100年企業創り通信
2021.01.15 Fri
税理士業界の専門誌に、国税庁消費税課課長補佐、税務大学校研究部教授等々を歴任した人が、民泊事業に係る消費税について、次のように書いていました。
民泊用建物は「居住用賃貸建物」に該当し、民泊事業は「住宅宿泊事業」なので、住宅の貸付けに該当しないから消費税の課税対象になるものの、令和2年10月1日以後取得するものは仕入税額控除の対象にならず、さらに、第3年度の末日までその建物を消費税の課税対象である民泊用に供していたとしても、課税賃貸割合に基づく調整控除の対象にはならない、と。
居住用賃貸建物に係る仕入税額について、購入後に課税売上割合が著しく変動する場合、購入時の仕入税額控除の後、第3年度に調整計算を行うという制度から、物件購入期での仕入税額控除を不可とし、第3年度の課税期間の末日において課税賃貸割合に応ずる消費税額を算定し、その期の仕入消費税額とするという制度になりました。
① 民泊事業を、他人に有料で住宅を貸す行為と解すると、民泊専用住宅を購入後、課税事業者として継続して民泊用に供した3年経過後の課税賃貸割合は100%です。
② 民泊事業とは、個人で言えば事業所得になる行為で、不動産所得となる行為ではないので、不動産賃貸事業に該当しないことになり、従って3年経過後の課税賃貸割合は0%です。
冒頭の専門誌の筆者は ② に該当するとして、3年経過後の仕入税額控除を否定しているわけです。
冒頭の筆者は、また、民泊用建物は「居住用賃貸建物」だから物件購入年でも仕入税額控除不可としています。
しかし、法令では、建物の構造・設備で居住用賃貸住宅非該当が明示出来れば、仕入税額控除は可としています。
もし、税理士がマンションを購入して、様々な必要な設備を整えて税理士事務所として利用する場合、物件購入の仕入税額控除がそれで可であるのならば、民泊利用でも固有な設備の設置が必要なので、同じく仕入税額控除可となりそうに思われます。
令和3年度の税制改正は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動との両立がテーマ。減税重視のものとなっています。
住宅ローン控除は、消費税増税対策で拡充した特例(控除期間13年)の適用期限が2年延長されます。また、夫婦2人・単身世帯への配慮から、この延長した部分に限り床面積要件が「40㎡以上」に軽減されます。
改正前
入居:令和2年末まで
床面積:50㎡以上
所得:3千万円以下
改正後
入居:令和4年末まで
床面積:40㎡以上
所得:40~50㎡未満は1千万円以下
現在では1%以下の金利でローンが組めることも多く、会計検査院から過大な優遇との指摘があり、今後の動向に注目です。
対象をより効果的なものに重点化し、手続を簡素化した上で5年延長されます。
改正前
取組関係書類の提出が必要
改正後
明細書に取組に関する事項を記載
国や自治体からの子育て助成(ベビーシッター・認可外保育施設の利用料等)は、「雑所得」として課税されていましたが、子育て支援の観点から、非課税とする措置が講じられます。
現行法でも特定役員退職手当等(勤続年数が5年以下の役員)については、1/2課税の適用が認められていませんでした。
今回の改正では、雇用の流動化等に配慮し、勤続年数が5年以下の従業員についても、退職所得控除後の残額が300万円を超える部分については、1/2課税の適用を認めないこととなりました。
改正前
1/2課税あり
改正後
300万円以下部分…1/2課税あり
300万円超部分…1/2課税なし
企業向けの投資促進税制は「脱炭素」と「デジタル化」が2本柱となります。
青色申告法人がクラウド上でデータ共有するための設備投資を行った場合の特別償却制度が創設されます。
要件
①デジタル要件
(データ連係・クラウド技術活用・情報処理認定機構の認定)
②企業変革要件
(売上高の0.1%以上の投資他)
対象・資産
改正産強法の事業適応計画の認定要件を充たすソフトウェア等
(取得価額)合計300億円を限度
措置
特別償却30%・税額控除3~5%
カーボンニュートラルに向け、リチウムイオン電池やパワー半導体の生産設備に投資した場合の特別償却制度が創設されます。
要件
改正産強法の「中長期環境適応計画」の認定を受けること
対象・資産
中長期環境適応生産性向上設備他(取得価額合計500億円限度)
措置
特別償却50%・税額控除5~10%
研究開発投資を促進するため、控除率が見直されます。
A: >9.4%
控除率の算式: 10.145%+(A-9.4%)×0.35(上限:14%)
A: ≦9.4%
控除率の算式: 10.145%-(9.4%-A)×0.175(下限:2%)
A:増減試験研究費割合
また、クラウドで提供するソフトウェアの開発費などが対象に追加されます。
雇用環境の悪化に対応するため、新規雇用拡大・教育訓練支援に着目した形に見直されます(賃上げから雇用確保にシフト)。
カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等を行う企業に対し、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大100%(現行:所得の金額の50%)とする特例が創設されました。
令和3年度の中小企業向けの税制改正は、事業再編による生産性向上を後押しするものになっています。
次の中小企業税制が2年延長されます。
① 中小企業者等の法人税の軽減税率
② 中小企業投資促進税制等
②の投資促進税制では、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の対象業種を「中小企業投資促進税制」に統合します。
雇用者全体の給与等支給額に着目した要件に簡素化した上で、2年延長します。
改正前
①雇用者給与等支給額が前期より増加
②継続雇用者給与等支給額が前期比1.5%増
改正後
雇用者給与等支給額が前期比1.5%増
(賃上げがなくても人員増で給与の支給が1.5%増になればよい)
また、上乗せ控除も、継続雇用者から雇用者の給与等支給額で判定されるようになります(適用要件等の判定が容易になります)。
中小企業者のM&A実施後の簿外債務の発覚や未払賃金支払いの訴え等、買手企業の投資リスクに備えるため、準備金制度(課税の繰延べ)を創設されます。
要件
認定を受けた経営力向上計画に基づき中小企業がM&Aを実施
積立
投資額の70%以下の金額を損金算入(中小企業事業再編投資損失準備金)
取崩
5年据置後、5年間で均等取崩し
※簿外負債発覚時にも取崩
研究開発投資を促進するため、控除率が見直されます(令和3年度~)。
A: >9.4%
控除率の算式: 12%+(A-9.4%)×0.35(上限:17%)
A: ≦9.4%
控除率の算式: 12%
A:増減試験研究費割合