100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.102

2022.12.23 Fri

ギグワーカーは労働者?

国内初の法的判断

令和4年11月25日、東京都労働委員会は料理配達「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員の労働組合と団体交渉をするよう命じました。「ギグワーカー」を労働組合法上の労働者とする法的判断は国内初です。なお、ウーバー側はこれを不服として再審査の申し立てを検討しているとのことです。(日本経済新聞令和4年11月25日)

問題の背景

いわゆるフリーランス等「雇用関係によらない働き方」が増加しています。これらの働き方をする者は原則として各種労働法の保護を受けません。一方でこれら労働法の適用のないフリーランスの増加は世界的な傾向であり、各国で「雇用関係によらない働き方」をする者への法的保護が検討されるようになっています。

ギグワーカーとは?

ギグワーカーとはフリーランスの一形態で、プラットフォーム事業者を介して仕事を受注し、実際のサービスは顧客との対面で行う者をいいます。

この判断が企業に与える影響

近年、原則として労働法の保護を受けないギグワーカー等のフリーランスに、憲法で保障される団体交渉の枠組みを活用して、企業側と交渉したいというケースが見られるようになりました。労働組合法上の労働者が集まった「労働組合」であれば、個々人の契約相手である企業は、その労働組合と団体交渉を誠実に行う義務(誠実団交義務)を負うことになります。つまり、企業が自社の契約相手はギグワーカー(フリーランス)であり、「自社の労働者ではない」と考えていても労働組合法上の労働者であると判断された場合には、企業は労働組合が申し出た団体交渉を誠実に行わなければならないことになります。

ただし、今回判断されたのはあくまでも労働組合法上の労働者であることのみであって、労働基準法や労働契約法上の労働者であるとまで判断されたわけではありません。よって企業は、労働基準法上の労働時間規制や割増賃金支払い義務、また労働契約法上の解雇制限や雇止めの禁止などの義務を直接的に負うことまでは求められていないことになります。

コンビニの適格請求書登録番号は店舗ごとに違う可能性大

適格請求書保存方式開始まで1年を切った

令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式が適格請求書保存方式(いわゆるインボイス方式)となります。

インボイスとは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類するものをいいます。インボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限られます。インボイス発行事業者となるためには、登録申請手続を行い、登録を受ける必要があります。登録を受けた事業者には国税庁から登録番号が通知されます。仕入れる側は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で請求書等に記載されている登録番号が正しいものであるかどうかの確認ができます。

フランチャイズの店舗は事業者が別の者?

コンビニエンスストアなどフランチャイズ方式で展開されている事業は、店舗の事業主はコンビニ本部の会社ではなく、加盟店オーナーの個人事業もしくは法人となります。そのため、適格請求書発行事業者の登録番号も、コンビニ本部の番号ではなく、その店舗の事業主の登録番号となります。フランチャイズ本部の直営店もありますので、その場合は本部の会社名となります。

仕入税額控除の要件となる帳簿の記載事項には、「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」があります。フランチャイズの場合、コンビニチェーン名だけではなく、店舗名までの記載が必要だということになります。

相手方登録番号の帳簿記載は不要です

仕入税額控除に際しての記帳要件は、令和5年10月1日以降も現在の区分記載請求書等保存方式と同様であり相手方登録番号の記載は不要とされています。よって、経理入力時に登録番号入力の懸念は不要です。

とはいえ、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトとの登録番号の検証機能を備えた会計ソフトを使っている場合、正しい名称で登録すると実在性の確認もできるので、自社の会計ソフト次第では、入力した方が便利な場合があるかもしれません。

出張経費の精算でコンビニ利用の実額を旅費としている場合、現在でも、食料品は軽減税率の8%、その他は10%、レジ袋も標準税率の10%と、確認と記帳に他のレシートの3倍くらい時間が掛かります。

買い物には便利なコンビニですが、消費税の面から見ると、少し面倒な存在です。

インボイス業者扱いの 消費者・農林漁民

要件としてのインボイスと例外一

適格請求書(インボイス)等保存方式の下では、インボイスの存在は仕入税額控除の要件です。ただし、その発行の要求が困難なものとしての次のものには、インボイス発行は要求されません。

①3万円未満の公共交通機関旅客運送

②使用の際に回収される入場券等

③3万円未満の自販機による商品販売等

④郵便切手類を対価とする郵便サービス

⑤従業員に支給する通勤費、出張旅費等

インボイス例外二

また、委託販売での取引とも言える次のものにも、インボイス発行は要求されません。

⑥卸売市場において行われる生鮮食料品等の販売

⑦農協・漁協・森林組合等に委託して行う農林水産物の販売

インボイス例外三

さらに、一般消費者が売り手となる次のものにもインボイス発行は要求されません。

⑧宅地建物取引業者への建物の売却

⑨古物営業を営む者への古物の売却

⑩再生資源及び再生部品の売却

⑪質屋を営む者の質物の取得

免税事業者からの仕入でのインボイス不要

上記の内、③⑥⑦は事業者からの仕入ですが、その中には免税事業者が含まれています。特に、⑥⑦は農業者、漁業者、林業者からの仕入であり、それらの小規模事業者との取引者を保護する政策的配慮です。

消費者からの仕入とみなすインボイス取引

それに対して、⑧⑨⑩⑪は、取引の相手が一般消費者である場合を通常事例と想定しての規定であり、一般消費者をインボイス事業者とみなすような扱いになっている、事業者配慮の政策的規定です。インボイスを発行できない事業者や消費者からの仕入税額控除制限規定をこれらでは機能させていません。

なお、⑧⑨⑩⑪の取引は、棚卸資産を取得する取引についてだけ適用なので、不動産や中古資産や再生資源を自己使用目的で購入する場合にはインボイスなしでの仕入税額控除特例の対象にはなりません。それならばと、⑨の不動産取引については、仲介業者に棚卸資産として購入してもらってから転売してもらう、取引の類型転換が増えるかもしれません。

ふるさと納税の 控除上限金額ってなに?

利用率が上がってきたふるさと納税

個人の所得や控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品がもらえるふるさと納税制度。令和4年に総務省より発表された現況調査によると、控除適用が行われた人数は約740万人となり、この控除適用人数から類推すると、ふるさと納税の全国利用率は約13%となるようです。

さて、冒頭で言っている「控除上限金額」とはどういうものなのでしょうか。今までふるさと納税をしたことがない方向けに解説いたします。

 

控除上限金額ってなに?

「控除上限金額」とは、ふるさと納税だけに許されている、住民税をたくさん引いてくれる税額控除ができる上限の額です。

ふるさと納税の控除には内部に3パターンの控除が含まれています。

①所得税の所得控除(上限は所得の4割)

②住民税の税額控除本則分(上限は所得の3割)

③住民税の税額控除特例分(上限は住民税所得割額の約2割)

この3種類の控除の組み合わせで、寄附額の全体から2,000円のみを差し引いた分が税額から引かれるようになっています。

 

超えて寄附しても良いのか?

ふるさと納税のポータルサイト等にあるシミュレーションで、控除上限金額は算出できます。この控除上限金額までの年間合計寄附額であれば、基本的には自己負担は2,000円で済みますが、控除上限金額を超えて寄附をしてしまった場合はどうなるのでしょうか。

控除上限金額を超えた部分の金額は前述した③の住民税の特例控除が受けられないため、自己負担は徐々に増えてゆきます。ただ、少しだけ控除上限金額を超えて寄附をしてしまったとしても、その超えた部分だけが超過分として控除の効率が減るのですから、例えば控除上限金額が69,000円と出て、7万円寄附でもらえるお礼の品が欲しい、といった場合は7万円寄附しても、自己負担は3,000円弱となりますから、3,000円以上の価値のあるお礼の品をもらえれば十分にお得、ということになるのです。

フリーランスガイドラインとは

拡大するフリーランスの現状

デジタル化の進展により、事業組織のフラット化やネットワーク化が進み、インターネットを介し個別にサービスを提供できるビジネスモデルが拡大しました。また、特定の企業や時間、場所等に縛られない自由な働き方を選択する人も増加しています。さらに国もフリーランスを始めとする「雇用関係によらない働き方(多様な働き方)」を成長戦略の1つとして推進しています。

一方でフリーランスを雇用関係で働く労働者と比較すると、各種労働法や社会保険法等による保護が十分ではなく、フリーランスの現状は必ずしも安心して働ける環境になっていません。そこで国はフリーランスガイドライン(フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン)を策定しました。

フリーランスガイドライン

フリーランスガイドラインは2020年7月の成長戦略実行計画の閣議決定を受け2021年3月に策定されました。また同ガイドラインは内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁(経済産業省)・厚生労働省の連名で策定されていることから、フリーランスの保護の問題は多岐にわたることがわかります。

フリーランスガイドラインの基本的考え方

フリーランスガイドラインで定義されるフリーランスとは「実店舗がなく、雇人もいない自営業者や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」とされています。これらフリーランスについて一義的には独占禁止法又は下請法で保護することを予定しています。一般的にフリーランスは交渉力などの格差から一方的に不利な条件の契約になりやすい面があり、発注業者が不当な契約で不利益を与えれば、フリーランスが競争相手との関係でも不利になり、公正かつ自由な競争を促進することを目的とする独占禁止法やその補完を目的とする下請法に抵触することになります。そこでフリーランスとの取引には独占禁止法や下請法の規制により、フリーランスが安心して取引ができる環境づくりをすることになります。

フリーランスと労働法の関係

一義的には独占禁止法や下請法で保護されるフリーランスですが、請負契約等の名目でも、実態が雇用契約であると認められる場合には、実態の労働者性に着目し、労働法による保護が優先されます。