100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.97

2022.11.18 Fri

従業員の昇給時期と その後の手続き

昇給月は入社の月という会社の場合

A社は業績も安定していて、毎年売上も順調に右肩上がりに推移しています。従業員の給与についても、雇用契約書で謳っている通り、毎年人事評価し、給与の見直し(昇給)をしています。従業員は経験者の中途採用が多いため、入社月はまちまちで、毎月のように給与改定となる対象者が発生しています。

昇給後の届出手続き

昇給(降給)となった場合に、会社として行わなければならない公的機関への届出書は何かあるのでしょうか。

昇給後3か月分の給与を平均して、従来の社会保険料の標準報酬月額に対して大幅な変動(2等級以上の変動)があったときは、年金事務所(健康保険組合に加入している場合には健康保険組合にも)に、「報酬月額変更届」(=「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」)を提出する必要があります。ただしこれは、昇給月にすぐに提出するのではなく、3か月経過後に、3か月間の給与実績と平均額を算出して、大幅な変動に該当する場合に届け出が必要となります。

事業主(会社)は、7月1日現在で使用している全被保険者の3か月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、厚生労働大臣はこの届出内容に基づき、毎年1回社会保険料の標準報酬月額を決定し直します。これを「定時決定」といいます。

昇給などにより2等級以上の変動で定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することは「随時改定」と言われています。「月変」と呼ばれることもあります。

定時改定の標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。随時改定の場合は変動月から4か月目の社会保険料から新しい料率が適用されます。給与計算で社会保険料の控除が翌月控除の場合にはさらに1か月先の給与計算となりますので留意が必要です。

昇給のタイミングを揃えたら

昇給月がバラバラのA社の場合、その都度「月変」が必要なのかを確認し、「随時改定」となった場合には給与計算の変更月にも留意しなければならず、結構面倒です。

A社には全社で昇給月を統一することをお勧めしますが、果たして、企業文化との整合性でどう決着するのでしょうか・・・。

こんな会社には 労働保険事務組合のススメ

労働保険事務組合とは

労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」) と雇用保険とを総称した言葉です。保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。

労働保険料の計算は、毎年度(4月1日から翌年3月31日)に企業が被雇用者に支払う賃金総額に保険料率をかけて算出します。年度更新の申告書は、管轄の都道府県労働局や労働基準監督署へ6月1日から7月10日までに郵送または電子申請で申告します。

労働保険事務組合とは、事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労働保険の事務を処理することについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体です。

事業主が団体に委託する利点は下記です。

1.申告・納付等の労働保険事務を事業主に代わって行うので事務の手間が省けます。

2.労働保険料の額にかかわらず、労働保険料を3回に分割納付できます。

3.労災保険に加入することができない事業主や家族従事者なども、労災保険に特別加入することができます。

こんな会社にはおススメ

事務組合に事務を代行してもらうとそれなりの費用が発生します。事業主が自ら申告書を作成すればこうした費用は不要です。

しかしながら、公の労働局に直接申告した場合には得られない大きなメリットがあります。前述3.の労災保険特別加入です。業種によっては、顧客先(特に業務災害の発生する危険性のある工場等)に出入りするに際しては「労災保険が付保されている者に限る」というような条件が付けられるところもあります。公の労働局への直接申告の場合は、事業主やその家族従業員などは労災保険に加入できないため仕事になりません。こうした時には労働保険事務組合を通しての特別加入が必要となります。

労働保険事務組合への加入には、まずは、社会保険労務士さんにご相談ください。

事務組合で違う消費税額は明細確認が必要

同じように社労士さんが主催している事務組合でも東京Aと神奈川Bでは事務組合への報酬が会費扱い(消費税非課税)なのか事業団費名目の報酬(消費税課税)なのかによって消費税の扱いが異なっています。

会計処理に際しては組合から送られてくる「労働保険料等納入通知書」等の内容明細をよく確認してください。

令和4年年末調整の 変更点と提出方法

主な変更は1点のみ

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。

今年適用される変更は「社会保険料控除」や「小規模企業共済等掛金控除」の控除証明の電子データの提出が可能になる点です。生命保険料控除や地震保険料控除が先んじて行っていたものなので、すでに年末調整の電子化に着手している方にとっては、少し楽になる、という感じでしょうか。

 

適用は令和5年からだが実質今回の変更点

会社から年末調整資料と同じタイミングで提出を求められる「令和5年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については、国外居住親族に係る扶養控除の見直しに伴い、「非居住者である親族」の欄に変更があります。「16歳以上30歳未満又は70歳以上」「留学」「障害者」「38万円以上の支払」という項目があり、つまりそれ以外の非居住者については扶養控除の適用対象から除外されます。

紙でもらうか、データでもらうか?

年末調整の方法については、現在紙資料の作成・提出とデータ資料の作成・提出が混在しています。

年末調整資料を提出する社員等については①控除証明書をハガキ等で取得②保険会社等からデータで取得③一括してマイナポータルで取得。控除申告書の作成についても①用紙で作成・提出②データで作成・提出③データで作成・紙で提出、と対応が分かれます。

また、作成・提出された形態から、勤務先は手入力またはデータインポート等を行い、税務署への法定調書合計表の提出も紙と電子で方法が分かれます。なお、法定調書の種類ごとに前々年の提出すべき法定調書の提出枚数が100枚以上であった場合は、e-Taxまたは光ディスク等による提出が義務化されています。

社員のPCスキルや利便性に応じて受け入れフォーマットの柔軟な対応ができれば良いのですが、税務処理を考えると煩雑になってしまうのが難しいところです。

インボイス制度 事業者登録が遅れたら?

登録は基本令和5年3月末まで

令和5年10月開始のインボイス制度は、現在課税事業者であっても「適格請求書発行事業者」の登録を行わないと、適格請求書を発行することができません。

この登録申請は郵送・e-Taxのどちらでも行えます。また、税理士が代理送信を行うこともできます。令和5年3月31日までに登録申請書を提出すれば、インボイス制度開始の令和5年10月1日が「登録日」とみなされ、同日より適格請求書が発行可能です。

提出が遅れた場合の対応

令和5年3月31日までに登録申請書が提出できなかったことにつき「困難な事情」がある場合は、令和5年9月30日までに「困難な事情」を記載して提出し、登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされます。この「困難な事情」の記載がない登録申請書を提出してしまうと、登録日が令和5年10月2日以後となる可能性があるので注意が必要です。ちなみに、「困難な事情」については「困難の度合いは問わない」とされており、「うっかり提出を忘れていた」等、正直に事情を書いても許される模様です。

「困難な事情」の記載がない登録申請書を提出して、令和5年10月2日以後に登録を受けた場合は、登録を受けた日より適格請求書が発行できるようになります。

登録日にご注意

令和5年10月1日以後については、登録申請書を提出した日が登録日となるわけではなく、国税庁が適格請求書発行事業者であると登録した日が登録日です。

令和4年9月末に公表された「登録申請書」を提出してから登録通知までの期間は、e-Taxの場合で約3週間、書面提出の場合約1か月半とされています。もし令和5年9月30月までに登録をしなかったら、登録通知が来るまで適格請求書が発行できないわけですから、10月初頭から3週間前後の請求書については、取引先の仕入税額控除のために、請求書を遅れて発行する等の対処が必要になる可能性があります。

適格請求書でなくても一定割合を仕入税額控除にしてくれる経過期間がある免税事業者とは違い、現行課税事業者である場合は消費税制度に変更はなく、損得の判断をする必要がないので、うっかり忘れる前に事業者登録をしておきましょう。

次回で今年度の募集は最後です! ~事業再構築補助金~

事業再構築補助金とは

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売り上げの回復が期待しづらい中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが重要です。そのため、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します。次回で今年度の募集は締切です(令和5年1月13日(金)18時)。

 

補助対象経費

本補助金は設備投資を支援するものです。設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム構築費も補助対象です。

【主要経費】

●建物費(建物の建築・改修・撤去に要する経費)、機械設備・システム構築費

【関連経費】

●外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)

●研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)

補助対象外の経費の例

●補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費

●不動産、株式、公道を走る車両、パソコン、スマートフォン、家具等汎用品の購入費

●販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費

 

事業計画の策定

補助金の審査は事業計画を基に行われます。採択されるためには、説得力のある事業計画を策定することが必要です。事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ下記の要件を記載する必要があります。

●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)