100年企業創り通信
2022.10.21 Fri
自己株式取得では、取得価額を、その株式に対応する資本金等の額とその他の利益積立金額とに分別します。ただし、自己株式の取得でも、市場取引による上場株式の取得、合併・分割・現物出資・現物分配での取得では、資本と利益の分別処理をしないで、取得価額全額を資本金等の額とします。その結果、マイナス資本金等の額が生ずることがあります。これは、利益を分別しないことによる利益への資本の混入です。
自己株式の取得の金額が大きくなるのはMBOやLBOの場合で、買収の為に用意された会社が株式のすべてをオーナーから高額な時価で買取り、完全親会社になり、その後、完全親会社と完全子会社が逆さ合併(逆取得合併)することにより、親会社が所有していた子会社株式が子会社の自己株式になるからです。その場合、巨額なマイナス資本金等の額になるのが普通です。
そうすると、事後の自己株取得では、マイナス資本金等の故に、全額が資本金等超過額となり、全額がみなし配当になってしまい、取得側には資本金等の額を減額する処理が出てきません。今度は逆に、資本への利益の混入です。資本金等に対応する額が計算されないので、売主側の譲渡対価となる額も認識されず、譲渡原価のみ認識されることになります。対価ゼロの株式譲渡原価の認識なので譲渡損発生となります。
売主が、 完全支配関係下にある法人の時は、譲渡損益調整資産の譲渡損益は繰延べとなります。個人については全額配当所得課税となり、譲渡損は損益通算できない損失になり易いところです。
こういう事態を放置している理由には、みなし配当課税が済んでいないとの考えがあるからなのかも知れませんが、取得時の相手は譲渡所得課税されているわけですから、みなし配当の代替課税は済んでいると考えて、自己株取得のすべての場合で、その取得時に資本と利益の分別作業をするのが合理的です。過去から自己株式となっているものでも、一株当りの資本金等の額の計算は可能なはずなので、税務における資本と利益の分別の徹底と透明化のために、税務が生み出す資本と利益の混同の実態は清算されるのが望ましいところです。
厚労省から9月7日付の各自治体への連絡で新型コロナウイルス感染症の陽性者で有症状の場合は、7日間経過し、かつ症状軽快後24時間経過した場合には8日目から解除が可能となりました。ただし、短縮期間で体調が回復していない場合は出勤など無理な活動は控えた方が良いと言えます。10日を経過するまでは感染リスクが残存することから検温など自身による健康状態の確認や高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問、感染リスクの高い場所の利用や会食などを避けること、マスクの着用等、自主的な感染予防の徹底をしてほしいとしています。
無症状者は、従来通り、検体接種日から7日を経過した場合には8日目に療養解除が可能になります。
加えて5日目の検査キットにより陰性を確認した場合には6日目から解除になります。ただし7日を経過するまでは陽性者と同じような対策をして欲しいとしています。
有症状の場合は症状軽快から24時間後又は無症状の場合は外出時や人と接する際は短時間とし移動時は公共交通機関を使わず人と接する場合はマスクの着用するなどして自主的に感染予防行動をとり、食料品の買い出しなど必要最小限の外出は可能とされています。
濃厚接触者の扱いは以下の通りです。
同居する家族が感染した場合は保健所が濃厚接触者を特定し(同居の家族の)行動制限を求めるとのことです。
職場などで感染者が出た場合は同居家族に比べて感染リスクは低いとは思います。職場でしっかりと感染対策が取られていれば拡大しない場合もあります。保健所による濃厚接触者特定は行われません。
職場の中では接触した人が自分で濃厚接触者に当るかを判断します。周りに感染者がいるのがわかった場合は、職場に行くときは可能な限り抗体検査キットで陰性の確認をするのが良いかもしれません。
最高裁で、法人税法の趣旨違反、委任範囲の逸脱違法として政令の無効という判決が出された、混合配当事件では、配当直前の「利益積立金額」がマイナスの状態でありながら、巨額な利益剰余金の配当が行われていました。
これについては、米国デラウェアLLC法がそれを許容している特殊事案と指摘する説明が多いようです。
日本の会社法では、臨時の決算書の作成を可としており、分配可能額は、その臨時の決算書で算定されるものによるとしています。前期末時点の利益剰余金がマイナスだったとしても、臨時の決算書での利益剰余金がプラスで、分配可能額が算出されるならば、その範囲での配当は可能です。
ただし、この臨時の決算をしたからと言って、それに基づく中間税務申告をする必要は必ずしもありません。まして、臨時の決算が、6ヶ月経過時点のものでないとすれば、中間申告の要件に合致しません。6ヶ月経過時点での臨時の決算書が作成されたとしても、それを以て中間申告をするか否かは、納税者の任意です。
会社法上、臨時の決算書を作成する事は、毎日でも可能です。そこで、分配可能額の存在を確認できれば、毎日でも配当可能です。その意味では、日本の会社法もデラウェアLLC法も同じです。
ところで、冒頭の判決で違法無効とされた政令で規定する「利益積立金」は、そう簡単には動きません。まず、利益積立金は期末や中間申告書の提出で第一次的に動きます。
さらにそれ以外の要因で動くのは、法令の定めるところに拠ります。冒頭の訴訟での配当をしたデラウェア法人の場合、配当原資たる利益剰余金は巨額にあるものの、利益積立金は前期末のまま変動していません。期中での受取配当金などなどは利益積立金期中変動要因から除外されているからです。
受取配当金があり、会社法による臨時の決算をし、配当を実行して、中間申告書を提出していない場合の「利益積立金」は、前期期末時のものになっても不思議ではありません。
確定拠出年金は公的年金とは別に企業や個人で積みたてて運用する私的年金です。企業で加入するDC(企業型)と個人で加入するiDeCoは、今までは企業型に入っているとiDeCoに加入できませんでしたが、2022年10月から両方に加入できるようになりました。また、企業型DCに加入している方がiDeCoに加入するには企業の労使合意が必要でしたが、原則それなしで加入することができるようになりました。
iDeCoの掛け金は各月の企業型DCの事業主掛け金と合算して月額5.5万円、さらに企業型DCだけ加入しているときはiDeCoの拠出限度額の上限は2万円です。
企業型DCと確定給付型の他制度も加入しているときは合算してDC掛金は月額2.75万円、iDeCoの拠出限度額は1.2万円を超えることはできません。
例えば企業型DCのみ加入で企業型DCの事業主掛け金が3万円であった場合、月額5.5万円-3万円=2.5万円(iDeCo拠出限度額は2万円まで)となります。
また、以下の2点が要件になります。
①掛け金(企業型DCの事業主掛け金・iDeCo)が各月拠出であること
②企業型DCのマッチング拠出(加入者本人から掛金徴収)を利用していないこと
2022年5月からは企業型DC もiDeCoも加入可能年齢が引き上げられています。
企業型DCは厚生年金被保険者(原則70歳未満)であれば企業型DCの加入者とすることができます。企業は労使で一定年齢未満の加入を定めることはできますが、60歳より低い年齢にはできません。
iDeCoにおいては会社員、公務員等(国民年金2号被保険者)自営業者、専業主婦(夫)等(国民年金3号被保険者)が加入者ですが60歳以上65歳未満で国民年金の第2号被保険者、任意加入者、海外居住で国民年金任意加入者も加入でき、引き続き加入するためには受付金融機関に手続きが必要です。
企業型もiDeCoも老齢給付金の受給開始年齢は60歳から75歳までの間で選択できます。
相続税法第58条に、市町村長等は、死亡届書を受理した場合、翌月末までに所轄の税務署長に届書記載事項を通知しなければならないとの義務が定められています。
この条文が今年改正されました。死亡届事項の通知義務者が法務大臣に、通知先が国税庁長官に変わり、市区町村長の通知義務の対象が、当該死亡者所有土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項に変わりました。通知期限は同じです。
この改正の施行期日は、令和6年3月1日又は改正戸籍法施行日(令和6年5月31日までの日)のいずれか遅い日です。
デジタル戸籍にするには巨大な過去のデータが障害になりそう
改正戸籍法というのは、デジタル戸籍の作成の主体を市区町村から、戸籍事務機関委任の委託元の法務省に移し、市区町村長は、届書・申請書等の戸籍記載に必要なものを受理した場合に、当該届書等を電子化画像情報にして法務大臣に送信し、法務大臣は、その画像情報を基に磁気ディスクに記録する、というものです。
その結果、税務サイドへの通知の主体が市区町村長から法務大臣に変わる事になり、それに対応して通知先も、所轄税務署長から国税庁長官に変わったわけです。
また、法務大臣からの通知は、デジタル戸籍が前提であり、これはそもそも、デジタル・ガバメント推進の国家戦略の一環としての施策なので、オンラインでの通知が必然となりますが、市区町村からの通知は、従来の通知義務履行と同じく書面での通知も可能なようです。
市区町村長から所轄税務署長への通知の対象の、土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項については、今年の税制改正で新たに加わったものです。ただし、財務省HPの改正税法の解説には、既に事実として「その通知に係る被相続人の所有していた固定資産課税台帳に登録されている土地、家屋及び償却資産等に関する資料を併せて送付することとなっていました」と書かれています。そう出来る根拠は示されていませんので、今年の改正で、正式に法定化する事で、グレーの解消にしたのかもしれません。