100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.104

2023.01.13 Fri

フリーランスと労働者

両者の区別の重要性

近年「雇用によらない働き方」として所謂フリーランスが増加傾向にあり、国も成長戦略の一環としてこれを後押ししています。一方で雇用による働き方である労働者とフリーランスを比較すると各種労働法及び社会保険法の適用に相違があります。

また税法の観点からもこれらの区別は労働者であれば給与、フリーランスであれば外注費となり、源泉所得税や消費税の仕入税額控除に影響を及ぼします。

これらの理由から当該取引相手が労働者であるかフリーランスであるかの区別は実務上とても重要となります。

労働者性の判断(労働基準法の見地から)

労働基準法上の労働者の定義は同法9条で「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」とされています。具体的には最高裁判例の積み重ねにより、学説上も有力で実務でも使われる以下の判断基準が示されています。

①  「指揮監督下の労働」といえるか

(ア)仕事の依頼等への諾否の自由の有無(仕事の依頼等を断れるなら労働者性が強い)

(イ)業務遂行に当たっての指揮監督の有無(仕事の進め方等についての指揮監督があれば労働者性が強い)

(ウ)勤務場所や勤務時間に関する拘束の有無(仕事をする場所や時間が拘束されているなら労働者性が強い)

(エ)代替性の有無(依頼された仕事を自分以外の第三者に行わせることができなければ労働者性が強い)

②報酬が労務対償性を有するか否か(報酬が貰えるのは労働を提供したからか、又は仕事を完成させたからか)
③補強要素

(ア)事業者性を有するか(独立して事業を営む自営業者としての性質を有するか)

(イ)専属性が認められるか(取引相手以外の仕事をしていないか)

(ウ)公租公課の負担関係、採用の過程等

参考(労働契約法の見地から)

労働契約法上の労働者も労働基準法上の労働者の定義と大きく変わることがなく、少なくとも労働基準法上の労働者であれば労働契約法上の労働者であると解されます。

進化し続ける医療費控除 (医療費のお知らせについて)

医療費控除とは

医療費控除は、本人や生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払った場合に、その支払額が一定額を超えるときは、次の算式によって計算した金額を所得金額から差し引く制度です。

 

「医療費のお知らせ」は捨てないでネ!

平成29年分の確定申告から、医療費控除を受ける場合に「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付しなければならないこととされていますが、医療保険者から交付を受けた医療費通知(医療費のお知らせ)がある場合は、これを添付することによって医療費控除の明細書の記載を簡略化することができます。

協会けんぽの場合、「医療費のお知らせ」に通知される診療期間は、令和3年10月診療分から令和4年9月診療分までのものが、令和5年1月中旬以降(事業所宛)に送付されます。

医療費のお知らせを確定申告の医療費控除に活用する場合、令和3年分は差し引き、令和4年10月診療分~12月診療分については、医療機関等からの領収書に基づき、ご自身で医療費控除の明細書を作成し、申告書に追加して添付する必要があります。

また、その内容は保険診療分のみとなり、自由診療(自費分)や薬局での一般的な医薬品の購入も含まれていませんので明細に追加する必要があります。

 

医療費の領収書の保存は5年間

平成29年分の確定申告から医療費の領収書の提出は不要となりましたが、医療費の領収書は、5年間保存の必要があります。

 

マイナポータル連携でどうなる?

マイナポータル連携を利用すると、医療費控除に使用できる医療費通知情報を取得し、所得税の確定申告書を作成する際に自動入力することができます。

なお、事前にマイナポータルで代理人の設定を行うことにより、申告に含めることが可能なご家族の医療費通知情報をマイナポータル連携で取得することができます。

令和3年分は、令和3年9月~12月診療分に限られましたが、令和4年分以降は、1月~12月診療分の情報が取得できます。

企業型DCの資産放置 約2,600億円!

転職・退職時に手続きせず

企業で加入する企業型確定拠出年金DC(企業型)で約112万人分の年金資産(積立額)が運用されずに放置された状態になっていることが、国民年基金の調べによりわかりました。加入者(従業員)が転職・退職時などに必要な手続きを取らなかったことで国民年金基金に自動移換され、公表記録のある2017年度末から2021年度末でその数は1.5倍に増え、総額は約2600億円に上るということです。

企業型DCの資格喪失後は

DCでは原則60歳までは資産の引き出しはできません。従業員が60歳未満で中途退職して企業型DCの資格喪失をした場合は

①他の企業型DCに資産を移す(移換)

②iDeCo(個人型)に資産を移す

と2つの方法があり、これを「ポータビリティ」といいますが、DCでは転職・退職に伴う手続きを自分で行う必要があります。

資格喪失後6か月以内に移換手続きをせずに放置しておくと自動的に売却・現金化により国民年金基金連合会(または特定期間運営管理機関)の口座に移換されます。

自動移換されるとどうなるの?

自動移換されると国民年金基金連合会や特定運営管理機関の手数料が毎月かります。資産運用の指図や給付金請求もできません。また、加入期間の通算もされません。

ただし、自動移換されても他のDCに切り替え手続きを行えばそちらに移換できます。

企業型DC加入者の退職時の手続き

加入者が60歳未満で中途退職した場合、企業が加入者の資格喪失手続きを行うと10日後位に資格喪失した通知が自宅に届きます。通知は今後の移換に必要な情報が記載されているので大切に保管しておきます。

①転職先の企業型DCに移換する時は必要書類を取りよせ記入後転職先に提出します。

②転職先に企業DCがないか自営業者、専業主婦(夫)になる場合、iDeCoの口座を開設します。加入申込書と「個人別管理資産移換依頼書」を提出し、さらに会社員や公務員がiDeCoに加入する場合は事業主の証明書も添付し、運営管理機関に提出します。手続き完了には2か月近くかかります。

企業の担当者は従業員の退職時には企業型DCの資産移換についても忘れずにアドバイスをしてあげましょう。

令和5年度税制改正大綱 個人所得課税編

個人所得課税では、「資産所得倍増プラン」をもとに、NISA制度やスタートアップ支援制度を中心に見直しが行われます。

NISAは投資枠の拡充と制度を恒久化

新たなNISA制度では、投資枠が「つみたて投資枠」として、年120万円(これまで年40万円)、「成長投資枠」として年240万円(これまで年120万円)、併用を可能にして、合計で年360万円、累計1,800万円(うち成長投資枠の累計は1,200万円)まで大幅に拡充されます。非課税となる保有期間は、無期限とし、制度の恒久化が図られます。令和6年1月から適用されます。

スタートアップへの再投資に非課税措置

スタートアップへの資金供給を強化するため、保有株式の譲渡益を元手にして、創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップに再投資を行った場合、20億円を上限に株式譲渡益に課税しない制度が創設されます。

また、ストックオプション税制の権利行使期間の上限を15年(現行10年)に延長し、スタートアップの事業を後押しします。

高所得者の税負担を適正化

税負担の公平化の観点から、極めて高い水準の所得者に対して、基準所得金額から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、基準所得税額を超過する場合には、その超過した差額について追加的に申告納税を求めます。令和7年分以降の所得税から適用されます。

相続空き家の特例は適用要件を改正

相続空き家の特例は、建物譲渡の翌年2月15日までに耐震基準に適合させるか、取壊し等を行えば適用できるようになります。また、建物、敷地の相続人が3人以上の場合、特別控除額は2,000万円とされます。令和6年1月1日からの譲渡に適用されます。

特定非常災害損失の繰越控除期間を5年に

特定非常災害により生じた損失について、雑損失や純損失の繰越期間を例外的に5年(現行3年)に延長します。