用がコスト削減や業務効率化を主目的とする一方、DXは業務プロセスだけでなく企業活動全体のデジタル化を目指し、売上げ増や顧客体験向上といった「攻め」の要素を含む取り組みを指しています。

前提としてなぜDXに取り組む必要があるのか、その目的をはっきりした上で進めることが重要です。目的が手段化すると、システムを導入したもののうまく使われない等の事態も起こり得ます。

企業規模で違う取り組み状況

DXの進捗は企業規模で大きく異なり、中小機構が2022年に発表した調査結果によると従業員規模101人以上の企業においてDXに「既に取り組んでいる」「検討している」と回答したのは57%でしたが、20人以下の企業では13%でした。規模が小さくなるほどDXへの取り組みが進んでいません。DXを理解する人材、投資余力が乏しいという状況です。

一方、コロナ禍で加速した新しい生活様式でテレワークの導入が推進されたり、密を避けるため等、新しいビジネススタイルが誕生してきました。

DX推進の環境変化

中小企業でもDXに取り組む環境が徐々に整いつつあります。ここ数年個別業務に対応するDX関連クラウドソリューションが続々登場したことにより、個別業務ごとにスピーディーにDXを進めることが可能になりました。まず自社の数年後のありたい姿(働き方、組織図、商品、売上げ、稼ぎ方、自社の在り方等)を定義します。その後そこに向けた業務プロセスごとに課題とITソリューションの全体像を考えます。全体像を描きながら個別業務のIT化を進めていきます。コスト削減できることからIT化を導入しましょう。

優先度の高いものから導入を進めていくことで投資効果も高められるでしょう。そのあと業務効率によって生み出した時間を今ある顧客データ、商品データなどをシステム化で分析し、DXを進め攻めの営業で売上げ増につなげ、会社の利益に結び付けていけることがDXの目的でしょう。

デジタルマネー 給与支払い解禁

デジタル払いを可能に労基法施行規則改正

令和4年11月にデジタルマネーによる給与の支払いを可能とする労基法施行規則が改定され、施行は令和5年4月1日です。

企業は労使協定を締結して労働者から同意を得れば、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金のデジタル払いができるようになります。支払い先の口座残高は上限100万円、最低月1回は無料で現金を引き出せます。

給与の支払い方の方法が増えるだけ

現行の給与支払いは経営者や従業員が直接ATMやインターネットバンキング等で振り込むというのもありますが、実際には労働者の同意のもと銀行等の口座振替によって支払う会社が大半です。多くの会社では取引銀行に給与計算データを送信して給与の支払いが行われています。デジタルマネー払いが解禁されたとしてもそれを選択するかどうかは自由であり、会社が選択すればデジタルマネー口座への入金作業が増えます。労働者から導入を求められても必ずしも応じる義務はありません。

デジタルマネー払いのメリットデメリット

メリットは

①振込手数料を削減できる可能性がある

②労働者側はデジタルマネー口座に振り込む手間が省ける。利用者増加を狙い業者がポイント還元を行えばポイント還元が受けられる等で労働者の需要を満たせる

③月2回払い、週払いなども現実的になる(ただし、給与計算は行う必要あり)

④外国人労働者の場合母国に送金が容易

③資金移動業者破綻時は法で返還義務あり

デメリットは

①担当者の事務負担感は増加する

②労働者の同意が必要なので、デジタルマネー払いの理解が低いとすぐには進まない。同意を得る際は様式例等を使って確認必要

デジタルマネー払い導入の流れ

実際にデジタルマネー払いを進めるとしたら、導入の流れはどうなるのでしょうか。

①給与のデジタルマネー払いをするのかを検討する

②賃金規定の変更・労使協定の締結等

③労働者の同意を得て口座情報を収集する

④希望者にデジタルマネーで支払う

実際の利用は準備期間があるので令和5年夏以降と考えられます。